脳ドックで脳の状態を調べた結果、異常が見つかった場合、再検査や精密検査を経て治療を受けることになります。検査結果からどのような病気が見つかる可能性があるのか、また検査結果を受け取ったあとの対処法も解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・40歳以上の方
・脳ドックの結果の見方を知りたい方
・脳ドックの結果に書かれている疾患について知りたい方
★この記事のポイント
・脳ドックのおもな目的は、脳の血管に関する病気(脳血管疾患)を見つけること
・脳ドックは脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血、脳出血)、脳腫瘍のほか、認知症リスクに関連する脳の変化を把握する手がかりにもなる
・脳ドックの結果は、当日医師から説明がある場合、後日説明を受ける場合、郵送の場合がある
・定期的な脳の検査で脳卒中や認知症リスクを把握し、予防行動につなげることが大切
脳ドックで見つかる病気
脳ドックの主目的は「脳血管疾患」の早期発見
脳ドックとは、脳の検査に特化した専門ドックのひとつです。検査項目は医療施設のプラン・コースによってさまざまですが、脳ドックの基本的な検査として頭部MRI/MRA、頸動脈超音波(エコー)が行われることが多いほか、頭部CT、血液検査、認知症の兆候を調べる検査などを加えたより詳細な検査プランを提供している施設もあります。
脳ドックのおもな目的は、脳の疾患や異変、とくに脳血管疾患の早期発見です。脳血管疾患とは、脳の血管の障害が原因で起こる病気の総称で、脳血管障害とも呼びます。脳血管疾患の代表的なものが脳梗塞、脳出血、くも膜下出血であり、これらは脳卒中と呼ばれることもあります*1。
「人口動態統計(2024年)」および「国民生活基礎調査(2022年)」によると、脳血管疾患は死因の第4位に、介護が必要になる疾患の第2位となっています*2,*3。脳の異常の早期発見は、発症リスクを下げたり、健康寿命を延ばしたりするうえで重要な鍵を握っています。
【脳ドックで見つかる病気】脳血管疾患
「脳血管疾患」の代表的なものが「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」です。これらは「脳卒中」とひとまとめに呼ばれることが多いですが、障害の起こり方や原因、症状の現れ方などが異なります。特徴を下記にまとめました*1,*4。
脳梗塞
脳の血管が詰まることで血流が途絶え、脳細胞が壊死する病気です。おもな原因として高血圧による動脈硬化、メタボリックシンドローム、大量飲酒などが挙げられます。手足の麻痺や言語障害、視野障害などの症状が突然現れるのが特徴です。脳梗塞については、下記記事で詳しく解説しています。
脳出血
脳内の細い血管が破れて脳の組織の中に出血し、血腫(血の塊)が周囲の脳細胞を圧迫して障害を引き起こす病気です。最大の原因は高血圧であり、強い血圧の負荷が持続することで血管がダメージを受けます。その他の危険因子として、喫煙や大量飲酒、コレステロール値の異常低値(低栄養)も関与するとされています。症状は脳梗塞と同様に、突然の片麻痺、言語障害、めまいなどが現れます。詳細は以下の記事をお読みください。
くも膜下出血
脳の表面を覆う「くも膜」と脳の間にある隙間に出血が広がる病気です。その原因の多くは、脳の血管にできたこぶ(脳動脈瘤)の破裂によるものです。発生には高血圧、喫煙、大量飲酒などが深く関連しています。最大の特徴は、発症時に「バットで殴られたような」と表現されるほどの、経験したことのない激しい頭痛が突然起こる点です。意識障害や嘔吐をともなうことも多く、命に関わる大変危険な病気です。詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
【脳ドックで見つかる病気】脳腫瘍・認知症の兆候
脳ドックでは、脳腫瘍など脳血管疾患以外の病気が見つかることがあります。また、脳ドックのみで認知症の診断がつくことはありませんが、脳の萎縮具合を把握したり、認知症のうち「血管性認知症」の原因となる脳血管疾患を調べることで、将来的な認知症のリスクを評価する一助となります。
脳腫瘍
頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称です。おもに、脳やそれを包む膜、脳神経などから直接発生する「原発性脳腫瘍」と、肺がんや乳がんなど他の臓器のがんが血流に乗って脳に運ばれて発生する「転移性脳腫瘍」の2つに大別されます。原発性脳腫瘍はさらに「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」に分けられ、組織診や遺伝子検査により100種類以上に細分類されます*5。
