人間ドックを受診したいけれど、何が何やら…という方に。人間ドックの種類とその概要(検査項目、目的、費用、検査時間など)から、自分に合う人間ドックの選び方、さらには施設の選び方まで、人間ドックの「基本のキ」を解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・人間ドックを初めて受けようと考えている方
・人間ドックを受けたいが、プランや検査項目などの選択肢が多すぎてどうしてよいかわからない方
・人間ドックの種類や、基礎知識を知りたい方
★この記事のポイント
・定期的な人間ドック受診は、健康寿命の延伸につながる
・人間ドックと定期健康診断の大きな違いは検査項目数。人間ドックのほうがより網羅的に身体を調べられる
・人間ドックの種類やプランはさまざま。検査項目を必ず確認しよう
・人間ドックの検査は、性別と年齢・遺伝・生活習慣を考慮して選ぶとよい
目次
人間ドックの受診は、健康寿命の延伸につながる
人間ドックの目的は、身体の状態を総合的かつ多角的にチェックし、がんや他の病気のリスクや兆候を調べることです。がんを始めとする病気の中には、初期のうちは自覚症状が現れにくく、気づいたときには進行しているものがあります。自覚症状がない段階から定期的に身体の状態を把握し、万が一病気があっても早期発見・適切な治療を受けることで、心身の負担、経済的負担の軽減につながります。
また、人間ドックを定期的に受診することで、身体の状態の経年変化を把握できます。たとえば、腹囲が年々サイズアップしている場合は食生活を見直し運動を心がけるなど、生活習慣を見直すきっかけにもなります。結果、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)*1を延ばすことにつながります。
年齢を重ねても健康でいるために、ライフステージが変化しやすく、さまざまな病気のリスクが高まり始める30歳ごろから人間ドックを定期的に受診することがおすすめです。ただし、女性は20代の後半から子宮頸がんの発症リスクが高まるため*2、20代から子宮頸がん検診を受けましょう。
子宮頸がん検診については下記で解説しています。
人間ドックとは? 健康診断とどう違う?
人間ドックと健康診断の違い
人間ドックと、一般的な健康診断(会社の年1回の定期健康診断や、自治体による特定健診等)との違いは、検査項目の数です。人間ドックは会社の定期健康診断等より検査項目が多く、場合によっては専門的な検査も行うことから、一般的な健康診断等では見つけにくい病気を発見できる可能性があります*3。下記に人間ドックと会社の定期健康診断との違いをまとめました*4,*5。
人間ドック | 定期健康診断 | |
---|---|---|
特徴 | 身体の健康状態を詳しく総合的に チェックする | 身体の健康状態を 大まかにチェックする |
検査項目数 | 8区分(種類)50項目程度※ | 11種類20項目程度 |
病気の 早期発見 | 健康診断よりも、 早期発見できる病気が多い | 早期発見できる病気もある |
費用 | 全額自己負担 ・スタンダードな人間ドック:3〜5万円 ・脳ドック:1.5〜5万円 ※健康保険組合や自治体によっては 助成金・補助制度あり | 企業負担のため原則無料 (オプション費用等を除く) |
検査結果 | 医師から直接結果説明がある、 Web上で確認、後日結果書類が 郵送されるなどプランによって さまざま | 後日結果書類が郵送される |
医療施設 | 人間ドックを行っている医療施設から 自由に選べる | 健康保険組合等が指定する 医療施設から選ぶ |
補足 | CTやMRIなど、健康診断では 実施されない専門的な検査も選択可能 | 健康保険組合等によっては、 定められた検査項目以外の検査を 付加できる場合がある |
人間ドックは、個人が自分の意思で受けるものです。自身の気になる病気や詳しく調べたい部位などに応じて、プランやオプションを自由に選べます。検査項目は、基本検査項目のみ*4でも8区分(種類)50項目程度と会社の定期健康診断より多く、プラン等によってはCTやMRIといった健康診断では行われない精密な検査や、脳ドックのように特定の部位にフォーカスした検査も受けられます。また、医療施設によっては医師による対面での結果説明や、検査結果をふまえた保健指導等のアフターフォローを実施していることがあります*6。費用は原則的に全額自己負担ですが、加入している健康保険組合等やお住まいの自治体によっては費用補助・助成を行っている場合があります。
会社の年1回の定期健康診断は、労働安全衛生法により会社には実施が、従業員には受診が義務づけられています。検査項目は11種類20項目程度、医師判断で省略される項目もあります。なお、実施主体によっては必須検査項目以外の検査を付加できる場合もあります。40歳以上で必要とされた方には特定保健指導が案内されますが、基本的に医師による結果説明等はありません。費用は会社が負担するため基本的に無料です(オプション等を除く)。
「人間ドック」と「健康診断」の違いは下記で詳しく解説しています。
「人間ドック」と「がん検診」の違いは下記をご覧ください。
健康診断より人間ドックがおすすめなのはどんな人?
