脳ドック

脳ドックのMRIとMRAの違いとは? MRAでわかる病気とメリット、検査の流れを解説

脳ドック 脳ドック
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

脳ドックは脳を専門的に検査し、おもに脳卒中を始めとする脳血管疾患のリスクの早期発見を目的とした専門ドックです。脳ドックでおもに行われる検査には、MRI/MRA検査があります。医療施設によってはMRA検査がオプションになっている場合もあるため、MRAとは何かを知っておくことは重要です。この記事ではMRIとMRAの違い、見つけられる病気の違い、費用相場、検査の流れについて説明します。

★こんな人に読んでほしい!
・MRIとMRAの違いを知りたい方
・脳ドックの受診を検討している方
・MRAでわかる病気、費用、検査の流れについてくわしく知りたい方

★この記事のポイント
・脳卒中(脳梗塞・くも膜下出血・脳出血)を始めとする脳血管疾患は65歳を超えると急増する。脳ドックを利用して無症状の段階で早期発見することが重要
・MRIはMRI装置を使用して撮影された画像を指す。一方、MRAとはMRI装置で撮影できる画像の一種であり、血管の走行や血液の流れを調べることを目的とした血管画像を指す
・MRAは脳血管の走行異常や小さな脳動脈瘤を見つけるのに優れているため、より正確な診断を行うためにはMRAを含めたMRI検査(MRI/MRA検査)を行うことが必要
・将来の脳梗塞のリスクを評価するためには、頭部MRI/MRAに加えて頸部MRAが有用
・脳ドックで受けるMRI・MRAの費用相場はおよそ3万円前後

脳ドックにおけるMRI/MRA検査とは?

脳ドックの必要性

脳ドックとは、画像などから脳の異常を早期発見することを目的とした専門ドックの名称です。基本的には頭部MRI/MRA検査や頸部超音波(エコー)検査などを用いて脳卒中(脳梗塞・くも膜下出血・脳出血)を始めとする脳血管疾患の兆候や発症リスクを調べる検査を行います。

脳血管疾患は1951年から1980年まで死因の第1位を占めていました*1。2021年の調査では死因第4位となり、過去50年間を見ると死亡率は減少傾向を示しています*1。しかし、最新の調査では65歳以上男性における要介護になった原因の第1位が「脳血管疾患(脳卒中)」となっており*2、脳卒中は健康寿命を損ねる可能性のある最大の要因といえます。

脳卒中の発症リスクは65歳を超えると急増します*3。一般的に症状がないまま進行していくため、脳ドックなどを利用して無症状の段階で早期発見、早期治療をすることが重要です。

MRIとMRAの違い

MRI(Magnetic Resonance Imaging)は磁気共鳴(MR)※という現象を利用して撮影された画像(Imaging)を指します。一方、MRA(Magnetic Resonance Angiography)とはMRI装置で撮影できる画像の一種であり、血管の走行や血液の流れを調べることを目的とした血管画像(Angiography)を指します。MRAは血管を立体的に観察することができるため、脳ドックでより正確な診断をするにはMRAを含めたMRI検査を行うことが必要です。

※磁気共鳴:身体の細胞内の水分子(プロトン)に電磁波をあてて共鳴させること

MRAのメリットとは

MRAのメリットは以下の通りです。

・脳血管の状態をより正確に評価することができる
・小さな脳動脈瘤(脳血管にできるこぶのことで、破裂することにより、くも膜下出血の原因になる)を見つけやすい
・CTとは異なり、造影剤を使用せずに血管を立体的に画像化できる
・受診者の負担が少ない
など

MRAは血管を3次元的にさまざまな方向から観察できるので、通常のMRI画像では見つけにくい位置にある小さな動脈瘤や、血管の走行異常などを確認しやすいです。また、CTでは血管をくわしく観察する際にヨード造影剤という薬剤を血管に注射しますが、MRAは性質上、薬剤を使用せずに血管画像を得られるため受診者の身体的負担が少ない検査です。

頭部MRI/MRAでわかる病気

頭部MRI/MRAでわかる病気の例を紹介します*4

【頭部MRI検査でわかる病気の例】
・脳梗塞、ラクナ梗塞(脳内の細い血管が詰まって起こる脳梗塞)
・脳出血
・脳腫瘍
・下垂体腫瘍(ホルモン機能を司っている下垂体という部位に発生する腫瘍)
・くも膜嚢胞、コロイド嚢胞、松果体嚢胞(しょうかたいのうほう)などの嚢胞性腫瘤(頭の中に液体の貯留した袋ができる病気)
など

認知症については頭部MRIのみで確定診断することはできませんが、脳の萎縮の仕方などから発症リスクを把握することができるようになってきています。

【頭部MRA検査でわかる病気の例】
・脳血管狭窄・閉塞(脳血管が細くなっている、もしくは詰まっている状態)
・未破裂脳動脈瘤(脳血管にできるこぶ)
・脳動静脈奇形(脳内の動脈と静脈がかたまりとなって直接つながってしまう病気) 
・海綿状血管腫(細い血管が集まって発生する血管奇形)
・もやもや病(内頸動脈と呼ばれる脳へつながる血管が細くなり、脳内の血液不足が起こりやすくなる病気)
など

