がん検診

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の費用・検査方法—痛みや前日の食事、注意事項も解説

大腸内視鏡検査 がん検診
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は大腸がんの早期発見に有用な検査です。「痛そう」「恥ずかしい」「食事制限や下剤が大変そう」などのイメージから受診を迷っている方のために、大腸カメラ検査の方法や費用、受診頻度、前日の食事等の注意事項、検査の負担を軽減する方法まで解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・大腸がんなど大腸の病気が気になり、大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を受けるか迷っている
・身内に大腸がんに罹患した方がいる
・大腸内視鏡(大腸カメラ)検査をラクに受けられる方法や医療施設の選び方を知りたい

★この記事のポイント
・大腸がんは日本人の罹患数第1位。リスク因子は肥満、喫煙・飲酒、食生活の乱れ
・便潜血検査(検便)だけでは早期がんや前がん病変であるポリープの発見が困難
・大腸内視鏡検査においてポリープを切除することで、大腸がんによる死亡のリスクが下がる
・大腸内視鏡検査の食事制限は前日から。食事は消化のよいものを心がけ、食物繊維が豊富な野菜やくだものは避ける
・腸内視鏡検査の実績が多い病院、経験豊富な内視鏡専門医や指導医がいる施設を探すときは「内視鏡指導施設」をチェックするとよい

目次

大腸がん検診を受ける意義

大腸がんは罹患数1位、死亡数2位の危険な病気

大腸がんは日本人に最も多いがんです。2019年の大腸がん罹患数は男性が87,872人、女性が67,753人で、男女計では全がんのうち罹患数が1位となっています*1

また死亡数も多く、2021年の統計データでは大腸がんによる死亡数は男性が2位、女性は1位、男女計では2位です*1。大腸がんは食の欧米化と高齢化により増え続けていることに加えて、若年化も進んでおり30代で発症する可能性もある危険な病気です。

早期発見・早期治療のために大腸がん検診を受けよう

大腸がんの発症リスクは30代後半から高まり、男性は70代後半まで罹患率が大きく上昇します。

大腸がんはある一定の大きさになると腹痛、便の変化、下血、下痢などの症状が現れますが、早期の場合には自覚症状が現れにくい病気です。そのため、自覚症状がなくても定期的な検診が大切です。

大腸がんはステージⅠで治療できれば5年生存率(ネット・サバイバル※)が92.3%*2と予後がよい病気なので、早期発見が非常に重要です。大腸がんの兆候に少しでも早く気づき治療につなげられるよう、大腸がん検診を定期的に受けましょう。

※ネット・サバイバル:「がんのみが死因となる状況」を仮定して算出された数値。2014-2015年5年生存率から「相対生存率」に代わり採用されている。

前がん病変の大腸ポリープは便潜血検査で見つけることが難しい

大腸がんが発生するパターンは2つあり、見つけやすさが異なります。1つは正常な粘膜から突然がんが発生するパターンで、もう1つは良性ポリープが徐々にがん化していき悪性になるパターンです。後者の場合、自治体などの大腸がん検診で実施される「便潜血検査(検便)」だけでは見逃される可能性が高いです。

便潜血検査は自宅で採取した便に潜血があるかどうかで大腸がんのリスクを評価する検査です。これは、腸内に大腸がんができると便でこすれた際に便内に血が混ざるためです。しかし、サイズが小さい早期の大腸がんや前がん病変のポリープ(腺腫)は便内に血が混ざらないことがあるため、便潜血検査で発見するのは困難です。

便潜血検査で見つけるのが難しいポリープなどを、比較的早期から調べられるのが「大腸内視鏡(大腸カメラ)検査」です。

アメリカでは、10年に1度大腸内視鏡検査での大腸がんスクリーニング検査が推奨されています。アメリカは大腸がんが多いイメージがあるかもしれませんが、アメリカの人口が日本の約2.5倍ほどであるにもかかわらず、大腸がんでの推定死亡数(日本のデータは2022年、アメリカは2023年)は日本とほぼ同数です*3,*4日本人の大腸がん罹患率・死亡率は、高齢化の影響を加味してもアメリカに比べて高いのです。

また、大腸がんの死亡率が増え続けている日本とは対照的に、アメリカでは1970年から2016年にかけて大腸がんによる男女の死亡率は53%も減少したと報告されています*5アメリカで大腸がんの罹患率・死亡率が減少した理由のひとつは「大腸がん検診の受診率の高さ」と言われています。

海外の報告によると、大腸内視鏡を用いた大腸がん検診とポリープ切除術によって大腸がん罹患率は平均して約85%低下し、大腸内視鏡でポリープを切除することが死亡率の減少に寄与するという結果が得られています*6

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は何歳から? 受診頻度は?

