協会けんぽに加入している方の被扶養者(家族)のうち、40~74歳の方は、補助を利用して特定健診を受けることができます。本記事では、協会けんぽの家族向けの特定健診について、基本の健診内容や検査内容をグレードアップする方法のほか、2027年度に協会けんぽが予定している、被扶養者向け健診制度の拡充についても解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・自身が40歳以上で、協会けんぽ被保険者の被扶養者(家族)の方
・自身が協会けんぽ被保険者で、40歳以上の被扶養者(家族)がいる方
・協会けんぽの特定健診を利用して健康診断を受けたい方
★この記事のポイント
・協会けんぽでは、40~74歳の被扶養者(家族)向けに特定健診の提供と補助を実施しており、安価に受診できる
・特定健診は生活習慣病予防のための健康診断で、がん検診は含まれていない
・協会けんぽは都道府県ごとに支部があり、支部によっては被保険者の生活習慣病予防健診(一般健診)と同じ内容の「特定健診プラス」を利用できる
・協会けんぽでは、2027年度から被扶養者に向け、被保険者と同等の健診制度を提供する予定としている
・被保険者向けの健診制度には生活習慣病予防健診と人間ドック健診があり、人間ドック健診は最高25,000円が補助される
目次
協会けんぽによる被扶養者向け特定健診
被扶養者向け特定健診の対象者と費用
全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)は中小企業の従業員などが加入している健康保険です。協会けんぽでは、加入者本人(被保険者)の被扶養者(家族)向けに特定健診(特定健康診査)を実施しており、費用を一部補助しています*1。これにより、被扶養者は安価に健康診断を受診することができます。
- 対象者:40~74歳の被扶養者(家族)
- 頻度:年度内に1人1回
- 補助額
基本的な健診(基本的な項目):最高7,150円
詳細な健診(詳細な項目)を付加した場合:最高3,400円(基本的な健診とあわせて計10,550円)
「基本的な健診」の費用が8,000円の場合、自己負担額は850円となり、費用のほとんどを協会けんぽが負担していることになります。なお、「詳細な健診」は、医師の判断によって実施されるため*1、自身で付加を決定することはできません。
被扶養者向け特定健診の健診内容
特定健診そのものは、40~74歳の方を対象に国が実施している取り組みで、検査項目は厚生労働省によって定められています。実施主体は、各医療保険者(協会けんぽ、各健康保険組合、自治体の国民健康保険等)です。協会けんぽでは、厚生労働省の指針に基づき、下記の内容を実施しています*1,*2。

前項でもふれた通り、詳細な項目は医師の判断によって実施されます*2。
特定健診については、下記記事で詳しく解説しています。
特定健診は、協会けんぽ加入者本人が受けている健康診断と何が違う?
特定健診は40~74歳が対象
特定健診(特定健康診査)は特定保健指導とあわせて、40~74歳の加入者(被保険者・被扶養者)を対象とした国の取り組みです。特定健診はメタボリックシンドロームに着目した健診であり、その目的は生活習慣病を予防・改善することです*3。生活習慣を早期に改善することで高血圧の改善、脂質異常症の減少、糖尿病患者の増加を抑制し、結果として脳梗塞や脳出血、心筋梗塞など死に到る病気の発生率を下げることを目指しています。
特定保健指導は、特定健診の結果から、生活習慣病の発症リスクが高いと判断された方に実施される保健指導のことです*3。対象となった方は、保健師や管理栄養士の指導に基づき、生活習慣の改善を行います。
いずれも、加入している医療保険によって実施主体が異なります。協会けんぽの被保険者(加入者本人)の被扶養者(家族)は、協会けんぽの加入者のひとりであるため、この場合の実施主体は協会けんぽとなります。
協会けんぽ加入者本人の健康診断と特定健診の比較
協会けんぽの被保険者(加入者本人)の場合、「生活習慣病予防健診」の核となる「一般健診」に特定健診の検査項目が含まれています*4。被保険者向けの「一般健診」および特定年齢の方を対象とした「節目健診」と、被扶養者(家族)向けの「特定健診」を並列で見てみましょう。太字は、対象者全員が受ける検査において、特定健診にはない検査項目です。
