がん検診

がんによる腰痛はどんな痛み? 安静時や夜間の痛みには要注意

がん検診
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

日本人の多くが経験する腰痛ですが、そのなかにはまれに「がん」という重大な病気が隠れていることがあります。がんの影響が疑われる腰痛には、一般的な腰痛とは異なる痛みがともなう場合があります。本記事では、がんによる腰痛を疑うべきサイン、腰痛をともなうがんの種類ついて解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・腰痛が気になる方
・がんを早期発見したい方
・家族が長引く腰痛で悩んでいる方

★この記事のポイント
・がんによる腰痛は全腰痛の約1%とまれだが、その分早期発見が遅れるリスクがある
・一般的な腰痛と異なり、がんによる腰痛には「徐々に強くなる痛み」「安静時や夜間に強くなる痛み」「原因不明の体重減少をともなう」という特徴がある
・腰痛の原因となるがんには、背骨に転移する転移性脊椎腫瘍や、腰周辺の内臓(膵臓、腎臓、子宮、卵巣など)のがんがある
・長引く腰痛で不安があり、全身のがんのリスクを調べたい方には、人間ドックでDWIBS(ドウィブス)検査やPET-CT検査を検討しよう

腰痛に「がん」が潜んでいることがある

腰痛は日本人の約8割が経験する「国民病」

腰痛は、日本人の多くが経験するごく身近な症状です。厚生労働省の国民生活基礎調査(2025年)では、腰痛は男女ともに自覚症状の第1位となっており*1、まさに「国民病」とも言える症状のひとつです。その原因の多くは、日常の姿勢や動作、心理的ストレスなどによるものと考えられています*2。

腰痛の85%は、レントゲン検査などで明確な原因が特定できない「非特異的腰痛」です*3。とくに仕事をしている世代では、重い物の上げ下ろしや、長時間の立ち作業・座り作業などが原因で腰痛を発症しやすいと報告されています*3。

がんが原因の腰痛は全体の約1%。でも油断は禁物

腰痛のうち、がんが原因で起こる腰痛は全体の0.1〜1.6%と報告されています*4。ごくまれではありますが、だからこそ「いつもの腰痛」として見過ごされ、がんの早期発見が遅れる可能性も考えられます。

とくに働き盛りの30〜50代にとって腰痛は身近な症状であり、それががんによるものとはイメージしにくいものです。しかし、年齢とともに、女性では乳がんや婦人科がん、男性では消化器系や前立腺がんのリスクが高まることが知られています*5。これらが進行・転移することで腰痛症状が現れることがあるため、「普段と違う腰の痛みには重大な原因が隠れている可能性がある」と意識しておくことが、早期発見において重要です。がんとの関連が疑われる腰痛の痛みの特徴は、次章で解説します。

「がんの影響が疑われる腰痛」を見分ける3つのサイン

徐々に悪化する痛み

がんが原因で起こる腰痛の特徴は、時間の経過とともに痛みが悪化することです。通常の腰痛であれば、発症後数日〜1週間程度が痛みのピークであり、その後は徐々に軽快していくのが一般的です。しかし、がんにより腰の痛みが起こっている場合、痛みは少しずつ悪化していきます*2。湿布や服用薬等では十分改善しない、あるいは一時的に軽快しても再発を繰り返し、徐々に悪化していく場合は、単なる腰痛ではなく病気が潜んでいる可能性を考慮し、整形外科または内科を受診することが重要です。

安静時の痛み、夜間の痛み

一般的な腰痛(筋肉の疲労や腰椎の老化による腰痛)は、起き上がるときや前かがみの姿勢のときに痛みが出やすく、横になって安静にしていればラクになる性質があります。一方、がんによる腰痛が疑われる重要なサインとして、「安静時の痛み」「夜間の痛み」が挙げられます*6。

たとえば、膵臓がんではみぞおちの痛みとともに背中や腰の痛みが生じることがありますが、仰向けに寝ると悪化し、前かがみに座ることで軽減しやすいという特徴が知られています*7。また、がんが脊椎に転移した場合、腰痛で夜中に目が覚めるほどの強い痛みがみられることがあります。とくに、肺がんや乳がん、前立腺がんなどが脊椎に転移しやすいとされています*8。「動かなくても痛い」「夜に痛みが強くなる」という状態は、がんを含む重大な病気のサインである可能性があるため、速やかに整形外科または内科を受診してください。

【番外編】原因不明の体重減少

ダイエットや運動など、生活習慣を変えていないにも関わらず、短期間で意図せず体重が減っている場合は注意が必要です。がんによる体重減少は、代謝変化や食欲低下などが関係していると考えられており、意図しない体重減少がみられることがあります*9。

