前立腺がんは男性の罹患数第1位のがんです。前立腺がんを早期発見する検査として活用されているのがPSA検査です。本記事では、PSA検査の検査方法や費用相場、有用性について解説します。加えて、年齢ごとのPSA基準値や検査結果に影響を与える要因についても紹介します。
★こんな人に読んでほしい!
・前立腺がんが気になる方
・前立腺がんにかかった家族がいる方
・PSA検査の方法や基準値、費用について知りたい方
★この記事のポイント
・PSAは前立腺がんの腫瘍マーカーで、検査方法は通常の採血と同じ
・PSA検査は前立腺がんの一次スクリーニングではもっとも精度が高く、費用も比較的安価
・推奨年齢は自治体のがん検診などの場合には50歳以上だが、前立腺がんの家族歴がある場合は40歳代で受けておくことがガイドラインで推奨されている
・PSA検査を自由診療で受ける場合、費用相場は2,000~4,000円程度
・PSAの基準値は年齢によって変化する
目次
前立腺がんの罹患数は男性第1位。PSA検査を受けよう
前立腺がんは早期には自覚症状が現れにくい
2017年以降、前立腺がんの罹患数は男性第1位です*1。国立がん研究センターによれば、日本人男性の9人に1人は前立腺がんにかかるとされています*2。
前立腺がんは自覚症状が現れにくいという特徴があります*3。進行すれば膀胱や尿道に負担がかかることで、頻尿・残尿感・血尿・尿漏れといった症状が現れる場合もありますが、これは前立腺肥大症や前立腺炎などの病気とも共通しているため、明らかな異常として自覚するのは難しいです。多くの場合、進行がゆっくりであることが知られていますが、進行するとリンパ節や骨に転移し、肺や脳などほかの臓器に遠隔転移するケースもあります*3。
なお、前立腺がんと症状が似ている前立腺肥大症はまったく別の病気で、前立腺肥大症が前立腺がんになることはありませんが、前立腺がんと並行して発症することがあるとされています*3。
PSA検査は前立腺がんのスクリーニングに用いられる血液検査
前立腺がんを早期発見するために活用されているのが、PSA検査とよばれるスクリーニング検査です。PSA検査は、前立腺がんのスクリーニングとしてはもっとも高精度とされています*4。また、採血のみで前立腺がんの疑いを調べることができるため、非常に簡便です。
PSAとは前立腺特異抗原(Prostate Specific Antigen)の略語です。PSAは、前立腺という男性特有の臓器で作られる特異的なタンパク質で、前立腺がんになると血液中に大量に放出されるため*5、腫瘍マーカーとして広く使われています。
腫瘍マーカーについては、下記記事で詳しく解説しています。
PSA検査を受ける年齢の目安
前立腺がんは年齢とともに発症リスクが高まります。50代後半から罹患率が徐々に高くなり、60代前半から顕著に上昇します*6。前立腺がん検診ガイドラインでは、PSA検査を用いた研究で50〜54歳において死亡率減少効果が認められたことから、住民健診(自治体が実施する健康診断やがん検診)において50歳以上の男性を対象に前立腺がん検診の実施を推奨しています*7。また、前立腺がんの家族歴(家族の既往歴)がある男性は、人間ドック等の任意型健診の前立腺がん検診において、40歳代からの受診を推奨しています*7。
厚生労働省のがん検診の指針には、前立腺がん検診が含まれていません*8。しかしながら、2024年度の統計では、全国78.6%の自治体がPSA検査による前立腺がん検診を実施しています*9。
検診でPSA検査を受けるメリットとして、比較的がんを早期発見することができるため治療法の選択肢が多くなること、予後がよいことなどが挙げられます。神奈川県横須賀市で2001~2015年に検診で発見された977例の前立腺がんと、2,117例の検診外で発見された前立腺がんを比較すると、前者は転移している割合が5.2%であったのに対して後者は15.0%と、検診で発見されたがんのほうが早期の段階でした*7。
人間ドックなら40歳から前立腺がんのリスクを知ることができる
先述の通り、前立腺がん検診ガイドラインでは、前立腺がんの家族歴(家族の既往歴)のある男性は、人間ドックなどの任意型健診(自由診療)の前立腺がん検診において、40歳代からの受診を推奨しています*7。
