定期的な血圧の測定は、重大な病気や症状を早期発見するために重要です。高血圧は放っておくと、脳卒中や心臓病、腎臓病などの病気のリスクを高めます。また、低血圧は立ちくらみやめまいなどの症状があり、生活に支障をきたすことがあります。本記事では、血圧の正常値や高血圧・低血圧の基準値、さらに各年代ごとの血圧平均値や高血圧・低血圧の改善方法について解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・血圧測定の結果の見方を知りたい方
・測定の結果、高血圧または低血圧と判明した方
・脳卒中や心臓病、腎臓病のリスクが心配な方
★この記事のポイント
・血圧を定期的に測定し、高血圧や低血圧を早期に発見して重大な病気や症状を予防することが大切
・診察室で測定したときの正常血圧は120/80mmHg未満、高血圧は140/90mmHg以上
・加齢にともない収縮期血圧は上昇する
・女性は男性よりも血圧が低い傾向にある
・高血圧や低血圧を改善するためには、健康的な食事や運動など、生活習慣の改善が大切
目次
血圧の測定は、重大な病気や症状を予防するために重要
血圧は血液が心臓から全身へ送り出される際、血管壁に与える圧力であり、「収縮期血圧」と「拡張期血圧」の2つの値で表されます。収縮期血圧とは、“上の血圧”や“最高血圧”とも呼ばれるもので、心臓が収縮して血管に最も強い圧力がかかった際の血圧の値です。一方、拡張期血圧は、“下の血圧”や“最低血圧”とも呼ばれ、心臓が拡張した際の血圧の値を指します*1。血圧の異常は全身状態や症状に影響を及ぼすため、定期的な血圧の測定が大切です。
血圧には正常か高血圧かを分類するための基準値が定義されており、医療施設で血圧を測定した際に、収縮期血圧が140mmHg(ミリメートル・エイチジー)以上の場合、または拡張期血圧の血圧が90mmHg以上の場合、あるいはその両方を満たす場合、高血圧と診断されます*2。
高血圧になると、血管にかかる負担が大きくなり、脳卒中や心臓病、腎臓病などの発症リスクを増加させることが知られています*3。脳卒中とは、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称です。一方、低血圧は立ちくらみやめまい、倦怠感などの症状を引き起こすことがあり、重症化すると日常生活に支障をきたします*2。高血圧の患者数は日本で4300万人といわれるほど多い生活習慣病で*1、低血圧は若い女性に多くみられます*4。そのため、幅広い年齢層で定期的に血圧を測定する必要があり、高血圧や低血圧を早期に発見して、重大な病気や症状を予防することが大切です。
血圧の正常値や、高血圧と低血圧の基準値は?
診察室測定時の正常血圧は120/80mmHg未満、高血圧は140/90mmHg以上
血圧の正常値や高血圧の基準値は、医療施設で測定する「診察室血圧」と自宅で測定する「家庭血圧」に分けられます。診察室血圧は病院やクリニックの診察室で測定することで、緊張により数値が高めとなる“白衣高血圧”になりやすいことから、家庭血圧よりも基準値が高めに設定されています*3。最近の研究では、家庭血圧のほうが将来的な病気の予測能に優れていることがわかってきており、脳卒中や心臓病などの発症を予測する方法として有用です*5。診察室血圧と家庭血圧の値が大きく異なっていた場合の診断では、家庭血圧の数値が重視されます*3。下記は血圧の分類とその基準値です。
正常血圧
日本高血圧学会によると、正常血圧は診察室血圧では収縮期血圧/拡張期血圧がいずれも120/80mmHg未満で、家庭血圧では115/75mmHg未満です*3。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
---|---|---|
正常血圧 | 収縮期:120mmHg未満 拡張期:80mmHg未満 | 収縮期:115mmHg未満 拡張期:75mmHg未満 |
正常高値血圧・高値血圧
正常血圧に比べて収縮期血圧が高く、診察室血圧で120~129mmHg、家庭血圧で115~124mmHgの方は「正常高値血圧」と診断されます*3。また、高血圧の基準にはあてはまりませんが、収縮期血圧/拡張期血圧の両方あるいはどちらか一方が、診察室血圧で130/80mmHg以上、家庭血圧で125/75mmHg以上の方は「高値血圧」と診断されます。いずれの場合も、高血圧でなくとも正常血圧に比べると、正常高値血圧、高値血圧の順に脳卒中や心臓病を発症するリスクは高まり、今後高血圧になるリスクも高いためです*3。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
---|---|---|
正常高値血圧 | 収縮期:120~129mmHg 拡張期:80mmHg未満 | 収縮期:115~124mmHg 拡張期:75mmHg未満 |