腰痛だけでなく、普段通りの生活なのに体重が減っていく場合は、早急に整形外科または内科を受診してください。

がんが疑われるサインについては、下記記事で詳しく解説しています。

がん、感染症…重大な病気が潜む腰痛の特徴

腰痛のなかには、早急に医療施設を受診すべき「レッドフラッグ(危険信号)」と呼ばれる特徴があります。これらは、がんや脊椎の感染症、骨折などの重大な疾患が潜んでいる可能性を示すサインです*10。

以下のいずれかに該当する場合は、単なる腰痛ではない可能性を疑い、速やかに整形外科または内科を受診してください。

  • 発症年齢:20歳未満、または55歳以上で現れた腰痛
  • 痛みの性質:時間や活動性に関係のない持続的な痛み、または胸の痛み(胸部痛)をともなう
  • 既往歴:がんの既往がある、ステロイド治療を受けている、またはHIV感染の既往がある
  • 全身状態:栄養不良、原因不明の体重減少、または発熱がある
  • 神経症状:足の広範囲におよぶしびれや麻痺、排尿・排便障害などがある

腰痛を起こすことがある主要な「がん」の種類と症状

転移性脊椎腫瘍(肺がん・乳がん・前立腺がんなどからの転移)

他の臓器から背骨(脊椎)に転移した「転移性脊椎腫瘍」は、腰痛を引き起こします。がん細胞が脊椎の骨まで到達して増殖し、骨を破壊すると骨折による痛みが起こったり、脊髄の圧迫による麻痺が生じたりします*8,*11。

  • 脊椎に転移しやすいがん: 肺がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、胃がん、大腸がん、血液がんなど
  • 具体的な症状:痛み(徐々に強くなる、安静時にも痛い、夜間に強くなる、ヘルニアのようにピンポイントで鋭い痛みがある)、手足がしびれる、排尿・排便に異常をきたすなど

腰の周囲にある内臓のがん(膵臓・腎臓・尿路系など)

腰の周囲にある膵臓がんや尿路上皮がん(腎盂がん、尿管がん、膀胱がん)、腎臓がんなどは、進行すると腰に痛みが現れることがあります*12-*15。

【各がんのおもな症状】

  • 膵臓がん:腹痛、食欲不振、腹部膨満感(おなかが張る)、黄疸(皮膚や目の白い部分が黄色くなる症状)、体重減少、腰や背中の痛みなど
  • 腎盂・尿管がん:血尿、腰や背中、脇腹の痛み
  • 膀胱がん:血尿や頻尿、排尿時の痛み、尿が残る感じ、切迫した尿意、尿が出にくくい、わき腹や腰、背中の痛み、足のむくみなど
  • 腎臓がん:血尿、背中・腰の痛み、腹部のしこり、足のむくみ、食欲不振、吐き気や便秘、おなかの痛みなど

また、大腸がんは、一般に血便や便秘・下痢、腹痛などの症状が知られていますが*16、前述のとおり、進行し脊椎に転移すると腰痛を引き起こすことがあります。

膵臓がん、大腸がん、膀胱がんの症状については以下の記事で詳しく解説しています。

女性特有のがん(子宮・卵巣)

女性特有のがんである子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がんは、がんが子宮の外に進行することで、腰痛が現れることがあります*17,*18。

【婦人科系のがんの具体的な症状】

  • 子宮頸がん:出血、においをともなう濃い茶色や膿のようなおりもの、水っぽいおりもの、骨盤や下腹部、腰の痛み、尿や便に血が混じる、足のむくみなど
  • 子宮体がん:出血(褐色も含む)、下腹部の痛み、性交時の痛み、腰痛、足のむくみなど
  • 卵巣がん:下腹部の不快感、腹部の張り、腰痛、頻尿や乏尿、便秘など

腰痛が長引いており、上記のような症状も認められる女性は、速やかに婦人科を受診してください。女性特有の病気については、以下の記事もあわせてお読みください。

【Q&A】腰痛とがんに関するよくある質問

整形外科のレントゲンで「異常なし」なら、がんは否定できる?

整形外科の腰部レントゲン検査で「異常なし」と診断されても、がんに起因する腰痛を完全に否定することはできません。 腰部レントゲン検査は、おもに骨の全体像や形を映し出すものです。転移性脊椎腫瘍のように骨に転移したがんの一部は見つかることがありますが、脊椎周辺の臓器にあるがん(とくに膵臓など、他の臓器と重なる位置にあるもの)が見落とされている可能性は否定できません*19。実際に、腰痛で脊椎のレントゲン検査を行った際には腫瘍は認められず、その後の精密検査で膵臓がんが見つかったケースもあります。

そもそも、がんの診断はレントゲン検査のみで行うことはなく、複数の検査によって診断します。「レントゲン検査で異常がないのに、痛みが治らない、あるいは強くなっている」といった場合は、がんや重大な病気が潜んでいる可能性があるため、内科を受診しましょう。

「坐骨神経痛」だと思っていても、じつはがんだったケースはある?

