人間ドック

背中の痛みはがんのサイン? 部位別の特徴と見分け方を解説

人間ドック
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

背中の痛みの多くは筋肉や骨のトラブルですが、なかには「がん」などの重大な疾患が隠れている場合があります。本記事では、背中の痛みから疑われるがんの種類や、痛む場所による見分け方のポイント、受診すべき診療科、早期発見に役立つ人間ドックの項目などを解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・背中の痛みが気になっている方
・がんの可能性が心配な方
・がんによる痛みの種類や特徴を知りたい方

★この記事のポイント
・背中の痛みの多くは筋肉や骨の問題であるが、安静にしても改善しない場合はがんなどの重大な病気が隠れている可能性がある
・痛みだけでなく、ダイエットをしていないのに体重が減ったり原因不明の熱が続いたりする場合は受診がすすめられる
・背中の痛みがあるときは、まずは整形外科や総合内科の受診を検討しよう
・人間ドックでは、精密な機器を用いてがんの兆候をより多角的に調べることができる

背中の痛みの原因は? 「がん」が隠れていることも

背中の痛みの大部分は筋肉や骨(筋骨格系)の問題であり、がんである可能性は決して高くありません。​多くは悪い姿勢や加齢による一時的な痛みで、安静にしていれば数週間で自然に改善します。背中の痛みの原因には、下記のようなものがあります*1,*2,*3

  • 筋肉・骨・神経:長時間のデスクワークやスマホ操作による筋肉のこり・緊張、加齢による骨や軟骨の劣化(骨粗しょう症やそれにともなう圧迫骨折等)、椎間板ヘルニア、脊椎や脊髄の腫瘍など
  • がん以外の内臓疾患:膵炎、胆石症、胆嚢炎、腎結石、心筋梗塞、大動脈解離など
  • がん(悪性腫瘍):膵臓がん、肺がん、他部位のがんからの骨転移など
  • その他:ストレスや精神的負担など

内臓疾患やがんが原因の場合、放置すると命に関わる可能性があります。​「休息やストレッチで痛みが緩和しない」「痛みが日に日に強くなる」といった場合は、単なる筋肉の疲れやこりではない可能性があるため、必ず医療施設を受診しましょう。

骨粗しょう症(骨粗鬆症)は、骨密度の低下によって骨折を起こしやすい状態です。とくに50代以降の女性は急速に骨密度が低下します。40代前半までの骨密度との比較によって、さらに状態を把握しやすくなります。詳細は下記で解説していますので、ご覧ください。

【場所別】背中の痛みから疑われるがんの種類

背中の痛みは、「どこが痛むか」によって、原因となっている臓器を特定するためのヒントになることがあります。疑われる代表的ながんの種類と、その臓器の場所、おもな症状を以下にまとめました。

背中の痛みが起こりうるがんの種類

代表的ながん 背中側から見た
臓器の位置
おもな症状
膵臓がん*4 みぞおちの裏側
(やや左寄り)
腹痛、食欲不振、おなかの張り、腰や背中の痛み等
食道がん*5 首の付け根~
みぞおちまで
(背中の中心)
飲み込む際の違和感やつかえる感じ、体重減少、胸や背中の痛み等
腎臓がん
(腎細胞がん)*6
背骨を挟んで背中の
真ん中あたりに
左右ひとつずつ
(高さは肋骨の下辺り)
血尿、背中や腰の痛み、おなかのしこり等
腎盂(※)・
尿管がん*7
左右の腎臓の
背骨寄り~骨盤まで
(背骨の両脇)
(尿管が血液で詰まった際などに)腰や背中、脇腹に鋭い痛み等
肺がん*8 肩甲骨の上端~
肋骨の下辺りまで
(背中の広い範囲)
咳や痰、血痰、胸痛のほか、(脳や骨などへの転移による)背中や肩の痛み等
※腎盂(じんう):腎臓の一部で、尿管とつながっている

