3テスラMRIは、一般的なMRI検査に比べて、高画質な画像を描出する検査です。本記事では、一般的な1.5テスラMRIとの違い、メリットやデメリット、費用相場、注意点など、検査を受ける前に知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・3テスラMRIと1.5テスラMRIの違いを知りたい方
・3テスラMRIのメリット、デメリットを知りたい方
・3テスラMRIを受けられる場所や費用を知りたい方
★この記事のポイント
・3テスラMRIは、一般的な1.5テスラMRIの約2倍の磁力を持ち、高画質で鮮明な画像を描出できる
・3テスラMRIは、より精密な検査を希望する方におすすめ。とくに脳や関節、乳腺などの検査には勧められる
・費用は1.5テスラMRIよりやや高額
・1.5テスラMRIより制限が厳格になること、検査中の機械音が大きくなることに注意が必要
・3テスラMRIは高性能だが、1.5テスラMRIのほうが適する部位もある
目次
3テスラMRIとは? 1.5テスラとの違いをわかりやすく解説
MRI検査(Magnetic Resonance Imaging/磁気共鳴画像法)は、強力な磁石と電波を用いて体内の様子を画像にする検査です。CTと異なり放射線を使わないため、被曝のリスクがなく、さまざまな病気の発見に役立ちます*1,*2。
3テスラMRIは、現在広く利用されている1.5テスラMRIの約2倍の磁力を有する装置です。テスラ(T)は磁力の大きさをあらわす単位で、この数値が大きいほど、よりノイズの少ない鮮明な画像を得られます*3。
厚生労働省の調査(2023年)によれば、3.0テスラ未満のMRIによる検査を行っている医療施設は約3,300件であるのに対し、3.0テスラ以上では897件と多くはありません*4。おもに大学病院や専門的な医療施設に設置されていることが多いです。
3テスラMRIのメリット—どのくらい病気を発見できる?
メリット1:高画質な画像で、がんなどの早期診断に貢献
3テスラMRIは、精度が高く、鮮明な画像が得られるため、病変をより詳しく描出でき、早期診断に寄与する可能性があります。たとえば、MRIによる乳がん検診(スクリーニング検査)を3テスラと1.5テスラで比較したところ、がんの検出率は3テスラで2.6%、1.5テスラで0.9%であり、約3倍高かったことが報告されています*5。
乳腺以外にも、とくに脳や関節などの臓器では、3テスラMRIにより、小さな病変を映し出すことができるとされています(「こんな方に3テスラMRIがおすすめ―部位・病気別に解説」参照)。
メリット2:検査時間の短縮による負担の軽減
3テスラMRIは磁力が強いため、撮影に必要な情報を効率よく集めることができます。そのため1.5テスラと同等の画像を撮影する場合、撮影時間を短縮できます*3。
撮影時間が短くなることで、狭いMRI装置の中で静止していなければならない時間が減り、心身の負担の軽減につながります。とくに、同じ姿勢を保つのがつらい方や、閉所恐怖症の方にとっては大きなメリットであると言えます。
ただし医療現場では、時間短縮よりもさらに高画質な画像を撮ることを優先する場合もあります*6。
3テスラMRIのデメリットと注意点
デメリット1:金属類に関する制限がより厳しい
3テスラMRIは1.5テスラMRIに比べて磁力が強力なため、金属類に対する注意がより一層必要になります。万が一金属を持ち込むと、磁力で吸い寄せられたり、熱を持って火傷をしたりする重大な事故につながる危険があります*7。
ネックレスなどのアクセサリー類はもちろんですが、ネイルやアイシャドウ、カラーコンタクトやつけまつげなど、まれに金属成分を含む化粧品や装飾品があり、これらが影響する可能性があります*7,*8。自分では気づきにくいものに金属が含まれている場合もあるため、医療施設からの案内などをきちんと読み、十分に注意する必要があります。
また、MRI対応の脳動脈瘤クリップや心臓ペースメーカーであっても、3テスラMRIでの安全性が確認できない場合には、検査が認められないことがあります。不明点などがあれば、事前に検査を受ける医療施設に相談してみましょう。
MRI検査の注意点については下記で詳しく解説しています。
デメリット2:検査中の音がより大きくなることがある
