乳がんは日本人女性にとって最も身近ながんです。この記事では、乳がん検診を検討している方のために、受診方法と費用の目安、年代別におすすめの検査方法について解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・乳がん検診に興味はあるが、費用が気になり受診をためらっている女性
・乳がん検診の費用目安を知りたい女性
・40歳未満で乳がん検診を受けたい女性
★この記事のポイント
・乳がんは女性がかかるがんの第1位。30代でもかかることがある
・乳がん検診の受診方法は、おもに自治体による検診、職場の健康診断、全額自己負担での検診(自由診療)の3つ
・乳がん検診を自由診療で受ける場合の費用目安は、マンモグラフィが4,000〜8,000円、乳腺エコー検査が3,000円〜6,000円程度
・血縁者に乳がんや卵巣がんになった人がいる場合は、20〜30代のうちから専門医に相談し、必要に応じて検査の検討を
目次
乳がんは女性の罹患率トップ。検診での早期発見・早期治療が大切
乳がんの発症リスクは30代後半から上昇する
乳がんは日本人女性の8人に1人がかかるとされるほど身近ながんです*1。罹患数は30代から上昇し始め40代後半でピークを迎え、以降70代まで高水準で推移します*2。そのため、高齢の方だけでなく、仕事や子育てに励む若い世代であっても他人事ではありません。
他方で、乳がんの5年生存率(ネット・サバイバル/2015年)をみると、ステージ1で99.0%、ステージ2で94.7%と、早期に発見し適切な治療をすれば良好な予後が期待できます*3。早期発見のためにも、定期的な乳がん検診の受診が大切です。
※ネット・サバイバル:5年後に生存している割合のうち、「がんのみが死因となる状況」を仮定して算出された数値。
乳がん検診の費用は受診方法によって異なる
乳がん検診の受診方法
乳がん検診を受ける方法は、大きく次の3つがあります。
- 自治体の乳がん検診を受ける
- 勤務先の健康診断で受ける
- 全額自己負担で受ける(自由診療)
自治体の乳がん検診
各自治体では、厚生労働省の指針に基づき以下の内容で乳がん検診を実施しています*4。
対象:40歳以上
頻度:2年に1回
検査内容:問診・マンモグラフィ
自治体によっては、40歳未満の女性に乳腺超音波(乳腺エコー)検査による検診を実施している場合もあります。
受診方法は大きく集団検診と個人検診の2パターンがあり、集団検診は指定の会場・日時に受診、個人検診は自治体が指定する医療施設に個人が予約します。
勤務先の健康診断で受ける
会社員などの女性は、会社が実施する年1回の健康診断に乳がん検診が含まれている、または追加できることがあります。例えば勤め先が中小企業の場合、中小企業のほとんどが加入する「協会けんぽ」が実施する健康診断に、一定の条件下で乳がん検診を付加できます。
対象:一般健診・節目健診を受診する40〜74歳の偶数年齢の女性
検査内容:マンモグラフィ
なお、健康保険組合等によっては、40歳未満でも受診できる乳がん検診メニューや、妻など被扶養者向けの乳がん検診メニューを提供していることもあります。乳がん検診の対象者や年齢、検査内容は健康保険組合等によって異なります。送付される健康診断の案内やWebサイト等で確認してください。協会けんぽの扶養者向けの健康診断については下記記事でも詳しく解説しています。
専業主婦の方や、就職・転職活動等により個人で健康診断を受けたい方は、以下の記事をご覧ください。
全額自己負担で受ける(自由診療)
乳がん検診を受けたいが、自治体の検診や会社の健康診断の対象ではない場合は、医療施設が独自で実施している乳がんの検査や人間ドック等を受ける方法があります。自治体の検診等に比べると費用は高くなりますが、年齢や検査方法に制限がないなど自由診療ならではのメリットがあります。
- 40歳未満の女性も受診できる
- 自身のタイミングに合わせて予約できるスタッフが全員女性など医療施設を自身で選べる
- 無痛MRI乳がん検診など、自治体等の乳がん検診に含まれていない検査も選べる
自由診療の大きなメリットは、医療施設や検査方法を選べることです。例えば、乳房を圧迫せずに検査できる「無痛MRI乳がん検診」や、従来のマンモグラフィよりがんの発見率が高いとされる「3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)」*5を導入している施設も選択できます。ただし、これらの検査は、一般的な乳がん検診として死亡率減少効果が十分に確立されているわけではありません。
無痛MRI乳がん検診の詳細は下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
また、乳がん以外の病気(子宮頸がん、卵巣がんなど)もまとめてチェックしたい方はレディースドックという選択肢もあります。レディースドックについて知りたい方は下記記事をお読みください。
ただし、「しこりがある」「乳頭から血の混じったような分泌物がある」などの症状がある場合は、速やかに乳腺外来などの専門医にかかりましょう。
乳がん検診の費用目安
乳がん検診の費用について、3つの受診パターンごとの費用目安を表にまとめました。なお、会社の健康診断は一例として挙げています。実際の金額は健康保険組合等によって異なります。
| マンモグラフィ | 乳腺エコー検査 | その他 | |
| 自治体の 乳がん検診 | 無料〜2,000円程度 | 無料〜2,000円程度 | – |
| 会社の健康診断の オプション※ | 協会けんぽ: 最高1,700円(40〜48歳) 最高980円(50歳以上) 関東ITソフトウェア: 3,000円(40歳未満) 1,000円(40歳以上) | 協会けんぽ: なし 関東ITソフトウェア: 1,000円 | – |
| 自由診療 | 4,000〜8,000円 | 3,000〜6,000円 | 無痛MRI乳がん検診: 20,000〜30,000円 3Dマンモグラフィ: 7,000〜12,000円 |
20〜30代でも乳がん検診を受けたほうがいい人とは?
