子宮頸がん検診の結果がなかなか届かず不安な方、届いたけれど専門用語が多くよくわからない方に、子宮頸がん検診の結果が届く時期や報告書の見方、要精密検査の確率やその後の検査、医療施設選びについて解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・子宮頸がん検診を受け、結果がいつ届くか知りたい方
・子宮頸がん検診の結果が届いたが、見方がよくわからない方
・子宮頸がん検診の結果「異常なし」だったが、なんとなく不安な方
★この記事のポイント
・子宮頸がん検診の結果は約10日~1ヶ月後に郵送。医療施設に結果を聞きに行く場合もある
・ベセスダシステムでは「NILM(ニルム)」が異常なしで、そのほかはすべて「要精密検査」となる
・子宮頸がん検診で要精密検査となったうち、がんが見つかるのは約1%
・子宮頸がん検診では「がんの手前の状態」が見つかることもある
・子宮頸がんは早期発見できれば子宮を残す治療法を選択できるケースもある。要精密検査となったらためらわず受診しよう
目次
子宮頸がん検診の結果が届く時期と通知方法
結果は10日〜1ヶ月後に郵送、または結果を聞きに行くパターンもある
子宮頸がんは20~40代の女性で近年増加傾向にあるがんで、厚生労働省の指針では20歳以上の女性に対し2年に1度の検診を推奨しています*1。子宮頸がん検診は自治体が行っているがん検診や会社の健康診断のオプション、人間ドックのオプションなどで受けることができます。
子宮頸がん検診の結果は、受診から10日~1ヶ月後を目安に郵送で届くパターンと、検診を受けた医療施設まで結果を聞きに行くパターンがあります*2,*3。結果の通知方法や郵送時期の目安は事前に確認しておき、目安の時期を過ぎても結果が届かない場合は受診先に問い合わせましょう。
結果が悪いと連絡が遅れる? 病院から電話が来ることはある?
子宮頸がん検診の結果が届く時期と連絡方法についてのよくある質問を2点紹介します。
Q1.検査結果が悪いと通知の時期が遅くなる?
検査結果によって通知の時期が早くなったり、遅くなったりすることは基本的にありません。検査結果が遅くなる原因としては、検診が混みあっていることが考えられます。一般的に4月~11月頃までは会社の健康診断などにより混雑する傾向があります。逆に比較的空いているのは12月~2月頃です。なお、検診を受けた医療施設によっても結果の通知時期に差があります。提示された時期を過ぎても結果が届かない場合は問い合わせましょう。
Q2.検査結果が悪い場合、通常の結果通知の前に電話連絡がある?
医療施設によっては、早急に精密検査がすすめられる場合などに電話で連絡をする場合があります。他方、結果にかかわらず電話での回答はしないとしている医療施設もあり、対応は医療施設によって異なります。電話で連絡を受けたら、大きな不安を感じるものでしょう。しかし、がんが確定したわけではありません。ひとりで説明を聞くのがためらわれる場合は、家族などに付き添ってもらうとよいでしょう。
子宮頸がん検診の結果の見方
子宮頸がん検診の目的は「異常なし」「要精密検査」のスクリーニング
子宮頸がん検診は、検診によってがんで亡くなる方を減らすことができるとして厚生労働省が推奨している5つのがん検診(胃がん・肺がん・乳がん・大腸がん・子宮頸がん)のひとつです*1。これらのがん検診は一次検診であり、精密検査が必要な人と不要な人のスクリーニング(振り分け)が行われます。この検診結果が「要精密検査」だった場合、二次検診(二次検査・精密検査)が案内されます*4。
厚生労働省の指針が定める子宮頸がん検診の内容は、問診、視診、内診、子宮頸部細胞診です*1。なかでも子宮頸部細胞診は、子宮頸がんの検査で一般的に行われる検査で、子宮頸がんの死亡率の減少が科学的に認められている検査方法です*5。子宮頸部の細胞を検査用のブラシなどで採取してがんの可能性について調べます。この検査で細胞に異常が見られた場合は二次検診を行う必要があります。
子宮頸がん検診の結果報告書の様式は、医療施設によってさまざまで「精密検査不要(異常なし)」「要精密検査(異常あり)」のいずれかのみが記載されている場合*3,*6や、細胞診の判定方法である「ベセスダシステム」ならびに細胞所見などが記載されている場合もあります。結果の見方の詳細は次項で解説します。
