悪性リンパ腫は、白血球の一種である「リンパ球」ががん化する血液のがんです。初期症状として「しこり」が特徴的にみられますが、それ以外にもさまざまな症状があります。本記事では、悪性リンパ腫の初期症状のチェックリストや、しこりの具体的な特徴、早期発見のために受けておきたい検査について解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・悪性リンパ腫の初期症状を知りたい方
・身体にできた「しこり」が気になっている方
・悪性リンパ腫の早期発見の方法を知りたい方
★この記事のポイント
・悪性リンパ腫の初期症状は、首や脇の下などにできる「痛みのないしこり」が特徴で、2週間以上消えない場合は注意が必要である
・しこり以外にも、原因不明の発熱・大量の寝汗・急激な体重減少は、悪性リンパ腫が進行している重要なサインの可能性がある
・良性の腫れと異なり、悪性のしこりは「ゴムのような硬さ」で、自然に小さくなることなく徐々に大きくなる
・悪性リンパ腫だけでなく、全身のがんの可能性を調べたい方は、PET検査またはDWIBS検査の検討を
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫は「リンパ球」のがんで、血液がんで最も多い
悪性リンパ腫は、白血球の一種である「リンパ球」ががん化して起こる、血液のがんのひとつです*1。私たちの身体には、ウイルスなどの外敵から身を守る免疫システムとして、全身に「リンパ組織」があります。悪性リンパ腫は、このリンパ組織であるリンパ節(首、わきの下、足の付け根など)や胸腺、脾臓、扁桃腺などに腫瘤(しこり)を作る病気です*2。また、リンパ外組織(目、肺、胃、腸など)にしこりができることもあります*2。
血液がんは大きく「白血病」「悪性リンパ腫」「多発性骨髄腫」の3つに分けられます。悪性リンパ腫は血液がんの中で最も罹患者数が多く、年々増加傾向にあります*3。血液がんは、かつては治療が難しい病気とされていましたが、医療の進歩により、進行した状態で見つかっても治癒を目指せる可能性が高まっています*2,*4。リンパ節のしこりなどの症状を見逃さず、異変に気づいたら専門医にアクセスすることが非常に重要です。
発症年齢と原因―ストレスとの関係は?
悪性リンパ腫は、高齢者に限らず幅広い世代で発症がみられ、子どもや20〜30代でも発症することがあります*2,*3。
悪性リンパ腫の直接的な原因は、現時点で明らかになっていません。一般的には、何らかのきっかけでリンパ球の遺伝子に異常が起こり、がん化すると考えられています*5。また、悪性リンパ腫には100種類以上ものタイプがあり、成人T細胞白血病リンパ腫や胃MALT(マルト)リンパ腫など一部のタイプでは、特定のウイルスやピロリ菌への感染が発症に関与していることがわかっています*5-7。
悪性リンパ腫の発症とストレスの直接的な関係を示す研究結果は報告されていません。しかし、長期的なストレスは免疫力を低下させ、がん全体の発症リスクを高める要因のひとつであると考えられています*8。一方で、「ストレスが直接悪性リンパ腫の原因になる」と証明されているわけではないため、過度に不安になる必要はありません。
悪性リンパ腫の初期症状をチェック―しこり・全身症状の特徴
【セルフチェック】痛みのないしこり、発熱、寝汗、体重減少に注意
悪性リンパ腫の代表的な症状が、リンパ節のしこりや腫れです。また、自覚症状として全身の症状が現れることもあります。下記に当てはまる項目がないか確認してみましょう。
【しこりのチェック】*5,*9
- 首・わきの下・足の付け根などにしこりがある
- しこりに気づいてから2週間以上経過しても消えない
- しこりを押しても痛くない(または痛みが少ない)
- しこりのサイズが、だんだん大きくなっている
【全身のチェック】*10
- 原因不明の38度以上の発熱が続く、または繰り返す
- 暑くもないのに、寝ている間に着替えが必要なほど大量の汗をかく
- 食事や運動の変化がないのに、半年で体重が10%以上減った
- 強い倦怠感や息切れがある
悪性リンパ腫のサインとして代表的なものが「痛みをともなわない腫れやしこりが、だんだん大きくなる」という点です。リンパ節が密集しているのは、首やわきの下、足の付け根といった、自分で触って異変に気づきやすい場所です。定期的に身体をチェックし、痛みがなく腫れが続く、しこりが2週間以上消えない場合は、内科や耳鼻咽喉科、血液内科などを受診しましょう。
また、発熱や大量の寝汗、急激な体重減少は「B症状」と呼ばれ、悪性リンパ腫で特徴的な症状です。該当する場合は速やかに血液内科を受診してください。
なお、悪性リンパ腫はリンパ節以外の臓器(リンパ外組織)に発生することもあり、上記以外の症状が現れることもあります*10。詳細は「しこりがなくても悪性リンパ腫? 各臓器に現れる症状」をご参照ください。
良性のしこりと悪性リンパ腫の違いとは?
