胸部CT検査は、胸部X線(レントゲン)検査より精度が高い検査で、肺がんをはじめさまざまな病気の早期発見につながる可能性があります。本記事では、胸部CT検査でわかる病気や胸部X線(レントゲン)検査との違い、安全性(被曝・造影剤)、費用、低線量胸部CT検査について解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・40代以上の方
・咳や痰が気になる方
・喫煙歴がある方
★この記事のポイント
・胸部CT検査は、胸部X線(レントゲン)検査では難しい早期の小さな肺がんも発見できる可能性がある
・肺がんのなかには、喫煙歴のない女性や若い方にも起こるものがある
・胸部CT検査の被曝線量(約7mSv)が身体に与える影響はごくわずかと考えられている
・近年は被曝線量を抑えた低線量胸部CT検査(約1mSv)が普及している
・喫煙歴があり、喫煙指数(1日の本数×年数)が600以上の方は、低線量胸部CT検診の受診が強く推奨されている
目次
胸部CT検査とは? 胸部X線(レントゲン)検査との違いも解説
胸部CT検査は、胸部全体を立体的に観察できる
胸部CT(Computed Tomography/コンピュータ断層撮影)検査は、X線を使って身体を多方向から撮影し、そのデータをコンピューターで処理することで胸部の「断面画像」を作成する検査です。連続した断面画像から、胸部全体を立体的に観察できる点が特徴です*1,*2。「肺CT」と呼ばれることもあります。
胸部CT検査と胸部X線(レントゲン)検査の違いは? 特徴を比較
胸部CT検査と胸部X線(レントゲン)検査は、どちらもX線を用いる検査ですが、撮影方法や特徴などに違いがあります。各項目の違いをまとめました*3-7。
| 胸部CT検査 | 胸部X線(レントゲン)検査 | |
|---|---|---|
| 撮影方法 | 多方向から撮影し、胸部の連続した断面画像から立体的な画像を作成 | 一方向から撮影し、平面的な画像を作成 |
| 特徴 | ・ごく小さな病変も発見可能 ・心臓や骨の裏など死角が少ない ・欧米の喫煙者を対象とした研究では、CT検査により肺がんでの死亡率減少効果が示されている | ・1cm前後の病変から発見可能 ・心臓や骨の裏などが死角になりやすい |
| 肺がんの検査精度 | とくに早期の肺がんや肺がんの兆候とみられる異変の発見に有用 | 肺がんを疑う最初の検査として推奨されるが、臨床現場では19%の見逃しが報告されている(※2) |
| 検査時間 | 5~10分程度 | 数秒から数分程度 |
| 検査費用 (保険適用・3割負担の場合) | 約4,500〜5,000円 | 約600~1,000円 |
| 実効線量(※1) | 約7mSv 低線量胸部CT検査は約1mSv | 約0.06mSv |
※2:一部の研究では胸部X線で肺がんが見落とされる割合が報告されているが、見逃し率は研究デザインや対象によって差がある
胸部CT検査は、一方向から撮影する平面的な胸部X線(レントゲン)検査と比べ、心臓や骨などに隠れて見えにくい場所(死角)が少なくなり、胸部全体をより詳しく観察することができるとされています*3。
一方で、胸部CT検査は胸部レントゲン検査に比べ費用が高額であり、被曝線量の値も大きくなります。ただし、最近では被曝線量を大幅に抑えた「低線量胸部CT検査」も人間ドックなどで普及しつつあります。放射線被曝の健康への影響については「胸部CT検査で、放射線被曝の心配はない?」で解説します。
胸部CT検査の費用は?
保険適用(3割負担)の費用
健康診断で「要精密検査」と判断された場合や、咳や痰、胸の痛みといった症状があり医師が検査を必要と判断した場合は、健康保険が適用されます*9。一般的な費用の目安は以下のとおりです。
【胸部CT検査の費用目安(3割負担)】
- 造影剤なし:4,500~7,000円
- 造影剤あり:8,000~10,000円
上記はあくまで目安であり、医療施設の設備(CTの性能)や加算項目によって金額は変動します。
人間ドックなど自由診療の費用
現在は症状がないものの、自身の健康チェックやがんの早期発見のために人間ドックなどで検査を受ける場合は自由診療となり、全額自己負担です。
【胸部CT検査の費用目安(自由診療)】
10,000~18,000円
自由診療の費用は、医療施設が独自に設定できるため医療施設によって大きく異なります。また、使用するCT機器の性能や画像検査の結果説明の有無なども、費用差が生じる要素となります。
胸部CT検査で発見されることがあるおもな病気
肺がん
