がん検診

子宮がん検診は生理中でも大丈夫か。生理前・生理後、いつ受けるべき? よくある質問と対処法を紹介

子宮 がん検診
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

生理中の子宮頸がん検診は、基本的に実施不可とされています。この記事では子宮頸がん検診の際によく実施される検査内容を紹介するとともに、生理前後の受診タイミング、検査への影響、もしも生理になってしまったらなど、よくある質問とその解説をまとめました。

★こんな人に読んでほしい! 
・子宮頸がん検診を予約しようとしたが、生理周期と重なりそうで日程を迷っている方
・子宮頸がん検診を受ける予定だが生理がきてしまい、予約変更したほうがよいのか心配な方
・生理は終わりかけだが、このまま子宮頸がん検診を受けてよいのか不安な方

★この記事のポイント
・生理中の子宮頸がん検診は、正しい結果を得られない場合があるためできれば避けよう
・受診の可否は医療施設によって異なる。自分の受診先の決まりを確認しよう
・子宮頸部などの細胞診検査は、生理中だと血液成分により必要な細胞が採取できない場合がある
・子宮頸がん以外の子宮の検査も生理中はなるべく避けよう
・生理不順や不正出血など自覚症状がある場合は、検診ではなく婦人科を受診しよう

目次

子宮がんと子宮がん検診

子宮がんには「子宮頸がん」と「子宮体がん」がある

子宮がんは、女性の骨盤内にある子宮にできるがんで、「子宮頸がん」と「子宮体がん」があります*1,*2「子宮頸がん」は、子宮頸部(子宮の下部にある筒状の臓器。分娩時に産道の一部になる場所)にできるがん「子宮体がん(子宮内膜がん)」は子宮体部(子宮の上部にある袋状の臓器。妊娠時に胎児を育てる場所)にできるがんです。

子宮頸がんのおもな原因はヒトパピローマウイルス(HPV)への感染です。HPVは性的接触によって子宮頸部に感染するため、性交渉の経験があればだれでも発症する可能性があることが知られています。子宮体がんの原因は多くがホルモンバランスに起因しており、ホルモンバランスが不安定になる閉経前後の年代で発症リスクが高まります。また、子宮頸がんの初期は無症状であることがほとんどですが、子宮体がんは初期症状としておもに不正出血が見られます*1,*2。このように、子宮のがんとはいっても、両者はまったく異なる病気です。

子宮がん検診とは、一般的に「子宮頸がん検診」のことを指す

一般的に自治体で実施されている子宮がん検診は、厚生労働省の指針で定められている「子宮頸がん検診」のことを指し、子宮体がんの検査は含まれないことが多いです。これは子宮頸がん検診の有効性は科学的に証明されているのに対して、子宮体がんは検診対象疾患として有効性が証明されていないためです*3。ただし、子宮がん検診で、必要に応じて子宮頸がん検診に加え子宮体がんの検査を実施している自治体もあります。生理中の検診の受診については、医師の判断にもよりますが、とくに集団検診では生理期間中を避けるよう案内のある自治体や医療施設が多いです。詳しくは次項で解説します。

なお、本記事では以降「子宮頸がん検診」について紹介しています。

子宮頸がん検診は生理中でも大丈夫か

生理中の子宮頸がん検診は自治体によっては受診不可

20歳を過ぎると定期的な子宮頸がん検診の受診が推奨されることから*1、お住まいの自治体から2年に1回検診の案内が届いたり、企業が実施する定期健康診断において希望者は付加できたりする場合があります。生理中の子宮頸がん検診については自治体や医療施設によっては受診不可の場合が多いですが、生理中でも受診可としている場合もあります。

生理中でも受診可としている場合があるのはなぜ?

