がん検診

もし子宮頸がん検診で要精密検査と言われたら? 検査の内容や費用、その後の対応を解説

HPV がん検診
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

子宮がん検診で再検査・要精密検査となった場合、どうすればよいのでしょうか。子宮頸がんの精密検査で行われる検査、子宮頸がん検診の結果別に必要とされる検査、その後の対応など詳しく解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・子宮頸がん検診で、もし要精密検査となったらその後どう対応すればよいのか知りたい方
・子宮頸がん検診で「要精密検査」などの通知があったが、結果の見方がわからず不安な方
・要精密検査を受ける際の注意点を知っておきたい方

★この記事のポイント
・HPV検査は子宮頸部細胞診のように専用の器具で子宮頸部の細胞を採取しHPV感染の有無を調べる
・コルポスコープ下の組織診の痛みは、さほど強くない(痛みの感じ方には個人差あり)
・子宮頸部細胞診の検査結果が「NILM(ニルム)」以外の場合は再検査・精密検査が必要となる
・HPV検査やコルポスコープ下の組織診(生検)などの精密検査により、その後の経過観察や治療の方針が決まる
・日本の場合、精密検査の組織診(生検)で「CIN3」以上が確認された場合、基本的に治療対象となる

目次

子宮がんとは

「子宮頸がん」と「子宮体がん」

子宮がんは、女性の骨盤内に位置する子宮にできるがんで、「子宮頸がん」と「子宮体がん」があります*1,*2。「子宮頸がん」は、子宮頸部(子宮の下部にある筒状の部位。分娩時に産道の一部になる場所)にできるがん、「子宮体がん(子宮内膜がん)」は子宮体部(子宮の上部にある袋状の部位。妊娠時に胎児を育てる場所)にできるがんです。

子宮体がんは初期症状に不正出血が見られますが、子宮頸がんは無症状のことがほとんどです*1,*2。このように、子宮のがんとはいっても大きく異なる性質を持つため、検査もそれぞれのがんにあった内容を受ける必要があります。

子宮がん検診について

一般的に自治体で実施されている子宮がん検診は、厚生労働省の指針で定められている「子宮頸がん検診」を指し、子宮体がんの検査は含まれないことが多いです。これは子宮頸がん検診の有効性は科学的に証明されているのに対して、子宮体がんは検診対象疾患として有効性が証明されていないためです*3

子宮頸がんの早期発見・早期治療のために、厚生労働省の指針では、20歳以上を対象に2年に1回、子宮頸がん検診の受診を推奨しており、自治体などの子宮頸がん検診では子宮頸部細胞診、内診、視診、問診などの検査の実施が一般的です*1。企業の健康診断では、年齢によって、子宮頸がん検診の検査や経膣超音波(エコー)検査などを含むレディースドックの補助を受けられる場合もあります。

この記事では以降、子宮頸がん検診の再検査・精密検査について紹介します。子宮体がんの検査について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

子宮頸がんの原因はHPV

子宮頸がんのおもな原因はヒトパピローマウイルス(HPV)です。HPVは性的接触により子宮頸部に感染するため、一度でも性交渉の経験があれば感染の可能性があります。HPVの型は200種類以上あります。そのうち子宮頸がんを発症させる型は、HPV16型と18型のほか、31、33、35、39、45、51、52、56、58、66、68など、少なくとも13種類あるとされおり、こうしたHPVは「ハイリスクHPV」と呼ばれています*4。なお、ハイリスクHPVのうち、HPV16型と18型が子宮頸がんの原因の半数以上を占めていると言われています。

ハイリスクHPVに感染したからといって、必ずしも子宮頸がんを発症するわけではありません。HPV感染した方でも、90%は免疫の力によりウイルスは自然排除されます。しかし、10%の人は自然に排出されずにHPV感染が持続した状態が続き、自然治癒しなかったものが前がん病変(異形成)を経て、数年後に子宮頸がんに進行していきます*4

ハイリスクHPV感染を調べる検査は、感染の有無を調べる「ハイリスクHPV検査(一括検査)」と、感染しているHPV型を調べる「タイピング検査」に大別されます。子宮頸がん検診や精密検査の際に実施されるのは、おもに「ハイリスクHPV検査(一括検査)」です*5。 詳しくはこの後の「HPV検査」で解説します。