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は2種類ある

大腸内を調べる内視鏡検査には、「全大腸内視鏡検査」と「S状結腸内視鏡検査」の2つがあります。

全大腸内視鏡検査S状結腸内視鏡検査
観察範囲肛門、直腸、S状結腸、下行結腸、
横行結腸、上行結腸、盲腸
肛門、直腸、S状結腸のみ
特徴・前日からの食事制限や下剤の
服用が必要
・検査当日も下剤を服用して
腸内の便をきれいに出す必要がある
・大腸ポリープや大腸がんの7〜8割は
肛門〜S状結腸にできると言われ、
大腸がんの好発部位を簡便に調べられる
・前日の食事制限が不要で、当日に
浣腸洗浄するだけで検査ができる
検査時間15分前後(前処置:3時間程度、
検査後の安静時間:1時間程度)
5〜10分程度
事前予約必要不要の場合もある

全大腸内視鏡検査は、直腸から盲腸まで大腸の全部位を調べる検査です*7。がんやポリープに対する診断精度が非常に高い一方、大腸を空っぽにしてからカメラを挿入するため、前日から食事制限や下剤の服用が必要であるなど負担を感じやすい検査でもあります。

S状結腸内視鏡検査は、大腸がんの好発部位である大腸のS状結腸までを観察する検査です。食事制限等の前処置はほとんどなく短時間で検査ができます。大腸がんの発症リスクが少ない方や全大腸内視鏡検査を受ける時間がない方は検討してもよいでしょう。ただし、大腸全体を観察する検査ではないため、次項で紹介する大腸がんのリスク因子に複数当てはまる方は全大腸内視鏡検査の受診が望ましいと言えます。

なお、本記事では以降「大腸内視鏡(大腸カメラ)検査/大腸内視鏡検査」は「全大腸内視鏡検査」を指すものとします。

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を受けたほうがよい方

国が推奨する大腸がん検診(便潜血検査)の年齢と頻度は40歳以上、年1回です。便潜血検査で1回でも陽性判定が出た方は大腸内視鏡(大腸カメラ)検査で精密検査を受けましょう。

また、便潜血検査で陰性だった方も、40歳を過ぎたら大腸内視鏡による検査を検討しましょう。下記は大腸がんのリスク因子です*8-10。複数当てはまる場合は大腸内視鏡検査を検討してみてください。

  • 喫煙している
  • 加工肉・赤身肉の摂取量が多い
  • 食生活が乱れている
  • 飲酒する量や頻度が多い
  • 運動習慣がない
  • 肥満度(BMI)が高い
  • 高身長である
  • 大腸がんを患った血縁者がいる
  • 潰瘍性大腸炎やクローン病を患っている
  • 遺伝性疾患が疑われる(リンチ症候群、家族性大腸ポリポーシスなど)

ただし、便秘や下痢をしやすい、便秘と下痢を繰り返す、お腹が張る、残便感があるといった排便症状が慢性的にある方や、赤や黒っぽい便が続くなどの症状がある場合は、すみやかに医療施設で診察を受けてください。

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の受診頻度は?

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の受診頻度について、日本消化器内視鏡学会のガイドラインでは下記を推奨しています*10,*11

なお当ガイドラインでは、今後本邦でも大腸がん検診が便潜血検査ではなく大腸内視鏡検査が導入されると仮定した場合、異常がなければ5年後に大腸内視鏡検査を行うことが提案されています。このことから、大腸内視鏡検査の結果異常がなかった方は、次の大腸内視鏡による検査の目処は5年後と考えてよいでしょう。

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の費用

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の費用は生検やポリープ切除の有無によって異なる

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の費用は、人間ドックなどでの自由診療か保険診療かによって、また検査中にポリープなどが見つかった場合の処置等によっても大きく異なります。自由診療と保険診療(3割負担)の費用目安をまとめました。

