人間ドック

「人間ドック」と「がん検診」の違いとは。がん発見率や検査内容・費用を比較&費用対効果が高い人間ドックも紹介

人間ドックがん検診 人間ドック
上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

人間ドックとがん検診はどちらも、病気を早期発見し、早期治療へつなげることができます。両者の大きな違いは、実施主体(検査を提供している主体)と実施目的、がんに特化しているか否かです。それぞれの特徴と相違点、がん発見率のほか、検査内容や費用などを解説します。

★こんな人に読んでほしい!
・人間ドックとがん検診の違いがわからない方
・人間ドックは「がんを見つける検査」だと思っている方
・人間ドックとがん検診の両方を受ける必要があるか知りたい方

★この記事のポイント
・人間ドックの目的は個人の死亡リスクを下げること、がん検診の目的は集団の死亡率を下げること
・自治体によるがん検診は、胃がん・子宮頸がん・肺がん・乳がん・大腸がんの5つ
・5大がん検診の対象者は必ず受診を。より詳細な検査や5大がん検診以外のがんの検査を受けたいなら人間ドックを受けよう
・がん発見率をみると、自治体のがん検診はスクリーニングに有効で、がん確定の精度は人間ドックが優位であることがわかる
・がん検診では調べられない脳ドックや心臓ドックは受ける価値あり

「人間ドック」と「がん検診」の違いとは

人間ドックはがんやその他の病気の発見、がん検診はがんの発見ができる

人間ドックは、身体の状態を調べる健康診断のひとつです*1。がんのみならず、その他の病気がかくれていないか、総合的かつ多角的に身体を調べます。会社が年1回実施する「定期健康診断(定期健診)」や、自治体が国民健康保険加入者に対して実施する「特定健康診査(特定健診)」よりも検査項目が多いため、より詳細に調べられることが特徴です。

がん検診は、がんの早期発見のための検査です。特定の部位や疾患を調べる検査を一般的に「検診」といいます。がん検診には大きく、公共的な予防対策として行われる「対策型検診」と個人が任意で受けられる「任意型検診」があり、前者はおもに自治体が、後者は医療施設が人間ドックなどで提供しています*2

「健診」と「検診」の違いを知りたい方は、下記記事をご覧ください。

「人間ドック」と「健康診断」の違いは下記記事で詳しく解説しています。

「人間ドック」と「がん検診」のおもな違い

人間ドックとがん検診は、どちらも病気の早期発見のために実施されますが、目的や実施主体、見つけられる病気などに違いがあります。人間ドックと、厚生労働省が指針を定め自治体が実施する5大がん検診との違いをまとめました。

人間ドックとがん検診のおもな違い*3

人間ドック自治体によるがん検診
(5大がん検診)
目的個人の死亡リスクの減少対象集団全体の死亡リスクの減少
特徴自分の病気のリスクに応じて、
精密な検査も含めたさまざまな
検査方法から個人の判断で
自由に選択できる
公共的医療サービスのため、
検査方法や受診間隔などが
決められている
実施主体医療施設など自治体
見つけられる病気がんを含む生活習慣病など
さまざまな病気
特定の部位のがん(胃・子宮頸部・
肺・乳房・大腸)*4
全額自己負担
・スタンダードな人間ドック:
3〜5万円
・より詳しい検査を含む
人間ドック:6〜30万円
・全身がん検査:5〜10万円
・脳ドック:1.5〜5万円

※健康保険組合や自治体に
よっては助成・補助制度あり
安価または無料

人間ドックは、個人の死亡リスクを減らすためにがんを含むさまざまな病気の早期発見を目指します。自治体のがん検診は、集団の死亡リスクを減らすために、大勢の中から特定のがんが疑わしい人を拾い上げることに有効な検査を行います。次項で詳しく解説していきます。

がん検診は厚生労働省が音頭を取っている

日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があります。5大がん検診は、胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します*4

