乳がん検診を受診したが結果の通知がなかなか届かない、届いた検査結果に「要経過観察」や「要精密検査」の文字があった…どちらも不安になるシチュエーションです。不安や気がかりが解消できるよう、本記事では乳がん検診の結果が届く時期や通知方法についてのよくある疑問や、検査結果の見方などについて解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・乳がん検診の結果がいつ届くか知りたい方、結果が届くのが遅く不安な方
・乳がん検診で超音波(エコー)検査を受けた際、検査時間が長くかかり不安な方
・乳がん検診の結果、要経過観察や要精密検査があり不安な方
★この記事のポイント
・乳がん検診の結果が届く時期の目安は、受診後10日〜1ヶ月
・検査結果によって通知が遅延することは基本的にない
・「要精密検査」のうち、がんが見つかった人の割合は5%未満
・乳がんはステージⅠで発見すれば5年相対生存率は99.8%。早期発見のためにも定期的に乳がん検診を受けよう
目次
乳がん検診の結果が届く時期の目安
乳がん検診の結果は郵送が基本。届く時期は10日〜1ヶ月が目安
乳がん検診の結果は、受診後10日~1ヶ月を目安に書面で郵送されるケースが一般的です*1。自治体が実施する乳がん検診では、一般的にマンモグラフィ検査や乳腺超音波(エコー)検査が行われます。いずれも医師ではなく専門の検査技師や検査士が検査し、撮影した画像を医師が確認して異常の有無を調べるため、結果が出るまでに時間がかかることがあります。なお、乳腺外科や乳腺外来など乳腺を専門とする医療施設では、乳がん検診当日に結果を伝えるところもあります。
会社の健康診断の際に乳がん検診も受診した、自治体のがん検診で他の検診と同時に受けたなど複数の検査を受診した場合は、結果の通知までに1ヶ月半ほどかかる場合があります。
結果が届く時期は医療施設や検診の受診方法などによって異なるため、事前に確認しておき、予定の時期を過ぎても検査結果が届かなければ受診した医療施設に問い合わせてみましょう。
乳がん検診の結果、「要精密検査」があった場合はすみやかに医療施設を予約しましょう。乳がん検診で引っかかった場合の次の行動については下記記事でも紹介しています。
結果が悪いと連絡は来るのか。結果が届く時期に関する質問
検査結果が届く時期にまつわるよくある質問を紹介します。
Q1.検査結果が悪いと結果の通知が遅くなる?
検査結果が思わしくなかったことが理由で、結果の通知が遅くなることは基本的にありません。
検査結果の通知が遅れる理由として考えられるのは、医療施設の混雑による遅延です。なお、一般的に4月以降から秋口までは混みやすく、12〜2月頃は比較的すいている傾向にあります。
Q2.乳腺超音波(エコー)検査で同じ場所を長い時間かけて観察していました。結果が不安で仕方ありません。
乳がん検診の乳腺超音波(エコー)検査では、嚢胞(のうほう)などが見つかることがあります。なんらかの所見があった場合、良性の可能性が高くても必ず画像で残すため、所見がない場合に比べ撮影時間が長くなることがあります。過剰に心配しすぎず、落ち着いて結果を待ちましょう。
Q3.検査結果が悪い場合、結果が郵送される前に電話連絡がある?