自由診療(10割負担)保険診療(3割負担)
適用例人間ドックや自費での大腸がん
検診など、自覚症状はないが
疾患の有無について確認
したい場合
排便障害や腹部の違和感などの自覚
症状があり、医師が大腸内視鏡による
検査が必要と判断した場合、または
便潜血検査で陽性(要精密検査)と
判定された場合
大腸内視鏡(観察)20,000〜30,000円6,000〜7,000円
大腸内視鏡+病理
組織検査(生検)
20,000〜60,000円
※保険診療に切り替わる場合あり
10,000〜20,000円
ポリープ切除60,000〜100,000円
※保険診療に切り替わる場合あり
20,000〜30,000円
注:費用は診察料や使用した薬剤・処置などによって変動する
注:生検の費用は検査箇所数によって、ポリープ切除の費用は切除数、大きさによって変動する

ポリープが良性か悪性か組織をとって判定する病理組織検査(生検)は、1ヶ所なら4,000円前後、2ヶ所なら8,000円前後、3ヶ所なら1万円前後というように検査数によって費用が変わります。また、見つかったポリープをその場で切除(治療)した場合、大腸内視鏡ではなく「内視鏡的大腸ポリープ切除術」が適用されます。費用はポリープの大きさや切除した数によって変わりますが3割負担の方で2〜3万円が目安です。最終的に支払う費用は初診・再診料や使用した薬剤などによっても変わるため、検査当日は念のため3割負担の方で3〜4万円程度を準備しておくと安心でしょう。

なお、人間ドックなど自由診療で大腸内視鏡検査の際にポリープ等が見つかり生検やポリープ切除を行うと、生検やポリープの費用は保険診療に切り替わる場合があります。費用の詳細は事前に受診予定の医療施設に問い合わせておき、自由診療の場合でも当日は必ず保険証を持参しましょう。

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の費用助成・補助

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の費用は健康保険組合等で一部または全額負担してもらえる場合があります(所属している団体によって異なります)。適用には対象年齢や医療施設が定められていたり、ポリープ切除をした場合には適用外になったりするなど細かい条件がある場合が多いため、加入中の健康保険組合等が大腸内視鏡検査や人間ドックの補助金制度を設けているかどうか確認してみてください。

また、お住まいの自治体が人間ドックの費用助成・補助制度を設けている場合もあります。船橋市を例に挙げると、市内在住で国民健康保険に加入している40歳以上や後期高齢者が市と提携している病院で人間ドックを受けた場合、1万3000円を助成しています*12

各自治体の人間ドック費用助成についてはこちらでまとめています。

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の検査内容

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査のメリット・デメリット

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は、先端にカメラのついたチューブをお尻(黄門)から挿入し大腸内部を直接観察する検査です。便潜血検査では見逃されやすい大腸がんの早期発見に優れており、観察中にポリープなどが見つかれば、一部を採取して詳しい検査に回せたり、その場で切除(治療)したりすることも可能です。一方、腸を空っぽにするための前処置に負担がかかるなどのデメリットもあります。大腸内視鏡検査のメリット・デメリットをまとめました。

【メリット】

  • 病変を直接観察できるため、検査精度が高い
  • 検査と治療を同時に行うことができる
  • 腫瘤などの病変が見つかり、悪性が疑われれば、その場で組織を採取できる
  • 大腸がんの前がん病変であるポリープを見つけることができる
  • 大腸がんだけでなく、潰瘍性大腸炎、クローン病などさまざまな大腸の病気も発見できる

【デメリット】

  • 生検やポリープ切除など、処置によって費用が大きく異なる
  • 下剤の服用につらさを感じやすい
  • 前日の食事制限など、検査にともなう制限が多い
  • 身体的負担が大きい(痛みをともなう場合がある)
  • 検査で使用する薬の副作用のリスクがある
  • 偶発症(※)のリスクがある
  • 検査者の技術の影響が大きいため、経験が乏しい医師の場合は検査に時間がかかることがある

※偶発症:大腸内視鏡を挿入する際やポリープの組織を採取する際に、ごく稀に腸を傷つけて出血してしまったり穴を開けてしまったりすることがあり、このような検査にともなう重篤なリスクを偶発症と呼ぶ。なお、2008〜2012年の5年間での大腸内視鏡検査による偶発症の頻度は0.011%であったと報告されている*11

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の負担を軽くするコツ

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は、臓器をすみずみまで観察できるよう大腸内を空っぽにして行います。そのため前日から食事制限や下剤を服用する必要があり、こうした事前の準備に負担を感じることがあります。食事制限や下剤などの負担を少しでも軽くするコツを紹介します。

前処置時の下剤の負担を軽くするには?