子宮がん頸検診で行われる細胞診は従来法(直接塗沫法)やLBC法(液状化検体法)という検査方法が用いられています*4,*5。このうち、LBC法を導入している医療施設では、とくに経血が多い時期でなければ生理中でも子宮頸がん検診を受診できるとしている場合があります。

しかし、LBC法で受診する場合でも、生理中は経血の影響によって検査に必要な細胞を採取できない可能性は残るため、正確な結果を得るためにも生理中の細胞診検査はできるだけ避けたほうがよいとされています。細胞診検査や従来法・LBC法について、詳細は後述の「子宮頸部細胞診」で紹介します。

なお、なんらかの自覚症状がある場合は、生理中かどうかに関わらず、健診や検診を待たずにすみやかに医師による診療を受けましょう。

子宮頸がん検診はできるだけ生理中は避けたほうがよい

子宮頸がん検診で実施する子宮頸部細胞診では、小さなブラシで子宮頸部(子宮の入り口)をこすり、採取した細胞を調べます*1。その際、粘液や血液を十分に除去してから細胞採取しますが*6、経血が多い時期は検査に必要な細胞をしっかり採取できず、正しい検査結果が得られない可能性があります。そのため生理中の細胞診検査はできるだけ避けたほうがよいとされています。

生理中の検査実施の可否は医療施設などによって対応が異なることがあります。健康診断などの場合では、同一日に受けられない場合は生理の影響を受ける検査のみ延期、もしくは予約変更となることがあります。また、生理5日目以降など生理が終わりかけの出血が少ない時期であればそのまま受診してよいとしている医療施設もあります。生理となった際の検査可否については事前に受診先へ確認しておきましょう。

子宮頸がん検診のほか、生理中の健康診断については以下の記事で紹介しています。

子宮頸がん検診の検査内容

問診・視診・内診

子宮頸がん検診において、問診・視診・内診とは次の内容を指します。

  • 問診:直近の月経状況(生理開始日、日数、生理周期など)、妊娠・出産経験の有無、不正性器出血などの症状の有無、過去の検診受診歴などを確認
  • 視診:クスコ(腟鏡)という器具を挿入し、腟を広げて子宮頸部を確認
  • 内診:指を腟の中に入れ、反対の手でお腹を押し、子宮や卵巣の大きさを確認

子宮頸がん検診は問診後、検査室に入り、履物、ズボン・スカート、ストッキング、下着など靴下以外の下半身の衣服をすべて脱ぎ、「内診台」という婦人科専用の検査椅子に座って、視診・細胞診・内診を実施するのが一般的です。内診台にはさまざまなタイプがありますが、所定の位置に足を乗せて座り、準備ができると椅子の背もたれが下がるとともに脚部分が上がっていくタイプが多いです。医師からの観察や検査を受けやすい体勢となって診察が始まります。

生理中の受診が可能だとしていたとしても、内診台を汚してしまう心配や羞恥心などから、子宮頸がん検診に抵抗を感じる方もいるかもしれません。生理中の受診が可能である場合は抵抗を感じる必要はありませんが、経血の影響により正しい検査結果を得られない可能性は残ります。生理中の子宮頸がん検診は、予約変更が可能であれば無理をせず受診を控えましょう。

子宮頸部細胞診

子宮頸部細胞診では、子宮頸部にあたる「子宮の入り口部分」をヘラやブラシ、綿棒などでこすって細胞を採取し、異常な細胞を顕微鏡で調べます。子宮頸部細胞診は、子宮頸がんの検査で最も一般的に行われる検査で、子宮頸がんの死亡率の減少が科学的に認められている検査方法でもあります*4。この検査で異常が見られると再検査もしくは精密検査が必要です。

細胞診検査には従来法(直接塗沫法)とLBC法(液状化検体法)が用いられています*4,*5

従来法(直接塗沫法)

従来法とは、採取した細胞を直接スライドガラスに塗りつけて検体標本を作製する細胞診検査の方法です。不適切標本(乾燥や細胞の重なりなど)が診断に影響があるとされています。

LBC法(液状化検体法)

LBC法とは、採取した細胞を固定保存液に回収し、専用の医療機器を用いて検体標本を作製する細胞診検査の方法です。採取した細胞を固定保存液に回収してからスライドガラスに塗るため、均一かつ細胞の重なりがない標本作製が可能となることから精度管理に有用とされ、導入する自治体が増えています。また、細胞の変性や乾燥を防ぐことで残った検体を用いての検査が可能になるため、検体が保管されている場合は再検査などで追加実施するHPV検査の細胞診検査にも対応できるというメリットがあります。LBC法は標本を作製する際に、血液や炎症細胞、粘液などの不明瞭な成分を分離・除去することが可能です。