検査結果は基本的に郵送で届きますが、早急な精密検査や治療が必要だと判断した場合などに、電話で連絡をする医療施設もあります。
電話連絡を受けたら、誰でも大きな不安を感じるものでしょう。しかし、がんが確定したわけではありません。もしひとりで医療施設に向かうのが心細い場合は、家族などに同伴してもらってもよいでしょう。家族と一緒であれば医師の説明を聞き逃すことも少なくなり、結果的によりスムーズな診察や治療につながります。
乳がん検診の結果の見方
乳がん検診の判定
乳がん検診では、基本的にマンモグラフィ検査(乳房をプラスチックの板で挟み、X線で撮影する検査)が行われます。マンモグラフィ検査の判定は、乳腺診療ガイドラインによって5つのカテゴリーに分類されており、乳がん検診でも同じ分類が使われています*2。
<乳腺診療ガイドラインのカテゴリー分類>
カテゴリー1 | 異常なし |
カテゴリー2 | 明らかに良性と診断できる所見がある |
カテゴリー3 | 良性、しかし悪性を否定できず |
カテゴリー4 | 悪性疑い、悪性の可能性が高く良性の可能性もあり細胞診・生検が推奨される |
カテゴリー5 | 悪性、ほぼ乳がんと考えられる |
乳がん検診では、上記のカテゴリー分類をもとに精密検査の要・不要を区分します。カテゴリー1・2は「異常なし」または「要経過観察」(精密検査不要)、カテゴリー3・4・5は「要精密検査」と判断されます。会社の健康診断などの結果にある「再検査」の区分はありません*2。
なお、実際の結果報告書に記載される判定表記は医療施設によってさまざまであり、上記1〜5のカテゴリーが表記されるとは限りません。「異常(所見)なし」「要経過観察」「要精密検査」のみが記載されることもあれば、下記の判定区分のアルファベットで表されることもあるなどまちまちです。
<日本予防医学協会の判定区分*3>
A1 | 異常なし |
A2 | 有所見健康 |
A3 | 要生活注意 |
B1 | 要経過観察 |
B2 | 経過観察中 |
G1 | 要再検査 |
G2 | 要精密検査 |
C1 | 要医療 |
C2 | 加療中 |
R1 | 判定不能 |
<日本人間ドック協会の判定区分*4(2022年改訂)>
A | 異常なし |
B | 軽度異常 |
C | 要再検査・生活改善 |
D | 要精密検査・治療 |
E | 治療中 |
また、判定区分のほかに「石灰化」「腫瘤(しゅりゅう)」「嚢胞(のうほう)」などの具体的な所見(なんらかの変化・病変)が記載されるケースもあります(詳しくは次項で解説)。
いずれにしても、結果報告書には検査結果とともに「経過観察し1年後に受診を」「早めに精密検査を」といった次の行動の指示が記されています。必ず確認し、指示に従いましょう。
経過観察後の受診先や、精密検査をどこで受ければよいかわからない方は、下記記事もご参照ください。
石灰化、腫瘤(しこり)で「要経過観察」。すぐ受診しなくても問題ない?
乳がん検診の結果報告書に「要経過観察」とだけ書かれていると、何が原因で経過観察が必要なのか、次の検査まで時間が空いて大丈夫なのかと不安になるかもしれません。しかし、必要以上に心配しなくても大丈夫です。乳がん検診の結果における「要経過観察」とは、一般的には「良性と診断できる病変があると考えられるが、念のため経過観察が必要」の意味です。ただちに受診する必要はなく、結果報告書に記載のある時期に受診すれば問題ありません。
乳がん検診で要経過観察とされやすい代表的な所見が下記です。
【石灰化】
石灰化とは、乳房内にカルシウムが沈着した状態です。多くの場合良性であり治療の必要はありませんが、まれにがんによって石灰化が生じることがあります。マンモグラフィ検査で発見され、石灰化の形や広がりなどから良性か悪性かを判断します。石灰化で乳がんが見つかる確率が気になる方は、別記事「乳がん検診で見つかる『石灰化』とは? 乳がんの確率や精密検査の内容を解説」をご覧ください。
【腫瘤(しゅりゅう)】
腫瘤(しゅりゅう)とは、一般的にしこりと呼ばれる、まわりの細胞とは異なるかたまりのことです。マンモグラフィ検査で見つかることが多いほか、自身でふれてわかることもあります。しこりの大きさ、形、境界の状況から精密検査が必要かどうかを判断します。
【乳腺症】
乳腺症はホルモンの影響によって起こる乳腺の良性の病変の総称で、30〜50代の女性によく見られます。乳腺超音波(エコー)検査で見つかるほか、しこりとして触れたり、痛みを感じたりして自覚することもあります。多くの場合良性であり治療の必要はありません。
【嚢胞(のうほう)】