肺がんは、すべてのがんのなかで最も死亡者数が多く、予後が不良であることで知られています*10。しかし、がんがまだ肺の中にとどまっている「ステージ1」の段階での5年生存率(2015年/ネット・サバイバル※)は80%以上と報告されていることから*11、早期発見が非常に重要であると言えます。
早期肺がんのなかには、胸部X線(レントゲン)検査では発見が難しく、胸部CT検査によって見つかる異常もあります。そのひとつに「すりガラス状結節」があります。すりガラス状結節は炎症や瘢痕(はんこん/炎症による傷跡や繊維化)良性の原因によることも多く、通常は一定期間の経過観察を行います。経過中に大きさや濃さに変化がない、または増大する場合には、早期肺腺がんの可能性を考慮してさらなる精査が必要になることがあります*12。
すりガラス状結節をともなう肺腺がんは、喫煙しない女性や若い方でもかかることがあります。そのため、早期発見の観点では、喫煙歴や年齢を問わず胸部CT検査の受診が推奨されます*12。
※ネット・サバイバル:5年後に生存している割合のうち、「がんのみが死因となる状況」を仮定して算出された数値。
その他の肺・気管支の病気
胸部CT検査では、肺がん以外にも、以下のような肺や気管支の病気が発見されることがあります*13,*14
- 肺炎
- 肺結核
- 肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 気胸
- 気管支拡張症
など
肺以外の臓器(心臓・大動脈など)の異常
胸部CT検査は「胸部」を撮影するため、肺だけでなく、心臓やその周辺にある血管も同時に観察されることがあります。例として下記が挙げられます。
- 心筋梗塞のリスク:心臓を取り囲む「冠動脈」の石灰化が偶然発見されることがあり、動脈硬化の参考情報になることがある。ただし心筋梗塞リスクの評価を目的とする場合は、心臓CT(冠動脈CT)が必要
- 胸部大動脈瘤:心臓から全身に血液を送る「大動脈」がこぶ状に膨らんだ状態で、大動脈瘤の有無や直径を計測し、破裂のリスクを評価できる
など
胸部CT検査で乳がんや膵臓がんは発見できる?
胸部CT検査でも乳房が写るため、乳がんが偶然見つかることがあります。ただし、胸部CT検査は乳がん検診のための検査ではないため、乳がんの評価にはマンモグラフィや乳腺超音波(エコー)検査が推奨されます。
膵臓は腹部に位置するため、検査の範囲としては胸部CT検査ではなく腹部CT検査に該当します。膵臓がんの検診には、腹部超音波(エコー)検査や腹部CT検査、腹部MRI検査などがあります。腹部CTで偶然早期の膵がんが見つかる例もありますが、膵がんは早期発見が難しい腫瘍であり、専門的な検査や複数の方法を組み合わせて評価することが一般的です *16,*17。
乳がんや膵臓がんの初期症状や検診については、下記記事で詳しく解説しています。
胸部CT検査の安全性について
胸部CT検査で、放射線被曝の心配はない?
胸部CT検査はX線を使用するため、放射線による医療被曝があります。医療の検査で受けるような低線量の放射線によるがんリスクについては、統計的な増加を明確に捉えることが難しいとされています。生活習慣などほかの要因と比較すると、その影響は相対的に小さいと考えられています*18。
実効線量(※1)の目安を比較すると、以下のようになります*4,*19。
- 胸部CT検査1回:約7mSv(低線量胸部CT検査:約1mSv)
- 日本人が1年間に自然界から受ける平均線量:約2.1mSv
- 発がんリスクが増加し始めるとされる線量:100mSv以上(※2)
※1:実効線量とは、放射線が全身に与える影響を、臓器の感受性などを加味して総合的に表した数値*8
※2:100mSv未満では、統計的に明確なリスク増加を検出することは難しいとされているが、放射線による健康影響は “しきい値(ある値を越えると状態が変わるといった、境目の値)がない” と考えられており、可能な限り被曝は少ないほうが望ましいとされている。また、放射線による発がんリスクは、100mSv以下では他の要因に隠れて統計的に明確に捉えにくいとされている。
胸部CT検査1回の実効線量は、私たちが日常生活で1年間に自然に浴びる放射線量の約3.3倍に相当します。しかし、発がんリスクが統計的に明確に増加し始めるとされる基準である「100mSv」と比べると、検査1回あたりの線量は非常に小さいことがわかります。
放射線被曝が不安な方や、できるだけ被曝のリスクを抑えたい方は、被曝線量を通常の7分の1程度まで抑えた「低線量胸部CT検査」を検討してもよいでしょう。詳しくは後述します。
造影剤にはどんな副作用がある?
