人間ドック

人間ドック当日の持ち物—エコーや内視鏡、CT、MRIなど検査前後の注意事項も紹介

持ち物 人間ドック
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

人間ドックでは、基本的な検査項目に加えて自分のリスクに合わせた検査を自由に選択し、受診することができます。この記事では基本的な人間ドックを受診する際の当日の持ち物を紹介するとともに、人間ドックのコース・プランによくある超音波(エコー)・内視鏡・CT・MRIなどの検査の当日の注意事項、よくある質問について解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・人間ドック当日、なるべく正しい検査結果を得られるようにしておきたい方
・人間ドックの検査前後でどんな行動がNGなのか気になっている方
・うっかりして人間ドック前に注意事項を守れなかった方

★この記事のポイント
・人間ドックの受診日が近づくと、予約した医療施設から案内や注意事項、問診票、検体容器などのセットが送付される
・人間ドックは基本、全額自己負担だが、自治体や健康保険組合によっては補助や助成制度がある
・造影剤を使用する検査や上腹部(胃など)の画像診断を受診する場合は食事制限が、下腹部(大腸など)の画像診断を受診する場合は食事と排尿に制限がある
・CT・MRIなどの検査を受診する場合は検査室へ金属類の持ち込みは不可
・MRI・内視鏡などの検査を受診する場合、当日の化粧は控えよう
・鎮静剤や造影剤などの薬剤を使用する検査を受診する場合は、検査前だけでなく検査後にも注意が必要

人間ドック当日の持ち物は?

人間ドックとは

人間ドックは現在の健康状態を調べ、疾患の早期発見を目的として行われます。自治体や会社が実施する特定健診(特定健康診査)や定期健康診断などと異なり、かかる費用は全額自己負担ですが、法的な義務がない任意検査のため、基本的な検査項目に加え、希望する検査を自由に選択することができます。人間ドックで自分のリスクに合わせた検査項目を選択し受診することで、将来の発症リスクなどのチェックもできるため、対策しておくことで健康状態の保持に役立ちます。

人間ドックの際に必要な持ち物

人間ドックの受診日が近づくと、予約した医療施設から案内や注意事項のほか、問診票、検尿・検便の検査容器などの受診セットが送付されるのが一般的です。案内には人間ドック当日の持ち物が記載されていることが多く、必要な持ち物は受診予定の検査にもよります。おもな持ち物は下記の通りです。

【基本的に必要なもの】
・健康保険証
・受診予定の検査に応じた問診票(質問票)、同意書などの書類
・検尿・検便など受診予定の検査に応じた検査容器
・普段使用しているメガネもしくはコンタクトレンズ(コンタクトレンズの方はコンタクトレンズケースと保存液も用意)
・支払い用のお金(キャッシュレス決済が可能な医療施設もある)
・不織布マスク(原則、医療施設内では着用*1
など

【医療施設や自身の健康状態によって必要なもの】
・医療施設の診察券(以前に受診したことがある医療施設の場合)
・お薬手帳、薬剤説明書(服用中の薬がある場合)
・他病院の検査結果(経過観察中や治療中などの場合)
など

【必要に応じて持参するもの】
・受診票(健康保険組合や会社、自治体等が発行する利用券等)
・靴下・はおりものなどの防寒グッズ
・金具や装飾の付いていない無地の白Tシャツ
など

【その他、持っていくと便利なもの】
・待ち時間のための本
・サブバッグ(小物、本などが入るもの)
・金属やプラスチックのついていないヘアゴム(髪が長い方)
・外したアクセサリーなどを入れておくための小さなポーチ・巾着袋
など

なお、人間ドックの際のスマートフォンの持ち込みについては、マナーモードに設定のうえ、持ち歩いたり、利用したりしてよいとされている場合が多いです。ただし通話は所定の場所で行いましょう。施設・敷地内での許可のない撮影や録音はNGです。医療施設や検査によっては持ち込めないものもあるため、案内をよく確認し、医療施設の指示に従いましょう。

人間ドックの費用は原則自己負担。補助や助成制度の有無は事前にチェックを

人間ドックの費用は保険適用外のため、基本的に全額自己負担です。ただし、お住まいの自治体や加入している健康保険組合などによっては、人間ドックの補助や助成制度が用意されている場合があります。事前に申請手続きをして発行される「補助決定書」等を当日持参したり、領収書と受診結果などをもって後日申請したりと、自治体や健康保険組合などにより要件はさまざまです。事前に利用できる制度の有無を確認し、対象となる制度がある場合は準備しておくとよいでしょう。