下剤(腸管洗浄剤)は検査当日に医療施設内で服用する場合と、前日の夜などから自宅で数回に分けて服用する場合もあります。腸内に便が多く残っていると、下剤を飲む量が多くなってしまい前処置に時間がかかりやすいため、検査前までに腸内の便をできるだけ出しておくことが大切です。検査の数日前から過度な飲酒や極端に油分の多い食事は控え消化のよい食事をとるよう意識し、検査前日は医療施設から指示された食事の決まりごとを守りましょう。便秘気味の方は検査2〜3日前から下剤を処方してもらえる場合があるので、事前に必ず医療施設に相談しておきましょう。

下剤の量が多くて飲むのが大変、重たく感じて飲みづらい、味がまずいなど、下剤自体を飲むのがつらいとの経験談も多く聞かれます。しかし近年では味が改良され、従来の水で溶かすタイプのものより少ない量ですむ下剤や、錠剤の下剤など選択肢が増えています。受診予定の医療施設に、下剤の種類を選べるかどうかを確認してみましょう。

食事制限メニューを考えるのが大変なときは?

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査では、多くの場合検査前日あるいは数日前から食事制限が、検査当日は絶食が指示されます。医療施設によっては前日用の専用食(検査食)が配布されますが、配布がない場合は自身で食事に留意する必要があります。献立を考えるのが億劫な方や忙しい方は、コンビニやスーパーで購入できる食品を活用しましょう。レトルト粥、鮭やツナのおにぎり(海苔ははずす)、卵やツナのサンドイッチ、プレーンタイプのサラダチキンなどが、前日に食べてもよいものです。また、通販サイトなどでは大腸内視鏡(大腸カメラ)検査用の検査食の購入も可能です。なお、食事制限に関しては「検査前後の食事制限について」で詳しく解説します。

痛みの少ない検査を受けるには?

経験豊富な内視鏡医の在籍や検査数、設備に着目して医療施設を選ぶとよいでしょう。大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は繊細な技術が必要な検査であるため、慣れていない医師と熟練した医師では検査時間や痛みに差が生じます。なお、鎮静剤を使用すればウトウトしている間に検査を受けられるため、痛みを感じることはほとんどありません。鎮静剤の使用の有無も事前に医療施設に確認しておくとよいでしょう。医療施設の選び方は「おすすめの施設の選び方6つのポイント」で解説します。

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の流れ・注意事項

検査前後の食事制限について

確かな検査をするためには、大腸を空っぽにし、観察しやすくしておくことが非常に重要です。そのためには検査の数日前から食事に留意することが望ましいです。食事制限をいつから始めるかは医療施設によって異なりますが、多くの場合2〜3日前から腸に残りにくい食材を選ぶよう意識し、前日は食事制限を行うよう指示されます。前日用の専用食(検査食)キット等が配布された場合は、キットに含まれていない食べものや指定以外の飲み物の摂取は控えましょう。

専用食がない場合は自身で食事制限をすることになります。下記に、食べていいもの・避けたいものをまとめました。前日の朝・昼・夕食のメニューやレシピを考える際の参考にしてください。

