人間ドックの検査結果で再検査や精密検査の受診指示があった場合、どうすればいいのでしょう。二次検査(再検査、精密検査)のあとに病気が見つかる確率を解説するとともに、二次検査の通知が届いたあとの行動、費用の目安などを紹介します。
★こんな人に読んでほしい!
・人間ドックで「再検査」「精密検査」になって不安な方
・再検査・精密検査の費用の目安を知りたい方
・再検査・精密検査をどこで受けるか迷っている方
★この記事のポイント
・再検査や精密検査は不安があっても必ず受診しよう
・再検査や精密検査は健康保険適用。費用は検査内容によってさまざま
・小規模の医療施設では必要な検査機器がないことも。かかりつけ医で二次検査を希望する場合は、検査できるか事前に確認しよう
・大病院での二次検査を希望する場合は、人間ドックを受診した医療施設やかかりつけ医で紹介状を発行してもらえるか相談する
・民間の医療保険加入は“健康状態の告知”が義務。再検査予定、確定診断前でも保険会社に伝える義務がある
目次
人間ドック後の「再検査」「精密検査」、行かないとどうなる?
再検査や精密検査になっても病気が確定したわけではない
人間ドックで二次検査(再検査、精密検査)になると、病気ではないかと不安に感じるものです。しかし、まだ病気が確定したわけではありません。人間ドックで見つかる病気には、がんや脳血管疾患、心臓疾患、生活習慣病などがありますが、二次検査におけるがんの発見率(実際にがんに罹患している確率)はそれほど多くありません。
以下の表は、自治体が実施しているがん検診の2018年度データです。5大がん検診で「要精密検査」と判定された方(要精検者)の割合は1.8~7.5%です。要精検者のうち、精密検査を受診した方の割合は71.4~92.9%、精密検査によってがんが発見された方の割合は1.31~5.06%でした*1。
がん検診の種類 | 「要精密検査」の 判定率 | 精密検査の 受診率 | 精密検査後の がん発見率 |
---|---|---|---|
胃がん(X線検査) | 7.2% | 82.2% | 1.72% |
胃がん(内視鏡検査) | 7.5% | 92.9% | 3.73% |
大腸がん | 6.2% | 71.4% | 3.17% |
肺がん | 1.8% | 83.8% | 2.27% |
乳がん | 6.3% | 89.2% | 5.06% |
子宮頸がん | 2.1% | 75.5% | 1.31% |
※対象:胃がん50~74歳、子宮頸がん20~74歳、その他40~74歳
脳血管疾患や心臓疾患、生活習慣病などを調べる人間ドックの検査でも、二次検査の指示があったからといって、病気が確定したわけではありません。二次検査で病気かどうかを明らかにして、早めに治療を始めることが大切です。表の精密検査の受診率にある通り、二次検査を受診しない方も一定数いますが、必ず受けるようにしましょう。
二次検査を受けて病気ではなかった場合の理由は、以下の記事で解説しています。
人間ドック・健診Q&A「人間ドック後の再検査や精密検査で、結果は『異常なし』。なぜ?」
再検査や精密検査を無視したらどうなる? 不安でも必ず受診しよう
人間ドック後に再検査や精密検査の指示があっても、「たまたま悪い結果が出ただけだろう」「病気が見つかるのが怖い」など、さまざまな理由で二次検査を受診したくないという方もいるかもしれません。
しかし、人間ドックで見つかるがんや脳血管疾患、心臓疾患、生活習慣病などの病気は、すべて早期発見・早期治療が重要です。たとえば、がんは死に至ることもある恐ろしい病気と思う方もいるかもしれませんが、発見の遅れが原因となることも少なくありません。早期発見できれば、がんを完治できる可能性が高まりますが、治療が遅れれば、のちに身体的・経済的負担を増大させる可能性が高まります。人間ドック後に再検査や精密検査の指示があれば、必ず受診するようにしましょう。
なお、健康診断の検査項目については、以下の記事で解説しています。
「再検査」と「精密検査」の違いとは? どんな検査をいつまでに受けるの?