嚢胞(のうほう)とは、乳腺にできる袋状の組織のことです。袋の中は水分などのためしこりのように硬くはなく、比較的やわらかく感じます。乳腺超音波(エコー)検査で見つかることがありますが、ほとんどのケースは良性です。嚢胞については、下記記事で詳しく解説しています。
たとえば石灰化の場合、がんによる石灰化の疑いが少しでもあれば「要精密検査」になるため、「要経過観察」であった場合はあまり心配する必要はないでしょう。とはいえ、安心しきらずに再受診の時期がきたら必ず受診し、経過観察が必要となった理由を医師に確認しましょう。また、詳しく検査しないと不安な場合や、乳房の形やしこりの大きさが変化したなど気になる症状がある場合は、乳腺外科や乳腺外来を受診しましょう。
「要精密検査」のうちがん確定の割合は5%未満
乳がん検診の結果に「要精密検査」の記載があるとついがんの可能性を考え、実際に精密検査を受けその結果が出るまで不安で落ち着かないこともあるでしょう。しかし、必要以上にナーバスにならなくても大丈夫です。「乳がん検診の判定」でお伝えしたように、要精密検査の判定には「良性の可能性が高いものの念のため検査する」ケースも含まれているためです。実際、下記のようなデータもあります。
<2019年度がん検診受診者における要精密検査の受診状況(乳がん)*6>
がん検診受診者数(A) | 2,344,748人 |
要精密検査者数(B) | 147,806人 |
がん検診受診者数に対する割合(B/A) | 6.30% |
がんであった者数(C) | 6,949人 |
がん検診受診者数に対する割合(C/A) | 0.30% |
要精密検査者数に対する割合(C/B) | 4.70% |
厚生労働省によると、2019年度の乳がん検診の受診者数2,344,748人のうち、要精密検査者数は147,806人、がんであった者数は6,949人でした。割合で見ると、乳がん検診で要精密検査になった人は受診者全体の6.30%、そのうちがんがみつかった人は4.70%です*5。
裏を返せば、乳がん検診で要精密検査とされた人のうち95%以上が乳がんではなかったと判明したことになります。とは言え自己判断せず、なぜ要精密検査となったのかを調べるためにも、精密検査は必ず受けましょう。
頭では理解できていてもどうしても不安がぬぐえない方は、別記事の「不安をまぎらわすヒント」もご参照ください。
乳がんの早期発見には検診が大切。定期的に受診しよう
女性にもっとも多いがんは乳がんです。乳がんの発症リスクは30代前半から急増し始め、45〜49歳で1度目のピーク、70〜74歳で2度目のピークを迎えます*6。
早期発見のためには定期的な検診が大切です。乳がんになった人のうち24.9%は、がん検診、健康診断、人間ドックで乳がんを発見しています*6。乳がんをステージIの状態で発見できた場合、5年相対生存率(ネット・サバイバル※)は98.9%と予後は良好です*7。
厚生労働省が定める指針に基づき自治体が実施する乳がん検診では、基本的に40歳以上の女性を対象に、2年に1回のマンモグラフィ検査を行っています。対象者は忘れずに受診しましょう*8。
20〜30代の女性や、高濃度乳房(デンスブレスト)を指摘されたことがある方は、マンモグラフィ検査のみでは異変を見つけにくい可能性があるため乳腺超音波(エコー)検査の受診がおすすめです。乳腺超音波(エコー)検査を受ける方法は、会社の健康診断のオプション等、人間ドック、乳腺科の自由診療などがあります。また、自治体によっては40歳未満を対象に乳腺超音波(エコー)検査による乳がん検診を実施している場合があります。まずは勤務先やお住まいの自治体に実施の有無を確認し、実施していない場合は人間ドックや乳腺科の受診を検討しましょう。なお、しこりがあるなど気になる症状がある場合は、検診を待たずすみやかに乳腺科を受診してください。
※ネット・サバイバル:「がんのみが死因となる状況」を仮定して算出された数値。2014-2015年5年生存率から「相対生存率」に代わり採用されている。
参考資料
*1.日本対がん協会 乳がんの検診について
*2.日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン2022年版 総説2 検診・診断カテゴリーとPPV3
*3.日本予防医学協会 検査結果の見方
*4.日本人間ドック協会「2023年度 判定区分表」
*5.厚生労働省 令和2年度地域保健・健康増進事業報告の概況「健康増進編」
*6.厚生労働省「平成31年(令和元年)全国がん登録 罹患数・率報告」
*7.国立がん研究センター がん情報サービス 院内がん登録生存率集計
*8.厚生労働省 がん検診