しかし、LBC法を導入して生理中の受診可としている場合でも、血液成分が多く採取されてしまうと、その分必要な細胞が採取できない可能性があります。そのため、生理期間(とくに経血が多い時期)は細胞診検査を避けることとされている場合が多いです。

HPV検査

HPV検査は、子宮頸がんの原因であるHPV感染の有無を調べる細胞診検査です。子宮頸がん検診の細胞診の結果によって、コルポスコープ検査が必要かどうかを判断するために実施されることもあります*1。子宮頸部細胞診と同様、クスコを挿入して膣を広げ、子宮の入り口を専用のブラシや綿棒でこすり、細胞を採取して感染の有無を調べます。なお、HPV検査には子宮頸部浸潤がん(子宮頸がん)の罹患率減少効果を示す根拠があります*6

生理中の子宮頸がん検診について—よくある質問

子宮頸がん検診の当日に生理がきてしまった! どうすれば?

生理周期は、体調やストレスなどによって乱れることがあります。検診予定日と生理が重なりそうな場合は、日程調整が可能か、事前に医療施設に確認しておくことが大切です。もし検診当日に生理がきてしまったら、医療施設に連絡し予約変更してもらうなど必要な対応を行いましょう。

生理前に受診した子宮頸がん検診で検査後に出血が…生理が早まったの?

子宮頸がん検診後は、生理による出血とは異なり、検査後は少量のにじむような出血が2~3日程度(子宮体がん検査後は月経のような出血が4~5日程度)続く場合があります。出血が止まるまでは湯船(浴槽)に浸かるのは控えて、シャワーで済ませるようにしましょう。生理周期の終盤のような少量の出血であれば心配いりませんが、出血がひどくなったり、腹痛や発熱が起こったりする場合は、早めに婦人科を受診してください。

生理終わりかけで子宮頸がん検診を受診予定。まだ経血があるので受診前に膣洗浄して大丈夫?

腟洗浄をすると、子宮頸がんの検査に必要な細胞が洗い流されてしまうことがあります。検査の前日から膣洗浄をしないよう呼びかけている医療施設もあります。正しい検査結果を得るためにも、なるべく生理が終わってから受診しましょう。

生理不順などで生理がしばらくこない場合、子宮頸がん検診を受けてもよいか?

生理周期は、体調やストレスなどによって乱れることがあります。生理不順が続く場合、生理周期が極端に短い場合(24日以下)、極端に長い場合(39日以上)は、婦人科疾患が隠れている可能性もあります。子宮頸がん検診ではなく、婦人科を受診しましょう。 例えば今回のみ1週間程度遅れているなどであれば、健康な方でも生理が遅れることはよく起こるため、あまり心配はありません。ただし、生理がこない理由として妊娠の可能性が少しでもある場合は、子宮頸がん検診の実施主体や医療施設の方針によっては、受診が認められない場合があります。

子宮頸がん検診の再検査。生理中の場合はどうすればよい?

子宮頸がん検診で「再検査」「要精密検査」などの結果が出た場合には生理中は避けて検査を受診します。 子宮頸部の組織の一部を採取する組織診(生検)をした場合は検査後1週間ほど出血が続くことがあります。検査後の出血と生理を見分けるため、生理前の受診を避けるよう指示する医療施設もあります。

子宮頸がんの精密検査や再検査について、詳しくは以下の記事でご覧ください。

人間ドックなら、子宮頸がんの検査が含まれるレディースドックがおすすめ

婦人科検診やレディースドックなら、子宮周辺も調べられる

子宮頸がん以外の子宮の病気は、がん検診などの対策型検診ではなく、人間ドックなどの任意型検診にて、全額自己負担で受診することもできます。医療施設によっては、女性特有の疾患を調べる検査がパッケージになった婦人科検診を用意しており、これも任意型検診のひとつです。