症状は大きく2つあり、腫瘍の増大にともなう脳の圧迫で起こる「頭蓋内圧亢進症状」(頭痛、吐き気、意識障害など)と、腫瘍ができた場所の脳機能が障害される「局所症状(巣症状)」(手足の麻痺、言語や視野の障害など)が現れるのが特徴です*5。詳しくは下記記事をご覧ください。
認知症
認知症は、脳の病気や障害によって記憶力や思考力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態です。認知症にはいくつかの種類があり、最も多いのがアルツハイマー病によって起こる「アルツハイマー型認知症」、次いで「血管性認知症」です。アルツハイマー病では脳の萎縮が進行し、認知機能が徐々に低下していくのが特徴です。一方、血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって起こり、障害を受けていない脳の機能は比較的保たれることがあります*6。
認知症の兆候・リスクを評価する目的での脳の検査については、下記記事で詳しく解説しています。
脳ドックで行われる検査について知りたい方は、下記記事をお読みください。
脳ドックの検査結果の見方
脳ドックの結果報告書の形式は、医療施設によって異なります。一般的には「総合判定」による全体の判定(異常なし・要経過観察・要精密検査など)と、検査項目ごとの結果と所見で構成されていることが多いです。ここでは、脳ドックの結果報告書で目にすることがある所見について解説します。
所見・異常なし
検査の結果、とくに異常が見つからなかった場合は「所見なし(異常なし)」と記載されます。この場合の脳ドックの受診間隔は、30〜40代は3〜5年おき、50代以降は2〜3年おきが目安です。
人間ドックの年代別の受診頻度・メリットデメリットについては下記記事で詳しく解説しています。
無症候性脳梗塞(かくれ脳梗塞)
無症候性脳梗塞とは、画像上で梗塞と思われる変化があるものの、それに該当する神経症候や自覚症状をともなわない状態を指します*7。脳ドックなどで発見される場合があり、「かくれ脳梗塞」と呼ばれることもあります。
「脳卒中治療ガイドライン 2021[改訂2025]」によると、無症候性脳梗塞がある人が脳卒中を発症するリスクは、ない人の約2倍、認知症の発症率も2.3倍であったと報告されています*7。無症候性脳梗塞の指摘を受けた場合、定期的に頭部MRIなどの検査を受けて経過観察をするほか、最大のリスク要因である高血圧のコントロールが重要です*7。あわせて、禁煙や糖尿病・脂質異常症の管理など、脳卒中の危険因子を総合的に管理することも大切です。
大脳白質病変
大脳白質病変とは、脳の内側にあり神経が集まる「白質」という部分が血流不足により変化することです。MRI画像上では白っぽく映ることがあり、脳ドックで「白い影」と説明されることがあります。加齢によって変化するほか、高血圧もリスク因子です*7。
大脳白質病変も、脳卒中や認知症の発症との関与が指摘されています。高度な大脳白質病変が認められた場合の脳卒中発症リスクは10.6倍、認知症リスクは2.2倍と報告されています*7。ただし、大脳白質病変は加齢によって多くの方に認められるものであり、年齢相当であれば大きな問題ではありません。指摘を受けたら、定期的に経過を追っていくことが重要です。
脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)
脳動脈瘤とは、脳動脈の血管壁が薄くなったり、もろくなったりして風船状に膨らんだ状態を指します。脳動脈瘤がまだ破裂していないものを「未破裂脳動脈瘤」と呼び、脳ドックなどで発見されることがあります*8。
未破裂脳動脈瘤はそのまま破裂しないことも多く、治療が必要かどうかは動脈瘤の大きさ、部位、形状などを複合的に勘案したうえで判断されます。未破裂脳動脈瘤が見つかっても、すべてが手術や治療の対象になるわけではありません。定期的な画像検査で、経過を観察していくことが重要です。
未破裂動脈瘤については、下記記事でも解説しています。あわせてお読みください。
頚動脈狭窄症
首の両側にある頸動脈が、動脈硬化によって狭くなっている状態です。多くの場合無症状ですが、血管が狭い箇所では血栓(小さな血の塊)ができやすく、血栓が脳に到達し血管を塞ぐと脳梗塞が起こります*9。
頸動脈狭窄により脳が血液不足になると「一過性脳虚血発作(TIA)」が起こることもあります。一過性脳虚血発作とは、言葉が出にくい、片方の手足・顔が痺れるといった脳梗塞のような症状が一時的に起こることです*4。症状は10分~1時間程度、長くても24時間以内におさまることが多いとされています。短時間のため見過ごされがちですが、脳梗塞の前触れとも考えられているため、早期の医療介入が必要です*4。
頭蓋内脳主幹動脈閉塞症