人間ドックではどんな検査が行われるのか

人間ドックの基本検査項目

自治体や会社が実施する特定健診や定期健康診断などの一般的な健康診断と比べ、人間ドックでは数多くの検査を選択することができます*2−4。以下は人間ドック学会が定める「一日ドック」の基本検査項目です。一般的な健康診断の必須項目に含まれていない項目は、以下に太字で示しています。

【必須項目】
●問診・診察:医療面接、医師診察
身体計測:身長、体重、肥満度(BMI)、腹囲
●生理検査:血圧測定、心電図、心拍数、眼底眼圧、視力、聴力、呼吸機能
X線・超音波:胸部X線(レントゲン)、上部消化管X線(バリウム)腹部超音波(エコー)
尿検査:尿一般・沈渣
●便検査:潜血
血液検査
・生化学検査:総タンパクアルブミンクレアチニンeGFR尿酸総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、Non-HDLコレステロール、中性脂肪、総ビリルビン、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)、ALP、血糖(空腹時)、HbAlc
・血液学検査:赤血球、白血球、血色素、ヘマトクリットMCVMCHMCHC血小板数
血清学検査:CRP血液型(ABORh)※HBs抗原※
●判定・指導:結果説明、保健指導
※は本人の申し出によって省略可

人間ドックのオプション項目

人間ドック学会が定める一日ドック基本検査項目*4には、オプション項目として以下の6項目が挙げられています。

【オプション項目】
・上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査              
・HCV抗体検査

<男性のみ>
・PSA検査

<女性のみ>
・乳房診察+マンモグラフィ検査
・乳房診察+乳腺超音波(エコー)検査          
・婦人科診察+子宮頸部細胞診

このほかにも、オプション検査として、胃がんの発症リスクを知ることができるABC検査、脳疾患の発見に役立つ脳ドックなどの代表的な検査はもちろん、アレルギー検査、睡眠時無呼吸症候群の検査、遺伝子検査など、特定の人に有益な検査が幅広くそろっています。

人間ドックでよくある検査や専門ドック

人間ドックでは、特定の病気・部位の検査を単独で受けられる単独検査や、複数の検査をパッケージ化した専門ドックなどのコース・プランを選択することも可能です。人間ドックのおもな単独検査や専門ドックには次のようなものがあります。

【単独検査】
・胃がんの検査:胃X線(バリウム)、胃内視鏡(胃カメラ)、胃がんリスク(ABC)検査など
・肝がん・膵がん・胆のうがんの検査:腹部超音波(エコー)など
・大腸がんの検査:便潜血、大腸内視鏡(大腸カメラ)など
・肺がんの検査:胸部CTなど
・乳がんの検査:マンモグラフィ、乳腺超音波(エコー)など
・子宮がん・卵巣がんの検査:子宮頸部細胞診、経腟超音波(エコー)など
・前立腺がんの検査:PSA検査、前立腺超音波(エコー)など
・全身がん検診:DWIBS(高性能MRI)、PET-CT検査など

【専門ドック】
・婦人科検診:乳がん、子宮がん、卵巣がんの検査など
・脳ドック:頭部MRI/MRA、頸動脈超音波(頸動脈エコー)など
・心臓ドック:心臓CT(冠動脈CT)、心臓超音波(心エコー)、頸動脈超音波(頸動脈エコー)、心臓MRI、心電図(もしくは運動負荷心電図)、血圧脈波検査、血液検査など
・レディースドック:人間ドックの基本検査項目+婦人科検診、乳腺MRI、子宮卵巣MRI(女性骨盤MRI)など

人間ドックでは、上記のような検査によってさまざまな角度から身体を調べ、がんや他の自覚症状のない病気を早期発見することで、早期治療につなげることが可能になります。また、医療施設によっては医師から検査結果の説明や指導などを受けることができるため、自身の健康状態について、一般的な健康診断より詳しく知ることができます。

人間ドックで当日追加できる検査・できない検査

年齢、健康状態、既往歴、血縁者の既往歴(家族歴)、生活習慣などから発症リスクがありそうな病気について、自身で検査を自由に選択できるところは人間ドックの利点のひとつです。