また、人間ドックのひとつであるレディースドックでは、基本的な人間ドックに加え、女性特有の疾患に関する検査が含まれています。子宮頸がんについて調べる子宮頸部細胞診以外で、婦人科検診やレディースドックによくある子宮周辺を調べる検査を紹介します。

経腟超音波(エコー)検査

経腟超音波(エコー)検査は、子宮だけでなく卵巣の状態も観察することができます。この検査で子宮筋腫や卵巣腫瘍の大きさや位置、数などを調べることができます。子宮体がんの検査でも用いられます。経腟エコー検査の所要時間は10分程度、費用の目安は5,000円前後(単体の場合)です。経腟超音波(エコー)検査は生理後であれば受診可能です。

骨盤MRI検査

MRI検査とは、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)の略称で、強い磁石と電磁波を使って体内の状態を断面像として描写する検査です。骨盤MRI検査では、MRI装置を使って骨盤内の断面図を画像化します。子宮頸がんや子宮体がん、卵巣がんといったがんの発見だけでなく、子宮筋腫や卵巣嚢腫(のうしゅ)といったがん以外の病気も発見することが可能になります。検査にかかる時間は30分程度、費用の目安は、子宮頸がんや子宮体がんなどの検査とセットで2万円前後です。

骨盤MRI検査と生理が重なりそうな場合、あるいは当日思いがけず生理になった場合はその旨をすみやかに医療施設に伝えてください。医療施設によっては、生理中を避けるよう指示されることがあります。

MRI検査は身体を輪切りにした状態の画像を取得する検査です。生理中の受診が可能な場合であっても、診断の妨げにならないよう、体内に挿入するタンポンの使用は避けましょう。

自身の年齢や健康リスクに合わせて、人間ドックを活用しよう

早期発見・早期治療のためには、病気になる前に疾患リスクを発見して予防することが重要です。人間ドックであれば、自身の年齢や健康リスクに合わせた検査を受けることが可能になります。子宮頸がん以外の子宮周辺の病気も心配な方は、レディースドックがおすすめです。気になる方は、人間ドック・検診【MRSO】で掲載中のレディースドックをご覧ください。

子宮頸がん検診は生理期間以外に。レディースドックは生理後の受診が適している

子宮頸がん検診やレディースドックは生理中でも受診できるとしている医療施設もありますが、正確な検査結果を得られないことがあります。そのため、なるべく生理期間に重ならない日程で予約し、生理と重なった場合の対応は受診先に確認しておきましょう。

生理は正常周期であれば25~38日、変動6日以内で繰り返され、持続日数は3 〜7日以内とされています*7。子宮頸がん検診は生理中以外であれば受診可能です。もし子宮頸がん検診とともに経膣超音波(エコー)検査や骨盤MRI検査を行う場合は、生理前よりも生理後の受診が望ましいとされています。通常、子宮内膜は生理前に厚く、生理後に薄くなりますが、例えば子宮内膜増殖症の場合、生理後も子宮内膜が厚い状態が続きます。

こうしたことを踏まえると、生理による経血や子宮内膜が厚くなる影響を避けた「生理終了後から排卵までの期間」が子宮内の異変を観察しやすく、子宮頸がん検診やレディースドックに適した時期と言えるでしょう。

ただし、月経以外の不正出血、異常なおりもの、性交や排尿時などの痛み、下腹部の痛み、腹部の張りなどなんらかの自覚症状がある場合は、子宮頸がん検診やレディースドックではなく婦人科を受診してください。

参考資料
*1.国立がん研究センター がん情報サービス 子宮頸がん
*2.国立がん研究センター がん情報サービス 子宮体がん(子宮内膜がん)
*3.日本婦人科腫瘍学会 子宮頸がん検診について
*4.国立がん研究センター 社会と健康研究センター 「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン更新版」2020年
*5.久布白兼行「クリニカルカンファレンス7 子宮頸部細胞診『2)液状検体細胞診』」日本産科婦人科学会雑誌,2010 第62巻(第9号),N194-199
*6.日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会「婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020」
*7.日本産婦人科医会 女性の健康Q&A 正常な生理(月経)の目安を教えてください!

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