子宮頸部細胞診の結果で異常がみとめられた場合、再検査・精密検査が必要

子宮頸部細胞診で異常ありと診断された場合は、後日、再検査や精密検査を受診する必要があります。検査結果によっては、ハイリスクHPV検査やコルポスコープ(膣拡大鏡)下の組織診などの精密検査を行います*1。こうした精密検査は、実際にどのような病気にかかっているかを確認するために実施するものです。再検査・精密検査の費用は保険適用ですが、診察に関わる費用、検査の数や医療保険の自己負担割合等によって金額は異なります。詳細は受診予定の医療施設で確認しましょう。

子宮頸がん検診の再検査・精密検査は痛い? 行われる検査と費用の目安

HPV検査

子宮頸部細胞診の結果によっては、HPV検査を実施します。HPV検査では、専用の器具で子宮頸部の細胞を採取し、HPVのうち、子宮頸がんを発症させる確率が高いハイリスクHPVの有無を調べます*1。基本的に痛みはありませんが、検査時に少量の出血が見られる場合があります。

精密検査におけるHPV検査では、ハイリスクHPV検査(一括検査)が実施されます。これにより子宮頸がんの発症リスクがあるかを調べるとともに、さらなる精密検査(コルポスコピー検査・子宮頸部の組織診など)が必要かどうかを判断します*1

HPV検査の費用は、ハイリスクHPV検査(一括検査)の場合、3割負担で1,500円前後です。検査時間は5分程度です。結果が出るまで1~2週間程度かかります。

なお、HPVタイピング検査は、精密検査後に軽度異形成(CIN1)もしくは中等度異形成(CIN2)と確定診断された際に実施する場合があります*5。HPVタイピング検査で進展リスクが高いと推定されるHPV16、18、31、33、35、45、52、58の8種類の型が見つかった場合は、より厳重に診療が進められます*5

コルポスコープ下の組織診(コルポスコピー検査・子宮頸部の組織診)

コルポスコープ下の組織診では、まずコルポスコピー検査が行われ、状態に応じてコルポスコープ(膣拡大鏡)で観察しながらの組織診が行われます。

●コルポスコピー検査*6
コルポスコピー検査は、コルポスコープ(膣拡大鏡)で子宮頸部の病変を観察します。病変をわかりやすくするために、膣や頸管内に酢酸を塗布し観察します。

●子宮頸部の組織診(生検)*6
コルポスコープ下の組織診では、子宮頸部の疑わしい部分や最も病変が強い(最強病変)部分の組織を数mm切除し、採取した組織を顕微鏡で観察します。「狙い組織診」とも呼ばれ、子宮頸がんや異形成などの確定診断に用いられます。病状によっては2~3ヶ所を切除することもあります。

切除された部位は医療用タンポンなどで圧迫して止血し、数時間後に自分で取り除きます。数分間で止血する場合が多いですが、出血が強い場合には、切除部位の縫合や焼灼(しょうしゃく/焼いて止血すること)を行うこともあります。

子宮頸部の組織診による痛みは、さほど強くないと言われています。通常、麻酔は実施されませんが、痛みの感じ方には個人差があるため、医療施設によっては鎮痛剤の使用が可能な場合もあります。心配な方は事前に確認しておきましょう。

コルポスコピー検査・子宮頸部の組織診の費用は、3割負担の5,000円前後です。検査時間は10~15分ほどです。組織診(生検)の結果がでるまで約1~2週間かかります。

そのほかの組織診

子宮頸がんの組織診(生検)には、先に紹介した「子宮頸部の組織診」のほか、「子宮頸管内掻爬(そうは)による組織診」「子宮頸部円錐切除術による組織診」などがあります。

子宮頸管内掻爬(そうは)による組織診*7

子宮頸管内にみられる異常所見がコルポスコープで確認できない位置にあったり、細胞診で異常があるのにコルポスコピー検査や組織診で相応する所見が得られなかったりする場合は、キュレット(細長いスプーンの形をした器具)を用いて子宮頸管内の組織を採取する「子宮頸管内掻爬(そうは)」という方法により、組織診(生検)を行うこともあります。コルポスコピー検査の際に行われるもので、通常、麻酔は実施されません。

円錐切除術による組織診*7

コルポスコープ下の組織診で微小浸潤がんなどが疑われるが病変の広がりや深さが不明な場合、また狙い組織診や頸管内掻爬による組織診で子宮頸部細胞診の際に検出された異常細胞と合致しない場合など、診断を目的に子宮頸部の一部を円錐状に切除(円錐切除術※)して、組織診(生検)を行うことが必要となる場合もあります。円錐切除術は基本的に手術室で麻酔をして実施されます。