高値血圧 | 収縮期:130~139mmHg 拡張期:80~89mmHg | 収縮期:125~134mmHg 拡張期:75~84mmHg |
※高値血圧は、収縮期血圧と拡張期血圧のどちらか一方があてはまる場合も診断される
高血圧
日本高血圧学会によると、高血圧の基準値は診察室血圧では収縮期血圧と拡張期血圧の両方、あるいはどちらか一方が140/90mmHg以上、家庭血圧では135/85mmHg以上です*3。高血圧の中でも、血圧の値が高くなるごとに「I度高血圧」「II度高血圧」「III度高血圧」と分類されており、脳卒中や心臓病のリスクはI度からIII度の順に高まります*3。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
---|---|---|
I度高血圧 | 収縮期:140~159mmHg 拡張期:90~99mmHg | 収縮期:135~144mmHg 拡張期:85~89mmHg |
II度高血圧 | 収縮期:160~179mmHg 拡張期:100~109mmHg | 収縮期:145~159mmHg 拡張期:90~99mmHg |
III度高血圧 | 収縮期:180mmHg以上 拡張期:110mmHg以上 | 収縮期:160mmHg以上 拡張期:100mmHg以上 |
※I度~III度高血圧は、収縮期血圧と拡張期血圧のどちらか一方があてはまる場合も診断される
収縮期高血圧
収縮期血圧だけが高い方は「収縮期高血圧」と診断され、とくに高齢者に多く認められます*1。拡張期血圧が低くても、高齢者では収縮期血圧が脳梗塞や心筋梗塞のリスク因子であることがわかっているため、注意が必要です。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
---|---|---|
(孤立性)収縮期高血圧 | 収縮期:140mmHg以上 拡張期:90mmHg未満 | 収縮期:135mmHg以上 拡張期:85mmHg未満 |
低血圧は収縮期血圧100mmHg未満とするのが一般的
低血圧は立ちくらみやめまいなど、さまざまな症状がみられるもので、朝に症状が出やすいことが特徴です*7。低血圧の基準は、高血圧のように学会のガイドラインなどで明確に決定されていませんが、収縮期血圧が100mmHg未満の場合を低血圧とするのが一般的です*4,*6。ただし、血圧が100mmHg未満であっても低血圧の症状が認められないこともあるため、医師によって低血圧の基準が異なる場合があります。
参考:海外の学会や、国内の他団体が定めた血圧の基準値は?
国際高血圧学会(ISH)のガイドラインが定める血圧の基準値
国際高血圧学会(ISH)のガイドラインでは、高血圧の基準値を日本高血圧学会の基準と同じ診察室血圧で140/90mmHg以上を推奨しています*8。高血圧の基準が140/90mmHg以上であることは、世界中の共通認識であることがわかります。一方、ISHのガイドラインにおける正常血圧の基準値は診察室血圧で130/85mmHg未満と、日本の基準値120/80mmHg未満と比べて寛容に設定されています*8。
日本人間ドック学会が定める血圧の基準値
日本人間ドック学会が定める高血圧の基準値は、下表のとおりです。判定区分は4つに分類されており、日本高血圧学会のガイドラインの分類とは少し異なります。
<日本人間ドック学会の高血圧基準値>*9
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
---|---|---|
A:異常なし※ | 129mmHg以下 | 84mmHg以下 |
B:軽度異常 | 130~159mmHg | 85~99mmHg |
C:要再検査・生活改善 | 140~159mmHg | 90~99mmHg |
D:要精密検査・治療 | 160mmHg以上 | 100mmHg以上 |
日本人間ドック学会で要精密検査・治療に分類される血圧の値は160/100mmHg以上で、異常なし(基準範囲)は129/84mmHg未満であり、日本高血圧学会が定める高血圧の基準値140/90mmHg以上、正常血圧120/80mmHg未満と比較すると、分類名が異なり、基準値も寛容に設定されていることがわかります。
しかし、血圧の数値は、正常血圧の120/80mmHg未満より高くなるにつれて、脳卒中や心臓病の発症リスクが高くなることが多くの研究で明らかになっているため、解釈には注意しましょう*3。
海外の米国心臓協会(AHA)や英国心臓財団(BHF)などが定める低血圧の基準値
低血圧の基準は、海外の米国心臓協会(AHA)や英国心臓財団(BHF)などの団体では、収縮期血圧/拡張期血圧が90/60mmHg未満とされており、日本の一般的な低血圧の基準値とされている収縮期血圧100mmHg未満に比べて厳しく設定されています*10,*11。
年代別の血圧の平均値は?高血圧の方はどれくらいいる?