感染による良性のしこりと、がんによる悪性のしこり
リンパ節の腫れやしこりの要因には、大きく「感染症などによるもの」と「がん細胞によるもの」が考えられます。両者には下記のような違いがあります。
原因別でのしこりの特徴*9,*11
| 分類 | 原因 | 経過 (大きさの変化) | 痛み |
|---|---|---|---|
| 感染性 (良性) | 急性リンパ節炎 (風邪・インフルエンザなど) | 短い (数日〜2週間で縮小) | あることが多い (押すと痛い) |
| 慢性リンパ節炎 (結核など) | 長い (変化が乏しい) | ときどきある | |
| 腫瘍性 (悪性) | ・血液がん (悪性リンパ腫・白血病) ・がんの転移 (胃がん・肺がんなど) | 経過で増大 (週・月単位で大きくなる) | ないことが多い (急速に増大するときは痛みあり) |
数日のうちに発生した痛みのあるしこりは、風邪やインフルエンザなどの感染症が原因であることが多いと考えられます*11。風邪などが治れば、しこりは数日から2週間程度で小さくなり、自然に消えていきます*9。ただし、無痛のしこりでも大きさが変わらず長く続いている場合は、結核が原因の可能性もあり、注意が必要です*11。
一方、悪性リンパ腫やがんの転移による悪性のしこりは、初期に痛みをともなわないことが多いです。ただし、がんが急速に増大している場合は痛みをともなうことがあります。また、一部のリンパ腫を除き自然に小さくなることはなく、週単位・月単位で徐々に大きくなっていきます*11。
受診データから見る、悪性リンパ腫の確率と痛みの有無
小田原市立病院の報告によると、首のしこりで受診した患者(2回以上受診)のうち、88.1%は良性疾患が原因であり、悪性リンパ腫やがんの転移などの悪性疾患は全体の約1割であったとされています*12。同報告では、悪性疾患と診断されたケースのうち90%は痛みのないしこりでしたが、痛みのあるしこりも10%認められています。痛みの有無だけで良性か悪性かを判断することはできません。痛いから安心、痛くないから危険という判断は誤りです。「痛いから良性」「痛くないから悪性」と自己判断せず、気になる症状があれば専門医による診断を受けることが大切だと言えます。
悪性リンパ腫は、「ゴム」のような硬さ
痛みや経過に加えて、実際にしこりを指で触ったときの「感触」も、良性と悪性を見分ける重要な手がかりになります*11。悪性リンパ腫のしこりは、硬すぎずやわらかすぎない独特の弾力があるため、よく「ゴムまり」や「テニスボール」のような硬さにたとえられます。また、ほかの臓器で発生したがんがリンパ節に転移した場合は、石のような硬さになるのが特徴です*13。一方、リンパ節炎などの良性の腫れは、比較的やわらかい感触であることが多いです*11。
ただし、触った感触だけで良性か悪性かを判断することはできず、医師であっても触診だけで良性か悪性かを判断することはありません*14。確定診断には生検(組織検査)が必要です。しこりに気づいてから2週間以上持続する、または徐々に大きくなっていく場合は注意が必要です。自己判断せず、医療施設を受診してください*9。
しこりがなくても悪性リンパ腫? 各臓器に現れる症状
悪性リンパ腫はリンパ節だけでなく、血液に乗って全身のあらゆる臓器(リンパ外組織)でしこりを作ることがあります*2。発生する場所によって以下のような症状が現れることがあります。
脳:頭痛、精神症状、けいれん、麻痺
目:視覚障害、視力低下
甲状腺:しこり
肺:息苦しさ、咳
胃・腸:食欲低下、腹痛、下痢、便秘、血便
皮膚:皮疹、腫瘤、かゆみ*15
発症部位が甲状腺の場合、首の前側のしこりから悪性リンパ腫が疑われることがあります*16。他方、胃や腸などの消化管のリンパ腫は腹痛をともなうことが多いですが、無症状のケースもあり、しこりを自覚するのはまれです*17。
臓器で発症する悪性リンパ腫は、健康診断や人間ドックのX線(レントゲン)検査や腹部超音波(エコー)検査、内視鏡検査などで偶然発見されることがあります*10,*18,*19。「しこりがないから大丈夫」と思い込まず、定期的に健康診断や人間ドックを受けることが大切です。
悪性リンパ腫のよくある質問
悪性リンパ腫の進行スピードは速い? すぐに悪化する?