人間ドックは会社の定期健康診断等より検査項目が多いぶん、より細かく身体の状態を調べられます。下記に当てはまる方は人間ドックの受診を検討してもよいでしょう。
- 身体の状態をより詳しく調べたい
- がんが心配
- 家族や血縁者にがんや糖尿病などにかかった方が複数いる
- 30歳、40歳など節目を迎える
- 結婚、就職や転職、昇進などライフステージに変化があった
人間ドックを受ける意味やがんの発見率は下記で解説しています。
人間ドックの種類と内容
人間ドックにはさまざまな種類やプランがあります。おもな種類として、基本的な検査を中心とした人間ドック、脳ドックのように特定の部位をより詳しく調べる専門ドック、性別ごとに適した検査をパッケージ化したレディースドック・メンズドックなどがあります。それぞれの概要を紹介します。なお、本記事では以降、日本人間ドック・予防医療学会が定める基本検査項目を人間ドックの「基本的な検査」とします*4。
人間ドック
基本的な検査のみを実施するプランや、基本的な検査にその他の検査を組み合わせたプランなどバリエーションは多岐にわたり、検査項目や費用、所要時間もプランや医療施設ごとに異なります。ここでは基本的な検査のみの人間ドックの概要を紹介します。
【検査内容】
基本的な検査(身体計測、聴力・視力検査、血液検査(生化学・血液学・血清学)、心電図検査、呼吸機能検査胸部X線(レントゲン)検査、腹部超音波(エコー)検査、胃X線(バリウム)検査、尿検査、便潜血検査など)など
【費用目安】3~5万円
【所要時間】2~5時間
【こんな方におすすめ】
・人間ドックを初めて受ける方
・生活習慣が気になっている方
・効率よく身体の状態を知りたい方
なお、基本的な検査のみの人間ドックに含まれる標準的ながんの検査は、胸部X線(レントゲン)検査、腹部超音波(エコー)検査、胃X線(バリウム)検査、便潜血検査であり、腹部エコー検査以外は、自治体のがん検診などで実施されている検査と同じ内容です。より詳しく調べたい場合は、内視鏡やMRIなど各部位における専門的な検査が組み込まれたプランを選ぶ、またはオプションなどで追加することが可能です。
人間ドックで受けられるより詳しいがんの検査は次章で紹介します。
人間ドックの基本的な検査の内容と費用は下記をご覧ください。
脳ドック
CTやMRIなどで脳の状態を詳しく調べる専門ドックです。脳血管疾患を中心に調べる脳ドックと、認知症の簡易検査なども含めより専門的に調べる脳ドックがあります。
【検査内容】
頭部MRI/MRA検査、頭部CT検査、頸動脈超音波(エコー)検査、認知機能検査など
【費用目安】1.5~5万円
【所要時間】30分~3時間
【こんな方におすすめ】
・頻繁に頭痛がある方
・高血圧、脂質異常症、動脈硬化などを指摘されたことがある方
・脳血管疾患など、脳の病気を患った血縁者がいる方
脳ドックについての記事一覧はこちらからご覧いただけます。
心臓ドック
CTや心電図などで心臓の状態を詳しく調べる専門ドックです。一般的な健康診断の心電図より詳しい検査方法で、心筋梗塞や狭心症といった心疾患のリスクを調べます。
【検査内容】
安静時心電図検査、運動負荷心電図検査、ホルター心電図検査、冠動脈CT検査、血圧脈波検査など
【費用目安】1~4万円
【所要時間】30分〜2時間
【こんな方におすすめ】
・胸の痛みなどの気がかりがある方
・高血圧、脂質異常症、動脈硬化などを指摘されたことがある方
・心筋梗塞や狭心症など、心臓の病気を患った血縁者がいる方
下記でも心臓ドックについて詳しく解説しています。
肺ドック
CTなどにより、肺の状態を調べる専門ドックです。肺がんや肺炎、肺気腫など呼吸器の病気について詳しく調べます。
【検査内容】
胸部CT検査、肺腫瘍マーカー検査、喀痰細胞診検査、呼吸器検査など
【費用目安】1~3万円
【所要時間】30分~3時間
【こんな方におすすめ】
・喫煙者、喫煙歴のある方
・家族など身近に喫煙者がいる方
・肺がんを早期発見したい方
レディースドック
人間ドックの基本的な検査に加え、乳がんや子宮がんなど女性特有の疾患の検査がパッケージ化されたドックです。女性に多い甲状腺の疾患やリウマチなどの検査がセットになったプランもあります。
【検査内容】