人間ドックの際、血液検査、細胞診など医療施設で当日採取予定の検体検査があれば、検査の際に検査項目の追加が可能な場合があります。ただし、内視鏡やCT、MRIといった画像診断は、検査のための事前準備が必要だったり、一人当たりの検査時間が長いことで予約数に限りがあったりするなどの理由から、直前に検査を希望しても追加できない場合があります。

医療施設ごとに「受診日の〇日前までに予約を追加・変更できる」と決まっている場合もあるので、予約後に追加したい検査ができた方は、医療施設に確認してみるとよいでしょう。こうしたことから、人間ドックは余裕をもって予約することが大切です。

人間ドック当日までの基本的な準備

以下は人間ドック当日までの基本的な準備についてです。

・医療施設からの案内をよく確認する
・人間ドックで受診する検査内容に応じた問診票(質問票)、同意書などを記入する
・尿検査や便潜血検査など提出が必要な検体を採取する
・体調管理に気をつける

尿や便など検体採取のポイントは、それぞれ以下の記事をご覧ください。

なお、大腸内視鏡(胃カメラ)検査については、安全で確かな検査をするために、とくに事前準備が重要です。当日までに必要な準備の詳細は以下の記事で解説しています。

人間ドックの服装は、医療施設で用意された「検査着」に着替えるのが一般的

人間ドック当日に「人間ドックの基本検査項目」で紹介した基本的な検査コース・プランを受ける場合、とくに服装の指示がなければ、医療施設に到着後は用意された検査着に着替え、靴も用意されたスリッパに履き替えるのが一般的です。

検査着に着替える際、検査着の下はショーツ以外すべて外すように指示されます。検査着は透けにくい色や素材でできているものがありますが、医療施設によっては金具や装飾のついていない無地の白Tシャツであれば着用してよいとされていることもあります。女性でどうしても胸元が不安という方は持参しましょう。また、寒い季節は検査着のほかに、持参したはおりものや靴下を身に着けてよいとされています。

こうした着替えの有無は受診するコース・プランによりますが、更衣室での着替えをスムーズにするためにも、医療施設に向かう際は女性の場合、ワンピース等は避けて着脱しやすい上下セパレートの服装がおすすめです。MRI検査や内視鏡検査を受診する方は、検査の妨げとなるため、当日の化粧は控えましょう

髪が長い方は、X線検査などで検査の妨げとなる場合があるため、着替えの際に肩にかからないようまとめておくとよいでしょう。身に着けている時計やアクセサリーなどの金属類も、着替えのタイミングで外しておきます。人間ドックでは、持ち物は鍵つきのロッカーで保管することも多いですが、防犯のためにも貴重品は必要以上に持ってこない、もしくはサブバッグなどに入れて持ち歩くなど、自己責任で管理しましょう。

人間ドック当日の注意事項と影響するおもな検査

食事

人間ドックでは、食事による消化器官への影響によって目的とする部位の観察が難しくなること、食品成分による検査値への影響などが考慮されます。人間ドック前日の夕食は夜9時ごろまでに済ませ、アルコールも控えましょう。人間ドック当日は絶食です。検査が終わるまでガムやアメなども控える必要がありますが、飲み物については、脱水症状を防ぐため、人間ドックの2時間前までは少量(200ml程度)の水、白湯の摂取ならOKとしている医療施設が多いです。

<影響するおもな検査>
腹部の画像診断(腹部超音波、胃内視鏡、大腸内視鏡、胃X腺、CT、MRIなど)、血液検査、尿検査など

薬・サプリメント

人間ドックで食事制限がある場合でも、主治医の指示で毎日飲んでいる薬(血圧・心臓・神経系の薬など)は、いつもどおり服用してよいとしている医療施設がほとんどです。ただし、糖尿病治療薬(インスリン注射も含む)については、当日服用すると食事制限により低血糖を起こす危険があるため使用できません。そのほか検査時に使用される鎮静剤、造影剤、検査後の下剤などの薬剤の影響も考慮する必要があるため、治療中の方は検査前後の服薬について、あらかじめ主治医や受診先に相談しておくことが大切です。

<影響するおもな検査>
内視鏡検査(胃・大腸)、造影検査※(胃X線・CT・MRIなど)、血液検査、尿検査など

※造影検査:造影剤を投与し、目的の臓器や血管を観察しやすくして撮影する検査のこと。検査で使用される造影剤は、胃X線検査では硫酸バリウム製剤、CT検査ではヨード製剤、MRI検査ではガドリニウム製剤などが用いられる。