MRI検査特有の「ガンガン」「コンコン」という工事現場のような音は、磁場を変化させるときに発生するもので、3テスラMRIのような高磁場な装置では、1.5テスラMRIよりも音が大きくなる可能性があります*7。
なお、高性能な3テスラMRIでは、最新の技術により静音化がなされていることがあります。また、医療施設によっては、検査時にヘッドホンや耳栓をつけ、装置の音に配慮する工夫をしている場合もあります。MRIの音について気になる方は、受診予定の医療施設に問い合わせましょう。
デメリット3:費用が比較的高くなる
3テスラMRIは装置自体が高額であり、検査費用も1.5テスラMRIに比べて高くなるのが一般的です。具体的な費用の違いや保険適用については、次の章で詳しく解説します。
3テスラMRIの費用相場と比較—保険診療と自由診療
保険診療の場合
病気の診断や治療のために医師が必要と判断した場合は、健康保険が適用されます。一方、健康診断や人間ドックなど、自覚症状はないが念のため調べたいといった目的で検査を受ける場合は、保険診療の対象となりません*9。保険適用の場合の費用は国が定めた診療報酬点数に基づいて計算され、自己負担額は年齢や所得に応じて通常1割〜3割となります*10。
以下は、保険診療のMRI撮影料に関する自己負担額(3割負担の場合)の目安です。3テスラMRIと1.5テスラMRIの自己負担額の差額は、1,000円程度になります。なお、実際には診察料や読影料なども加算されるため、総額は数千円〜1万円前後になる場合があります。
| MRI装置の種類 | 診療報酬点数*11 | 自己負担額(3割負担) |
|---|---|---|
| 1.5テスラMRI | 1,330点 | 約3,990円 |
| 3テスラMRI | 1,600点 (共同利用施設で 実施:1,620点) | 約4,800円 |
自由診療(人間ドックや脳ドック)の場合
健康診断のオプション検査や、人間ドック・脳ドックなど、予防目的で検査を受ける場合は自由診療となり、費用は全額自己負担です。料金は医療施設が独自に設定しているため、各医療施設によって異なります。
たとえば、脳ドックを受診した場合の一般的な費用相場が下記です。3テスラMRIを使用するプランは、1.5テスラに比べて1万円前後高くなる傾向があります。費用は施設によって異なるため、事前に確認しましょう。
| MRI装置の種類 | 脳ドック (基本的な頭部MRI/MRAと 頸部MRAのコース) |
|---|---|
| 1.5テスラMRI | 約20,000〜35,000円 |
| 3テスラMRI | 約26,000〜40,000円 |
3テスラMRIがおすすめの方と注意が必要な方
こんな方に3テスラMRIがおすすめ―部位・病気別に解説
3テスラMRIは、その高い解像度から、より精密な検査を希望される方におすすめです。3テスラMRIでの検査が推奨される部位ごとの病気と、その他機器による検査の比較をまとめました。
脳の病気を早期に発見したい方
くも膜下出血の原因となる未破裂の脳動脈瘤や、ごく初期の脳梗塞、脳腫瘍などを詳しく調べたい場合には、3テスラMRIの受診がおすすめです。脳卒中などを経験したことがある血縁者がいる方や、リスクを詳しく知りたい方にも適しています。
頭部領域における各検査の推奨度*7
| 疑う病気 | CT | 1.5テスラMRI | 3テスラMRI |
|---|---|---|---|
| 脳梗塞 | △ | ◎ | ◎ |
| 脳出血 | ◎ | 〇 | 〇 |
| くも膜下出血 | ◎ | 〇 | 〇 |
| 脳動脈瘤 | △ | 〇 | ◎ |
| 脳腫瘍 | △ | 〇 | ◎ |
関節の不調が気になっている方
3テスラMRIは、従来の1.5テスラMRIでは困難であった、関節部分の靭帯の損傷具合や、軟骨の異変を鮮明に映すことができます。脊椎のうち頸椎は3テスラMRIでより小さな病変を発見しやすくなります。
整形領域における各検査の推奨度*7
| 疑う病気 | CT | 1.5テスラMRI | 3テスラMRI |
|---|---|---|---|
| 関節 (肩、膝、手足) | × | 〇 | ◎ |
| 頸椎 | △ | 〇 | ◎ |
| 胸椎 | △ | ◎ | △ |
| 腰椎 | △ | ◎ | 〇 |
乳がんが心配な方