「坐骨神経痛」の原因が、じつはがんによる神経圧迫という可能性はごくまれですがあり得ます。坐骨神経痛とは、お尻あたりから足にかけての痛みやしびれの総称であり、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などが原因で起こります。しかし、ごくまれに脊椎の腫瘍が神経を圧迫した場合も、坐骨神経痛が生じることがあります*20。

治療を続けても改善しない場合は、MRIなどより精密な検査を検討しましょう。

血液検査(腫瘍マーカー)が正常値なら、がんではない?

血液検査の「腫瘍マーカー」が正常値であっても、がんではないと断定することはできません。 腫瘍マーカーはがんの進行とともに陽性率が上昇する傾向があり、とくに早期がんの発見には向いていません。

腫瘍マーカーは、あくまで「がんの疑いがあるかどうか」を診断する補助、または治療後の経過を観察するための検査です*21。長引く腰痛に悩んでいる場合は、腫瘍マーカーではなく、精密な画像検査等を検討しましょう。

腫瘍マーカーについて詳しく知りたい方は、下記記事をお読みください。

がんを見逃さないために、人間ドックの活用を

腰痛の原因となっているがんを早期発見するには、会社の定期健康診断より身体を網羅的に調べられる意味で、人間ドックの受診が望ましいと言えます。人間ドックでより高度な画像検査を受けることで、小さな異変をキャッチできる可能性が高まります。「病院を受診して異常なしと言われたが、痛みが続いて不安がある」「全身のがんリスクをまとめて調べたい」という方は、人間ドックの受診を検討してみてください。

がんが原因かもしれない腰痛に対し、早期発見に役立つおもな検査を以下にまとめました。自身の性別や年齢、調べたい身体の部位に合わせて選択してみてください。

検査の種類対象・目的特徴
腹部超音波(エコー)検査膵臓、肝臓、
腎臓などのがん
超音波を発する機器を腹部に当てながら、
腫瘍やポリープ、結石などの有無を
リアルタイムで観察できる
レディースドック30代後半以上の
女性が対象
乳房、子宮、
卵巣などのがん
基本の人間ドックに加え、
女性特有のがんの有無を
網羅的に調べられる
DWIBS(ドゥイブス)検査全身のがん高性能MRIによるがん検査法。
放射線被曝なしで身体の広範囲を
一度にスクリーニングできる。
ただし、がんの発見が苦手な部位もある
PET-CT検査全身のがん放射性薬剤により、がん細胞の
活動状況を画像化する検査。
身体の広範囲を一度にスクリーニングできる。
ただし、がんの発見が苦手な部位もある

各検査の詳細は以下の記事で解説しています。

参考資料
*1.厚生労働省 2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況
*2.日本臨床内科医会「わかりやすい病気のはなしシリーズ45 腰痛」2008年10月
*3.日本理学療法士協会「理学療法ハンドブック シリーズ3 腰痛 第2版」2020年6月
*4.Notarangelo G, et al. Diagnostic Utility of Red Flags for Detecting Spinal Malignancies in Patients with Low Back Pain: A Scoping Review.J Clin Med, 2025; 14(20)
*5.がん研究振興財団「がんの統計2026」
*6.Verhagen AP, et al. Red flags presented in current low back pain guidelines: a review.Eur Spine J, 2016;25(9):2788-802.
*7.Lillemoe KD, et al. Pancreatic cancer: state-of-the-art care.CA Cancer J Clin, 2000; 50(4)
*8.日本脊髄外科学会 脊椎腫瘍
*9.キャンサーネットジャパン もっと知ってほしいがんと栄養のこと
*10.日本整形外科学会診療ガイドライン委員会、腰痛診療ガイドライン策定委員会「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」南江堂(Mindsガイドラインライブラリより)
*11.日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「転移性脊椎腫瘍」
*12.国立がん研究センター がん情報サービス 膵臓がんについて
*13.国立がん研究センター がん情報サービス 腎盂・尿管がんについて
*14.国立がん研究センター がん情報サービス 膀胱がんについて
*15.国立がん研究センター がん情報サービス 腎臓がん(腎細胞がん)について
*16.国立がん研究センター中央病院 大腸がんの症状について
*17.国立がん研究センター がん情報サービス 子宮頸がんについて
*18.国立がん研究センター がん情報サービス 子宮体がん(子宮内膜がん)について
*19.畠山高志. (1995). 1. 診断目的からみた腹部単純X線像の必要条件. 日本放射線技術学会雑誌 51(6)
*20.日本臨床整形外科学会 坐骨神経痛
*21.国立がん研究センター がん情報サービス 腫瘍マーカー検査とは

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