喫煙

喫煙は、ニコチン(煙の主成分)による消化器官の画像診断や血圧・心電図などの循環器の検査、血液検査などへの影響が懸念されます*5−7。検査前の禁煙タイミングについては、受診予定の検査にもよりますが、食事同様に前日から禁煙あるいは当日の朝から禁煙としている医療施設もある一方、人間ドックの3時間前までならよいとしている施設もあります。受診先の注意事項を確認し、検査が終わるまでは禁煙しましょう。加熱式たばこも、紙たばこと同様に検査前は禁煙です。

<影響するおもな検査>
腹部の画像診断(腹部超音波、胃内視鏡、大腸内視鏡、胃X腺、CT、MRIなど)、血液検査、血圧測定、心電図検査など

運動

普段とくに運動をしていない方は、軽い運動でも検査値に影響しやすくなります。検査前の悪あがきで運動を始めても検査結果は改善しにくく、むしろ検査精度の低下につながることもあります。基本的には通常通りの生活を心がけましょう。

<影響するおもな検査>
血液検査、尿検査、PET-CT検査など

人間ドックで当日とくに注意が必要な検査

超音波(エコー)検査:腹部は食事や排尿に注意

超音波検査とは、超音波を用いて体内の病変を調べる検査です。超音波が伝わりやすいように、身体の表面に検査用のゼリーを塗り、超音波の出る器械(プローブ)をあてて検査を行います。さまざまな臓器や部位の検査に用いられており、人間ドックでは、おもに消化器、泌尿器、生殖器などのある腹部、乳腺・甲状腺などの体表、頸動脈・下肢動脈などの血管、心臓を調べる際に用いられています。

<検査前の注意事項>
腹部超音波(エコー)検査は、医療施設にもよりますが、当日は検査前6時間の絶食が必要です*8。とくに上腹部にある肝臓、膵臓、胆のうなどの消化器を検査する場合は、食事をすることで、胆汁(消化液)の分泌により胆のうが収縮するため、胆のうや胆管の観察が難しくなってしまいます。また、食事により食物残渣や腸内ガスが発生してしまうため、胃腸のうしろにある臓器が見えにくくなります。前立腺・膀胱・卵巣・子宮などの下腹部の臓器については、厳密な食事制限はありませんが、膀胱に尿をためた状態のほうが見やすいため、当日検査前はなるべく排尿を控えます。なお、検査前の喫煙の可否は医療施設により考え方はさまざまです。受診先のルールに従いましょう。

そのほかの体表、血管、心臓などの超音波(エコー)検査の場合は、基本的には食事制限はありません。経腟超音波(エコー)検査も食事制限はありませんが、レディースドックの場合など生理中の検査は推奨しないとしている医療施設が多いです。

<検査後の注意事項>
当日検査後はとくに制限はありません。

CT検査:妊娠中はNG。金属にも要注意

CT検査はX線を用いた画像診断法のひとつです。人間ドックのCT検査では、頭部、胸部、腹部、骨盤などを調べる際によく用いられます。少量ですが被爆するため、妊娠中またはその可能性がある方の検査は人間ドックでは推奨されていません*9

CT検査には、検査で造影剤を使用しない単純CTと、造影剤を使用する造影CTの2種類があります。造影CTを受ける場合は、過去に造影剤による副作用があった方、喘息やアレルギーがある方、糖尿病の方、心臓・肝臓・腎臓・甲状腺などに疾患がある方は注意が必要です。とくに糖尿病の薬を服用している方は、必ず事前に相談しましょう*10

授乳中の方はCT検査そのものは問題ありませんが、造影剤を使用する場合は母乳を介した乳幼児への影響を考慮し、断乳が必要となります。

<検査前の注意事項>
単純CTの場合、頭部・胸部の検査では食事制限はありません腹部の検査には食事制限が、骨盤の検査は医療施設により食事や排尿に制限があります。一方、造影CTの場合は部位に関わらず、当日検査前は食事制限があります。

腹部・骨盤の造影CTの場合、検査前の喫煙は控えるよう案内されることがあります。受診先の指示に従いましょう。

なお、CTや胸部X線(レントゲン)、マンモグラフィなどのX線を使用する検査では、金属が検査の妨げになるため、メガネや時計、アクセサリー類は検査前に必ず外しておきます。