人間ドックの基本的な検査、マンモグラフィ、乳腺超音波(乳腺エコー)検査、経腟超音波(経腟エコー)検査、細胞診検査、甲状腺検査(血液検査)など
【費用目安】3.5~6万円
【所要時間】3~4時間
【こんな方におすすめ】
・人間ドックと女性特有の疾患に関する検査を一度に受診したい方
・乳房に痛み、張り、変形などの違和感、乳腺炎がある方
・月経不順、不正出血などのある方
・女性特有のがんを患ったことがある血縁者がいる方
甲状腺の検査は下記記事で解説しています。
メンズドック
人間ドックの基本的な検査に加え、おもに前立腺がんの検査がパッケージ化された男性の疾患に特化したドックです。
【検査内容】
人間ドックの基本的な検査、前立腺腫瘍マーカー検査、前立腺エコー検査など
【費用目安】4~6万円
【所要時間】3~4時間
【こんな方におすすめ】
・人間ドックと男性特有の疾患に関する検査を一度に受診したい方
・夜間頻尿、残尿感、尿切れの悪さなどの気がかりがある方
・がんを患ったことがある血縁者がいる方
全身がん検査
一度にほぼ全身のがんを調べる検査を行うドックです。検査方法は大きく「PET検査」「DWIBS(ドゥイブス)」の2つがあり、それぞれ特徴が異なります。
PET検査
特殊な薬剤によりがん細胞をマーキングすることでほぼ全身を調べる画像検査です。がんが発見された方の転移状況などを調べるのにも用いられており、PET検査とCT検査を組み合わせたPET-CT検査が近年の主流です。ほぼ全身のがんの探索ができますが、見つけるのが苦手ながんもあります。また、薬剤やCTによる医療被曝があります。
【検査内容】PET検査
【費用目安】10万円前後
【所要時間】3~4時間
【こんな方におすすめ】
・全身のがんについて調べたい方
・がんにかかった血縁者がいる方
PET検査と費用については下記記事で解説しています。
DWIBS(ドゥイブス)
MRIの撮影方法のひとつである「DWIBS(ドゥイブス)法」を用い、がん細胞特有の水分子の動きを捉えほぼ全身のがんを探索する画像検査です。PET検査と比較し被曝がない、費用がやや安価などの特徴がありますが、見つけるのが苦手ながんがある、受診できる医療施設が限られるなどのデメリットもあります。
【検査内容】DWIBS(ドゥイブス)
【費用目安】5〜8万円
【所要時間】1~2時間
【こんな方におすすめ】
・できるだけ身体への負担は少なく全身のがんを調べたい方
・がんにかかった血縁者がいる方
PET検査とDWIBS(ドゥイブス)の違いは下記記事で詳しく解説しています。
人間ドックで受けられるがん検査の種類と検査方法
前述のように、基本的な検査のみの人間ドックに含まれるがんの検査は胸部X線(レントゲン)検査、腹部超音波(エコー)検査、胃X線(バリウム)検査、便潜血検査です。各部位のがんについてより専門的に調べたい場合は、CTやMRI、内視鏡などを用いた検査を行うことも可能です。これらはあらかじめプランに組み込まれていたり、オプションなどで選べたりする場合があります。人間ドックで受けられるおもながんの検査と概要を紹介します。
胃がんの検査
人間ドックの基本的な検査に含まれている胃がんの検査は胃X線(バリウム)検査です。医療施設やプランによっては、胃の内部をカメラで直接観察する「胃内視鏡(胃カメラ)検査」を実施している、あるいはオプションで変更できる場合もあります。いずれも胃を観察しやすくするため前日から食事制限が必要です。そのほか、胃がんの主因となるヘリコバクター・ピロリの感染を調べる検査や、将来的な胃がんのリスクを評価する検査などもあります。
【検査方法】
胃X線(バリウム)検査、胃内視鏡(胃カメラ)検査、胃CT検査、各ピロリ菌検査、胃がんリスク検査(ABC検査)など
胃がん検診と各検査の費用、受診年齢は下記で解説しています。
胃カメラをラクに受ける方法は下記をご覧ください。
大腸がんの検査
人間ドックの基本的な検査に含まれている大腸がんの検査は便潜血検査です。食事制限などもなく身体的負担が少ない検査ですが、早期の大腸がんなどは発見されないこともあります。早期の大腸がんの発見には、大腸の内部をカメラで直接観察する「大腸内視鏡(大腸カメラ)検査」が有用ですが、検査前日から食事制限や下剤を服用する必要があります。このほか、内視鏡を使わずにCTで大腸を撮影する検査を行う医療施設もあります。