脳ドックの頭部MRI/MRAでは、上記のように、自覚症状をともなわない軽度の脳卒中や脳腫瘍、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤が見つかることがあります。

また将来の脳梗塞のリスクを評価するためには、頭部の血管に加えて頸動脈(首から頭にかけて流れる動脈)が狭くなっていないかどうかを調べることも重要です。一部の医療施設では、頭部MRI/MRAに加えて頸部MRA検査(首のMR血管画像)を行っています。

【頸部MRA検査でわかる病気の例】
・頸動脈狭窄・閉塞(脳へつながる首の血管が細くなっている、もしくは詰まっている状態)
・動脈硬化の進行具合の評価
・脳梗塞の発症リスクの評価
など

脳ドックで受けるMRI/MRAの費用相場

脳ドックで受けるMRI/MRAの費用相場はおよそ3万円前後です。頭部MRAは脳ドックのMRIにセットで含まれているケースが多いですが、医療施設によってはオプションで追加料金がかかる場合があります。言い換えると、費用が安いプランという理由だけで脳ドックのプランを選んでしまうと、頭部MRAが含まれていない場合があるため注意が必要です。

頸部MRAも同様に、プランに含まれている場合とオプションで選択する場合とがあります。医療施設によっては頸部MRAに対応していない場合があるため、希望する場合は受けられるかどうかを医療施設に確認しておくのがよいでしょう。

脳ドックのMRI/MRA検査の流れ

一般的な脳ドックでのMRI/MRA検査は以下の流れで進みます。

【検査前日まで】
検査前日および検査当日の食事や行動に関する制限はありません。ただし、閉所恐怖症の方などで検査中に鎮静剤や睡眠剤を使用したい場合は事前に医師に処方してもらう必要があります。医療施設によっては鎮静剤や睡眠剤を使用できない場合があるため、早めに問い合わせておくのがよいでしょう。

【検査当日の流れ】
1)予約時間までに受付、問診票に記入
2)検診着に着替える。この際、身につけている金属や検査室に持ち込めないものはすべて外す
3)MRI/MRA検査
・MRI検査室に入室
・MRI装置の検査台に仰向けで寝て、頭部に専用の装置(コイル)をつける
・検査中はできるだけ頭や身体を動かさない
・MRI/MRA検査時間は30分前後
4)頸動脈超音波(エコー)検査など他の脳ドック検査を受ける
5)医師による結果説明(医療施設による)、結果報告書は1〜3週間後に郵送で届く
6)着替え、窓口で精算し終了

脳ドックのMRI/MRA検査の所要時間

脳ドックのMRI/MRA検査時間はおよそ30分前後ですが、MRAが含まれていないプランの場合には15〜20分程度と短い撮影時間になる場合があります。また、頸部MRAや認知症リスク評価が含まれているプランの場合はさらに5〜10分前後、検査時間が長くなる場合があります。

脳ドックのMRI/MRA受診時の注意事項

脳ドックで実施される頭部や頸部のMRI/MRA検査は、強い磁力を応用して撮影を行う検査です。そのため、安全に検査を受けるためにいくつかの注意事項があります。

まず、取り外しが可能な金属類は検査着に着替える際にすべて外します。たとえば、クレジットカード、携帯電話、ホックが付いているブラジャー、入れ歯などはMRI室に持ち込むことができません。MRI/MRA検査で外したほうがよい金属については、下記の記事にくわしくまとめています。

ペースメーカーや人工関節など身体から取り外すことのできない金属がある場合、MRI/MRA検査が受けられないことがあります。体内挿入物がMRI対応の非磁性体金属(チタン製)の場合は基本的に検査可能です。ただし、3テスラMRIといったMRI装置のなかでも非常に強力な磁力を利用している装置の場合は、非磁性体の金属を用いていても検査が困難な場合もあります。そのため体内金属がある場合にはMRI/MRA検査を受けられるかどうか事前に医療施設に確認をしてください。

そのほか、頭部MRI/MRA検査は頭部周囲を装置に包まれた状態で行われる検査のため、強い圧迫感を感じる場合があります。また装置の特性上、トントンガンガンといった工事現場のように大きな音がします。閉所恐怖症の方や頭部MRI/MRA検査をはじめて受ける方などで最後まで検査を受けられるか不安を感じている場合は、より圧迫感が少ないオープン型MRIを利用する方法もあります。

脳ドックを実施している医療施設を知りたい方はこちら。
https://www.mrso.jp/brain/

参考資料
*1.厚生労働省 令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況「結果の概要」
*2.内閣府 令和4年版高齢社会白書(全体版)第1章 第2節 2 健康・福祉
*3.厚生労働省 令和2年(2020)患者調査の概況「統計表」
*4.日本脳ドック学会「脳ドックのガイドライン2008(改訂・第3版)」

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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