ベセスダシステム(ベセスダ分類)の見方
子宮頸がん検診で実施される子宮頸部細胞診の報告様式は5段階評価の「クラス分類」が使われてきましたが、2008年より日本国内でも、国際的に使われている「ベセスダシステム(ベセスダ分類)」が用いられています*7,*8。結果報告書によっては移行期間としてクラス分類とベセスダシステムの両方が記載されている場合もあります。ベセスダシステムでは子宮頸がん検診の結果を下記のように分類しています。
略語表記 | 細胞 | 細胞診の結果 | 結果の説明 | 必要な検査 |
---|---|---|---|---|
NILM (ニルム) |
扁平上皮系 | 陰性 | 正常または正常範囲内の所見 | 定期検査 |
ASC-US (アスカス) |
意義不明な異形扁平上皮細胞 | 異形成とは言い切れないが細胞に変化がみられる(良性悪性の区別ができない) | 要精密検査(HPV検査もしくは6ヶ月以内の子宮頸部細胞診) | |
ASC-H (アスクエイチ) |
HSILを除外できない異形扁平上皮細胞 | 異形成がみられ、HSILの可能性が疑われる | 要精密検査(コルポスコピー、生検) | |
LSIL (ローシル) |
軽度扁平上皮内病変 | 細胞がHPV感染し傷ついた状態、軽度異形成(CIN1)がみられる | ||
HSIL (ハイシル) |
高度扁平上皮内病変 | 細胞がHPV感染し傷ついた状態、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)の可能性が疑われる | ||
SCC | 扁平上皮がん | 扁平上皮がんが疑われる | ||
AGC | 腺細胞系 | 異型腺細胞 | 腺に異型はあるが、上皮内腺がん(AIS)とするには異形が弱い、あるいは腺がんが疑われる | 要精密検査(コルポスコピー、生検) |
AIS | 上皮内腺がん | 間質浸潤を欠く内頸部腺がん(腺がんの前がん病変) | ||
Adenocarcinoma | 腺がん | 浸潤腺がん(進行した腺がん) | ||
other malig. | その他 | その他の悪性腫瘍 | その他の悪性腫瘍が疑われる | 要精密検査(病変検索) |
表内の「必要な検査」欄を見るとわかるように、ベセスダシステムでは「NILM(ニルム)」が異常なし、それ以外はすべて再検査や精密検査が必要です。ただし、再検査や精密検査が必要だからといって、必ずしもがんが見つかるわけではありません。悪性と良性の区別がつかない「ASC-US(アスカス)」や、軽度の異常を示す「LSIL(ローシル)」の場合は、がんへと進む前に異変が自然に消退するケースも少なくありません。
たとえ子宮頸がんが見つかったとしても、早期であれば子宮頸部の一部のみを手術で切除し、子宮そのものは温存できるケースもあります。定期的ながん検診により早期発見し、適切な治療をすることで、妊娠・出産への影響を少なくすることにつなげられます。子宮頸がん検診の結果、要精密検査など二次検診の案内があれば必ず婦人科を受診しましょう。
細胞所見欄の見方
子宮がん検診の結果報告書に細胞所見の欄がある場合、「扁平上皮細胞」「円柱上皮細胞」「遊走細胞」といった項目に「+(プラス)」や「FEW」などと記されている場合があります。これらは子宮頸部を構成する細胞の名称と、検査で採取された細胞の比率であり、子宮頸がんの陽性・陰性を示すものではありません。
【扁平上皮細胞】
子宮頸部の膣側にある細胞です。扁平上皮細胞は表層細胞・中層細胞・傍基底細胞の3層で構成されており、これらはホルモンの影響で比率が変化します*9。そのため、月経周期などによって「+」または「++」など結果が異なることがあります。この扁平上皮細胞にできるがんを「扁平上皮がん」と呼びます。扁平上皮がんは子宮頸がん全体の80%程度を占めます*5。
【円柱上皮細胞】
子宮頸部の子宮側で粘液を分泌する細胞(腺細胞)です。腺細胞にできるがんを「腺がん」と呼びます。腺がんは、子宮頸がん全体の20%程度を占めます*5。
【遊走細胞】
好中球(白血球の一種)やリンパ球など組織を自由に移動できる細胞を指します。遊走細胞の増減は感染症などにかかっているかどうかのサインとなります。