【検査方法】
便潜血検査、大腸内視鏡(大腸カメラ)検査、大腸CTなど
便潜血検査については下記で詳しく解説しています。
大腸カメラ検査の詳細は下記をご覧ください。
乳がんの検査
乳がんの検査は、人間ドックの基本的な検査には含まれませんが、女性向けのプランやレディースドックではほとんどの場合行われる検査です。検査方法はマンモグラフィや乳腺超音波(エコー)検査が主流ですが、近年ではMRI撮影方法のひとつであるDWIBS(ドゥイブス)法を活用し、乳房を挟んだり触れられたりすることなくがんを調べる「無痛MRI乳がん検診」も登場しています。また、全身ではなく乳腺のみを対象としたPET検査(PEM検査)もあります。
【検査方法】
マンモグラフィ、乳腺超音波(エコー)検査、無痛MRI乳がん検診、PEM検査など
無痛MRI乳がん検診は下記で詳しく解説しています。
PEM検査について知りたい方は下記をご覧ください。
子宮がんの検査
子宮がんの検査は人間ドックの基本的な検査には含まれず、女性向けのプランやレディースドックで行われることが多い検査です。子宮がんは、子宮頸がんと子宮体がんに大別され、検査対象部位が異なります。プラン等によっては子宮頸がんの検査のみで、子宮体がんの検査は行われないことがあるため、子宮体がんの検査も希望する場合は検査内容を必ず確認しましょう。なお、子宮頸がんは20代後半から、子宮体がんは40代後半から罹患者数が増加します*2,*7。リスクに応じて必要な検査を選択しましょう。
【検査方法】
子宮頸がん:子宮頸部細胞診
子宮体がん:子宮内膜細胞診
子宮頸がん・子宮体がん:経膣超音波(エコー)検査、骨盤超音波(エコー)検査、骨盤MRI検査など
子宮頸がん検診のストレスを少なくするコツは下記でご覧いただけます。
子宮体がんについては下記で詳しく解説しています。
前立腺がんの検査
前立腺がんの検査は人間ドックの基本的な検査には含まれず、男性向けのプランやメンズドックではほとんどの場合行われる検査です。検査方法はPSA検査(腫瘍マーカー)が主流で、血液検査のみで簡便に検査可能です。このほか、前立腺に特化した前立腺MRI検査などを組み込んだプランもあります。
【検査方法】
PSA検査、前立腺MRI検査など
腫瘍マーカーについては下記でも解説しています。
【初めての人間ドック】プランやオプション、医療施設の選び方
検査の選び方の基本は「性別と年齢」「家族歴」「生活習慣」
ここまでお伝えしたように、人間ドックにはさまざまな種類やプランがあり、似通ったプラン名でも検査内容や検査方法が異なることがあります。プラン名などからなんとなく選ぶのではなく、自身はどこを調べたいのか明確にしたうえで、希望する検査が含まれているプランを選ぶことが大切です。
何を調べたらよいかわからない場合は、性別と年齢、家族歴(血縁者の既往歴)をもとに考えていくとよいでしょう。
性別と年齢
一般的に、病気の多くは加齢とともに罹患リスクが高まりますが、性別によってかかりやすい病気や若年層でも発症する病気もあります。性別・年齢によっておすすめの検査をまとめました。人間ドックの基本的な検査+該当年齢の検査が含まれるプランまたはオプション等で選択することをおすすめします。
女性 | 男性 | |
---|---|---|
20代 | 子宮頸部細胞診など | – |
30代 | 乳腺超音波(エコー)検査、 子宮頸部細胞診、HPV検査、 胃がんリスク検査(ABC検査)など | 胃X線(バリウム)検査、 胃内視鏡(胃カメラ)検査、 大腸内視鏡(大腸カメラ)検査、 胃がんリスク検査(ABC検査)など |
40代 | マンモグラフィ、 乳腺超音波(エコー)検査、 子宮頸部細胞診、HPV検査、 胸部X線(レントゲン)検査、 胃X線(バリウム)検査、 胃内視鏡(胃カメラ)検査、 大腸内視鏡(大腸カメラ)検査、 骨密度検査、頭部MRI/MRAなど | 胸部X線(レントゲン)検査、 胃X線(バリウム)検査、 胃内視鏡(胃カメラ)検査、 大腸内視鏡(大腸カメラ)検査、 PSA検査(腫瘍マーカー)、 頭部MRI/MRAなど |