進行のスピードは、悪性リンパ腫の病型によって異なります。日本人の悪性リンパ腫の約95%を占める「非ホジキンリンパ腫」というグループでは、進行速度によって以下の3つに分類されています*2。
| 悪性度 | 経過 | おもな病型 |
|---|---|---|
| 低悪性度 | 年単位でゆっくり大きくなる | ・濾胞性リンパ腫(グレード1、2) ・MALTリンパ腫 など |
| 中悪性度 | 月単位で速く大きくなる | ・濾胞性リンパ腫(グレード3) ・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 ・末梢性T細胞リンパ腫 など |
| 高悪性度 | 週単位で極めて速く大きくなる | バーキットリンパ腫 など |
なお、一般的にがんは進行するほど根治が難しくなりますが、悪性リンパ腫の場合は異なり、「進行が速い=治療に反応しやすい」、つまり治癒を目指しやすいという特徴もあります*16。そのため「進行が速い=必ず重篤」というわけではなく、適切な治療により良好な経過をたどるケースも少なくありません。
悪性リンパ腫の余命や生存率は?
悪性リンパ腫は、医療の進歩により、治癒を目指せる可能性が高まっています。ただし、悪性リンパ腫の予後は病型によって大きく異なるため、一概に「余命は何年」と示すことはできません。目安として「造血器腫瘍診療ガイドライン(2024年版)」をもとに、日本人に多い病型ごとの特徴や予後をまとめました*6。
| 病型 | 特徴・予後 |
|---|---|
| びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 | ・悪性リンパ腫の3割強を占め、日本人に最も多い病型 ・早期に発見し適切な治療を行えば予後は良好 ・とくに60歳以下の低リスク群では、9割以上が再発なく経過しており、治療回数を減らすことも可能 |
| 濾胞性リンパ腫 | ・非ホジキンリンパ腫全体の10~20% ・進行期では再発を繰り返しやすいが、症状がなく腫瘍が小さい場合は無症状が続くこともあり、治療せず経過観察とすることもある ・40歳以上の半数が20年を超える生存期間を得られる |
| 胃MALTリンパ腫 | ・胃の悪性リンパ腫の約40% ・腹痛などの症状のほか、無症状で胃カメラ検査などで偶然見つかることもある ・胃にとどまった状態の場合、ピロリ菌の除菌により90%以上が長期生存 |
| 成人T細胞白血病・リンパ腫 | ・ウイルス感染が原因とされ、年間1,000人程度が発症 ・特性ごとに「急性型」「リンパ腫型」「慢性型」「くすぶり型」に分類される ・成人T細胞白血病・リンパ腫の分類で最も多い急性型は、4年全生存率が16.8% |
悪性リンパ腫の早期発見のために、健康診断や人間ドックの受診を
発見のきっかけになるおもな検査項目
悪性リンパ腫は、以下のような健康診断や人間ドックの検査項目が発見のきっかけになることがあります*14。
| 検査項目 | 一般健康診断*20 | 人間ドック*21 | |
|---|---|---|---|
| 血液検査 | 白血球・赤血球・血小板数 | ◎ 赤血球数のみ | ◎ |
| LDH(乳酸脱水素酵素) | × | △ | |
| 画像検査 | 胸部X線(レントゲン) | ◎ | ◎ |
| 腹部超音波(エコー) | × | ◎ | |
| CT・MRI | × | △ | |
| 胃カメラ・大腸カメラ | × | △ |
上表からも、一般的な健康診断でも異常が見つかることはありますが、悪性リンパ腫の発見につなげるには、検査項目がより充実している人間ドックが有効な選択肢となります。とくに、お腹の奥のリンパ節・脾臓の腫れを確認する腹部超音波(エコー)検査は、通常の健康診断では実施されないことが一般的です。実際、血液検査が正常でも腹部エコー検査の結果をきっかけに悪性リンパ腫が発見されたケースや、胃カメラ検査で病変が認められたケースもあります。身体の状態をより詳しくチェックしたい方は、人間ドックの受診を検討しましょう。
全身のがんを調べられる「PET検査」と「DWIBS検査」
悪性リンパ腫だけでなく、全身のがんリスクを調べたい方は、「PET(ペット)検査」や「DWIBS(ドゥイブス)検査」が選択肢にあがります。これらは人間ドックなどで受けられ、一度の検査でほぼ全身をスクリーニングできます。どちらも見つけるのが得意ながん、見つけにくいがんがあるなど一長一短がありますが、悪性リンパ腫はいずれの検査でも発見しやすいがんとされています。ただし、これらの検査はすべての人に必要というわけではありません。症状や背景、必要性については医師と相談のうえで判断することが大切です。