<前日に食べてよいもの・避けたいもの例>

【食べてもよいもの】
・消化のよい食品
・脂肪分の少ない肉や魚
【避けたいもの】
・食物繊維が多いもの
・脂肪分が多いもの
・ゴマ、ナッツ類など消化されにくいもの
炭水化物白米、うどん、そうめん(薬味は
入れない)、食パン、ロールパン
(ジャムやバターは不可)、
フランスパン、じゃがいもなど
玄米、雑穀米、そば、ラーメン、
パスタ、全粒粉パン、ブラン系パン、
あんパン、クロワッサンなど
その他の
食材
卵、豆腐、鶏ささみ、鶏胸肉(皮は
除く)、赤身肉(豚ヒレ肉、
牛モモ肉など)、白身魚(タラ、
鮭など)、魚肉ソーセージ、
ちくわ、かまぼこ、バナナなど
豚肉、牛肉、青魚(さば、ブリなど)、
エビ、カニ、イカ、タコ、貝類、
脂肪分の多い肉(鶏モモ肉、豚バラ肉、
牛ロース肉など)、ベーコン、
ソーセージ、揚げ物、野菜類、種のある
くだもの、こんにゃく、豆類、
乳製品(チーズ、ヨーグルトなど)、
海藻類、きのこ類、ふりかけ、ジャム、
ゴマ、ナッツ類、チョコレート、
ポテトチップスなど
飲料水、お茶、コーヒー、紅茶(砂糖のみ
可、ミルクやレモンは入れない)、
炭酸飲料(炭酸水、サイダーなど)
牛乳、乳製品飲料、ジュース、青汁、
アルコールなど

野菜類やくだもの類、海藻類やきのこ類などは、普段であれば積極的に摂りたい食材ですが、皮や種、繊維が腸内に残りやすく検査の妨げになるため、大腸内視鏡(大腸カメラ)検査前には避けたい食材です。乳製品も腸粘膜に残りやすいため避けましょう。アルコールには腸の動きを活発にさせたり血管を拡張させたりする作用があるため、検査時の出血が増えてしまう可能性があります。これらの理由から前日の飲酒は原則的に禁止としている医療施設が多いです。

便秘気味の方や万全な状態で検査を受けたい方は、2〜3日前から脂っこい食事や上表の食材を控え水分を多めに摂るように意識しましょう。

検査前のメニューを考えるのが大変な方は、先述のコンビニ食や通販サイト等で購入可能な専用食を活用してもよいでしょう。

そのほか、前日までの食事や服薬等に関する注意点を下記にまとめました。

  • 夕食は19〜21時ごろまでにすませる(医療施設によって異なる)。以降は水分の摂取は問題ないが、固形物は口にしない
  • 食事を抜くと腸の動きが鈍くなるため、前日の食事は必ずとる
  • 常用薬がある場合は、いつまで服用してよいか医療施設に確認しておく

検査当日の流れ

大腸内視鏡の検査は前処置(腸内に残っている便を下剤できれいにする)にかかる時間に個人差があるため、お昼過ぎから行われることが多いです。一例として、14時から大腸内視鏡(大腸カメラ)検査をする場合の当日の流れを紹介します。実際の所要時間は鎮静剤の使用の有無、生検やポリープ切除の有無などによって異なるため、あくまで参考としてください。

<検査当日(来院前)の注意事項>

  • 朝食・昼食は絶食。水やお茶は飲んでよい
  • 大腸の血流に影響する可能性があるため、当日は禁煙する
  • 鎮静剤使用を予定している場合は検査後車やバイクの運転ができないため、移動手段を確保しておく

<来院後の流れ>
10:00  検査予約時間の3〜4時間前に来院
     問診票の記入や検査説明を受ける
10:30  下剤を飲み、便の色が薄い黄色か透明になるまで排便を繰り返す
     検査可能な状態か確認がとれたら、検査着に着替える
13:30  検査台に横になり鎮静剤を投与
     横向きに寝てお尻の穴に局所麻酔のゼリーを塗る
14:00  大腸内視鏡検査(10〜15分前後※)
※ポリープを切除する場合には 1個につき追加で5分程度追加時間がかかる
14:30頃 検査終了(終了後30分〜1時間程度はリカバリールームなどで安静にする)
15:30頃 医師による結果説明(郵送の場合もある)
15:45頃 会計

検査着はチューブを入れる直前に黄門付近に切り込みを入れる紙ズボンのようなもので、肌の露出は最小限です。

便が透明になるまで下剤を飲むのがつらいとの声も多く聞かれますが、腸内をしっかり洗浄することで腸内をすみずみまで観察しやすくなります。なお、医療施設によっては来院後ではなく自宅での下剤の服用を指示することもあります。便がほぼ排出されると多くの場合は便意も落ち着きますが、水のような便のため、医療施設に着くまでに漏れてしまうこともあります。移動時の漏れが心配な方は、紙パンツや紙オムツ、女性の場合はナプキンを使ってもよいでしょう。替えの下着も用意しておくと安心です。電車などを利用する場合は、事前に途中のトイレの場所などを確認しておきましょう。