とくに、前立腺がんの家族歴(家族の既往歴)がある方は、発症リスクが高くなるため、40代から積極的に検診を受けることをおすすめします。第一近親者(親、兄弟、子ども)の罹患者数が多いほど、またその近親者のがん診断時年齢が若いほど、発症リスクが高まることがわかっています。日本国内の研究では、第一近親者が前立腺がんにかかっている場合には、前立腺がんの発症リスクが5.6倍になるとされています*7。
なお、PSA値は年齢によって基準値が異なるほか、一度受診したあとの推奨受診頻度は、その際のPSA値によって左右されます。詳細は後述の「PSA検査の基準値」で解説します。
家族歴の考え方、がんと遺伝の関係は下記記事で解説しています。
PSA検査の費用は自由診療と保険診療とで異なる
PSA検査の費用は自費で2,000~4,000円
PSA検査の費用は自由診療と保険診療の場合で異なります。
自由診療の場合
自覚症状がなく検診目的でPSA検査を受ける場合には、人間ドックなどの自由診療を自己負担で受けることになります。まずは人間ドックのプランの血液検査もしくは腫瘍マーカー検査の項目にPSAが含まれているかどうかを確認してください。含まれていない場合、ほとんどの医療施設では、オプション検査として、基本の人間ドックに前立腺がん検診としてPSA検査を追加することができます。基本の人間ドックに加えて2,000円~4,000円程度の追加料金が発生します。その他、メンズドックなど、基本の人間ドックと男性に多い疾患の検査がセットになったプランがあります。全国のPSA検査が受けられる医療施設は下記リンクからご覧いただけます。
会社の健康診断にはPSA検査は含まれていないことが多いです。ただし、加入している被用者保険(協会けんぽ、各健康保険組合等)や受診する医療施設などによってはPSA検査を追加できる場合もあるため、会社や受診する医療施設にPSA検査を受けられるかどうか事前に確認しておくことをおすすめします。
保険診療の場合
頻尿や残尿感、血尿など前立腺がんを疑う症状がある場合には、人間ドックなどでの自由診療ではなく医療施設を受診してください。医師がPSA検査を必要だと認めた場合には健康保険が適用されます。3割負担の場合を例に挙げると、検査費用1,000円前後に初診料などが加わります。
自治体の前立腺がん検診は安価
前立腺がん検診は、厚生労働省が指針を定めるがん検診には含まれていません*8。しかし、前述の通り、全国約8割の自治体で独自に前立腺がん検診を実施しています。
PSA検査の費用の一部が公費で負担されるため、500~2,000円程度と安価に受けることができます。対象年齢や受けられる頻度は自治体によって異なりますので、お住まいの自治体に確認しましょう。
【東京都世田谷区の場合*10】
対象:60歳以上の世田谷区民の男性
頻度:生涯で1度のみ
自己負担費用:600円
【千葉県船橋市の場合*11】
対象:50歳以上で5歳刻みごとの年齢の男性市民
頻度:5年に1回
自己負担費用:500円
PSA検査の基準値
前立腺がん検診におけるPSAの基準値は下記の通りです*5,*7。
全年齢一律のPSA基準値
PSA値:4.0ng/mL以下
ただし、PSAの基準値は年齢とともに上昇します。そのため、年齢階層ごとのPSA基準値を用いることも推奨されています*5,*7。
年齢階層ごとのPSA基準値
| 年齢 | PSA基準値 |
|---|---|
| 50~64歳 | 3.0ng/mL以下 |
| 65~69歳 | 3.5ng/mL以下 |
| 70歳以上 | 4.0ng/mL以下 |
PSA値が基準値を上回ったら、まずは泌尿器科を受診しましょう。前立腺肥大症の治療薬やホルモン製剤を内服している場合やAGAの治療中には、PSA値が本来よりも低く測定されることがあるため*7、事前に医師へ相談することが望ましいです。
PSA値が高くてもがんと決まったわけではないが、早期受診が大事
PSA値は、前立腺肥大症など前立腺の病気でも高くなる
PSA値が高いからといってがんと決まったわけではありません。PSA値は前立腺肥大症や前立腺炎でも高くなることがあるとされています*5。とはいえ、PSAが高くなった原因を勝手に判断してしまうと、がんを進行させてしまう危険があるため、PSA値が基準値を上回った場合は、自己判断せず泌尿器科を受診し、必要に応じて追加の検査を受けましょう。