細胞所見の欄にはこのほかにトリコモナスや真菌(カンジダ)などの感染症の有無が記されていることもあります。
なお、子宮頸部細胞診とあわせてHPV検査を行った場合には、その結果も記されています。HPV検査は子宮頸がんのおもな原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染の有無を調べる検査です。子宮頸部細胞診・HPV検査の結果が「異常なし・陰性(-)」の場合、数年間は前がん病変が見つかる可能性は低い*10と予測できます。一方、「異常なし・陽性(+)」の場合は、細胞に異変はないか、感染が持続していないかなどを定期的に確認することが大切です*10。
子宮頸がん検診で「要精密検査」になる確率と前がん病変について
子宮頸がん検診で「要精密検査」になる確率は約2%。そのうちがん確定の割合は約1%
要精密検査(異常あり)という結果を手にした方は、「がんかもしれない」という不安にかられることでしょう。しかし、要精密検査の通知=がんの確定、ではありません。
<2019年度がん検診受診者における要精密検査の受診状況(子宮頸がん)*11>
がん検診受信者数(A) | 3,547,376人 |
要精密検査者数(B) | 85,209人 |
がん検診受診者数に対する割合(B/A) | 2.40% |
がんであった者数(C) | 858人 |
がん検診受診者数に対する割合(C/A) | 0.02% |
要精密検査者数に対する割合(C/B) | 1.01% |
厚生労働省によると、2019年度の子宮頸がん検診の受診者数3,547,376人のうち、要精密検査者数は85,209人、がんであった者数は858人でした。割合でみると、子宮頸がん検診で要精密検査になった人は受診者全体の2.40%で、そのうちがんが見つかった人は1.01%です。
数字をみる限り、精密検査を受けに行かなくてもいいだろうと思うかもしれませんが、子宮頸がん検診の検査の結果が「要精密検査」などとなった場合は、必ず精密検査を受けましょう。子宮頸がん検診では、子宮頸がんの前の段階である「前がん病変(異形成)」を発見することもできます*12。
がんの前の段階「前がん病変(異形成)」が見つかることもある
子宮頸がんのおもな原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)は、性交渉の経験がある女性の過半数が生涯に一度は感染機会があると言われていますが、多くは感染しても免疫の働きなどにより自然排除されます*12。しかし、なんらかの理由で感染が持続すると、がんの前の段階にあたる「前がん病変(異形成)」があらわれ、数年~数十年を経て子宮頸がんに進行することがあります*12。子宮頸がん検診で、がんに進む前の「前がん病変(異形成)」の状態を早期に発見し、早期治療することが重要です。
子宮頸がんの前がん病変(異形成)はCIN1・CIN2・CIN3の3段階
HPVの作用による細胞の異常は、軽い異形成が起こり、その中の一部は、さらに強い異形成に進行します。こうした異常を、子宮頸部上皮内腫瘍(Cervical Intraepithelial Neoplasia)、略してCINと呼びます。子宮頸がんの前がん病変(異形成)は、進行段階により「CIN1(軽度異形成)」「CIN2(中等度異形成)」「CIN3(高度異形成・上皮内がん)」の3つに分類されます*5。
CIN1のうち、CIN3以上の病変に進行する割合は約12〜16%で、とくに30歳未満の女性の場合は約90%が自然に消退します*10。また、CIN2(中等度異形成)でも、経過観察中にCIN1(軽度異形成)や正常上皮へと消退していくこともあります*10。
精密検査の結果、CIN1と診断された場合は進展を見逃さないようにフォローアップ(経過観察)し、CIN2でCIN3に進む可能性が高い場合は治療を選択することも考慮されます。CIN3の場合は、基本的には治療が必要です*10。
子宮頸がんの自然史(なんらかの措置を加えない状態で推移する疾病の経過)について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