<検査後の注意事項>
CT検査で造影剤を使用した場合は、とくに医師からの制限がなければ当日検査後はすみやかに尿中に排泄されるよう、水分を多めに摂取しましょう。また、造影剤の副作用として、検査後数時間から数日後に頭痛、吐き気、かゆみ、蕁麻疹などの症状があらわれることがあります。もしも何か症状がみられた場合は医療施設に相談しましょう*10

MRI検査:金属類の持ち込みは一切禁止。化粧品にも注意が必要

MRIは、磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging)の略称です。MRI検査では磁力や電磁波を身体にあて、体内の断層画像を撮影します*11。CT検査やX線(レントゲン)検査と異なり被爆することはありません。

人間ドックのMRI検査では全身もしくは頭部・心臓・血管・腹部・骨盤などの部位や臓器を調べる際によく用いられます。CT検査同様、MRI検査も造影剤の使用有無により、単純MRIと造影MRIの2種類に分けられます。

<検査前の注意事項>
単純MRIの場合、頭部、心臓、血管の検査では食事制限はありませんが、腹部の検査は食事制限が、骨盤の検査は医療施設により食事や排尿に制限があります。また、造影MRIの場合は部位に関わらず、当日検査前は食事制限があります。鉄サプリメントや鉄剤の服用は前日から控えましょう。

MRI検査では強力な電磁波を使用するため、熱傷(やけど)や画像の乱れを防ぐため、金属類の持ち込みは一切禁止とされています。時計、ピアス、ネックレス、入れ歯、携帯電話、磁気カード、カラーコンタクトレンズ、アルミニウムなど金属が使用されている貼付剤、カイロなどはMRI検査室に持ち込むことができません*12。貴重品は持ってこない、もしくは更衣室での着替えの際にすべて外しましょう。

また、ネイルやアイシャドウなど金属が含まれている化粧品、カラーコンタクトやつけまつげなど、金属反応を起こす場合があるため、当日の使用は避けましょう*12

以下の方は、MRI検査が受けられない可能性があります。

・妊娠中もしくは妊娠の可能性がある方
・ペースメーカー、人工関節、人工内耳、脳動脈クリップなどの体内金属がある
・磁石式の入れ歯をしている
・入れ墨やアートメイクをしている
・閉所恐怖症
・検査中安静にすることが困難
など

授乳中の方はMRI検査そのものは問題ありませんが、造影剤を使用する場合は母乳を介した乳幼児への影響を考慮し、断乳が必要となります。

そのほか医療施設、検査部位、体内外に付着する材質によって、検査実施の可否は異なります。詳しくは受診先で確認しましょう。

<検査後の注意事項>
CT検査同様、造影剤を使用した場合、検査後は水分を多めに摂取します。また、造影剤の副作用として、検査後数時間から数日後に頭痛、吐き気、かゆみ、蕁麻疹などの症状があらわれることがあるため、何かあれば医療施設に相談しましょう。

授乳中の方はCT・MRI検査そのものは問題ないですが、造影剤を使用する場合は母乳を介した乳幼児への影響を考慮し、断乳が必要となります。

なお、DWIBS(ドゥイブス/高性能MRI)による全身がん検診については下記記事で注意事項など詳しく解説しています。

その他の検査の注意事項

胃がんの検査:胃X線(バリウム)検査、胃部内視鏡(胃カメラ)検査、胃がんリスク(ABC)検査

人間ドックの基本項目やオプション検査でよく実施されている胃がんの検査には、胃X線(バリウム)、胃内視鏡(胃カメラ)、胃がんリスク(ABC)検査などがあります。なかでも胃X線(バリウム)、胃内視鏡(胃カメラ)は、いずれも当日検査前に食事制限があり、検査後も注意すべき点があります*5,*6

●胃X線(バリウム)検査
胃X線(バリウム)検査は、X線とバリウム造影剤を利用して、上部消化管すなわち食道・胃・十二指腸の粘膜の形状を観察します。胃X線検診安全基準(第2版)によると、人間ドックではバリウム造影剤のアレルギーがある方、妊娠中またはその可能性のある方は受診できません*5。その他、過去1年以内に手術をした方を始め、過去1年以内に心筋梗塞や脳梗塞を発症した方、受診当日の血圧が高い方(収縮期180mmHg以上/拡張期110mmHg以上*5)なども受診できません。詳細は受診予定の医療施設にて確認してください。