前立腺の検査方法はPSA検査以外にも直腸診、MRI検査やCT検査などの画像検査、生検があります。直腸診や画像検査で前立腺がんが疑わしいと判断された場合、最終的にがんを確定診断するには生検を受けます*5。生検は、異常が疑われる部分の組織を細い針で採取し、顕微鏡下で調べて良悪性を判定する方法です。
前立腺がんは進行がゆるやかで死亡率が低く治療可能
前立腺がんは罹患数が男性第1位であるのに対して、死亡数は第6位と比較的低いです*2。前立腺がんの死亡数が低い理由として、前立腺がんの多くはほかのがんに比べて進行がゆるやかであることが挙げられます。生きている間にがんの兆候が見られず、死後の病理解剖によって初めて確認されるがんは「ラテントがん」と呼ばれ、日本人男性における前立腺ラテントがんの保有率は50歳代で15.4%、80歳代で57.1%であったという報告があります*12。
また、有効な治療法が多様であることも死亡数が低い理由のひとつです。前立腺がんの一般的な治療法は以下に示す通りですが*13、進行したがんや他の部位に転移のある状態であるほど治療の選択肢は限られるため、前立腺がん検診のメリットとデメリットを理解したうえで、年齢やリスクに応じてPSA検査を検討することが大切です。
- 外科手術
- 放射線治療(外部照射、密封小線源)
- 内分泌療法(ホルモン療法)
- 抗がん剤を用いた化学療法
- PSA監視療法
治療の合併症があるため、治療方針は専門医と相談を
前立腺がんの治療法にはそれぞれメリットがある一方で、副作用や合併症が起こるリスクがあります。外科手術では、尿失禁や勃起障害(ED)などが起こることがあります*13。また外照射による放射線治療の場合には、身体への負担は比較的少なくなるものの、頻尿、排尿・排便時の痛み、勃起障害などの合併症の可能性があります*13。
上記のように前立腺がんの治療には合併症のリスクがあることを理解した上で、慎重に治療方針を決める必要があります。積極的な治療をせずに定期的にPSA検査と針生検をして様子をみる「PSA監視療法」という方法もあります。
できるだけ後悔しない治療方針を立てるためにも、信頼できる泌尿器科医に相談をしましょう。経験豊富な医師を選ぶポイントとしては、日本泌尿器科学会から認定された「泌尿器科専門医」が在籍している医療施設を選択するのがおすすめです。泌尿器科専門医は、4年以上の研修を受け、資格試験に合格した医師のみが名乗れる制度です*14。泌尿器科専門医の一覧は、下記リンクから確認できます。
日本泌尿器科学会 認定専門医一覧(外部リンク)
PSA検査前の注意事項
正確なPSA検査のために、検査前は以下のことに注意する必要があります。
- 前立腺肥大症の治療薬、ホルモン製剤、AGAの治療中の場合は事前に医師に申し出ること(本来よりも数値が低くなることがあるため)
- 自転車やバイクに乗る行為は検査の数日前から避けること
- 検査の2日前程度から射精しないこと
前立腺が刺激を受ける行為は、一時的にPSA値を上昇させることがあります。自治体によっては、前立腺がん検診受診前の注意事項として、数日前~1週間前からの自転車やバイクは控えるよう記載されている場合があります。事前の食事制限はとくにありません。ただし、PSA値に影響を与える可能性があるため、検査前の注意事項については受診する医療施設からの指示を確認しましょう。
参考資料
*1.厚生労働省 がん登録
*2.国立がん研究センターがん情報サービス がん統計 最新がん統計
*3.国立がん研究センター がん情報サービス 前立腺がんについて
*4.国立がん研究センター 東病院 前立腺がん
*5.国立がん研究センター がん情報サービス 前立腺がん 検査
*6.国立がん研究センター がん情報サービス がん統計 前立腺
*7.日本泌尿器科学会「前立腺がん検診ガイドライン2025年版」
*8.厚生労働省 がん検診
*9.厚生労働省 第47回がん検診のあり方に関する検討会(2026年7月16日実施)参考資料7「令和7年度 市区町村におけるがん検診の実施状況調査 全国集計」
*10.東京都世田谷区 前立腺がん検診
*11.千葉県船橋市 各種がん検診・健康診査等のご案内
*12.日本泌尿器科学会「前立腺癌診療ガイドライン 2023年版」
*13.国立がん研究センター がん情報サービス 前立腺がん 治療
*14.日本泌尿器科学会 専門医取得の流れ