※円錐切除術:子宮頸部を円錐状に切除する円錐切除術のこと。初期の子宮頸がんの手術として行われることもある術式。

精密検査前後の注意点(コルポスコピー検査・子宮頸部の組織診の場合)

精密検査前後は以下のような注意が必要です。

<検査前>
・生理1週間前~生理中は避ける
・膣内の洗浄や膣剤(膣に挿入する薬)の使用は3日ほど前から控える
・血を固まりにくくする薬(ワーファリン等)を服用中の場合は事前に医師に相談する
など

子宮頸がん検診の精密検査は生理中を避けるのが一般的です。また、コルポスコープ下の組織診は検査後出血が続くことがあることから、生理前も避けたほうがよいとされています。子宮頸がんの検査では、剥がれ落ちた細胞も含め多くの細胞を採取できるようにする必要があるため、原則、腟洗浄は検査前に行わないこととされています。服用中の薬がある方は医師に確認しておきましょう。また、精密検査により出血することがあるため、ナプキンを持参しましょう。

<検査後>
・安静にする
・生理と同程度の出血が1週間ほど続くことがある
・出血が多い場合は、医療施設に連絡して受診する
・出血がなくなるまで入浴は避け、シャワーのみにする(プールや銭湯もNG)
・出血がなくなるまで運動・飲酒は避ける
・性交渉は2週間程度控える
など

とくに検査後は切除部位から細菌が入りやすい状態です。また、少しの刺激で再出血することもあります。詳細は精密検査前後の注意点については、医療施設により異なります。受診先に確認してその指示に従ってください。

子宮頸部細胞診の結果の見方と再検査・精密検査で最低限必要な検査

子宮頸部細胞診の結果はベセスダシステム(ベセスダ分類)により分類される

子宮頸がん検診で実施される子宮頸部細胞診は、国際的に用いられている「ベセスダシステム」という報告様式に基づき結果判定されています*8

分類 細胞 結果 結果の説明 最低限必要な検査
NILM (ニルム) 扁平上皮系 陰性 正常または正常範囲内の所見(異常なし) 定期検査
ASC-US (アスカス) 意義不明な異形扁平上皮細胞 異形成とは言い切れないが細胞に変化がみられ、LSILの可能性が疑われる(良性悪性の区別ができない) 要精密検査(HPV検査もしくは6ヶ月以内の子宮頸部細胞診)
ASC-H (アスクエイチ) HSILを除外できない異形扁平上皮細胞 異形成がみられ、HSILの可能性が疑われる 要精密検査(コルポスコピー、生検)
LSIL (ローシル) 軽度扁平上皮内病変 HPV感染し傷ついた細胞で、軽度異形成(CIN1)がみられる
HSIL (ハイシル) 高度扁平上皮内病変 HPV感染し傷ついた細胞で、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)の可能性が疑われる
SCC 扁平上皮がん 扁平上皮がんが疑われる
AGC 腺細胞系 異型腺細胞 腺に異型はあるが上皮内腺がん(AIS)とするには異形が弱い、あるいは腺がんが疑われる 要精密検査(コルポスコピー、生検)
AIS 上皮内腺がん 間質浸潤を欠く内頸部腺がん(腺がんの前がん病変)
Adenocarcinoma 腺がん 浸潤腺がん(進行した腺がん)
other malig. その他 その他の悪性腫瘍 その他の悪性腫瘍が疑われる 要精密検査(病変検索)

検査結果が「NILM」以外なら、再検査・精密検査が必要

子宮頸部細胞診の検査結果が「NILM(ニルム)」のほかは、再検査・精密検査が必要です。要精密検査となった方は不安を感じるかもしれませんが、子宮頸がんは異形成や初期の段階で発見できれば治癒する確率が高く、進行状態によっては子宮を摘出せずに治療することも可能です。再検査・精密検査が必要な場合は必ず受けましょう。

子宮頸部細胞診後に再検査・精密検査が必要となるのは、どんな場合か

「ASC-US」の場合

子宮頸部細胞診の結果が「ASC-US(アスカス)」となった場合、子宮頸部の扁平上皮に軽度な異型がみられ、軽度扁平上皮内病変が疑われます。直ちにハイリスクHPV検査を実施、もしくは6ヶ月後と12ヶ月後の2回にわたり子宮頸部細胞診を再検査するなどの対応が必要です*5