再検査は結果を再確認するための検査、精密検査は原因を探るための追加検査
再検査と精密検査は、もう一度検査を受けるという点では同じですが、その検査の目的や内容、検査後の流れなどが異なります。
再検査の目的は、検査結果が正しかったかどうかを再度確認することです。そのため、再検査では人間ドックで受けた検査と同じ検査が行われます。再検査の結果に異常がなければ、体調や一時的な外部環境によるものとして「異常なし」と判断されますが、再び異常値が出た場合は精密検査を行うことになります。
一方、精密検査は、検査結果の異常値がどのような原因疾患によるものなのかを探り、治療の必要性を確認するために行われます。精密検査で実施される検査内容は、人間ドックの検査結果により異なります。精密検査で病気や病状がわかれば、必要に応じて治療が開始されます。
なお、人間ドックの結果表には、検査結果について「異常なし」「要再検査」「要精密検査」などの判定区分が記載されます。この判定区分は医療施設や検査方法によって異なります。下記は日本人間ドック学会の判定区分です*2。
A:異常なし
B:軽度異常
C:要再検査・生活改善
D:要精密検査・治療
E:治療中
上記判定区分に基づく結果表を作成している医療施設では、再検査はC、精密検査はDと記載されます。たとえば、血圧(収縮期)の項目では、129mmHg以下(基準値)であれば「A:異常なし」、130~139mmHgであれば「B:軽度異常」、140~159mmHgでは「C:要再検査・生活改善」、160mmHg以上は「D:要精密検査・治療」と判定されます*2。
再検査は指定される時期に受け、精密検査はなるべく早めに受けよう
再検査の場合は、結果表に「○ヶ月後に再検査」と記載されることが多いため、その指示に従いましょう。検査結果により異なりますが、再検査の時期は3ヶ月後や6ヶ月後と指定されることが多いです。
もし精密検査の通知があった場合は、すみやかな受診を心がけてください。病気によっては急速に進行するものもあるため、1ヶ月以内の受診が望ましいです。治療が必要な病気であれば、できるだけ早く治療プランを立て、治療を開始することになります。
「再検査」「精密検査」を受けると、いくらかかる?
再検査や精密検査で費用のかかる項目
人間ドックは任意検査のため保険適用外ですが、二次検査(再検査、精密検査)は病気の診断や治療を目的に行われるため健康保険が適用されます。つまり、原則3割負担で受診できます。
二次検査(再検査、精密検査)で必要な費用は、人間ドック時に受診した医療施設で検査するか否かで異なります。人間ドックと同じ医療施設を受診する場合は、再診料と検査費用がかかり、紹介状や検査データの発行手数料は不要です。一方、人間ドックと異なる医療施設で受診する場合は、初診料と検査費用がかかるほか、人間ドックを受診した医療施設に対して紹介状や検査データの発行手数料を支払うこともあります。
紹介状の発行は、二次検査を大病院(特定機能病院や一般病床が200床以上ある地域医療支援病院)*3で行う場合に必要となります。大学病院など、ほかの大病院で検査を希望する場合は、人間ドックを受けた医療施設等で紹介状の発行を相談しましょう。また検査データは、二次検査の指摘を受けた項目が心電図やX線検査、超音波検査などの画像検査の場合に必要となることがあります。事前に受診先の医療施設に確認しておくとよいでしょう。再検査、精密検査はどこで受けたらよいか、詳しくはこのあとの項で解説します。
検査費用は検査内容によって数万円かかることも
参考までに、二次検査(再検査、精密検査)の費用目安(保険適用、3割負担)を以下にまとめました。下記はあくまで目安であり、検査部位や項目、検査方法、医療施設などによって検査費用は異なります。詳しくは受診を予定している医療施設へお問い合わせください。表内のリンクからは、「これは何のための検査?」の各記事をご覧いただけます。
<5大がんに関する検査*4>
がんの種類 | 検査内容と費用相場(3割負担の場合) |
---|---|
胃がん | ・胃内視鏡(胃カメラ)検査:4,000〜5,000円 ※組織診も行う場合:+3,500~10,000円前後 |
大腸がん | ・大腸内視鏡(大腸カメラ)検査:5,000〜7,500円 ※組織診も行う場合:+3,500~14,000円前後 ・大腸X線(レントゲン)検査:4,000~6,000円 ・大腸CT検査(CTコロノグラフィ):6,000~12,000円前後 |
肺がん | ・胸部CT検査:5,000~10,000円 ・気管支鏡(肺カメラ)検査 (検査入院あり):40,000~70,000円 |
乳がん | ・マンモグラフィ検査 +乳腺超音波検査:2,000~4,000円 ※穿刺吸引細胞診や針生検による組織診も行う場合:+2,000~5,000円前後 |
子宮頸がん | ・HPV検査:1,500~6,500円 ・コルポスコープ(腟拡大鏡)検査 (組織診あり):5,000円前後 |
※検査の際に診察、投薬、処置など必要に応じて別途費用がかかる
※テキストリンクは「これは何のための検査?」の各検査記事にリンク
<その他の検査>
・血液検査:2,500~3,000円
・尿検査:1,000〜2,000円
・超音波(エコー)検査(部位による):1,000〜3,000円
・心電図:400〜1,000円
・ホルター心電図:5,000円前後
・MRI検査:5,000〜20,000円
・CT検査(1部位あたり):5,000〜10,000円
など
「再検査」「精密検査」はどこで受けたらよい? 人間ドックを受けた医療施設か、異なる医療施設か?