<検査前の注意事項>
検査前は食事制限が必要です。また、検査前は禁煙です。喫煙によって胃の動きが活発になることで、検査時にバリウムが胃から押し出されてしまい、撮影精度が下がることがあるためです。

<検査後の注意事項>
検査後は、バリウムを体内から早く排泄することが非常に大切です。医療施設でもらった下剤を飲み、水を多めに摂ります。カフェインやアルコールは、体内の水分を尿として排出する利尿作用によって便を硬くしてしまうため控えましょう。検査後24時間経過してもバリウムの白い便がまったく出ず、腹痛をともなうようであれば医療施設を受診してください。

バリウム検査について受けられない人・副作用などについては下記の記事で詳しく解説しています。

●胃部内視鏡(胃カメラ)検査
胃部内視鏡(胃カメラ)検査は、胃の粘膜を直接見ることができる検査で、胃だけでなくカメラが通過する食道、小腸の最初の部分である十二指腸も見ることができます。検査の注意点は、経口か経鼻か、鎮静剤使用の有無、生検採取の有無などによって異なります。

<検査前の注意事項>
検査前は食事制限があります。また喫煙によって胃液が出ることで胃粘膜が見えにくくなり、撮影の精度が下がるため、検査前は禁煙する必要があります。

経口の検査の場合は、当日口紅をしないようにします。鎮静剤を使用する場合、検査後は運転不可です。医療施設に向かう際には公共交通機関などを利用しましょう。また検査中、爪から血中酸素濃度をモニターするため、検査当日までに爪を短くカットし、マニキュアも落としておく必要があります。

<検査後の注意事項>
検査後1時間は飲食不可です。1時間ほど経って、水を少し飲んでむせないことを確かめてから食事を摂るようにします。鎮静剤を使用する場合は、車・バイク・自転車などの運転、精密な作業や高所での作業はできません*13。また、もし胃カメラで組織(ポリープ)等を採取した場合は、カフェイン・アルコール・刺激物の摂取、激しい運動も控えます。その他、医療施設から追加指示があれば従いましょう。

●胃がんリスク(ABC)検査
胃がんリスク検査では、血液検査でヘリコバクターピロリ菌抗体およびペプシノゲンの値を調べます。ABC検査とも呼ばれます。疾患を見つける検査ではなく、胃がんの将来的な発症リスクを評価するための検査です。

当日、食事制限など検査前後で注意すべき点はとくにありませんが、以下に該当する方は正しい値が計測できないため、事前に医療施設に相談しておきましょう。

・胃腸の具合が悪い方
・1ヶ月以内に胃薬や抗生剤を服用している方
・ヘリコバクターピロリ菌を除菌した方
・食道、胃、十二指腸の疾患で治療中の方
・胃を切除した方
・腎不全、透析を受けている方

マンモグラフィ検査

マンモグラフィ検査とは、乳房のX線撮影のことです。乳房撮影専用X線装置を用いて乳房を圧迫し、乳房内の組織を描出する画像検査です。マンモグラフィでは「しこり」や「石灰化」などの小さな病変を写し出すことが可能です。この検査は少量の被爆をともなうため、妊娠中の方は人間ドックでは検査を受けられません。豊胸手術やペースメーカーなどを胸に埋め込む手術をしている方や授乳中の方も検査を受けられない場合があります。

<検査前の注意事項>
撮影の妨げになるため、髪の毛が長い方は検査前に後ろで束ね、ピアス・ネックレスなどのアクセサリーやメガネなど、上半身に着けているものは可能な限り外します。また、整髪料や制汗スプレー、パウダーなどは成分によっては画像に写し出されてしまうため、検査前は使用しないようにします*14

<検査後の注意事項>
当日検査後はとくに制限はありません。

PSA検査

PSAは前立腺がんに関連するタンパク質を血液検査で調べる、腫瘍マーカー検査のひとつです。がんや炎症、加齢にともなう前立腺肥大症などがある場合に血液中に出現し、検査結果が高値となることがあります。

<検査前の注意事項>
PSA検査の直前に前立腺が強い刺激を受けるとPSA値が高くなることがあるため注意が必要です*15。PSA検査を受ける際には以下のことに気をつけましょう。