PET検査は、がん細胞が正常な細胞よりもブドウ糖を多く取り込む性質を利用した検査です。ブドウ糖に似た検査薬を注射して撮影することで、がんが潜む箇所を画像化します。被曝のリスクはあるものの、検査薬の副作用はほとんど報告されておらず、身体への負担が少ない検査です。悪性リンパ腫の検査として有用とされています*22。
DWIBS検査は、MRI装置を使用して全身のがんを調べる検査です。放射線を使わないため被曝の心配がなく、PET検査と比べて食事制限や注射後の安静時間が不要というメリットがあります。糖尿病の方や腎機能が悪い方など、PET検査を受けにくい方にも適しています。悪性リンパ腫の発見については、正常なリンパ節も抽出されやすい欠点があるものの、経過観察には問題ないとされています*23。
PET検査やDWIBS検査を受けられる医療施設は、下記から探せます。
https://www.mrso.jp/pet/
PET検査の費用については下記記事をご覧ください。
このほか、当サイトではPET検査に関する記事を多数ご用意しています。あわせてご覧ください。
https://www.mrso.jp/mikata/category/pet/
DWIBS検査について知りたい方は、下記をお読みください。
参考資料
*1.国立がん研究センター がん情報サービス 悪性リンパ腫
*2.キャンサーネットジャパン「もっと知ってほしいリンパ腫のこと(2019年)」
*3.国立がん研究センター がん統計 がん情報サービス 悪性リンパ腫
*4.石塚賢治(2022) 悪性リンパ腫アップデート 日本内科学会雑誌 111(3)
*5.国立がん研究センター リンパ腫の原因・症状について
*6.日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン(2024年) 第II章リンパ腫
*7.日本胃癌学会 胃癌治療ガイドライン 付 胃悪性リンパ腫診療の手引き(2010年)
*8.国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト 自覚的ストレスとがん罹患との関連について
*9.東京都立多摩北部医療センター 悪性リンパ腫の早期発見のメリットと治療を解説します
*10.愛知県がんセンター 悪性リンパ腫
*11.新津望 編著『悪性リンパ腫診療スキルアップ』総論A「1. リンパ節腫脹をきたす疾患」中外医学社 2012年
*12.松浦聖平 他(2020)「頸部リンパ節腫脹84例の臨床的検討」昭和学士会雑誌 80(6).
*13.古谷伸之(2008)「第8回 リンパ節膨張を極める!」レジデント 1(9).
*14.国立がん研究センター リンパ腫の検査・診断について
*15.日本皮膚科学会 皮膚リンパ腫:菌状息肉症 Q5どんな症状ですか?
*16.東山卓也他(2019)「甲状腺悪性リンパ腫の予後因子」日本内分泌外科学会雑誌 36(3).
*17.中村昌太郎他(2014)「消化管悪性リンパ腫の診断と治療」日本消化器内視鏡学会雑誌 56(10).
*18.奥村光絵他(2008)人間ドックで発見された上部消化管Mucosa-Associated Lymphoid Tissueリンパ腫症例の臨床的検討」人間ドック 22(5).
*19.武藤桃太郎他(2021)「人間ドックにおける腹部超音波検査を契機に発見された胃悪性リンパ腫の1例」日本消化器がん検診学会雑誌 59(2).
*20.厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」2025年
*21.日本人間ドック・予防医療学会 人間ドックの検査項目
*22.国立がん研究センター がん情報サービス PET検査とは
*23.Thomas C Kwee et al. Diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression (DWIBS): features and potential applications in oncology. Eur Radiol, 2008 Sep;18(9)






