脳ドック

オープン型MRIなら閉所恐怖症でも怖くない? 脳ドックのMRI検査を乗り切る方法を徹底解説

オープン型MRI 脳ドック
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

MRI/MRAは狭い空間で検査を受けるため、閉所恐怖症の方や初めて受ける方ほど、怖いというイメージを抱く傾向にあります。とくに脳ドックでは頭部がMRI装置に包まれて視界が非常に狭くなるため、恐怖心や圧迫感を抱きがちです。しかし、「オープン型MRI」であれば精神的負担を減らしてMRI検査を受けられます。この記事ではオープン型MRIのメリット・デメリットと、従来のトンネル型MRIの恐怖感を和らげるコツもあわせて紹介します。

★こんな人に読んでほしい!
・オープン型MRIについて詳しく知りたい方
・脳ドックに興味はあるが、閉所恐怖症もしくはMRI検査の圧迫感が怖いと感じている方
・やむを得ずトンネル型MRI検査を受けるが、なんとか乗り切りたい方

★この記事のポイント
・オープン型MRIは装置の開口部が広いため、トンネル型MRIより開放感がある
・オープン型MRIに向いているのは閉所恐怖症の方、小さな子ども、高齢者、体格の大きな方
・オープン型MRIは装置に使用している磁力がトンネル型MRIよりも弱いため画質が粗い場合があるが、診断に必要な一定の基準は満たしている
・トンネル型MRI検査への恐怖感を和らげるにはアイマスクや耳栓を持参するほか、音楽、残り時間のアナウンスなどを利用する方法などがある

閉所恐怖症の方でも脳ドックのMRIは受けられるのか?

脳ドックのMRIは脳卒中の早期発見に有用

厚生労働省が公開した人口動態統計によると、脳血管疾患は日本人死因の第4位です(2021年)*1。脳血管疾患には脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血などの脳卒中が含まれており、発症リスクは40代前半から増え始めて50代に急増します*2

脳卒中など脳に関わる疾患の早期発見を目的とした人間ドックが脳ドックです。脳ドックには頭部MRI/MRAや頸動脈超音波(エコー)検査、血圧脈波検査など複数の検査がありますが、なかでも頭部MRI/MRAは将来の脳卒中発症リスクや脳血管の狭窄、脳動脈瘤、脳腫瘍などを評価するために重要です。また近年はVSRAD(ブイエスラド)と呼ばれる早期アルツハイマー型認知症の評価があわせてできるコースもあります。

初期の脳卒中は症状がないことが多いため、40歳を過ぎたら頭部MRI/MRAを含めた脳ドックを定期的に受けましょう。なお、頭部MRA検査はMRI装置を使用するため、本記事ではMRIとして解説します。

MRI検査が怖いと感じる要因はおもに圧迫感

MRI検査は、造影剤を使用しなければ注射はないため、身体的負担はありません。しかしながら、MRI検査を怖いと感じる方は一定数います。MRIを怖いと感じやすい最大の要因は検査時の圧迫感です。一般的な頭部MRIでは頭部にカバー(ヘッドコイル)をかぶせた状態で、寝台がトンネル型のMRI装置の中へ入っていきます。加えて、頭が動かないようにバンドやクッションで固定をするため、狭いところが苦手な閉所恐怖症の方や体格の大きな方は身動きが取れないように感じてしまい、ストレスを強く感じる場合があります。

また、工事現場のように「ウィーン・カン・カン・カン」といった大きな音が苦手な方もいます。検査時は耳栓やヘッドフォンを渡され、装着できるようになっていることが多いですが、それでも人によっては気になります。

次項以降では、そういった方々へおすすめしたい「オープン型MRI」や、トンネル型MRIを乗り切るコツをご紹介します。

閉所恐怖症の方へ配慮した「オープン型MRI」を導入する医療施設が増えている

トンネル型MRIを怖いと感じる方がいることから、近年ではより開放感がある「オープン型MRI(オープンMRI、開放型MRI)」を導入する医療施設が増えています。オープン型MRIは装置が上下にわかれており、装置の間に横たわるような構造で開放的です。頭の周囲の空間が広く、左右も開いているので光が届きやすく明るい点も安心感があります。また、トンネル型にくらべて音が静かな設計になっており、大きな音が苦手な方にも優しい検査と言えます。

オープン型MRIのメリット・デメリットと向いている方・不向きな方

 オープン型MRIのメリットとデメリット

オープン型MRIを選ぶ際のポイントとなる、メリットとデメリットを解説します。

【メリット】
・撮影装置の開口部が広いため圧迫感が少ない
・トンネル型MRIよりも音が静か
・光が届きやすい構造のため、視界が明るい
・付き添いが受診者の横にいることが可能
・足や腰を曲げた比較的自由な体勢で検査を受けることが可能
・検査時間が15〜30分程度と短時間
など

