健康診断

健康診断の所要時間はどれくらい? 種類別の時間目安と検査内容、当日の注意事項、効率よく受けるヒントを紹介

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吉井 友季子
こちらの記事の監修医師

医療法人優美会吉井クリニック 院長

健康診断の所要時間は1~2時間程度が目安ですが、検査項目数や胃の検査が含まれる場合は所要時間が変わってきます。健康診断の種類ごとの所要時間の目安と待ち時間を短縮するヒント、受診前後の注意事項などをご紹介します。

★こんな人に読んでほしい!
・健康診断を受けるのが初めての方
・健康診断の所要時間が知りたい方
・健康診断の所要時間を短縮したい方

★この記事のポイント
・健康診断には会社員が年に1回受ける定期健診、40歳以上が対象の特定健診などさまざまな種類がある
・健康診断の種類によって検査項目が異なり、検査項目数が多いほど所要時間は長くなる
・前日から食事制限等があることが多いので、スケジュールに気をつけよう
・胃内視鏡(胃カメラ)検査を受ける場合は、所要時間が1~2時間延びることもある
・待ち時間を減らしたいなら、繁忙期を避けた午後の時間帯の受診を検討してみよう

健康診断の種類

定期健康診断

定期健康診断は、会社員の方が年に1回受ける健康診断のことです。労働安全衛生法により企業(会社)は常時勤務する従業員に健康診断を実施すること、また従業員は健康診断を受けることが義務づけられています*1。正社員だけでなくパート・アルバイトでも期間を定めない労働契約を結んでいるまたは1年以上勤務する予定があり、かつ1週間の労働時間数が所定労働時間数の4分の3以上など、一定の条件を満たす場合には定期健康診断の対象となります*2。定期健康診断の費用は原則として会社負担ですが*3、オプション検査などは個人の負担となる場合もあります。

雇入時健康診断

雇入時(やといいれじ)健康診断は、就職時に受ける健康診断です。会社は新卒採用・中途採用に関わらず、常時勤務する従業員を雇い入れる際に実施の義務があり、入社予定の従業員には受診義務があります*1。実施義務が会社にある以上、健康診断実施のタイミングが入社前・入社後に関わらず、費用は会社負担が妥当であると考えられます*3

特定健診(特定健康診査)

特定健診(特定健康診査)は、国が定めるメタボリックシンドロームに着目した健康診断です。対象は40歳以上75歳未満で、メタボリックシンドロームとそのリスクが高い方を早期に見つけ、該当者には特定保健指導を行うことで心疾患や脳卒中などの生活習慣病およびその原因となる動脈硬化などを予防するのが狙いです*4。特定健診は国民健康保険や健康保険組合といった保険事業者に実施の義務があります。該当年齢の会社員の場合、年1回の定期健康診断に特定健診の項目が含まれていることが多いです。国民健康保険の加入者は自治体などが実施する特定健診を受けることができ、その費用は国や各自治体が一部負担するため、受診者は無料または安価で受診できます。

被用者保険ごとに行っている独自の健康診断

日本の公的医療保険には、自営業の方やフリーランスの方などが加入する「国民健康保険」と、会社に常時勤める方が加入する「被用者保険」があります。被用者保険には、従業員数の多い企業が単独あるいは同種同業の複数社で組織する「健康保険組合」と、中小企業が加入する「全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)」、公務員や教職員が加入する「共済組合」などがあり、独自の健康診断を実施しているケースがあります*5

代表的なものが、被用者保険のなかでも加入者数の多い協会けんぽが実施している「生活習慣病予防健診」です*6。35歳から74歳までの加入者本人を対象に年1回実施している健康診断で、定期健康診断の必須項目のほかに胃がん・肺がん・大腸がん検診などをセットで受けられます*6,*7。生活習慣病予防健診を定期健康診断として行う場合には、必須項目に該当する費用は基本的に会社が負担しますが、がん検診など一部は受診者の自己負担となるケースがあります。

医療保険の種類、健康診断の費用については下記記事もご参照ください。

健康診断の種類別、検査項目比較表

健康診断の所要時間は医療施設の混雑状況のほか、検査項目数によっても変わります。前述の「健康診断の種類」で紹介した4つの健康診断の検査項目数を図で比較すると下記のようになります*1,*4,*7