乳がんの発症を高めるリスク因子
乳がんの発生を高める要因として、下記が挙げられます*6。
- 経口避妊薬(エストロゲンを含む)の服用
- 閉経後の長期のホルモン補充療法
- 出産経験がない
- 授乳経験がない
- 初産が高齢
- 初潮が早い
- 閉経が遅い
- 閉経後の肥満
- 運動不足
- 飲酒
- 糖尿病
- 血縁者に乳がん患者がいる
親、子、姉妹に乳がんになった人がいる場合には、いない方に比べて乳がんの発症リスクが2倍以上になるということがわかっています*7。とくに、50歳以下で乳がんにかかった血縁者がいる、卵巣がんになった血縁者がいる場合などは、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の可能性を考慮する必要があります。そのため、20〜30代といった若いうちから専門医に相談し、乳がんの発症リスクに応じた検査の開始時期や方法を検討することが大切です*7。
乳がんになりやすい人の特徴や、乳がん検診を何歳から受けた方がよいかについては以下の記事で詳しく解説しています。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)とは
遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome)とは、遺伝性のがんのひとつであり、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がんなどの発症リスクが通常よりも高い体質を指します*8。生まれつき「BRCA1」「BRCA2」という遺伝子に病的な変化を持っていることで特定のがんが発症しやすい特徴があり、日本人の200〜500人に1人がHBOCに該当するといわれています*8。2013年にハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんがHBOCであることを公表し、予防的に両側乳房を切除したことでも話題になりました。
日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版 」では、HBOCの女性の場合、18歳からブレスト・アウェアネスを意識し、25歳からは半年~年1回の視触診、年1回の乳房造影MRI、30歳からは年1回の乳房造影MRIとマンモグラフィ(トモシンセシスを検討)が推奨されています*7。なお、これらはおもにBRCA1・BRCA2に病的な変化を持っている方を対象とした推奨であり、乳がんの家族歴があるすべての方に当てはまるものではありません。
ブレスト・アウェアネスについてはこちらで解説しています。
遺伝が関連する乳がんについては、下記記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
がんと遺伝の関係を知りたい方は、下記記事もご覧ください。
乳がんの初期症状チェックリスト
乳がんは進行とともに以下の症状が現れることがあります*9-*11。
- 乳房のしこり
- 脇の下のしこりや腫れ
- 皮膚のひきつれ・くぼみ
- 皮膚の赤み・ただれ
- オレンジの皮のような皮膚の変化
- 乳房の皮膚の色の変化
- 乳頭からの分泌物
- 乳首の陥没(かんぼつ)や形の変化
- 乳首の湿疹やただれ
- 乳房の大きさや形に左右差が出る
- 乳房の痛みや違和感
- 乳房全体が熱を持つ
上記のような症状を自覚している場合には、乳がん検診を待たず速やかに専門医を受診してください。また、自覚症状がない方も、乳がんは早期だと変化が現れにくいため、定期的に検診を受けましょう。乳がんが疑わしい症状についての詳細は、下記記事で解説しています。
乳がん検診の検査方法
乳がんの検査の種類
乳がん検診における代表的な検査はマンモグラフィ、乳腺超音波(乳腺エコー)検査です。それぞれの特徴と選ぶ際のポイントをまとめました。
マンモグラフィ
乳房をアクリル板で挟み、薄く広げた状態でX線撮影をする画像検査です。小さな病変や、乳腺エコー検査では見つけにくい微細な石灰化の発見に役立ちます*12。検査時間は10〜15分前後です。
乳房を強く圧迫するため人によっては痛みを感じる、少量だが放射線被曝があるなどのデメリットがあります。また、乳腺の密度が高い高濃度乳房(デンスブレスト)の方は、病変が見つかりにくいことがあります*12。
マンモグラフィは厚生労働省が指針を示す乳がん検診の検査方法として、40歳以上の女性に2年に1回の受診が推奨されています。他方で、40歳未満の女性については死亡率減少効果の検証結果が不十分であることから、推奨されていません*13。
なお、マンモグラフィはX線を利用した検査のため、妊娠中の方は受診不可としている医療施設が多いです。妊娠中の乳がん検診についてはこちらをご覧ください。また、下記に当てはまる方は検査ができない可能性があります*14。事前に医療施設に申し出てください。
- 豊胸術などで乳房内に人工物が入っている
- ペースメーカーの装着やポートの挿入がある
以下では、マンモグラフィの痛みを和らげるヒントや、胸が小さくて挟めるか不安な方に向けた記事をお読みいただけます。
マンモグラフィで見つかることがある石灰化について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
乳腺超音波(乳腺エコー)検査