検査中の便の漏れを心配する声もありますが、便が少し残っていたとしても内視鏡で洗い流し吸いとりながら検査を行うため、外に漏れることはほぼありません。もし漏らしたとしても医療従事者が気にすることはないので、安心して検査を受けましょう。

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は生理中でも可能か

結論から言うと生理(月経)期間でも検査は行えます。ナプキンやタンポンの使用も問題ありません。

ただし、大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は食事制限や下剤の服用などが必要な検査です。生理痛が重い、貧血気味になるなど、生理による体調不良が心配な方は、生理期間以外での受診が安心だと言えるでしょう。大腸内視鏡検査はほとんどの場合予約制なので、生理期間をはずして予約をし、生理周期がずれて検査日と被りそうな場合は医療施設に相談しましょう。

なお、大腸がん検診として行われる便潜血検査は、生理中は検査をすることができません。

健康診断や人間ドックを生理中に受けてもよいかどうかについては下記記事で解説しています。

検査後の注意事項

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査後の注意事項は以下の通りです。

  • 検査後は早めに水分を摂取する
  • 検査当日のお風呂はシャワーで済ませる
  • 検査中に腸に空気を入れるため、検査後はお腹が張ることがある
  • おならやゲップが出やすくなる(出したほうが体内の空気が抜けてよい)

さらに「鎮静剤を使用した方」と「ポリープの組織採取(生検)もしくは切除した方」は以下の点にも注意してください。

【鎮静剤を使用した方の注意事項】

  • 検査後は車やバイク、自転車の運転、高所での作業などは控える
  • 鎮静剤の影響で目がチカチカする、吐き気や頭痛、心臓がドキドキするといった症状が現れる場合がある(症状が強い場合は医療施設に連絡)

【生検またはポリープ切除をした方の注意事項】

  • 検査後1週間前後は運動や飲酒、長時間の入浴は控える
  • 検査後2〜3日は消化のよい食事にする
  • カフェインの強い飲み物やアルコールを控える(タバコは可)

ポリープを切除していない方はとくに食事や水分の制限はありませんが、腸への負担を軽くするために消化のよい食事から再開していくとよいでしょう。

検査後のアルコール摂取制限については医療施設によって異なりますが、内視鏡検査のあとは胃腸の動きが鈍くなること、検査時に使用した薬剤との兼ね合いなどから、多くの場合しばらく控えるよう指示されます。アルコールは検査後24時間以上経ち、体調が戻ってからが望ましいでしょう。もしアルコールを飲んで体調不良になった場合は、アルコールの摂取をすぐに中止し、十分な水分補給をしましょう。それでも改善しない場合や悪化する場合は、医療施設に連絡しましょう。

なお、検査後に腹痛や下痢、血便、気持ちが悪いような感覚が続く場合も、検査を受けた医療施設に相談してください。

おすすめの施設の選び方6つのポイント

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の負担をできるだけ軽くするために重要なのが「医療施設選び」です。「安心」「痛くない」「恥ずかしくない」大腸内視鏡検査を受けられる施設選びの6つのポイントを紹介します。

経験豊富な医師が内視鏡検査を行っているか

内視鏡の経験が豊富な医師が検査を行っているかどうか調べるときは、日本消化器内科学会認定の「内視鏡専門医(もしくは指導医)」かどうかをチェックしましょう。

内視鏡専門医(もしくは指導医)は試験・経験年数・論文発表などいくつかの厳しい条件を満たした医師のみが持つ資格であるため、内視鏡の経験が豊富です。大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は胃カメラよりもさらに高度な技術が必要とされる検査のため、熟練した内視鏡医ほど安全に、すばやく検査を行うことができます(ポリープの有無や個数、前処置の状態によって異なります)。

内視鏡検査の実績が豊富な医療施設か

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の件数やポリープ・早期がんの切除件数・切除率などをWebサイトなどで公表している医療施設は、実績や経験に自信がある医療施設だと言えます。しかし、実際は大腸内視鏡の検査数等を公表している施設は多くないため、実績が豊富で設備が整っている施設を選びたい場合は「内視鏡指導施設」かどうかを確認しましょう。