定期健康診断 雇入時健康診断 特定健診 生活習慣病予防健診(協会けんぽ)※
問診・診察等 問診
身長
体重
腹囲
BMI・標準体重
血圧
胸部聴診・腹部触診
視力・聴力
眼底検査
【血液検査】 貧血・血液一般 血色素量
赤血球数
白血球数
ヘマトクリット
【血液検査】 肝機能 GOT(AST)
GPT(ALT)
γ-GTP
【血液検査】 血中脂質 LDLコレステロール
HDLコレステロール
中性脂肪
【血液検査】 代謝系 血糖
血清尿酸
【尿検査】 尿・腎機能 尿糖
尿蛋白
尿潜血
血清クレアチニン
心機能 心電図
胸部X線(レントゲン)検査
喀痰検査
胃X線(レントゲン)検査
胃内視鏡(胃カメラ)検査 ※胃内視鏡を行った場合は胃X線の実施なし
大腸 便潜血検査
直腸検査

◯必須項目 ▲医師の判断によって省略可 ■医師が必要とした場合に実施 -実施なし
※生活習慣予防健診は一般健診の必須項目を記載

基本的には実施する検査が多いほど、健康診断の所要時間は長くなります。とくに協会けんぽが実施する生活習慣病予防健診に含まれる胃の検査の方法について、X線(レントゲン)検査ではなく胃内視鏡(胃カメラ)検査を選択した場合、所要時間が大きく変わるので注意が必要です。胃の検査に関しては後述の「バリウム、胃カメラを行った場合の受診後の注意点」でも解説します。

健康診断の種類ごとの所要時間の目安

定期健康診断

【所要時間の目安】1〜1.5時間
会社が実施する年1回の定期健康診断では、上記の図のように血液検査、心電図、胸部X線(レントゲン)などが医師の判断で省略されることがあり、その場合は比較的短時間で終了することがあります。ただし20歳、25歳など特定の年齢や節目年齢で受診が必須となる検査もあります。事前に配布される案内などで検査項目を確認しておきましょう。オプションでがん検診を同時に受ける場合は、全体で2時間程度を所要時間の目安としておくとよいでしょう。

特定年齢や節目年齢による必須項目(省略不可)は下記の通りです。
・20・25・30歳:胸部X線(レントゲン)検査
・35歳・40~74歳:特定健診の検査に該当する項目

雇入時健康診断

【所要時間の目安】1〜1.5時間
雇入時(やといいれじ)健康診断の検査項目は、喀痰検査の実施がない以外は定期健康診断と同じです。定期健康診断との違いは、医師の判断で省略できる項目がない点です。そのため、所要時間は省略項目のない定期健康診断と同程度、省略ありの定期健康診断よりはやや時間がかかると考えておくとよいでしょう。

特定健診

【所要時間の目安】1〜2時間
40歳以上74歳未満の方が対象となる特定健診の検査項目は、身体計測(腹囲が追加)と血液検査、尿検査が基本となっており、医師が必要とした場合に心電図、眼圧検査が行われます。それほど時間を要さない検査が中心であることから、1時間以内に終了することもあります。会社員の方は、年1回の定期健康診断に特定健診の項目が含まれているケースが多く、所要時間も定期健康診断の検査項目数に準じた時間になります。

生活習慣予防健診(協会けんぽ加入者向け)

【所要時間の目安】1.5〜3時間
協会けんぽが実施している生活習慣病予防検診は、定期健康診断や特定健診よりも検査項目数が多くなっています。胃がんと大腸がんの検査が実施される点が特徴であり、胃の検査自体の所要時間はX線(レントゲン)を選択した場合が15分程度、内視鏡(胃カメラ)を選択した場合は30分~1時間程度が全体の検査時間に上乗せされます。なお、大腸の検査は事前に採取した便を調べる便潜血検査を基本として行うので、所要時間が延びることはありません。胃の検査に関しては「バリウム、胃カメラを行った場合の受診後の注意点」でも解説します。

健康診断当日の注意事項

飲食・喫煙・運動など前日からの注意事項まとめ

飲食は血液検査や胃の検査に影響するため、健康診断の前日夜から制限されることが多いです。「夕食は21時頃まで」あるいは「検査の10時間前まで」といった医療施設の指示を守りましょう。絶食中も水は飲んでかまいませんが、アルコールは代謝に個人差があるため、基本的に前日の飲酒は控えます

また、ビタミンを多く含むドリンクやサプリメントは尿検査に影響するため、検査の数日前から控えたほうがよいでしょう。持病があり服薬中の方は、事前に主治医に相談してください。とくに糖尿病の薬は絶食中に使用すると低血糖を起こす危険があるので、注意が必要です。また、前日の激しい運動は血液検査に、当日の喫煙は血圧などに影響を及ぼすため、控えたほうがよいとされています。