乳がんは日本人女性で最も罹患数が多いがんです*12。3テスラMRIは、乳房にできる病変を鮮明に映し出すことができ、早期発見に役立ちます。
胸部・骨盤領域における各検査の推奨度*7
| 疑う病気 | CT | 1.5テスラMRI | 3テスラMRI |
|---|---|---|---|
| 乳房病変 | △ | 〇 | ◎ |
下記記事では、MRIを利用した痛くない乳がん検診について解説しています。
3テスラMRIでの検査に注意が必要な方
高性能な3テスラMRIですが、すべての病気に適しているわけではありません。心臓や肺、腹部など、呼吸や拍動で常に動いている部位は、3テスラMRIの特性上、画像の乱れが起きやすくなることがあり、1.5テスラMRIのほうが適している場合があります。
以下に該当する方は、検査を受ける前に必ず医師や医療施設にご相談ください。
- 動きやすい部位の検査を希望される方
- 妊婦または妊娠の疑いがある方
- 体内に金属を埋め込んでいる方
- 閉所恐怖症の方
- 体格の大きい方
妊娠中のMRI検査は、主治医と慎重に相談したうえで判断します。1.5テスラなど3テスラ未満のMRIは、これまで胎児への有害性は報告されていませんが*7,*13、より磁力が強力な3テスラMRIはエビデンスが限定的であり、安全性を懸念する意見もあり、より慎重な判断が求められます*14。体内の金属に関しても、1.5テスラMRIよりさらに厳しく判断されます。
MRI装置は一般的に筒状ですが、装置の側面が開いている「オープン型MRI」もあります。筒状のMRIよりテスラが小さいため画質は荒くなりますが、圧迫感が少なく、リラックスして検査を受けやすいのが特徴です。詳しくは下記の記事で解説しています。
人間ドックや脳ドックで、定期的にMRI検査の受診を
自覚症状がない段階で異常を見つけるためには、人間ドックや脳ドックといった定期的な健康チェックが重要です。人間ドックは、がんや生活習慣病など、自覚症状のない病気の早期発見を目的とした総合的な健康診断です。一方、脳ドックは脳梗塞や脳出血といった脳の病気に特化した検査で、頭部MRI/MRA検査が中心となります。症状が出る前に異常を発見し、早期に対応することは、自身の健康を守るうえでとても大切です。
MRSOでは、全国の人間ドック・脳ドック施設を簡単に検索・予約できます。今回ご紹介した3テスラMRIを有する医療施設も、お住まいの地域やこだわり条件から探すことが可能です。ぜひ一度、お近くの施設を調べてみてください。
参考資料
*1. 国立がん研究センター がん情報サービス MRI検査とは
*2. 日本放射線技術学会 MR検査
*3. 藤田晃史ら (2014年)「MRI検査の最近の知見―3T 超高磁場装置の臨床応用―」日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 117
*4. 厚生労働省 令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況
*5. Lourenco AP, et al. Improving outcomes of screening breast MRI with practice evolution: initial clinical experience with 3T compared to 1.5T. J Magn Reson Imaging, 2014; 39(3)
*6. 前原忠行.(2002年)「脳を見る画像診断の進歩と現状:3T MRIで見る脳構造」順天堂医学 54(2).
*7. 神奈川県看護協会「安全なMRI検査を実施するために」2023年
*8. 日本磁気共鳴専門技術者認定機構 市民の皆さまへ 安心してMRI検査を受けていただくために
*9. 東京都医師会 開業医のための保険診療の要点(II. 診療科別の基礎知識)[1] 内科
*10. 日本医師会 なるほど!診療報酬
*11. 厚生労働省 令和6年度診療報酬改定について
*12. 国立がん研究センター がん情報サービス がん統計 最新がん統計
*13. 日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2023」
*14. 日本医学放射線学会「画像診断ガイドライン2021年版」