同じ医療施設であれば、検査データやカルテがあるため二次検査をスムーズに受診できる
人間ドックを受診した医療施設であれば、すでに検査データやカルテがあるため、二次検査(再検査・精密検査)をスムーズに受診しやすいです。費用面では、2回目の受診とみなされることで再診料で算定され、初診料よりも低額で済みます。紹介状や検査データの発行手数料なども不要です。
ただし、その医療施設が遠方にあると二次検査の受診は億劫になりがちです。再検査・精密検査後に治療が必要となり、通院が続く可能性を考えると、アクセスのよさは人間ドックの医療施設選びで考慮すべきポイントと言えます。
別の医療施設であれば、近場のクリニックまたは専門病院から選べる
人間ドック時とは異なる医療施設で再検査や精密検査を受ける場合、大きく以下の2つの選択肢があります。
【かかりつけ医、近所のクリニック】
近場で通いやすく、これまでのカルテが役に立つといったメリットがあります。ただし、小規模の医療施設の場合、再検査や精密検査に必要な検査機器がなく対応できないこともあります。人間ドックを受診した医療施設に「二次検査で必要な検査内容」を確認し、その検査が受けられるかどうか問い合わせてください。受診時は、紹介状は不要です。人間ドックの結果表を持っていきましょう。
【専門病院、総合病院、大学病院】
高度な専門医療機器がそろっており、過去の診療実績などもあるため、安心して受けられるというメリットがあります。一方で、予約がとれない、待合室での待ち時間が長いなどの注意点もあります。また、大学病院や200床以上の大病院では紹介状がない場合、診察料のほかに特別の料金として7000円以上(初診時の料金)が上乗せされます*5。大学病院や大病院の受診を希望する場合は、事前に人間ドック時の医療施設やかかりつけ医に紹介状の発行を相談しましょう。なお、紹介状の発行には発行手数料がかかります。
人間ドックの「再検査」「精密検査」に関するよくある質問
人間ドックの結果は、悪いと早く返ってくる?
人間ドックの結果の良し悪しと、結果の通知時期に関係はありません。約2~3週間で結果が郵送されることもあれば、医療施設によっては1ヶ月程度かかることもあります。結果の通知が遅く、いつごろになるか知りたい方は、医療施設に問い合わせてみるとよいでしょう。
再検査や精密検査の費用は医療費控除になる?
再検査や精密検査の費用は、二次検査(再検査、精密検査)をして、治療が必要となった場合は医療費控除の対象となります。この場合、治療に先立って行われる診察と同様に考えられるためであり、再検査・精密検査だけでなく人間ドックの費用もすべて医療費控除の対象です*6。ただし、二次検査をして治療の必要がなかった場合は、医療費控除の対象にはならないため注意しましょう。
再検査や精密検査になったら、医療保険には加入できない?
民間の医療保険に加入する際は、既往歴を含む健康状態の告知が求められます。人間ドックで「要経過観察・要再検査・要精密検査・要治療」のいずれかが指摘された場合は、確定診断を受ける前であっても原則、告知する必要があります。もし正直に告知せず加入し、告知義務違反が発覚した場合は、保険金を受け取れないだけでなく、保険会社から契約を解除される可能性があります。
告知の内容や範囲は保険により異なり、二次検査に関する告知が必要ない保険もあります。また、保険会社によっては、二次検査の結果が「異常なし」であれば、告知は不要と定めている場合もあります。詳しくは保険会社に確認してください。
参考資料
*1.国立がん研究センター がん対策研究所「全国がん検診実施状況データブック<2021>」
*2.日本人間ドック学会「2022年度 判定区分表(2022年2月1日一部訂正)」
*3.内閣府大臣官房政府広報室 紹介状なしで大病院を受診すると特別の料金がかかります。診療所や病院を適切に使い分けましょう。
*4.国立がん研究センター がん情報サービス がん検診
*5.厚生労働省 紹介状を持たずに特定の病院を受診する場合等の「特別の料金」の見直しについて
*6.国税庁 タックスアンサー No.1122 医療費控除の対象となる医療費