【ハイリスクHPV検査を実施する場合】*5
・陰性の場合:1年後に子宮頸部細胞診を再検査
・陽性の場合:LSIL(ローシル/軽度扁平上皮内病変)と同等に扱い、コルポスコピー検査・子宮頸部の組織診(生検)
なお、24歳以下の陽性者は、5年以内にCIN3以上の病変に進展するリスクが他の年齢よりも低いため、例外的にコルポスコピー検査は実施せず、1年後の子宮頸部細胞診の再検査でよいとされています。また25歳以上の陽性者のうち、妊婦は出産後までコルポスコピー検査が延期されることがあります。

【6ヶ月後と12ヶ月後の2回、子宮頸部細胞診を再検査する場合】*5
・2回とも陰性の場合:定期検診に戻す
・どちらか一方でもASC(ASC-USもしくはASC-H)以上となった場合:コルポスコピー検査・子宮頸部の組織診(生検)

「ASC-US以外の異常」の場合

子宮頸部細胞診の結果で「ASC-US以外の異常」がみとめられた場合は、直ちにコルポスコピー検査・子宮頸部の組織診(生検)で精密検査を行います*5。ただし、所見次第で組織診は行われないこともあります。

なお、24歳以下の LSILの場合は5年以内のCIN3以上の病変の累積発生リスクが他の年齢よりも低いため、コルポスコピー検査はせず、1年後の細胞診再検査でよいとされています。また25歳以上の妊婦でLSILの場合、出産後までコルポスコピー検査が延期されることがあります。

「腺細胞系の異常」の場合

子宮頸部細胞診の結果で、「AGC(異型腺細胞)」「AIS(上皮内腺がん)」「Adenocarcinoma(腺がん)」など、腺細胞系の異常がみとめられた場合も、直ちにコルポスコピー検査・子宮頸部の組織診(生検)で精密検査を行います*5

AGC(異型腺細胞)は、腺に異型があるが AIS(上皮内腺がん)とするには異型が弱いもの、あるいは断定はできないがAdenocarcinoma(腺がん)が疑われるものと判断されます。とくに初期の子宮頸部腺がんはコルポスコピー検査・子宮頸部の組織診でも見つけづらいケースが多く、確定診断も難しいため個別の対応が必要です。コルポスコピー検査・子宮頸部の組織診(生検)のほかに、子宮頸管内や子宮内膜の細胞診・組織診などを実施することもあります*5

また、AIS(上皮内腺がん)、Adenocarcinoma(腺がん)の場合、子宮頸部細胞診の結果とコルポスコピー検査の所見や組織診(生検)の結果が一致しない症例では、必要に応じて診断的子宮頸部円錐切除術(円錐切除術による組織診)を行う場合もあります。判断には専門性が必要となるため、医師とよく相談して検討することが大切です*5

子宮頸がんの精密検査の結果により、その後の経過観察や治療の方針が決まる

子宮頸部細胞診と組織診(生検)の検査結果が不一致となることもある

子宮頸部細胞診とコルポスコープ下の組織診(生検)の結果が同じ場合、経過観察や治療の方針が決まります。もし検査結果が不一致の場合は、その要因を調べます。

子宮頸部細胞診では、子宮頸部にあたる「子宮の入り口部分」をヘラやブラシ、綿棒などでこすって細胞を採取しますが、コルポスコープ下の組織診(生検)で採取できるのは子宮頸部の一部の組織のみです。そのため細胞診と組織診(生検)の結果が不一致となることがあります。最終的には細胞診、コルポスコピー検査、組織診(生検)などの検査の結果から総合的に診断し、慎重に治療方針を検討します。診断が困難な場合、子宮頸部円錐切除術による組織診を行うこともあります*5

精密検査で前がん病変が見つかったとしても、必ずしもがんになるというわけではない

全体の8割を占める扁平上皮系のうち、HPVの作用による細胞の異常は、軽い異形成(軽度前がん病変)が起こり、一部はさらに強い異形成(高度前がん病変)に進行します*1。こうした前がん病変を、子宮頸部上皮内腫瘍(Cervical Intraepithelial Neoplasia:略してCIN)と呼びます。なお、ベセスダシステムで前がん病変は扁平上皮内病変(Squamous Intraepitherial Lesion:略してSIL)と表記されています*1,*8

子宮頸部細胞診後の精密検査で、コルポスコピー検査・子宮頸部の組織診(生検)などを実施し、CINがあると分かった場合「自分はがんになるんだ…」と思い、悩んでしまうかもしれません。しかし、CINがあったとしても、必ずしもがんになるわけではありません軽度異形成(CIN1)や中等度異形成(CIN2)の場合、進展する確率より消退する確率のほうが高いとされています*9