| 被保険者向け | 被扶養者向け | ||
|---|---|---|---|
| 健診名 | 一般健診 | 節目健診 | 特定健診 |
| 対象者 | 35~74歳 | 40・45・50・55・ 60・65・70歳 | 40~74歳 |
| 健診内容 (全対象者) | 問診 診察等 身体計測 血圧測定 尿検査 便潜血反応検査 血液検査 心電図検査 胃部レントゲン検査 胸部レントゲン検査 ※35~39歳は胃・大腸の 検査を省略可 | 左記一般健診の内容+下記 尿沈渣顕微鏡検査 血液学的検査 生化学的検査 眼底検査 肺機能検査 腹部超音波検査 | 問診 診察等 身体計測 血圧測定 尿検査 血液検査(脂質、 肝機能、血糖) |
| 医師判断で 実施 | 眼底検査 喀痰検査(一定条件の場合 かつ希望者) | 心電図検査 眼底検査 貧血検査 血清クレアチニン検査 | |
上記からわかることは、協会けんぽが提供する被扶養者向けの健康診断は特定健診のみであり、がんを調べる胃・肺・大腸の検査が含まれていないということです。これは、前述の通り、特定健診がメタボリックシンドロームに着目した健診であり、がんを早期発見するための検査内容にはなっていないためです。がん検診は国の方針に基づき、全国すべての自治体で実施されています。がん検診を受けたい方は、お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
がん検診について知りたい方は、下記記事をご覧ください。
各健診・検診の違いについて知りたい方には、下記記事がおすすめです。
被保険者と同等の健診を受けたい場合はどうすればよいか
支部によっては「特定健診プラス」が提供されている
協会けんぽは、都道府県ごとに支部があります。支部によっては、特定健診の検査項目にがん検診を含めた検査を追加した「特定健診プラス」を実施しています。下記は東京支部の例です*5。
【検査項目】
特定健診に下記を付加(全項目セットのみ)
- 胸部・胃部レントゲン検査
- 便潜血検査
- 心電図検査
- 視力聴力検査
- 血液検査
- 一般検査
- 血中脂質検査(総コレステロール)
- 肝機能検査(ALP)
- 腎機能検査
- 尿検査(潜血)
【自己負担額】
最高12,485円(2026年度)
上記は、被保険者の生活習慣病予防健診(一般健診)と同じ検査内容です。すべての支部で実施しているわけではないため、加入している協会けんぽの支部に問い合わせてみましょう。
支部によっては自治体のがん検診を同時受診できる
支部によっては、自治体と連携し、集団健診とがん検診を同時受診できるようにしています。集団健診とは、医療施設ではなく大きな会場で一斉に行われる健診です。多くの場合、自治体の保健センターなどが会場になります。実施日があらかじめ決まっているので、自身の都合の調整が必要です。
特定健診とがん検診を別で受けることは、日程調整などのわずらわしさから足が遠のくことになりかねません。この取り組みでは、被保険者の生活習慣病予防健診(一般健診)のがん検診に相当する検査を同時に受診できるため、利便性が高いと言えます。ただし、支部内でも一部の自治体に限定されていることがあります。佐賀支部の例では、20以上の自治体で実施されています(2026年度)*6。
こちらも、すべての支部で実施しているわけではありません。まずは、加入している協会けんぽの支部に問い合わせてみてください。
自分に合う検査を選びたい方は人間ドックがおすすめ
生活習慣病予防健診の項目に含まれていない検査を受けたい方や、がん検診の対象年齢に満たないけれど検査を受けたい方には人間ドックがおすすめです。プランの内容と費用は医療施設によって異なります。
人間ドックが気になるけれどよくわからないという方は、下記記事をご覧ください。
自分に合う人間ドックや検査の選び方については、性別×年代別で解説している下記記事がおすすめです。
2027年度から、協会けんぽの被扶養者向け健康診断が大きく変わる!
