心臓超音波(エコー)検査は、心臓の形や機能を詳しく調べることができる安全な検査です。胸部を露出して検査を行うため、恥ずかしさを感じる方がいるかもしれません。本記事では、検査の特徴や流れ、費用に加え、女性向けの医療施設の選び方などについて解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・心臓病を予防したい方
・心臓超音波(エコー)検査の費用を知りたい方
・心臓超音波(エコー)検査の受診が恥ずかしい女性
★この記事のポイント
・心臓超音波(エコー)検査の目的はさまざまな心臓病の発見
・心臓超音波(エコー)検査の費用は、保険診療の場合3割負担で2,640円。人間ドックのオプション検査の場合、8,000~15,000円程度
・検査時間は約30分。食事制限は必要なく、痛みや被曝のリスクもない
・心臓超音波(エコー)検査が恥ずかしい女性は、女性スタッフによる検査を選択できる医療施設がおすすめ
目次
心臓超音波(エコー)検査の特徴
心臓超音波(エコー)検査とは?
心臓超音波(エコー)検査(心エコー検査)は、超音波を使って心臓の様子をリアルタイムで観察する検査です。心臓の形、大きさ、形、動き方などを観察することで、さまざまな心臓病の発見に役立ちます。健康診断等で行われる「心電図検査」は、心臓の拍動を測定して波形で記録する検査であり、得られる情報が心エコー検査とは異なります。
心エコー検査では、胸部にプローブと呼ばれる機器を当てて、心臓の様子をモニターで観察します。痛みなどはほとんどなく、放射線被曝もないため、身体に負担の少ない検査です。一方、検査者の技術や経験によって検査の精度に差が出る場合があります。
心臓超音波(エコー)検査でわかること
心臓超音波(エコー)検査では、心臓の大きさ、壁の厚さ、収縮力、心臓弁の動き、心臓内の血液の流れなどを評価することで、以下のような心臓病の発見に役立ちます*1,*2。
- 心不全
- 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
- 弁膜症
- 心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症など)
- 先天性心疾患(心室中隔欠損症、心房中隔欠損症など)
- 心筋炎
- 心膜疾患
など
心臓病による死因の約半数は、急性心筋梗塞や重度な狭心症と言われており*3、このような虚血性心疾患に対しても、心エコー検査により心臓の壁の動きを観察することで、早期発見や重症度の評価ができます*1。
心筋梗塞や狭心症については下記記事でも解説しています。
心臓超音波(エコー)検査は、人間ドックのオプション検査や心臓ドックで受診できる
心臓超音波(エコー)検査は、人間ドックのオプション検査や心臓ドックで受けることができます。とくに心臓ドックでは、心エコー検査に加えて、心電図検査や冠動脈CT検査など複数の検査が行われることが多いため、より網羅的に心臓病を調べることができます。
厚生労働省が2023年に発表した患者調査によると、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)の患者数は40代から徐々に増加し、70代~80代前半でピークを迎えます*4。最近では、生活習慣の欧米化や高ストレス社会、運動不足などを背景に、若年発症が懸念されています。
心臓ドックで行われる検査の種類や費用などの詳細は、以下の記事で解説しています。
心臓超音波(エコー)検査の費用
症状がある場合:保険適用の費用
下記のような心臓病を疑う症状があるなど*2、医師が検査を必要と判断した場合は、保険適用で心臓超音波(エコー)検査を受診できることがあります。
- 胸が痛い
- 息切れがする
- 呼吸がしづらい
- 足や顔のむくみ など
保険適用の場合、心エコー検査の費用は3割負担で2,640円です(初診料などは含まない)*5。なお、検査機器の違いや造影剤の使用などにより、医療施設によって費用が異なる場合があります。気になる症状がある方は、お近くの循環器内科の医療施設に相談してみましょう。
症状がない場合:人間ドックや心臓ドックにおける費用
心臓病を疑う症状がなく、以下にあてはまる方は、人間ドックのオプション検査や心臓ドックの一環として、心臓超音波(エコー)検査の受診を検討してはいかがでしょう。とくに生活習慣病について指摘されたことがある方は、心臓に負担がかかりやすいため、受診をおすすめします。
- 30代以上で、心臓病を予防したい方