CINなら経過観察や治療の方針が決まり、がんなら別の検査や手術が必要となる

下記はCINが見つかった場合のおもな対応です*1,*5
CIN1:6ヶ月ごとの経過観察
CIN2:3~6ヶ月ごとの経過観察。1~2年ほど経過観察しても病変が消えない場合は手術も検討
CIN3:ほかの臓器に転移のない初期の子宮頸がん:検査と治療をかねた円錐切除術

CIN1~CIN2の場合、感染しているHPVの型により予後が変わってくるため、HPVタイピング検査を行い、その結果により管理方針を決めることがあります*5。なお、米国子宮頸部病理・コルポスコピー学会のコンセンサス・ガイドラインではCIN2も治療対象ですが、日本で治療対象となるのは、基本的に組織診でCIN3が確認された場合です*5

高度異形成・上皮内がん(CIN3)では、中等度異形成(CIN2)が長期間持続する場合、CIN2でハイリスクHPVが検出された場合などは治療が考慮されます*5CIN3の治療には子宮頸部円錐切除術が推奨されています。LEEP(ループ型高周波電流:loop electrosurgical excision procedure)やレーザー蒸散などの日帰り手術が可能な場合もあります。年齢、妊娠の予定、病変の範囲・深さなどによって、どの方法を選択できるかが変わります*5

ただし円錐切除術の結果、切り取った部分よりもがんが浸潤している場合は、ほかの組織への拡がりや転移を確認するための検査や手術が必要です*1

どこで受ける? 子宮頸がんの精密検査を受ける際の病院選びのポイント

ポイント1:専門の医療施設であること

子宮頸がん検診で異常があった場合に行う精密検査(コルポスコピー検査・子宮頸部の組織診)を実施できる医療施設は限られており、婦人科であっても精密検査ができない医療施設は多くあります。治療設備の有無や治療実績などの情報を参考にするのもひとつです。さらに高次の医療施設※への紹介が必要となることもあり、ほかの病院・診療所などと連携がとれている医療施設が望ましいです。

※高次の医療施設:厚生労働省の地域医療構想に基づいた効率的な医療提供体制を実現するため、医療施設は地域の中でそれぞれ役割が決まっている。一次医療はかかりつけ医で医療圏はおもに市町村単位、二次医療は地域の中核病院などで医療圏は複数の市町村単位、三次医療は大学病院などで医療圏はおもに都道府県単位が相当。高次とは、一次にとっての二次、二次にとっての三次を意味する。

ポイント2:医師との相性

手術の要否には高度な診断精度が要求されます。また、わかりやすい説明か、親身に相談に乗ってくれるか、セカンドオピニオンにも快く応じてくれるかなど、信頼関係を築くことができる医師であれば安心です。経過観察や治療など、長期のフォローが必要となることを踏まえて、自分にとって安心感のある婦人科医を選択することが大切です。

ポイント3:通いやすい立地

精密検査の結果、経過観察が必要となった場合、3ヶ月〜半年に1回程度の頻度で受診を続けることになります。遠方の医療施設の場合、経過観察のための通院が負担となり、治療中断につながるリスクがあります。子宮頸がんを早期発見することができても、適切な観察を続けず中断してしまう事態になっては意味がありません。医療施設を選ぶ際には、無理せず通える立地を選ぶとよいでしょう。

参考資料
*1.国立がん研究センター がん情報サービス 子宮頸がん
*2.国立がん研究センター がん情報サービス 子宮体がん(子宮内膜がん)
*3.日本婦人科腫瘍学会 子宮頸がん検診について
*4.日本産科婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
*5.日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020」
*6.植田政嗣(2012)「5.よくわかるコルポスコープ検査」日本産科婦人科学会雑誌 第64巻 第9号
*7.片渕秀隆、田代浩徳(2007)「C.産婦人科検査法 3.組織診」日本産科婦人科学会雑誌 第59巻 第4号
*8.日本産婦人科医会「Ⅳ.ベセスダシステム 2001 準拠子宮頸部細胞診報告様式の実際」 がん部会 小冊子「ベセスダシステム2001準拠子宮頸部細胞診報告様式の理解のために」より(2008.11)
*9.川名敬(2012)「CINの経過観察と治療の判断」日本産科婦人科学会雑誌 第64巻 第9号

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上昌広
こちらの記事の監修医師

特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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