5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく、住民票のある自治体で受診することができます。国による公共政策であるため、受診費用の一部もしくは全額が公費で負担され、安価に受診することができます。ただし、企業に勤めている方などは、職場の健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。

厚生労働省が指針を示している5大がん検診*4

種類検査項目対象年齢受診間隔
胃がん問診、胃X線(バリウム)検査
または胃内視鏡(胃カメラ)
検査のいずれか
50歳以上
※胃X線(レントゲン)
検査は40歳以上に対し
実施可
2年に1回
※胃X線(レントゲン)
検査は年1回の実施可
子宮頸がん問診、視診、子宮頸部細胞診、
内診
20歳以上2年に1回
問診、視診、子宮頸部細胞診、
内診
30歳以上2年に1回
問診、視診、HPV検査単独法5年に1回
※罹患リスクが高い人は
1年後に受診
肺がん質問(問診)、
胸部X線(レントゲン)検査、
喀痰細胞診
40歳以上
※喀痰細胞診は
原則50歳以上の
重喫煙者のみ
年1回
乳がん質問(問診)、マンモグラフィ
※視診、触診は推奨しない
40歳以上2年に1回
大腸がん問診、便潜血検査40歳以上年1回

5大がん検診は公共政策であることから、発見率や生存率ではなく、全体的な死亡率の減少効果が優先されます*5。いずれも各がんの死亡率減少効果が認められる検査・対象年齢・頻度が採用されており、科学的根拠に基づいた内容が検診ガイドラインで定められています。このように、集団全体の死亡率減少を目的として実施するものを「対策型検診」といいます*3,*5

なお、自治体によっては5大がん検診以外のがん検診を実施していることがあります。5大がん検診以外で最も多く実施されているのは前立腺がん検診で、検査方法は採血によるPSA検査(前立腺がんの腫瘍マーカー)です。

PSA検査(腫瘍マーカー)については下記をご覧ください。

人間ドックは個人のリスクに合わせて受診できる

人間ドックは、身体の状態のほか、がんやその他の病気の有無を詳細に調べるパッケージ型の健康診断で、5大がん検診に準じた検査項目も含まれていることが多いです。日本人間ドック・予防医療学会に登録している医療施設は、当学会が定める検査項目を取り入れており*6、そこには胃がん・肺がん・大腸がんの検診に準じた検査が含まれています。また、子宮頸がん・乳がん検診はオプション検査として別料金で追加できる仕組みになっています。

当学会未登録の医療施設では、施設によって検査項目が若干異なることがあります。いずれの場合も料金は医療施設が自由に設定でき、受診費用は基本的に全額自己負担です。

基本的な人間ドックの費用の目安は3~5万円です。受診者は、生活習慣や家族歴(家族の既往歴)など自身のリスクに合わせて検査をアップグレードしたり、オプション検査を追加したりすることができます。また、脳ドックや心臓ドックなど、5大がん検診にないがんや病気を調べる検査に特化した人間ドック(専門ドック)を受診することも可能です。このように、個人の死亡リスクを下げるために任意で受けるものを「任意型検診」といいます*3

人間ドックに含まれている基本検査項目は、下記記事で詳しく解説しています。

年代・男女別で追加したい検査は、下記記事で解説しています。

人間ドックとがん検診の違い&費用目安

人間ドックなど任意型検診で受診できる検査と、自治体などが実施するがん検診(対策型検診)で受診できる、がんの検査の違いを種類ごとにまとめました。下表にて太字で示す任意型検診の検査方法のうち、◎は日本人間ドック・予防医療学会が定めている必須検査項目、○は当学会がオプションとして定めている検査項目です*6