自身の年代における血圧の平均値や高血圧の割合を把握しよう
年齢とともに血圧は上昇します。これは血管の弾力性が失われて硬くなる「動脈硬化」によるもので、加齢にともない収縮期血圧は高く、拡張期血圧は低くなるため、高齢者では収縮期高血圧が多く見られます*3。
19~64歳の青壮年期では、男性よりも女性のほうが血圧が低い傾向にありますが、更年期以降は女性でも血圧が高くなる方が多く、70歳代では明らかな性差は見られなくなります*12。
2019年の国民健康・栄養調査の結果をもとに、各年代の男女別、血圧の分類別の平均値、高血圧の割合を以降にまとめました。自身の年代における平均値や高血圧の割合を把握し、生活改善に活かしましょう。自身がどの血圧の分類にあてはまるかは、先述の「血圧の正常値や、高血圧と低血圧の基準値は?」でご確認ください。
20代の血圧の平均値と高血圧の割合
20代の血圧の平均値は、収縮期血圧/拡張期血圧が男性では115.3/67.7mmHg、女性では105.7/63.8mmHgでした*13。血圧の分布は下表のとおりで、高血圧の割合は男性が7.1%、女性が0%でした。
<20代の血圧の分布*13>
男性(総数:56人) | 女性(総数:53人) | |
---|---|---|
正常血圧 | 69.6% | 84.9% |
正常高値血、高値血圧 | 23.2% | 15.1% |
I度高血圧 | 7.1% | 0.0% |
II度高血圧 | 0.0% | 0.0% |
III度高血圧 | 0.0% | 0.0% |
収縮期高血圧(再掲) | 7.1% | 0.0% |
30代の血圧の平均値と高血圧の割合
30代の血圧の平均値は、収縮期血圧/拡張期血圧が男性では117.3/73.7mmHg、女性では107.9/66.3mmHgでした*13。血圧の分布は下表のとおりで、高血圧の割合は男性が6.3%、女性が3.3%でした。
<30代の血圧の分布*13>
男性(総数:64人) | 女性(総数:121人) | |
---|---|---|
正常血圧 | 56.3% | 83.5% |
正常高値血、高値血圧 | 37.5% | 13.2% |
I度高血圧 | 3.1% | 2.5% |
II度高血圧 | 1.6% | 0.0% |
III度高血圧 | 1.6% | 0.8% |
収縮期高血圧(再掲) | 0.0% | 0.0% |
40代の血圧の平均値と高血圧の割合
40代の血圧の平均値は、収縮期血圧/拡張期血圧が男性では125.8/81.3mmHg、女性では114.3/71.2mmHgでした*13。血圧の分布は下表のとおりで、高血圧の割合は男性が30.9%、女性が9.0%でした。
<40代の血圧の分布*13>
男性(総数:123人) | 女性(総数:221人) | |
---|---|---|
正常血圧 | 30.1% | 63.8% |
正常高値血、高値血圧 | 39.0% | 27.1% |
I度高血圧 | 24.4% | 6.8% |
II度高血圧 | 4.9% | 1.8% |
III度高血圧 | 1.6% | 0.5% |
収縮期高血圧(再掲) | 6.5% | 4.5% |
50代の血圧の平均値と高血圧の割合
50代の血圧の平均値は、収縮期血圧/拡張期血圧が男性では131.7/82.0mmHg、女性では123.7/75.4mmHgでした*13。血圧の分布は下表のとおりで、高血圧の割合は男性が38.8%、女性が19.7%でした。
<50代の血圧の分布*13>
男性(総数:134人) | 女性(総数:234人) | |
---|---|---|
正常血圧 | 23.9% | 39.3% |
正常高値血、高値血圧 | 37.3% | 41.0% |
I度高血圧 | 28.4% | 15.0% |
II度高血圧 | 7.5% | 3.8% |
III度高血圧 | 3.0% | 0.9% |
収縮期高血圧(再掲) | 11.9% | 9.0% |
60代の血圧の平均値と高血圧の割合
60代の血圧の平均値は、収縮期血圧/拡張期血圧が男性では135.8/78.5mmHg、女性では131.0/76.7mmHgでした*13。血圧の分布は下表のとおりで、高血圧の割合は男性が39.1%、女性が29.9%でした。
<60代の血圧の分布*13>
男性(総数:266人) | 女性(総数:355人) | |
---|---|---|
正常血圧 | 13.5% | 20.6% |
正常高値血、高値血圧 | 47.4% | 49.6% |
I度高血圧 | 29.3% | 22.8% |
II度高血圧 | 7.9% | 6.5% |
III度高血圧 | 1.9% | 0.6% |
収縮期高血圧(再掲) | 24.4% | 20.6% |
70代以上の血圧の平均値と高血圧の割合
70代以上の血圧の平均値は、収縮期血圧/拡張期血圧が男性では135.8/73.1mmHg、女性では136.1/73.0mmHgでした*13。血圧の分布は下表のとおりで、高血圧の割合は男性が36.5%、女性が42.8%でした。
<70代の血圧の分布*13>
男性(総数:446人) | 女性(総数:528人) | |
---|---|---|
正常血圧 | 12.8% | 15.3% |
正常高値血、高値血圧 | 50.7% | 41.9% |
I度高血圧 | 26.5% | 34.5% |
II度高血圧 | 9.4% | 7.4% |
III度高血圧 | 0.7% | 0.9% |
収縮期高血圧(再掲) | 30.7% | 37.1% |
自宅でも血圧を測ろう! 正しく測るためのポイントは?