精密検査は必ず受診を。医療施設選びも大切
子宮頸がんの精密検査では、一次検診の結果(ベセスダシステム)にもとづきHPV検査、コルポスコピー検査(コルポスコープと呼ばれる拡大鏡を用いて子宮頸部を観察する検査)*5、生検(組織の一部を採取し顕微鏡で詳しく調べる検査。生検組織診断とも呼ばれる)*13などを行い、異常についてより詳しく調べます。要精密検査などの通知を受けたら、必ず専門の医療施設を受診しましょう。
子宮頸がんは早期であれば子宮を温存する治療法を選ぶことができます。また、がんが子宮頸部にとどまっている病期(ステージⅠ期)で適切な治療を受けた場合の5年相対生存率は95.4%と、予後がよいのも特徴です*14。
しかし一方で、国立がんセンターの統計によれば、2021年は2,894人が子宮頸がんで命を落としています*15。「要精密検査のうち、がんの確率が1%ならきっと大丈夫」あるいは「子宮頸がんだと診断されることが怖い」といった理由で受診を先延ばしにせず、要精密検査の結果を受け取ったら、すみやかに精密検査を受けましょう。
なお、精密検査を受ける際には医療施設選びも重要なポイントになります。下記を確認のうえ受診するとよいでしょう。
●コルポスコピー検査、生検(組織診)などの精密検査に対応している
精密検査のステップであるコルポスコピー検査は、コルポスコープを所有していない医療施設では行うことができません。今すぐは行わなくても後々行う可能性を考え、どのような検査や治療に対応しているかを確認してみましょう。
●経験豊富な産婦人科専門医、婦人科腫瘍専門医が在籍している
在籍している医師の専門性や医療施設の治療実績をWebサイトなどで確認し、経験豊富な専門医のいるところを選ぶのもよいでしょう。日帰りで受けられる子宮頸部レーザー蒸散法など、実施している医療施設が限られる治療法もあります。
●自宅や職場から通いやすい
子宮頸がんは数年にわたる経過観察が必要なケースもあります。精密検査の結果によっては、3ヶ月または6ヶ月などのスパンで検査を受けることもあるため、定期的に通える医療施設を選ぶことが大切です。
●医師とコミュニケーションがしやすく、安心できる
子宮頸がん検診は女性のセンシティブな部位を調べる検査です。また、定期的な経過観察が必要になるケースもあるため、医師との信頼関係が安心感につながります。事前に分かりづらい点ではありますが、医師とコミュニケーションがとりやすい、検査のときにプライバシーへの配慮があるなど、なるべく自身にとって抵抗感の少ないと思われる医療施設を選ぶとよいでしょう。
医療施設の選び方は下記記事もご参照ください。
子宮頸がん検診で「がんに進む前の段階」での早期発見を
繰り返しますが、子宮頸がんは「がんに進む前の段階」での早期発見が可能ながんです。発見が早いほど、身体への影響が少ない治療を選ぶことができ、妊娠・出産を希望する場合に子宮を温存できる可能性も高くなります。早期発見・早期治療のためには定期的に検診を受けることが大切です。
子宮頸がんの検診内容や費用については、下記記事もご参照ください。
参考資料
*1.厚生労働省 がん検診
*2.日本対がん協会 子宮がん検診について
*3.東京都福祉保健局 子宮頸がんのこと
*4.日本対がん協会 検診について
*5.国立がん研究センター がん情報サービス 子宮頸がん
*6.国立がん研究センター がん対策研究所「子宮頸がん検診結果通知書」
*7.日本産婦人科学会 第17回記者懇談会「子宮頸がん検診の精度管理の向上にむけて—ベセスダ分類とHPV検査—」
*8.東京都予防医学協会 子宮がん検診
*9.片渕秀隆、田代浩徳(2007.4)「C.産婦人科検査法 2.細胞診」日本産科婦人科学会雑誌 第59巻 第4号
*10.日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン婦人科 外来編2020」
*11.厚生労働省 令和2年度地域保健・健康増進事業報告の概況「健康増進編」
*12.日本産科婦人科学会 子宮頸がん
*13.国立がん研究センター がん情報サービス 用語集 生検
*14.国立がん研究センター がん情報サービス 院内がん登録生存率集計 子宮頸がん 2014年5年生存率
*15.国立がん研究センター 最新がん統計