・検査前最低2日間は射精しない
・自転車やバイクに乗った直後の検査は避ける
・直腸診の直後は避ける
・前立腺の治療薬、ホルモン製剤、脱毛治療薬などを使用中の場合は事前に医師に申し出る(PSA値が低下する)

<検査後の注意事項>
当日検査後はとくに制限はありません。

なお、健康診断などでも実施される一般的な血液検査や画像検査についての注意事項は下記記事で紹介しています。

つい、うっかり! 注意事項を守れなかったら

人間ドックの注意事項は、当日どんな検査を受けるのかによります。前項で紹介した食事、薬・サプリメント、喫煙、運動などについては、一般的な健康診断と同様に、前日から当日にかけて、ほとんどの健康診断や人間ドックの検査で注意事項が設けられています。

もし注意事項を守れなかった場合は、いつ・何を・どのくらい食べたのか(飲んだのか)など、受付時や問診の際に医療施設に正直に申告しましょう。

とくに腹部の画像診断・造影検査・内視鏡検査・血液検査・尿検査などは、前日~当日の食事、生活習慣などが検査実施や結果に大きく影響します。受診先のルールを守れない場合、当日検査を実施できなくなってしまうこともあるため注意しましょう。

人間ドック当日のよくある質問

●人間ドックの当日の所要時間は?
人間ドックのプラン・コースには「半日」「1日」の名称がついたものがありますが、「人間ドックの基本検査項目」で紹介している基本的な検査のみを受診する場合は、プラン名にかかわらず人間ドックの所要時間は2~3時間程度が一般的です。オプション検査を受診する場合は、追加した検査に応じて終了時間が変わります。

●人間ドック当日に体調不良となったら?
人間ドック前から風邪のような症状がある場合は、自己判断せず、事前に医療施設に連絡して指示を仰ぎましょう。人間ドックでは医療施設での滞在が長時間に及ぶこと、対面での問診や保健指導があることを踏まえ、5類移行後も、新型コロナウイルス対策が実施されています*1。医療施設によっては当日の体調などの受診前チェックリストが用意されていることがあり、該当する項目がある場合は当日人間ドックを受けることができません。

●人間ドック当日に生理になってしまったら?
人間ドック当日が生理期間中と重なった場合、経血が検査に影響するため当日の尿検査、子宮がんの検査などは実施できません。便潜血検査も生理期間中に便を採取すると偽陽性で後日再検査となる場合があります。また腫瘍マーカー(CA125)検査も生理中は避けることが望ましいとされています。生理による日程変更などの対応は医療施設により異なります。受診先の注意事項を確認しておきましょう。

人間ドック当日に検査結果は教えてもらえる?
日本人間ドック学会が定めた「機能評価認定施設」では、人間ドックの受診当日に検査データの一部をもとに、医師による検査結果についての説明があります*16。そのほかの検査結果は、受診してから2~3週間前後で郵送されます。ただし、医療施設によっては、検査内容や混雑状況次第では、1ヶ月程度かかる場合もあります。もし再検査・要精密検査の通知があったら、必ず受診しましょう。

参考資料
*1.日本総合健診医学会ほか「健康診断実施時における新型コロナウイルス感染症対策について」(2023年5月8日改正)
*2.厚生労働省 e-ヘルスネット 特定健康診査の検査項目
*3.厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
*4.日本人間ドック学会「2023年度 一日ドック・二日ドック基本検査項目表」
*5.日本消化器がん検診学会関東甲信越地方支部「胃X線検診安全基準 第2版」(2022年)
*6.日本消化器がん検診学会「対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル 2015年度版」
*7.喫煙科学研究財団 喫煙と循環器機能-血液循環動態に及ぼす喫煙の影響-
*8.日本消化器がん検診学会「腹部超音波検診判定マニュアル改訂版(2021年)」
*9.日本医学放射線学会「画像診断ガイドライン 2016年版」
*10.日本医学放射線学会「CT検査(コンピューター断層撮影)について」
*11.国立がん研究センター がん情報サービス MRI検査とは
*12.日本画像医療システム工業会「磁性体(金属等)持っていませんか?」(2022年)
*13.日本消化器内視鏡学会「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版)」(2020年)
*14.国立がん研究センター 東病院 マンモグラフィ(乳房X線)検査
*15.日本泌尿器科学会「前立腺がん検診ガイドライン 2018年版」
*16.e人間ドック~いい人間ドックを選ぼう~ いい人間ドックとは

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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