自宅で定期的に血圧を測定して家庭血圧の数値を把握することで、生活習慣の改善に役立てることができます。また現在高血圧を治療中の方は、血圧測定により治療の効果を正確に把握でき、服薬を継続する際のモチベーション向上につながる可能性があります。
血圧は変動しやすいため、自宅で血圧を測定するときのポイントとして、静かな部屋で安静を保ち、座った姿勢で測定することが大切です。歩いたあとなどに測定する場合は、座って1~2分間経ってから測定しましょう*1。高血圧の診断や治療効果の判定に用いられる家庭血圧は、朝と夜の1日2回、それぞれ5~7日間測定した平均値を用いることが推奨されています*3。なお、家庭用の血圧計は手首で測るものもありますが、上腕にカフ(腕帯)を巻きつけるタイプのほうがより正確に測定できます*3。
<自宅で血圧を測定するときのポイント>*1
・少なくとも朝と夜、1日2回は測定し記録する
・快適な温度の静かな環境で測定する
・カフの位置はなるべく心臓と同じ高さに合わせる
・足は組まずにゆったり座り、1~2分安静を保ってから測定する
・測定中は、話したり動いたりしない
・飲食や飲酒・喫煙の直後は測定を避ける
測定に適した時間帯は、朝は起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前、夜は就寝前ですが、厳密に測定時間を決めるよりも、まずは継続して測定することが大切です*3。一方で、仕事中などストレスの多い時の血圧も測定し、数値を確認しておくとよいでしょう*1。
高血圧を改善したい方向けの治療目標値と対策
高血圧の治療目標値は、年齢や病気の有無で異なる
高血圧の治療は、高血圧が続くことによって起こる脳卒中や心臓病などの疾患の悪化を予防したり、進展や再発を抑制したりするために行われます。治療方法は血圧を下げる薬(降圧薬)による薬物治療と生活習慣の改善の2つに大きく分けられ、血圧をどこまで下げるかの治療目標値は年齢などによって異なります*3。
日本高血圧学会によると、治療目標値は診察室血圧では収縮期血圧/拡張期血圧が75歳未満で130/80mmHg未満、75歳以上で140/90mmHg未満、家庭血圧では75歳未満で125/75mmHg未満、75歳以上で135/85mmHg未満とされています*3。ただし、脳血管障害や冠動脈疾患、慢性腎障害(CKD)、糖尿病などを合併している場合は、治療目標値が異なることがあります*1。
<年齢別の治療目標値*3>
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
---|---|---|
75歳未満(成人) | 収縮期:130mmHg未満 拡張期:80mmHg未満 | 収縮期:125mmHg未満 拡張期:75mmHg未満 |
75歳以上 | 収縮期:140mmHg未満 拡張期:90mmHg未満 | 収縮期:135mmHg未満 拡張期:85mmHg未満 |
高血圧の治療の場合は、血圧を下げすぎても副作用などで身体の状態が悪くなってしまうことがあります*3。そのため、正常血圧は120/80mmHg未満ですが、高血圧の治療時に目指す血圧は上記表の治療目標値が設定されています。かかりつけ医と相談しながら、目標値に向けて治療を進めるようにしましょう。
高血圧には、食事や運動などの生活習慣の改善が大切
高血圧の治療だけでなく予防においても、生活習慣の改善は大切です。食事は、食塩の量を制限し、カリウムを摂取するために野菜や果物を積極的に摂りましょう。日本人の食塩摂取量は、2019年の国民健康・栄養調査で男性10.9g/日、女性9.3g/日と報告されており、依然として多いのが現状です*13。減塩食をおいしくとるために、お酢や柑橘類の酸味、香辛料、香味野菜をうまく取り入れましょう*14。
また、有酸素運動による降圧効果が知られており、毎日30分行うことがおすすめです*15。肥満や飲酒、喫煙は高血圧と関係することがわかっているため、控えましょう。
<高血圧の方の日常生活のポイント*3>
・減塩する(1日あたり食塩6g未満)
・飽和脂肪酸やコレステロールの多い食品は控える
・野菜や果物を積極的に取り入れる
・有酸素運動を行う(1日に30分もしくは週に180分以上)