ここまで解説してきた通り、現在、協会けんぽが被扶養者向けに提供しているのは40~74歳を対象とした特定健診のみです。しかし、協会けんぽでは、2027年度から、被保険者に提供している健診制度と「同等の内容に拡充する」としています*7。
被保険者向けの健診制度は、2026年4月に大幅に刷新されました。従来の「一般健診」に加え、35〜74歳の被保険者を対象とした最高25,000円補助の「人間ドック健診」、20・25・30歳を対象とした「一般健診(若年)」が始まっています。
35〜74歳の被保険者は年1回の健康診断の機会において、「一般健診」もしくは「人間ドック健診」、このうち5歳刻み年齢の方は「節目健診」も加えたなかからいずれかを選ぶことができます。また、特定条件を満たす場合に追加できる健診の選択肢が増えました。
詳細は、「MRSOビジネス」の下記記事で解説しています。被扶養者の方にも知っておいていただきたい内容ですので、ぜひお読みください。
特定健診の検査内容とそれぞれの検査でわかること
基本的な健診の項目
厚生労働省が定める特定健診の検査項目は先述の表のとおり、「基本的な健診」と「詳細な健診(医師の判断で一部の方のみ実施)」に分かれており、いずれも高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を見つけるのに特化した検査内容が主体です*3。この項では特定健診の検査内容について詳しく解説します。
診察(問診、視診、触診、聴打診など)
【検査内容】
現在の健康状態を医師が問診、視診、触診、聴打診などで確認します。服薬歴や喫煙歴について答えるほか、既往歴、貧血や体重変化、運動習慣、食習慣について気になることがあれば医師に伝えることが可能です。診察と検査の結果を踏まえて、医師がさらに検査が必要だと判断した一部の方は、詳細な健診を追加で受ける必要があります。
【検査からわかること】
生活習慣病の発症リスクを高める生活習慣の有無がわかります。
身体計測
【検査内容】
身長と体重を計測し、肥満度の指標であるBMI(Body Mass Index)を算出します。
【検査からわかること】
BMIをもとにして肥満や低体重(やせ)を判定し、生活習慣病のリスクを簡易的に評価します。日本肥満学会の基準ではBMI25以上が肥満であり*8、さらに肥満に関連する病気が合併した状態が肥満症といわれています。とくにBMI30以上で健康リスクが増加するとされています*9。
BMIとあわせて、健康リスクの評価指標である腹囲については、下記記事で詳しく解説しています。
血圧測定
【検査内容】
血圧(心臓から送り出された血流が血管の内壁を押す力)を測定します。
【検査からわかること】
高血圧の有無を調べて、心臓のポンプ機能に明らかな異常がないかどうか、また動脈が硬くなっていないかどうかを簡易的に評価します。高血圧とは、収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧90mmHg以上の場合を指します*10。高血圧が慢性化すると動脈硬化が進行して脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎臓病といった重篤な病気を引き起こすことがわかっています。
血圧について詳しくは、下記記事をご覧ください。
血液検査(脂質検査、糖質検査、肝機能検査)
【検査内容】
採血を行い、メタボリックシンドロームなどによる生活習慣病に関わる項目を測定します。
【検査からわかること】
・脂質検査
血液中の中性脂肪、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)などを測定します。基準値外の場合には脂質異常症(高脂血症)や動脈硬化の疑いがあります。
・糖質検査
空腹時の血糖値や糖尿病に関わるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という値を測定します。HbA1cは過去2ヶ月程度の血糖値の平均を表しており、いずれも基準値を超えると糖尿病の疑いがあります。
・肝機能検査
肝臓の働きを示すAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)といった値を測定します。脂肪肝、アルコール性肝炎、ウイルス性肝炎の疑いなどを調べることができます。
HDL・LDLコレステロールについて、詳細は下記記事で解説しています。
肝機能検査については下記記事をご覧ください。
血液検査の結果の見方は、下記記事で網羅的に解説しています。
尿検査
【検査内容】
尿を採取し、腎臓、尿路の状態や糖尿病の発症リスクなどを反映する項目(尿糖、尿蛋白)を測定します。