胸部CT検査では、造影剤を腕の静脈から注射することがあります*2。造影剤は、まれに副作用が起こる可能性がありますが、その発生率は低いと報告されています*1。
- 吐き気、かゆみ、くしゃみ、発疹など:100人に数人程度
- 呼吸困難、血圧低下などショック症状:1/1000未満
重篤な副作用は非常にまれであり、万が一発生した場合にも、医療施設ではすぐに適切な処置が行える体制を整えています。検査前にはアレルギー歴やぜんそく、腎臓の機能などについて問診が行われますので、ご自身の状態を正確にお伝えください。
胸部CT検査の当日の流れと準備
胸部CT検査の当日の流れ
胸部CT検査の一般的な流れは、以下のとおりです*15。
1. 受付・問診
受付を済ませ、造影剤を使用する場合はアレルギー歴などについての問診票を記入します。
2. 着替え
検査着に着替えます。画像にノイズが生じるのを防ぐため、眼鏡や入れ歯、ネックレス、下着のワイヤーなどの金属類を外します*20。
3. 検査室へ入室
CT装置のベッドに仰向けに寝ます。造影剤を使用する場合は、事前に血管を確保するため、注射針を刺します。
4. 撮影
ベッドがゆっくりと動き、ドーナツ状の装置の中を通過します。撮影中はアナウンスに従い、約5~10秒息を止めて撮影します。
5. 終了
ベッドから起き上がり、検査室から退出します。
胸部CT検査にあたっての食事・服装・常用薬の注意点
造影剤なしの場合、食事制限はありません。造影剤ありの場合は、副作用による嘔吐を防ぐため、検査前2時間前から絶食で、水やお茶は飲んでも問題ないと指示する医療施設が多いです*2。受診する医療施設の指示をご確認ください。
また、服装は画像のノイズを防ぐため、金属類は身につけずに検査します20。金属製のボタン、ファスナー、フックなどがついていない服装(スウェットやTシャツなど)であれば、医療施設によっては私服のまま検査を受けられることもあります*2。
常用薬は、基本的に普段通り服用して問題ありませんが、糖尿病の薬を服用中の方は必ず事前に主治医や検査担当医にご相談ください*2。
健康診断や人間ドックのメイク・ネイル・服装について知りたい方は、下記記事もご覧ください。
人間ドックで低線量胸部CT検査を検討しよう
低線量胸部CT検査の受診がおすすめの方
従来の胸部CT検査よりも被曝線量が少ない低線量胸部CT検査が、人間ドックなどで普及しつつあります。以下に該当する方は、低線量胸部CT検査の受診を検討しましょう*21。
- 40歳以上の方
- X線(レントゲン)検査を除き、肺や心臓の検査を受けたことがない方
- 喫煙歴のある方、または現在も喫煙している方
- 自宅や職場などで受動喫煙の機会がある方
- 肺がんを患った血縁者がいる方
- 咳や痰が気になっている方
- 建設工事の現場などで、粉じんやアスベストのばく露歴がある方
喫煙は、肺がんのほか、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息など、多くの呼吸器疾患のリスクを高めることが知られています*22。国立がん研究センターのガイドラインでも、とくに喫煙指数(1日の喫煙本数✕喫煙年数)が600以上の方は、低線量胸部CT検査の受診が強く推奨されています*4。
胸部CT検査の受診頻度と受診場所
胸部CT検査の受診頻度に厳密な決まりはありませんが、目安として、「CT検診精度管理ガイドライン」の内容を紹介します。このガイドラインでは、年齢や喫煙歴に応じて、以下の受診頻度が推奨されています*23。
【受診頻度の目安】
- 40歳以上50歳未満:5年に1回程度の受診は許容される
- 50歳以上で低リスクの方(喫煙歴なし、または喫煙指数600未満):2年連続で受診し、以降は3~5年に1回が勧められる
- 50以上75歳未満で高リスクの方(喫煙指数が600以上で過去喫煙も含む):毎年の受診が強く勧められる
- 75歳以上:任意の受診とする
胸部CT検査は呼吸器内科のほか、「肺ドック」や「肺がんCT検診」などを実施する専門の医療施設で受診できます。マーソ内の下記ページからも、お近くの医療施設を簡単に検索・比較することができます。 ぜひ検索してみてください。
参考資料
*1.国立がん研究センター がん情報サービス CT検査とは
*2.国立がん研究センター中央病院 CT検査
*3.国立国際医療センター病院 肺がんCT
*4.国立がん研究センター 科学的根拠に基づくわが国の肺がん検診を提言「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」2025年度版公開
*5.日本人間ドック・予防医療学会 人間ドックの検査項目
*6.日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン2025年版」1 検出方法
*7.環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和6年度版)第2章 放射線による被ばく 2.5 身の回りの放射線
*8.環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和6年度版)第2章 放射線による被ばく2.3 放射線の単位
*9.東京都医師会 開業医のための保険診療の要点(II. 診療科別の基礎知識)[1] 内科
*10.国立がん研究センター がん情報サービス がん統計 最新がん統計
*11.国立がん研究センター がん情報サービス がん統計 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム
*12.国立がん研究センター中央病院 呼吸器外科 すりガラス状結節
*13.日本医学放射線学会「画像診断ガイドライン2021年版」
*14.日本呼吸器学会 呼吸器の病気
*15.国立国際医療センター CT検査
*16.国立がん研究センター がん情報サービス 膵臓がん 検査
*17.日本膵臓学会「膵癌診療ガイドライン2022年版」
*18.量子科学技術研究開発機構 CT検査など医療被ばくに関するQ&A
*19.環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和6年度版)第3章 放射線による健康影響 3.4 リスク
*20.胸部CT検診研究会「胸部検診用 CT 撮影マニュアル―シングルスライスヘリカル CT を対象にして」2004年
*21.日本予防医学協会 低線量胸部CT検査を受けられる方へ
*22.日本呼吸器学会 禁煙のすすめ
*23.日本CT検診学会「CT検診精度管理ガイドライン(第1版)」2004年