プローブと呼ばれる機器を乳房に当て、超音波の反射で乳房の画像を得る検査です*12。痛みや被曝がないのが大きなメリットです。また、高濃度乳房の方は乳腺エコー検査のほうががんの発見に役立つ場合があります*12。検査時間は10分前後です。
留意したいこととして、超音波では指摘できない病変もある点、機器の性能や医師の技量に左右されやすい点があります*5。
乳腺エコー検査は、死亡率減少効果を示す科学的根拠が現時点では不十分なため、厚生労働省が指針を示す乳がん検診の検査方法には含まれていません*13。また、マンモグラフィと乳腺エコー検査を同時に受けることや、マンモグラフィと乳腺エコー検査を1年おきに受けることも推奨されていません*15。
一方、日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン2022年版」では、マンモグラフィと乳腺エコー検査の併用について、適切な精度管理下で乳がんの早期発見に有用であるとして、弱く推奨するとしています*5。ただし、乳がんによる死亡率を減少させる効果については、十分な科学的根拠が得られていません。
なお、高濃度乳房の方は乳腺エコー検査のほうが乳がんを発見に役立つ場合もあるとされており*7、自治体や健康保険組合の中には40歳未満の女性を対象に乳腺エコー検査を実施しているところもあります。
【年代別】乳がんの検査方法の選び方
ここまでの内容を踏まえ、年代や家族歴ごとに検討したい乳がんの検査方法をまとめました。
【20代〜30代】
一般的には定期的な乳がん検診は推奨されていません。ただし、乳がんの家族歴がある場合は、専門医に相談しましょう。
【40代以上】
マンモグラフィ(2年に1回)。高濃度乳房を指摘された場合は、乳腺エコー検査の追加について医師に相談しましょう。
20〜30代の若い世代は乳腺の密度が高い高濃度乳房であることが多く、マンモグラフィでは乳がんが見つけにくいことがあります。そのため、40歳未満には乳腺エコー検査を実施している医療施設が多く見られます。
なお、血縁者に若くして乳がんや卵巣がんを患った方がいるなどの場合は、20代〜30代のうちから専門医に相談し、検査の開始時期や方法を検討することが大切です。遺伝性の乳がんが気がかりな方は、専門医に相談しましょう。
乳がん検診の体験談
レディースドックなどで、乳がんの検査を受診した方の声を紹介します。乳がん検診を検討している方は参考にしてください。
みるくさん(44歳・女性)
生命保険会社の特典を利用してレディースドックを受診しました。これまで別の病院で受けていた胃がん・乳がん・子宮がんの検査が同じ病院で受けられました。マンモグラフィは痛いと聞いていましたが、私はまったく痛くなかったです。…もっと読む
ちかさん(37歳・女性)
さまざまな疾患リスクが上昇する30代後半にさしかかり、一度しっかり身体を調べたいと思いレディースドックを受けました。マンモグラフィは過去一痛みを感じることなく受けられました。ただ、肺CTで白い影が見つかり再検査を受けることに。小さなエラーも発見してくれて感謝しています。…もっと読む
もえははさん(61歳・女性)
周囲に婦人科系疾患にかかった人が複数おり気になっていましたが、会社の健康診断には婦人科系の検査がないためレディースドックを受けました。マンモグラフィは思ったより痛くなかったです。年齢的にも、毎年受けていきたいと思っています。…もっと読む
ミチカさん(46歳・女性)
これまで会社の健康診断を受けていましたが、脇の下のしこりが気になりレディースドックを受けました。乳腺エコー検査を受けたところ、とくに問題がないことがわかりほっとしました。…もっと読む
人間ドックのミカタでは、このほかにも多くの人間ドック体験談が寄せられています。以下よりご覧ください。
参考資料
*1.国立がん研究センター がん情報センター がん統計 最新がん統計
*2.国立がん研究センター がん情報センター がん統計 乳房
*3.国立がん研究センター がん情報サービス がん統計 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム
*4.厚生労働省 がん検診
*5.日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン2022年版
*6.国立がん研究センター がん情報サービス 乳がん 予防・検診
*7.日本乳癌学会 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版
*8.JOHBOC 遺伝性乳がん卵巣がんを知ろう! HBOC(エイチビーオーシー)とは何でしょうか?
*9.東京都保健医療局 TOKYO#女子けんこう部 ブレスト・アウェアネスって?
*10.日本予防医学協会 ブレスト・アウェアネスを知っていますか?~乳がんを知って早期発見に努めよう~
*11.Inflammatory Breast Cancer, National Cancer Institute
*12.国立がん研究センター がん情報サービス 乳がん 検査
*13.国立がん研究センター がん対策研究所 がん検診ガイドライン 乳がん
*14.国立がん研究センター 中央病院 乳房X線検査(マンモグラフィ)
*15.国立がん研究センター がん情報サービス 乳がん検診について
