種類 任意型検診
(人間ドック型)
対策型検診
(自治体などのがん検診)
検査方法
※注1
各検査費用の目安
※注2
厚生労働省が
指針で定める
がん検診の検査項目
受診費用の目安
※注3
胃がん ◎胃バリウム検査
◎腹部エコー検査
○胃カメラ検査
・胃がんリスク検査
(ABC検査)
・ピロリ菌検査
など
約1~1.5万円 問診、胃バリウム検査
または胃カメラ検査の
いずれか
無料~3,000円程度
子宮頸がん ○子宮頸部細胞診
・経膣エコー検査
・HPV検査
など
約5,000円~2万円 問診、視診、内診、
子宮頸部細胞診、
HPV検査
無料~2,000円程度
肺がん ◎胸部レントゲン検査
・喀痰検査(喀痰細胞診)
・肺機能検査
・肺CT検査
・腫瘍マーカー
など
約1~2万円 質問(問診)、
胸部レントゲン
検査、喀痰細胞診
無料~1,500円程度
乳がん ○マンモグラフィ
○乳腺エコー検査
・乳房MRI検査
・無痛MRI乳がん検診
(乳腺ドゥイブス/DWIBS)
・PEM検査(乳房PET)
など
約3,000円~3万円 問診、マンモグラフィ 無料~2,000円程度
大腸がん ◎便潜血検査
・大腸カメラ検査
・大腸レントゲン検査
・大腸CT検査(CT
コロノグラフィ)
など
約2,000円~3万円 問診、便潜血検査 無料~1,000円程度
前立腺がん ○PSA検査(腫瘍マーカー)
・前立腺エコー検査
・前立腺MRI検査
など
約3,000円~2万円 問診、PSA検査
※厚生労働省の指針には
ないが(2025年4月時点)、
がん検診として実施
している自治体が多い
無料~1,000円程度
卵巣・子宮周辺の
がん、疾患
・内診
・子宮体部細胞診
・経膣エコー検査
・骨盤MRI検査
・腹部CT検査
・腫瘍マーカー
など
約5,000円~2万円
肝臓・腎臓・膵臓・
胆のう周辺の
がん、疾患
◎血液検査
◎尿検査
◎腹部エコー検査
・上腹部CT検査
・上腹部MRI検査
・腫瘍マーカー
など
約1~3万円
全身のがんの
チェック
・ドゥイブス(DWIBS)
・PET検査
など
約5~10万円
脳の検査
(脳ドックなど)
・頭部MRI検査
・頭部MRA検査
・頸動脈エコー検査
・簡易認知機能検査
など
約2~5万円
心臓の検査
(心臓ドックなど)
◎胸部レントゲン検査
・心電図
(安静時・運動負荷)
・心臓エコー検査
・冠動脈CT検査
・心臓MRI検査
・血圧脈波(ABI)検査
など
約1~5万円

◎:日本人間ドック学会が定めている必須検査項目、○:日本人間ドック学会がオプションとして定めている検査項目
※注1:任意型検診(人間ドック型)の検査方法は医療施設により異なる
※注2:任意型検診(人間ドック型)の各検査費用の目安は人間ドックの基本プランにオプションなどで追加した場合または検査単体の金額。検査方法や医療施設により異なる
※注3:対策型検診(自治体などのがん検診)の受診費用の目安は受診者の自己負担額。自治体などにより異なる*7

自治体や健康保険組合によっては、人間ドックの費用を一部助成(補助)している場合があります。加入している健康保険組合やお住まいの自治体のWebサイトなどを確認してみましょう。

人間ドックと自治体の5大がん検診、がん発見率に違いはある?

人間ドックのがん発見率

下表は、人間ドックにおけるがんの発見数と発見率です。太字は、厚生労働省が指針を示している5大がん検診のがん種です。

人間ドック受診者におけるがんの発見数と発見率*8
受診期間:2016年4月~2017年3月末が対象)