・適正体重を維持する(BMI値25未満)
・お酒を控える(1日あたり男性は日本酒1合もしくはビール中瓶1本以下、女性はその半分以下)
・禁煙する
ただし、糖尿病や腎障害など持病のある方はかかりつけ医の指示に従ってください。
低血圧を改善したい方向けの対策
低血圧の治療目標値はなく、症状の程度によって治療する
低血圧の治療は、治療目標値がなく症状の有無により判断されます。たとえば、血圧が80mmHg台でも無症状であれば、治療はせず経過観察となります*6。
低血圧の症状は、立ちくらみやめまい、立っていると気持ち悪くなる、ひどくなると倒れる、少し動くだけで動悸や息切れがする、疲れやすいなどです。これらの症状が気になり、低血圧が疑われる方は、医師に相談しましょう*16。
早寝早起きやバランスのよい食事、適度な運動を取り入れよう
低血圧の方は、立ちくらみやめまいが日常生活に影響を及ぼさないように工夫して過ごしたり、低血圧の症状を和らげるために生活習慣を改善したりすることが大切です。
急に立ち上がると低血圧の症状が生じやすいため、ゆっくりと立ち上がり、症状が起きてもいつでも座れるよう低い姿勢をとるようにしましょう。また、低血圧の症状を和らげるために、早寝早起きで十分な睡眠をとり、朝食を必ずとることが大切です。食事は、良質なタンパク質、野菜、海藻、豆製品を摂るなどバランスのよい食事を心がけ、とくに夏場は脱水を防止するため十分な水分を摂りましょう。運動は、散歩や水中ウォーキングなどにより下半身を鍛えたり、入浴時の湯を少し熱めにして肩までつかったりすることで血流改善が期待できます*17。
<低血圧の方の日常生活のポイント*17>
・ゆっくり立ち上がる
・早寝早起きし、十分な睡眠をとる
・栄養バランスのよい食事を心がける
・朝食は必ず食べる
・お酒を控える
・夏場は水分を十分に摂る
・適度な運動や入浴で血流改善を促す など
ただし、循環器や呼吸器に疾患のある方など、持病がある場合はかかりつけ医の指示に従ってください。
高血圧の方は、脳ドックや心臓ドックの受診も検討しよう
高血圧を放っておくと、血管への負担がかかり、脳卒中や心臓病を発症するリスクが高まります。脳卒中や心臓病は50代以降に発症することが多いですが、早い方では30代でも発症することがあります。不安な方は、自身の健康状態を把握するために脳ドックや心臓ドックなどの受診を検討するとよいでしょう。
脳ドックや心臓ドックの検査内容や費用、受けたほうがよい人の特徴などは下記の記事で詳しく解説しています。
参考資料
*1.日本高血圧学会「高血圧の話」2019年
*2.日本心臓財団 高血圧・低血圧とは
*3.日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
*4.日本医師会 見逃されやすい低血圧
*5.日本心臓財団「大迫研究30年の歩みと成果―家庭血圧に関する知見を中心に」
*6.日本心臓財団 検査や治療を必要とする低血圧とはどういうものですか
*7.日本医師会 低血圧の症状は?
*8.Thomas Unger, et al. 2020 International Society of Hypertension Global Hypertension Practice Guidelines. Hypertension, 2020; 75(6)
*9.日本人間ドック学会「判定区分 2023年度版」
*10.American Heart Association. Low Blood Pressure – When Blood Pressure Is Too Low
*11.British Heart Foundation. Low blood pressure
*12.日本循環器学会「循環器領域における性差医療に関するガイドライン(JCS2010)」
*13.厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」
*14.厚生労働省 e-ヘルスネット 栄養・食生活と高血圧
*15.厚生労働省 e-ヘルスネット 高血圧症を改善するための運動
*16.長寿科学振興財団 健康長寿ネット 低血圧
*17.日本医師会 低血圧の対策は?