内視鏡指導施設は下記を含むいくつかの条件をクリアした施設のみが持っています。

  • 教育に必要な大腸内視鏡スコープ(2本以上)を備えている
  • 大腸内視鏡検査の年間検査件数250件以上
  • 内視鏡指導医1名、内視鏡専門医2名以上が常勤していること
  • 十分な指導体制、指導カリキュラムがとられていること
  • 病理診断の設備が整っていること
  • 内視鏡洗浄機を備えていること

内視鏡指導施設ならびに指導連携施設は下記ページから確認できます。
日本消化器内視鏡学会 指導施設・指導連携施設一覧

ポリープ切除に対応しているか

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を行っている医療施設によっては、大腸内視鏡による観察のみ、またはポリープが見つかった場合は組織採取まで行い、ポリープの切除(治療)は他院を紹介することもあります。その場合、ポリープ切除の際にもう一度食事制限や下剤などの前処置を行うことになり、切除するまで不安な気持ちのまま過ごすこともありそうです。こうした点を考慮すると、検査中にポリープが見つかったら切除までできる医療施設のほうが身体的・精神的負担は軽くすむと言えそうです。

ただし、10mmを超えるものは外科手術などで切除する場合があるため、すべてのポリープが検査当日に切除可能ではありません。

鎮静剤の使用可否や複数の下剤を扱っているか

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査で使用する鎮静剤は、ウトウトと眠ったような状態にし不安や緊張をやわらげる目的で使われます*11外科手術で使用される「全身麻酔」とは異なり短時間で覚醒しますが、意識や血圧の低下などが起こる場合があることから、鎮静剤を使用するにはモニタリングや酸素吸入器、リカバリースペースなど、機器や十分なスタッフを備えている必要があります。鎮静剤の使用を希望する場合は、環境が整っているかどうかを確認しましょう。

また、近年は下剤の種類が増えており、複数の下剤から自身に合うものを医師と選べる医療施設も増えています。下剤による負担を軽減したい場合は、複数の下剤の取り扱いがあるか確認しましょう。

痛みに配慮した検査法を取り入れているか

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は、空気をお尻の穴から入れて腸内をふくらませたところにチューブを通していく方法が一般的です。しかし、チューブをスムーズに腸内へ進めていくには熟練した技術が必要で、チューブが腸内に引っかかると痛みが強くなることがあります。また、腸内に注入された空気が検査後も吸収されずにお腹が張るのも痛みにつながります。

最近ではチューブを通す際に水を一緒に流す「侵水法」が広まりつつあり、従来よりも痛みの少ない検査を受けることが可能です。ほかにも、お腹をふくらませる際に、より体内に吸収されやすい炭酸ガスを利用することで痛みを和らげる工夫をしている施設もあります。受診する施設が痛みを軽減する検査法を導入しているか確認しましょう。

女性に配慮されているか

大腸内視鏡(大腸カメラ)検査における検査前の便の色のチェックやお尻からチューブを通す行為に恥ずかしさや抵抗感を覚える方も少なくないでしょう。

医療施設によっては前処置室(下剤を飲んだり、トイレがあるスペース)が男女分かれている、女性医師が担当しているなど女性に配慮した検査を行っている施設もあります。恥ずかしさなどから検査をためらっている方は、女性に配慮した取り組みをしている施設を選ぶとよいでしょう。

参考資料
*1.国立がん研究センター がん情報サービス がん統計 最新がん統計
*2.国立がん研究センター がん情報サービス 院内がん登録生存率集計
*3.国立がん研究センター がん情報サービス がん統計予測
*4.American Cancer Society. Key Statistics for Colorectal Cancer
*5.American Cancer Society. Facts & Figures 2019: US Cancer Death Rate has Dropped 27% in 25 Years
*6.Sidney J, et al. Prevention of Colorectal Cancer by Colonoscopic Polypectomy. The New England Journal of Medicine, December 30, 1993
*7.国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん検診について
*8.国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん(結腸がん・直腸がん)予防・検診
*9.国立がん研究センター がん対策研究所 日本人における身長と大腸がんリスク
*10.日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」 2020年
*11.日本消化器内視鏡学会
*12.千葉県船橋市 人間ドック費用助成について

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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