50代以上 | マンモグラフィ、 乳腺超音波(エコー)検査、 子宮頸部細胞診、HPV検査、 子宮体部細胞診、 胸部X線(レントゲン)検査、 胃X線(バリウム)検査、 胃内視鏡(胃カメラ)検査、 大腸内視鏡(大腸カメラ)検査、 骨密度検査、PET検査、 頭部MRI/MRAなど | 胸部X線(レントゲン)検査、 胃X線(バリウム)検査、 胃内視鏡(胃カメラ)検査、 大腸内視鏡(大腸カメラ)検査、 PSA検査(腫瘍マーカー)、 PET検査、頭部MRI/MRAなど |
年齢・性別ごとにおすすめの検査は下記でも詳しく紹介しています。
家族歴
家族歴とは、近親者がいつ・どんな病気にかかったかという病歴のことです*8。病気の中には遺伝が関連するものがあるため、血縁者に特定の病気を発症した人が複数いるなどの場合は、20代のうちから定期的な検査の受診を検討しましょう。なお、家族歴は自身を中心に3世代(両親・祖父母・おじおば・おいめい・曽祖父母・曽祖父母のきょうだい)まで把握しておくことが望ましいです*8。
がんと遺伝の関係については、下記で詳しく解説しています。
生活習慣
さまざまな病気には、食事や運動、喫煙、飲酒、休養などの生活習慣が関わっており、これらの生活習慣が起因となる病気を総称し生活習慣病と呼びます*9。生活習慣病とは、がん、心臓病、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、糖尿病などです*9。また、喫煙歴があると肺がんなどの呼吸器疾患、飲酒歴があると肝硬変などの肝疾患のリスクが高くなります。自身の生活習慣を振り返り、脳梗塞が心配な方は人間ドックに加え脳ドックも受診するなど、気がかりに応じてプランや検査を選びましょう。
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人間ドックのオプションとは?
人間ドックの基本的な検査は身体計測、聴力・視力検査、血液検査(生化学・血液学・血清学)、心電図検査、呼吸機能検査、胸部X線(レントゲン)検査、腹部超音波(エコー)検査、胃X線(バリウム)検査、尿検査、便潜血検査などです。これら基本的な検査以外のより専門的な検査を、便宜的に「オプション検査」と称している医療施設が多いです。各部位のMRIやCT、内視鏡検査、超音波(エコー)検査などのほか、アレルギー検査や胃がんリスク検査(ABC検査)、動脈硬化検査(CAVI検査)などを提供している医療施設もあります。
オプション検査の提供方法は医療施設によってさまざまですが、おもに下記の3パターンがあります。
- 文字通りオプションとして基本的な検査プランに付加する
- プランにあらかじめ専門的な検査が組み込まれている
- 脳ドック、レディースドック等のように、専門的な検査をパッケージ化したドックとして提供している
いずれの場合も検査方法や費用は医療施設によって異なるため、どのパターンのほうが費用対効果がより高いといったことは一概に言えません。また、一般的には検査数が多いほど費用も多くかかります。年齢や家族歴、生活習慣と自身の気がかりに応じて必要な検査を選ぶようにしましょう。
人間ドックのオプションについての詳細は下記でも解説しています。
人間ドックの施設選び、3つのポイント
人間ドックはどこで受けるかも重要です。人間ドックの施設選びのポイントをお伝えします。
ポイント1:希望する検査に対応しているか
前提として、希望する検査方法に対応しているかをチェックしましょう。例えば、胃がんの検査方法が胃X線(バリウム)検査の医療施設もあれば、胃内視鏡(胃カメラ)検査を行う医療施設もあるといったように、同じ部位でも検査の方法が異なる場合があります。複数の医療施設を比較して、予算範囲内で納得感のあるプランを選ぶようにしましょう。
ポイント2:経験豊富な専門医がいるかどうか
各分野に精通した専門医がいるかどうかも重要なポイントです。例えば、内視鏡検査などは、担当する医師の技術によって大きく左右されます。また、レントゲンやMRI、CTなどの画像検査は、撮影した画像から異常を読み取るスキルが重要です。これらの技術は経験によるところも大きいため、検査実績数が参考のひとつとなります。また、胃カメラ検査であれば消化器内視鏡専門医が検査を行なっているかなど、各分野における専門医の在籍状況を医療施設のWebサイトなどで確認しておくとよいでしょう。