脳主幹動脈とは、脳に酸素などを送っている複数の太い血管の総称(内頸動脈・中大脳動脈・前大脳動脈、椎骨動脈、脳底動脈、後大脳動脈など)です。動脈硬化によってこれらの血管が詰まった状態が頭蓋内脳主幹動脈閉塞症です*10。
無症状の場合が多いですが、脳の主要な血管の閉塞により著しく脳の血流が低下すると、脳梗塞と同様の症状が急に現れます。また、頸動脈狭窄でも触れた一過性脳虚血発作を繰り返す場合もあり、早期の医療介入が重要です*10。
脳腫瘍・腫瘍様病変
脳腫瘍または、腫瘍のようなしこり(結節)が画像上で認められた状態です。腫瘍が良性か悪性かどうかを診断するには、さらなる精密検査が必要です。
正常変異(ノーマル バリアント)
正常変異は、脳の構造上は正常ではないものの、健康に害を及ぼす症状は出ていない状態を指します。正常変異は先天的なもので、かつ、病気ではないため、多くの場合は治療の対象にはなりません。
脳ドックの体験談
人間ドックのミカタでは、人間ドックを受けた方の体験談を多数掲載しています。そのなかから、脳ドックを受けた方の声をピックアップしました。脳ドックを受けようか迷っている方は、参考にしてください。
まさしさん(52歳・男性)
同い年の友人が脳梗塞で倒れリハビリ生活を余儀なくされており、他人事ではないと感じました。通常の健康診断に頭部の検査は含まれていないため、脳ドックを定期的に受診する必要があると考えています。…もっと読む
じゅごんさん(31歳・男性)
先輩がくも膜下出血によって35歳の若さで急逝したことに大きな衝撃を受け、人間ドックと脳ドックを受けました。実際受けてみると、懸念のあった部分は問題なく、むしろ気にしていなかった部分に問題があり、受診の重要性を感じました。…もっと読む
ひろこさん(56歳・女性)
父が脳内出血で何度も倒れいるため私もいつか…と不安で、毎年、頭部MRI/MRA検査を受けています。脳ドックを受けることで、異変があったとしても早期発見・早期治療につなげられると思うと安心感があります。…もっと読む
ふるふるさん(58歳・男性)
最近、これまでになかった頭痛が起こったことがありました。父が脳梗塞を経験しているため自分もその傾向があるのか不安になり、脳ドックを受けました。血管の閉塞などの深刻な問題はみつからず安心でき、受診してよかったと感じました。…もっと読む
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脳ドックに関するよくある質問
Q.脳ドックの結果はいつわかる?
脳ドックの結果がわかる時期は、受診した医療施設によって異なります。検査後に専門医による診断結果の説明を実施している医療施設もあれば、後日郵便で結果を送付する施設もあります。
郵送の場合、医療施設によって異なりますが、おおむね1〜3週間で手元に届くことが一般的です。
Q.脳ドック当日に、医師の説明を受けられる?
脳ドックの当日に、医師による説明があるかどうかは医療施設によって異なります。検査後、画像を見ながら専門医による説明を行っている場合と、1週間後など後日説明を受ける場合、そして郵送で結果報告書が送付される場合があります。予約前に、医師による結果説明があるかどうかを確認しておくことをおすすめします。
Q.脳ドックで異常が見つかったらどうすればいい?
脳ドックを受診した医療施設で精密検査や治療を受ける、または提携する医療施設を受診してください。検査の結果、「所見(異常)あり」「要精密検査」と言われたら不安になって当たり前です。しかし、自身の状態を正確に把握する意味でも、必ず受診してください。
下記記事では、人間ドックの二次検査(再検査・精密検査)の受け方や費用について解説しています。あわせて参考にしてください。
参考資料
*1.厚生労働省 健康づくりサポートネット 脳血管障害・脳卒中
*2.厚生労働省 令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況「結果の概要」
*3.厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況「Ⅳ 介護の状況」
*4.国立循環器病研究センター 脳卒中
*5.国立がん研究センター がん情報サービス 脳腫瘍〈成人〉について
*6.国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト 認知症
*7.日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン 2021[改訂2025]」
*8.国立循環器病研究センター 脳動脈瘤
*9.東京都健康長寿医療センター いきいきナビ 頚動脈狭窄症
*10.東京都健康長寿医療センター いきいきナビ 頭蓋内主幹動脈閉塞症