当日、体調不良や生理になったら

健康診断の当日に、延期したほうがよいか迷いがちな2つのケースを紹介します。

風邪のような症状がある場合

健康診断の前から、あるいは当日になって咳・鼻水・発熱など風邪のような症状を自覚した場合は、延期する、しないを自己判断せずに、医療施設に問い合わせをしましょう。

生理が始まった場合

生理期間中に尿検査や便潜血検査を受けると、正確な検査結果が得られないことがあります。そのため、当日はその他の検査を受け、尿検査や便潜血検査は生理終了後にあらためて提出するなどの対応をする医療施設もあります。当日になって予期せず生理が始まった場合は、医療施設に着く前に問い合わせをしましょう。

待ち時間にスマホを使っても問題ない?

スマートフォン(携帯電話)、タブレット、パソコンの持ち込みや使用については、下記のようなルールを設けている医療施設がほとんどです。

・使用できるエリアを定めている
・使用してもよいが通話は禁止
・医療機器のそばでは使用しない
・検査室などへは持ち込み禁止

電子機器の持ち込みや使用の規則は医療施設によって異なるので、当日の待ち時間に仕事をしたい場合は、事前に確認しておきましょう。待ち時間対策としては、電子機器以外にも本などを用意しておくとよいでしょう。

バリウム、胃カメラを行った場合の受診後の注意点

健康診断に胃の検査が含まれている、あるいはオプションなどで胃がん検診を追加した場合には、受診後にも下記のような注意事項があります。

胃X線(レントゲン)検査

胃X線(レントゲン)検査は、バリウム(X線を吸収する造影剤)を飲んでから撮影します。バリウムは消化管で吸収されないので人体には無害ですが、検査後はバリウムを排出するための下剤が処方されます。検査後はトイレが近くなることを考慮して、交通機関を利用しての外出や長時間のミーティングを避けるなど、無理のない予定を組むようにしましょう。検査後はバリウムの排出を促すために水を多く飲むとよいですが、アルコールやカフェインなど利尿効果のあるものは、尿に水分をとられてバリウムが固くなるため避けましょう。

胃内視鏡(胃カメラ)検査

経口(口からカメラを挿入する方法)で検査する場合、鎮静剤や鎮痛剤を使用して喉に麻酔をします。検査後は麻酔が切れるまで30分〜1時間は飲食ができません。少量の水を飲んでみて、むせないことを確認したあとに飲食を再開します。使用した薬の影響で眠気を感じることがあるので、検査後の車の運転は避けてください。胃カメラで喉がこすれるため、痛みや違和感を覚えることがあります。検査後はプレゼンのように大きな声を出す行為などは控えたほうがよいでしょう。また、検査中にポリープなどの組織を採取した場合、検査当日はアルコールなどの刺激物を控えましょう。

健康診断をスムーズに受けるヒント

すいている時期・時間帯を狙う

一般的に、健康診断は4月から秋にかけて混みやすく、12月から2月頃にかけては比較的すく傾向があります。また、午前・午後と健康診断を実施している医療施設の場合、午後のほうがすいている傾向にあります。これは、前日から食事制限をしている人は午前中のできるだけ早い時間の受診を希望することが多いためです。なお、午後に健康診断を受診する場合、食パン1〜2枚程度の軽い朝食であれば食べてもよいとする医療施設もあり、絶食時間が短くなるメリットもあります。

Web問診システム等の導入の有無をチェック

健康診断の所要時間で予測しにくいのが前後の受付や会計にかかる時間です。これまでは、健康診断を受ける際は受付後に問診表の記入をするのが一般的でしたが、最近では事前にスマートフォンなどから回答できるWeb問診システムを導入している医療施設が増えつつあります。Web問診の導入のみで健康診断全体の所要時間が大幅に短縮されるわけではありませんが、健康診断の効率化に前向きに取り組んでいる医療施設であるとの見方はできます。健康診断を受診する医療施設を選ぶ際のポイントのひとつとして、チェックしてみてください。

参考資料
*1.厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
*2.厚生労働省 東京労働局 よくあるご質問「Q16 一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?」
*3.厚生労働省 よくある質問「健康診断の費用は労働者と使用者のどちらが負担するものなのでしょうか?」
*4.政府広報オンライン 生活習慣病の予防と早期発見のために がん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!
*5.厚生労働省 我が国の医療保険について
*6.全国健康保険協会(協会けんぽ) 健診のご案内
*7.全国健康保険協会(協会けんぽ)「検査項目対比表」

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