ポイント3:「機能評価認定施設」に選ばれているか
人間ドックの実施施設選びの参考となるのが「機能評価認定施設」かどうかです 。機能評価認定施設とは、日本人間ドック・予防医療学会が認定する評価基準をクリアした医療施設のことです。評価項目は100以上あり、5年ごとに評価・認定審査を行うため、常に健診の質が担保された医療施設と言えます*6。また、機能評価認定施設では、人間ドックを受けた当日に医師からの結果説明や専門スタッフによる保健指導が受けられます。その他、人間ドック受診率を開示しているかどうかも、医療施設を選ぶときの参考にしましょう。
機能評価認定施設は下記から検索できます。
e人間ドック 認定施設(外部サイト)
<番外編>受診時に確認しておきたいチェック項目
人間ドックは身体の健康状態を把握して健康維持に役立てるため、定期的に受診するものです。経年変化をより把握しやすい観点では、できれば同じ医療施設で受診することが望ましいでしょう。自分に合った医療施設をみつけるには、実際に受診して医療施設の対応をチェックするのがおすすめです。スタッフがていねいに対応してくれるか、担当の医師がこちらの質問にしっかりと答えてくれるか、検査の結果をわかりやすく説明してくれるかなどを確認しましょう。検査結果に異常があった場合、治療したほうがいいのかどうか、その場合どこを受診すればいいのか、提携病院を紹介してくれるかどうかなど、検査後のフォローがしっかりとしているかどうかを確認することも大切です。
人間ドック、実際受けてどうだった? 体験者の声
「毎年、会社の健康診断を受けているから人間ドックは必要ない」、「人間ドックは受けないほうがいいと聞いたことがある」といった声もあり、人間ドックの受診を迷っている方がいるかもしれません。そこで、人間ドックを受診した方の感想の一部を紹介します。実際に体験した方の声を参考にしてみてください。
女性・34歳
人生初めての人間ドック。 受けようと思ったのは著名人の若くしての、がんによる死。 早期発見できていればと思う反面、自分は一度も受けたことがなく、受けてみようと思いました。 値段としては普通なんでしょうが、初めてなので『高いな』と最初は思いましたが、ここで受けずに何か病気が見つかり後々にもっとお金がかかるくらいなら安いし、自分の体への安心につながると思いました。 定期的に受けることが自分の体への安心につながるので定期的に受けようと思います。
女性・55歳
母がくも膜下出血で倒れた事があります。遺伝する可能性があるらしいと聞き、今回脳ドックを受診しました。 結果、未破裂脳動脈瘤が見つかり、近々精密検査を受ける事になりました。ずっと気になっていたので、思い切って検査を受けて良かったです。
男性・60歳
以前人間ドック受診でがんが見つかりました。会社員をやめてから、5年以上定期健診を受けていなかったため、心配で受診したところがんの可能性があるから精密検査を受けるように言われ、いくつか病院もご紹介いただきました。腎臓がんの疑いとのこと。全く本人自覚なく驚きましたが、精密検査を受けたところやはりがんでした。手術をご担当いただいた医師からも、ごく初期の発見で本当に良かった。と言っていただきました。本当に良かったと思っています。今後も定期健診を受けるつもりです。
参考資料
*1.厚生労働省 e-ヘルスネット 平均寿命と健康寿命
*2.国立がん研究センター がん情報サービス がん統計 子宮頸部
*3.日本人間ドック・予防医療学会 人間ドックで何がわかるの?
*4.日本人間ドック・予防医療学会 基本検査項目表
*5.厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
*6.日本人間ドック・予防医療学会 健診施設機能評価
*7.国立がん研究センター がん情報サービス がん統計 子宮体部
*8.日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構 遺伝性乳がん卵巣がんを知ろう!みんなのためのガイドブック2022年版「Q13 遺伝カウンセリングで家族の病歴を尋ねられました。どこまで伝える必要がありますか?」
*9.厚生労働省 e-ヘルスネット 生活習慣病とは?