【検査からわかること】
・尿糖
尿中の糖分の量を示しています。陽性の場合、腎機能の低下や糖尿病の疑いがあります。
・尿蛋白
尿中のタンパク質の量を示しています。陽性の場合、糖尿病や甲状腺機能の異常などの疑いがあります。
尿検査で得られる結果の詳細は下記記事をご覧ください。
詳細な健診の項目(医師の判断で一部の方のみ実施)
ここまでお伝えした検査内容に加えて、医師が診察をして必要と判断した場合には心電図検査、眼底検査、貧血検査、血清クレアチニン検査といった、より詳しい検査が実施されます。そのため、すべての方が受けられるわけではありません。この項では詳細な健診の検査項目について説明します。
心電図検査
【検査内容】
ベッドに仰向けに寝て、手首、足首、胸などに電極を貼りつけて行う検査です。心臓のリズムや動きが正常かどうかを簡易的に評価します。
【検査からわかること】
心臓のリズムが乱れる不整脈や、血管が狭くなり心筋への血液供給が不足した状態である狭心症の疑いがわかります。不整脈や狭心症は、突然死の原因のひとつである心筋梗塞を引き起こす場合もあります。
狭心症・心筋梗塞については、下記記事で詳しく解説しています。
眼底検査
【検査内容】
眼底カメラなどの器具を用いて眼の奥にある血管、視神経、網膜の状態を評価する検査です。
【検査からわかること】
糖尿病性網膜症、すなわち糖尿病によって視力が低下する病気の疑いを調べることができます。糖尿病性網膜症は失明につながる病気ですが、かなり進行してもほとんど自覚症状がありません*11。また、高血圧による影響や緑内障の兆候についても調べることができます*10,*12。
貧血検査
【検査内容】
採血を行い、貧血に関わる項目(赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値)を測定します。ヘマトクリット値とは、血液中に含まれる赤血球の体積の割合を表す値です。赤血球数、血色素量(ヘモグロビン濃度)、ヘマトクリット値と臨床症状などを組みあわせて赤血球の中に含まれるヘモグロビンの量に異常がないかどうかを判定します。
【検査からわかること】
貧血の疑いがあるかどうかを調べることができます。赤血球中に含まれているヘモグロビンには全身へ酸素を運ぶ役割があるため、ヘモグロビンが少なくなっている(ヘマトクリット値が下がっている)状態だと貧血の可能性があります。貧血の原因はさまざまで栄養不足、月経のほかに、腎臓や骨髄の異常などの可能性があります。反対にヘモグロビンが多すぎる(ヘマトクリット値が上がっている)状態でも脱水、多血症、骨髄の異常などの可能性があります。
血清クレアチニン検査
【検査内容】
採血を行い、血液中のクレアチニン(血清クレアチニン)の量を測定します。血清クレアニチンと年齢および性別から推算糸球体ろ過量(eGFR)を計算し、腎機能の状態を評価します。
【検査からわかること】
クレアチニンは筋肉で作られるアミノ酸の一種です。クレアチニンは老廃物として腎臓でろ過される物質であるため、腎臓が正しく機能していれば血液中には増えていきません。おもに腎臓の機能が正常かどうか、もしくは腎臓の病気(急性腎炎、慢性腎炎、腎不全、腎盂腎炎、尿管結石)の疑いを簡易的に評価することができます。なお、クレアチニンは筋肉量の違いでも変化するため男性と女性で基準値が異なります。
マーソでは、協会けんぽ加入者のための特設ページをご用意しています。医療施設探しにお役立てください。

参考資料
*1.協会けんぽ 健診について(被扶養者)
*2.厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4.3版)」2026年
*3.厚生労働省 特定健診・特定保健指導について
*4.協会けんぽ 健診について(被保険者)
*5.協会けんぽ東京支部「協会けんぽ加入のご家族様へ『特定健診プラス』のご案内」
*6.協会けんぽ佐賀支部 【被扶養者(ご家族)様対象】特定健診(特定健康診査)とは
*7.協会けんぽ 第141回全国健康保険協会運営委員会 2026年3月24日開催 資料「健康づくりへの取組について」
*8.日本肥満学会 肥満症診療ガイドライン2022「第2章 肥満の判定と肥満症の診断基準」
*9.厚生労働省 健康づくりサポートネット 肥満と肥満症
*10.厚生労働省 健康づくりサポートネット 高血圧
*11.日本眼科学会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」2020年
*12.日本眼科医会 目の病気の早期発見のためには眼底検査が大切です。
