検査種別検査実施者数疑い含む発見がん数
※カッコ内は検査実施者数
に対する割合
確定発見
※カッコ内は検査実施者数
に対する割合
「疑い含む発見
がん数」に対する
「確定発見」の割合
肺がん3,384,771人14,369人(0.42%)941人(0.03%)6.55%
大腸がん3,162,321人43,433人(1.37%)2,181人(0.07%)5.02%
胃がん2,947,015人20,258人(0.69%)2,411人(0.08%)11.90%
肝臓がん2,802,072人10,611人(0.38%)218人(0.01%)2.05%
腎臓がん2,774,871人7,073人(0.25%)414人(0.01%)5.85%
胆のうがん2,769,527人6,884人(0.25%)87人(0.003%)1.26%
膵臓がん2,753,482人7,545人(0.27%)244人(0.01%)3.23%
食道がん2,563,879人7,411人(0.29%)495人(0.02%)6.68%
血液がん1,803,841人5,466人(0.30%)127人(0.01%)2.32%
乳がん1,082,078人14,760人(1.36%)2,493人(0.23%)16.89%
子宮頸がん919,769人4,966人(0.54%)394人(0.04%)7.93%
前立腺がん834,796人10,478人(1.26%)1,272人(0.15%)12.14%
卵巣がん363,559人1,810人(0.50%)69人(0.02%)3.81%
子宮体がん160,112人662人(0.41%)56人(0.03%)8.46%
その他840,505人6,117人(0.73%)516人(0.06%)8.44%

※日本人間ドック・予防医療学会「平成30年度(2018年度)実態調査」をもとに編集部で作成
※小数点第3位を四捨五入(胆のうがんの「検査実施者数に対する割合」のみ小数点第4位を四捨五入)
※太字は厚生労働省が指針で定めるがん検診の種類

自治体による5大がん検診のがん発見率

下表は、自治体の5大がん検診におけるがんの発見数と発見率です。

自治体のがん検診におけるがんの発見数と発見率*9(2022年度)

がん検診受診者数要精密検査者数
※カッコ内はがん検診
受診者数に対する割合
がんであった者数
※カッコ内はがん検診
受診者に対する割合
要精密検査者数に対する
がんであった数の割合
肺がん3,002,787人45,529人(1.52%)758(0.03%)1.66%
大腸がん3,457,381人177,574人(5.14%)5,314(0.15%)2.99%
胃がん1,41,829人75,768人(5.34%)1,405(0.10%)1.85%
乳がん2,126,527人130,402人(6.13%)7,113(0.33%)5.45%
子宮頸がん3,359,476人76,686人(2.28%)835(0.02%)1.09%

※厚生労働省「令和5年度地域保健・健康増進事業報告の概況」をもとに編集部で作成
※がん検診の受診率の算定対象年齢は40-69歳(「胃がん」は50-69歳、「子宮頸がん」は20-69歳)まで)
※がん検診受診者数は2022年度受診者を2023年度報告で把握したもの。また、2022年度に精密検査を受診し結果が判明した者についても含めている
※率の算出は「精密検査未受診者数」および「精密検査未把握者数」の計数が不詳の市区町村を除いた値

人間ドックでがんはわかる?自治体のがん検診はスクリーニングに有効、がん確定の精度は人間ドックに優位性

人間ドックのがん確定の精度は、自治体のがん検診よりも優位性があると言えます。

前提として、上記で紹介した人間ドックと自治体のがん検診によるがん発見率のデータは、集計方法などが異なるため単純な比較はできません。そのうえで「受診者全体に対するがんが疑われた人(要精密検査者)」の割合と、「がんと確定した人(がんであった者、肺がん、子宮頸がんを除く)」の割合をみると、人間ドックより自治体によるがん検診のほうが高い数値となっています。その理由のひとつとして、自治体のがん検診はその地域に住むさまざまな人(集団)が対象であるのに対し、人間ドックは任意であるため健康意識が高い方が受診する傾向にある、つまり受診者の属性が異なることが考えられます。

他方で、「がんが疑われた人のうちがんが確定した人」の割合は人間ドックのほうが高く、胃がん11.90%(自治体の胃がん検診:1.85%)、乳がん16.89%(自治体の乳がん検診:5.45%)です。このことから、自治体のがん検診は集団を対象にしているためがんが疑わしい人のスクリーニング(ふるい分け)に有効であるが、がん確定の精度は人間ドックのほうが優位であると言えます。