これらのなかでも、膵臓がんは早期発見が非常に難しいがんの代表格です。初期段階では目立った症状が乏しく、背中の痛みをきっかけに発見されることもあります。

各がんの初期症状の詳細や、なりやすい人の特徴など、詳細は以下の記事からご覧いただけます。

その背中の痛みは「がん」? 見分け方のポイント

筋肉の問題(筋・筋膜性疼痛症候群)でないかを確認する

「筋・筋膜性疼痛症候群(きん・きんまくせいとうつうしょうこうぐん)」とは、「筋筋膜性背部痛(きんきんまくせいはいぶつう)」や「筋痛症」とも呼ばれます。筋肉の緊張や血流低下などに関連する、一般的な痛みの原因で*9、デスクワーク後の肩こりなど、背中の筋肉のこわばりや血流の滞りによって起こります。長時間同じ姿勢を続けたり、筋肉を使いすぎたりすることで、痛みが生じます。

ストレッチなどによる早期の治療が重要で*10、負荷が繰り返されたり、血行の悪い状態が続いたりすると、筋が短期間で回復できなくなるともされています*9。痛みを防ぐには、適度な休憩やストレッチ、肩まわりを温めるなどを意識して過ごすようにしましょう。また、これらを試みてもよくならない場合には、筋・筋膜性疼痛症候群の進行によって薬物療法が必要とされる可能性や、他の疾患を併発している可能性があるため、自己判断せず医療施設を受診するようにしましょう。

重大な病気が隠れていないかを確認する

背中の痛みが疲労やこり(筋・筋膜性疼痛症候群)ではなく、がんや重大な病気に由来するものかどうかを確認するため、以下のチェックリストも参考にしてみてください。

【重大な病気が疑われるサインのチェックリスト】*2

  • 最近、背中を強く打つようなケガをした
  • 50歳以上で、軽く背中を打つケガをした
  • ダイエットをしていないのに、体重が減った
  • 風邪でもないのに、原因不明の熱がある
  • 免疫力が低下する病気がある、またはその治療中である
  • 過去に「がん」にかかったことがある
  • ステロイド薬を長期間使用している
  • 70歳以上で骨粗鬆症(骨粗しょう症)と診断されている
  • 手足のしびれ、力が入らないなどの症状が悪化している
  • 背中の痛みが長引いている、または徐々に悪化している

背中の痛みの多くは1ヶ月以内に自然に改善しますが、体重減少や発熱、免疫の低下、手のしびれ、骨粗しょう症の既往などがある場合は、がんや感染症、骨折などの重大な病気が隠れている可能性があります。上記の項目に一つでも当てはまる場合は、早めに医療施設を受診してください*2

がんによる背中の痛みの特徴を確認する

がんによる背中の痛みは、原因となる場所によってさまざまな痛みが現れることがあります*11。たとえば、下記が挙げられます。

・「どこ」とはっきり指をさせない、広範囲の重い痛み

内臓のがんが原因の場合、特定の場所をピンポイントで指せないような、広範囲の鈍い痛み(内臓痛)が起こります。

・動いたり押したりしたときに走る、鋭い痛み

がんが背骨や筋肉にまで及ぶと、ズキズキとうずくような鋭い痛み(体性痛)になり、身体を動かしたときや、その部分を圧迫した際に強い痛みを感じることがあります。

・ビリビリと電気が走るような、神経にさわる痛み

がんによって神経が影響を受けると、焼けるような感覚や、電気が走るようなビリビリとした痛みが生じます。ひどくなると、衣服がこすれる程度のわずかな刺激でさえ、激痛として感じることもあります。

このような性質の痛みに近い場合は、がんの可能性も否定できないため、早めに医療施設を受診しましょう。

【Q&A】がんの背中の痛みに関するよくある質問

ピリッと痛い、あるいは息を吸うと背中が痛むのは、がんが原因?