- 高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病をお持ちの方
- 喫煙している方
- 肥満の方
- 心臓病の家族歴がある方
費用の目安は、人間ドックのオプション料金で8,000~15,000円ほどです。心臓ドックでは、基本的なプランに心エコー検査が含まれていることが多く、心臓ドック費用目安は20,000~40,000円前後です。
心エコー検査を受けられる医療施設はこちらから検索できます。
以下の記事では、人間ドックのオプション検査の性別、年代別の選び方について具体的に解説しています。
心臓超音波(エコー)検査の流れと所要時間
検査前の準備、検査の流れ、所要時間
検査前の準備と服装
心臓超音波(エコー)検査は基本的に特別な準備は必要ありません。食事や水分摂取、薬の服用などは、普段通りで問題ないです。ただし、血液検査や内視鏡などほかの検査も同時に受ける場合は、各検査の注意事項(食事制限など)に従いましょう。
なお、心エコー検査の際は上半身の服を脱ぐ必要があります。そのため、脱ぎ着しやすい服装が望ましいです。オールインワンや、女性はワンピースを避け、上下セパレートの衣類がよいでしょう。なお、検査時はブラジャーなどの下着も外す必要があります。
健康診断の服装については、下記記事をご覧ください。
検査の流れ、所要時間
心臓超音波(エコー)検査は、画像を見やすくするために、明かりを消した暗い部屋で行われます。まず上半身を脱ぎ、胸部にジェルが塗布されます。そして、左側を下にした姿勢でベッドに横になります。検査者がプローブと呼ばれる機器を胸にあてて動かしながら、心臓の状態を観察していきます。検査の途中で呼吸を止めたり、身体の向きを変えたりすることがあります。基本的に痛みはありませんが、プローブを押し当てるため、少し違和感が生じることもあります。検査終了後は、胸に塗布したジェルをタオルで拭き取ります。所要時間の目安は30分前後です。ただし、検査内容や状態によっては、時間がかかることもあります。
検査終了後は、特別な制限はなく、普段通りの生活をして問題ありません。
心臓超音波(エコー)に関わる医療スタッフ
心臓超音波(エコー)検査は、医師以外にも、相応の経験や知識を有した看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師が行うことがあります。実際には、臨床検査技師や診療放射線技師が心エコー検査を行うことが多いです*6。循環器内科のクリニックであれば、医師が検査を行うこともあります。なお、検査後のエコー画像の診断は必ず医師が行っています*7。このように、心臓エコー検査は複数のスタッフが連携して行われます。
医療施設の選び方
専門医・専門技師が在籍する医療施設を選ぶ
心臓超音波(エコー)検査は、検査者の技術や経験によって検査の精度に差があらわれやすい検査です。そのため、「超音波専門医」や「日本心エコー図専門医」等の専門資格を持った医師や検査技師が在籍するかどうかが、医療施設選びの指標のひとつとなります*8,*9。医療施設のWebサイトなどで専門医・専門技師の在籍について確認してみましょう。
女性に配慮した医療施設を選ぶ
医療施設によっては、女性が安心して心臓超音波(エコー)検査を受けられるよう配慮されていることがあります。受付時に女性技師を希望できる、すべて女性スタッフ・女性医師が行う、女性用に検査着やガウンを用意するなど、さまざまな対応がとられています。気になる方は、予約時に確認または医療施設のWebサイトなどを確認しておくとよいでしょう。
参考資料
*1.日本循環器学会「2021年改訂版 循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン」
*2.日本心エコー図学会 ガイドライン委員会「心臓および肺Point-of-Care超音波検査の実施と活用,教育に関する手引き」
*3.日本心血管インターベンション治療学会 急性心筋梗塞とは
*4.厚生労働省 令和5年(2023)患者調査の概況
*5.厚生労働省令和6年度診療報酬改定について 診療報酬の算定方法の一部を改正する告示「別表第一(医科点数表)」
*6.日本超音波検査学会 一般の皆さまへ 3.安全性
*7.厚生労働省 医政発0930第16号 令和3年9月30日「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」
*8.日本超音波医学会
*9.日本心エコー図学会 心エコー図専門医制度