また、自治体のがん検診は年齢によって対象者が限られているため、若年者のがんや遺伝性のがんをカバーしきれません。がん検診の対象者でない方、特定のがん(食道、胃、肝臓、膵臓、肺、子宮、膀胱のがん)*10を経験した家族や親族がいる方、5大がん検診以外の部位のがんが気になる方は、人間ドックの受診を検討しましょう。

人間ドックで異常が見つかった方の声

実際に人間ドックを受けてがんやがんの原因となり得る異常が見つかった方の声を紹介します。

年齢性別未回答

初めての人間ドックで子宮頸がんが発覚。人間ドックを受けてなかったら手術も間に合わない段階でした。とくに気がかりがあるわけでもなく、気軽に受けた人間ドックでしたが、命拾いしました。

60代・男性

転職先の規定で人間ドックを受診。大腸カメラ検査を受けたら大腸ポリープが7個も見つかり、放置していたらがん化していたと聞いてゾッとしました。会社の一般的な定期健康診断では不十分だったと思います。

30代・女性

胃カメラ検査に抵抗があり、血液検査による胃がんリスク検査(ABC検査)が選択できる人間ドックを受けたところ、胃がんの原因になるピロリ菌の感染がわかりました。除菌したら1年ほど感じていた胃の不調が解消されて快適です。

体験談をもっとみる

人間ドックとがん検診、両方受ける必要はある?

同じ検査を短期間に何度も受けるのはリスクがある

人間ドックでがん検診に準じた検査を受けた場合、同じ種類の検査を何度も受ける必要はありません。高頻度での受診を繰り返すと、命にかかわらないがんの発見によって不必要な精密検査や治療を行うことになったり(過剰診断・過剰治療)、検査にともなう予期せぬ合併症を引き起こしたりするなどのデメリットのほうが大きくなる可能性があるためです*11

人間ドックとがん検診の違い&費用目安」の表の通り、基本的な人間ドックに含まれているのは、5大がん検診のうち胃がん・肺がん・大腸がん検診に準じた検査です*6。性別によって異なる検査はオプション扱いになっていることが多く、乳がん・子宮頸がん検診は別料金を支払うことによって受診できます。5大がん検診以外で最も多く実施されている前立腺がん検診も、オプション検査です。これらは人間ドック申し込み時に申請して別料金を追加することで、基本的な人間ドックと同時に受診できることがほとんどです。

人間ドックでがん検診に準じた検査を受けた場合、同じ種類の検査を何度も受ける必要はありません。国民健康保険加入者は自治体のがん検診の受診が不要になり、会社員の方は職場の健康診断の一部検査が不要になります。必要に応じて会社などに申し出ましょう。

高頻度での受診を繰り返すと、命にかかわらないがんの発見によって不必要な精密検査や治療を行うことになったり(過剰診断・過剰治療)、検査にともなう予期せぬ合併症を引き起こしたりするなどのデメリットのほうが大きくなる可能性があります*3

人間ドックでこれらのがん検診を受けた場合は、同年度に自治体のがん検診や会社の定期健康診断に含まれるがん検診を重複して受ける必要はありません。もし、自治体のがん検診を先に受けており、自治体のがん検診にはない内視鏡や超音波(エコー)などの検査を受けたい場合は、人間ドックを希望する医療施設へ、すでにがん検診を受けていることを伝え、そのうえで検査が必要かどうか相談をしてみましょう。

人間ドックを受けずに会社の健康診断のみを受ける場合、自治体のがん検診も活用しよう

企業などに勤めている方は、職場の定期健康診断に5大がん検診に準じた検査が含まれているケースと、オプションなどで別途申し込みが必要なケースがあります。この場合、自治体の5大がん検診を受診する必要はありません。ただし、本人は受診できる機会があっても、健康保険組合によっては扶養されている家族の方にはがん検診が実施されない場合があります。加入中の健康保険組合の案内を事前に確認のうえ、被扶養者に対して5大がん検診に準じた検査が実施されていない場合は、自治体のがん検診を活用しましょう。