背中にピリッと電気が走るような痛みを感じる場合、肋間神経痛などが原因のことがありますが、がんの可能性もゼロではありません。肋間神経痛とは、肋骨の間を通る神経が炎症や圧迫によって刺激されることで起こる症状です。つまり、なんらかの原因や他の疾患にともなって発症します*12。多くは猫背や巻き肩、スマホ首による胸郭への圧迫、身体の冷え、精神的なストレスなどが原因といわれています。

ただし、肺がんなどが原因で、深呼吸や咳をした際に胸や背中が痛むケースもあります。そのほか、脊椎疾患、気胸、胃十二指腸潰瘍、胆石症などと区別する必要があるため*10デスクワークが原因などと安易に自己判断しないことが重要です。

背中が痛いときは、何科に行けばいい?

背中の痛みが続く場合、まずは「整形外科」か「総合内科(一般内科)」の受診を検討しましょう。痛みの多くは骨や筋肉の問題ですが、内臓疾患が隠れている可能性もあるため、身体を総合的に診てもらうことが大切です。受診先を選ぶ目安は以下のとおりです。

  • 整形外科:身体を動かしたときに痛みが変化する。特定の場所(骨や筋肉)がピンポイントで痛む
  • 総合内科(一般内科):安静にしていても痛む。体重減少や食欲不振をともなう

消化器や循環器などの異常が疑われる場合は、そこから専門医が紹介されます。とくに痛みが強まる、広がる、まったく改善しないといった場合は緊急性が高いため、早急に医療施設を受診しましょう。

早期発見に役立つ人間ドックの選び方と検査項目

人間ドックは、効率よく全身状態を調べられる

「病院を受診して異常なしと言われたが、痛みが続いて不安」「背中以外のがんリスクもまとめて把握したい」という方には、人間ドックの受診がおすすめです。

人間ドックでは、身体の状態を総合的かつ多角的にチェックし、がんやほかの病気のリスクや兆候を調べることができます。また、一般のクリニックにはない、より詳細な検査を受けることができます。

下記記事では、人間ドックの種類や含まれている検査、プランの選び方を解説しています。

【膵臓・全身を詳しく調べる】EUS・MRCP・DWIBSの検査項目がおすすめ

背中の不安を解消するために人間ドックを受診する際は、とくに以下のような検査項目が含まれるコースやオプションを選択してみてください。これらは、膵臓がんをはじめとしたがんの早期発見に役立ちます。

  • 超音波内視鏡(EUS): 内視鏡の先に超音波装置をつけ、口から胃や十二指腸まで入れて、膵臓を至近距離で観察する検査です。体外からの超音波検査より鮮明な画像が得られます*12
  • MRCP(磁気共鳴胆道膵管撮影): 磁気を使って、胆管や膵管の通り道を鮮明に画像化します。身体に負担をかけず、膵臓だけでなく、胆道も含めて詳しく調べられます。
  • DWIBS(ドゥイブス)検査: 全身を広範囲に評価できる、MRI装置を用いた画像検査です。放射線被曝のリスクがなく、身体への負担もありません。

これらの検査を受けられる医療施設は、下記から検索できます。

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MRCP(磁気共鳴胆道膵管撮影)とDWIBS(ドゥイブス)検査の流れや費用などは、以下の記事で詳しく解説しています。

参考資料
*1.日本成人病予防協会 背痛 -気になるからだの危険信号 痛み-
*2.日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドライン JSLM2021」
*3.日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
*4.国立がん研究センター がん情報サービス 膵臓がんについて
*5.国立がん研究センター がん情報サービス 食道がんについて
*6.国立がん研究センター がん情報サービス 腎臓がん(腎細胞がん)について
*7.国立がん研究センター がん情報サービス 腎盂・尿管がんについて
*8.国立がん研究センター がん情報サービス 肺がんについて
*9.日本整形内科学研究会 一般の方へ
*10.日本ペインクリニック ペインクリニック治療指針改訂第6版(2019年)
*11.東京都立病院機構 がん·感染症センター都立駒込病院 がんの痛みはがまんしないで!
*12.国立がん研究センター がん情報サービス 膵臓がん 検査

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