【デメリット】
・トンネル型MRIよりも画質が落ちる場合がある
など

MRIは原理上、装置が有している磁力が強いほど細部の脳血管や小さな動脈瘤などを描出しやすい傾向があります。一般的なトンネル型MRIの装置は最高磁力強度が3.0T※または1.5Tなのに対し、オープン型MRIは0.2~0.4Tと比較的磁力が弱いため、やや画質が粗いことがあります*3。ただし、オープン型MRIであっても診断に必要な一定の基準は満たされているため、トンネル型MRIが怖くて受けられないという方はオープン型MRIを選択することをおすすめします。また近年では0.7〜1.2Tの高性能オープン型MRIも開発されています。

※T(テスラ):磁力を表す単位

オープン型MRIに向いている方

上記のメリット、デメリットをふまえて、オープン型MRIに向いているのは下記の方と言えます。

・閉所恐怖症の方
・仰向けの体勢保持が難しい高齢者
・付き添いが必要な小さな子ども
・大きな音が苦手な方
・体格の大きな方
など

MRIに対して「なんとなく怖い」という印象があり検査をためらっている方は、まずオープン型MRIで挑戦してみることをおすすめします。近年、オープン型MRIを導入している医療施設は増加していますが、事前に医療施設に問い合わせて確認しましょう。

オープン型MRIを受けられない方

オープン型MRIは開放感があるため、閉所恐怖症の方への負担が少ない検査ではありますが、重度の閉所恐怖症やパニック障害がある場合には検査が難しいこともあります。

またオープン型MRIは強力な磁気を利用した検査であるため、以下の方は検査を受けられない可能性があります。

・心臓にペースメーカーを装着している方
・体内に材質不明の金属が埋め込まれている方
・検査中の姿勢保持ができない方
・妊娠中、もしくは妊娠の可能性がある方
など

トンネル型MRIと同様に金属類は検査室に持ち込めないため、携帯電話やクレジットカード、アクセサリー類、貼り薬などは事前に更衣室で外す必要があります。その他、一部の化粧はMRI検査時に支障が出ることがあります。詳細は下記記事をご覧ください。

閉所恐怖症の方がトンネル型MRI検査を乗り切る方法

まずは予約時にMRIが苦手であることを伝えることが大事

やむを得ずトンネル型MRIで検査を受ける方、オープン型MRIで検査を受けられることになったものの不安が残る方は、まず予約時に閉所恐怖症であることを伝えましょう。事前に伝えておくことで医療施設のスタッフも余裕を持って対応できます。医療施設によっては下記の対応をしてもらえる場合があるため、可能かどうか事前に問い合わせてみるのもよいでしょう。

・アイマスクや耳栓を用意してもらう
・検査中に音楽を流してもらう
・検査中に残り時間のアナウンスをしてもらう
・検査中、付き添いに手をつないでもらう
・検査中に間接照明や体温上昇を防ぐ送風機能を使ってもらう
・検査室の様子を事前見学させてもらう
・鎮静剤や睡眠薬を処方してもらう
など

鎮静剤や睡眠薬は事前に医師から処方してもらい適切なタイミングで薬を飲む必要があるため、希望する場合はなるべく早く医療施設に伝えましょう。検査日に伝えても対応してもらえない可能性があるため注意が必要です。

MRI検査の精神的負担を軽減するための対策とコツ

MRI検査の受診当日、自身でできる対策やコツは下記の通りです。

・検査室のスタッフに閉所恐怖症であることを伝える
・検査直前に水を飲む
・耳栓やアイマスクを持参する
など

アイマスクはMRI装置が頭部に移動してくる前に着用しておきましょう。普段使用しているハンカチやタオルを検査中に握ることで気持ちが落ち着く場合もあります。ただし、検査室へ持ち込む場合は必ず金属類がついていないことを確認してください。

MRI検査を途中でやめた場合どうなるか

どうしても途中でMRIをやめたいときは、検査時に渡される緊急用のブザーを握れば中断することが可能です。その場合はCT検査や頸動脈超音波(エコー)検査など、ほかの検査で代用できるかどうかを医師と相談して決めることになります。ただし、CT検査で代用する場合には血管の走行を確認するために造影剤の注射が必要であったり、頸動脈超音波(エコー)検査では頭部の状態を評価できなかったりと制限があるため、完全に代用できるわけではないことを理解しておくことが重要です。また、医療施設によっては検査を中断しても、休憩をはさんで検査を再開できる場合があります。

オープン型MRIでチャレンジしてみよう

オープン型MRIを利用したり、前述したコツ・対策を実践してみたりすることで、意外とラクに受けられたというケースは少なくありません。「最後まで受けられないかもしれない」と不安を感じている方も、勇気を出してまずはチャレンジしてみてください。

また、導入している医療施設はまだ多くないものの、オープン型MRIのほかにも閉所恐怖症の方へ配慮したMRI装置はあります。検査中に映像が楽しめる“映像型MRI”や、比較的検査空間が広い大口径の“大型トンネル型MRI”などを導入している医療施設もあるため、探して問い合わせてみましょう。

参考資料
*1.厚生労働省 令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況「第6表 性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」
*2.厚生労働省 平成30年版厚生労働白書 図表1-2-4 脳血管疾患患者数の状況
*3.八杉幸浩「治療対応 MRI の現状と将来」日本医療機器学会誌Vol.81, No.4(2011年)

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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