自治体のがん検診は、対象者に案内が郵送されることがほとんどですが、自分で情報収集しないと受けられない場合もあります。お住まいの自治体サイトなどで確認しておきましょう。

なお、自治体のがん検診の実施期間にはばらつきがあり、すべて受診予定であっても一度に受けられないことがあります。実施期間を確認のうえ、女性の場合は生理期間も加味しながらスケジューリングしましょう。

受ける価値が高い人間ドックは「脳ドック」と「心臓ドック」

自治体のがん検診より詳細な検査を希望する方やがん以外の疾患も調べたい方は、人間ドックが有用です。職場の定期健康診断よりも詳しく全身を調べたい方や、5大がん検診の対象ではない方にも適しています。

また、人間ドックの基本項目や一般的な健康診断、5大がん検診には含まれていない部位を調べたい方には、専門ドックをおすすめします。専門ドックは人間ドックの一種で、特定部位のがんや疾患の有無を詳細に調べます。よく知られる専門ドックには、脳ドックや心臓ドックが挙げられます。

脳ドックや心臓ドックでは、MRIなどの画像検査によって頭部や心臓の血管を直接確認することが可能です。脳卒中(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血の総称)や動脈硬化の前兆となる血管の異常を早期に見つけられるため、受ける価値が高い人間ドックと言えます。下記の脳ドックと心臓ドックの概要を参考に、気がかりがある方は受診を検討するとよいでしょう。

【脳ドック】
・わかること:脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血、脳出血)、脳腫瘍、アルツハイマー型認知症など
・検査内容:頭部MRI検査、頭部MRA検査、頸動脈超音波(エコー)検査など
・費用の目安:約1.5〜5万円
・こんな方におすすめ:慢性的な頭痛がある、脳卒中を患った家族がいる、物忘れが多いなど

【心臓ドック】
・わかること:心筋梗塞、狭心症、不整脈、弁膜症、大動脈瘤、心臓腫瘍、心不全、肥大型心筋症など
・検査内容:運動負荷心電図、心臓CT(冠動脈CT)検査、心臓MRI検査、心臓超音波(心エコー)検査、血圧脈波検査、血液検査、心電図検査など
・費用の目安:約2〜5万円
・こんな方におすすめ:高血圧、糖尿病、脂質異常症などがある、喫煙している、心臓疾患を患った家族がいる、ストレスが多い、30代以上の男性など

人間ドックに興味はあるけれど、どんな検査を受ければいいかわからない、施設を選ぶ際のポイントを知りたい方は下記記事もご参照ください。

参考資料
*1.厚生労働省 健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~ 健康用語辞典 健診
*2.国立がん研究センター がん対策研究所 対策型検診と任意型検診
*3.国立がん研究センター がん情報サービス(医療関係者向け) がん検診について
*4.厚生労働省 がん検診
*5.国立がん研究センター 中央病院 科学的根拠に基づくがん検診
*6.日本人間ドック・予防医療学会 基本検査項目/判定区分
*7.厚生労働省 第32回がん検診のあり方に関する検討会 資料6「令和2年度 市区町村におけるがん検診の実施状況調査 全国集計」2021年
*8.日本人間ドック・予防医療学会「2017年度・2018年度会員施設 実態調査報告」2021年
*9.厚生労働省「令和5年度 地域保健・健康増進事業報告の概況 健康増進編」
*10.国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト がん家族歴と、その後のがん罹患リスクとの関連について
*11.国立がん研究センター がん情報サービス がん検診について

本サイトの情報は、病気や予防医療への理解・知識を深めるためのものであり、特定の医学的見解を支持するものではありません。自覚症状のある方は、すみやかに診察を受けてください。また、本サイト上の情報に関して発生した損害等に関して、一切の責任を負いかねます。
タイトルとURLをコピーしました