初期のがんは自覚症状がほとんどなく気づきにくいものですが、わずかな前兆がみられることがあります。本記事では、見逃してはいけない7つの前兆や部位別のチェックリスト、がんを早期発見するための検査方法について解説します。
★こんな人に読んでほしい!
・最近疲れやすいなど、身体の異変がある方
・将来のために、がんの知識をつけておきたい方
・喫煙歴がある方、飲酒量が多い方、血縁者にがん患者がいる方
★この記事のポイント
・一般的に、がんは初期症状に乏しく、症状が現れたときには進行がんであることが多い
・早期に発見するほど治癒する可能性が高まるため、無症状のうちからがん検診や人間ドックを受診することが大切
・がん進行のサインの可能性がある「7つの前兆」に当てはまる場合は、速やかに専門科への受診を
・全身をより網羅的に調べたい方は、人間ドックが選択肢となることもある
目次
がんの初期症状・前兆はないことが多い?
初期のがんは「無症状」がほとんど。症状があるとすでに進行していることも
がんにはさまざまな種類がありますが、その多くは、初期段階では自覚症状がないことがほとんどです*1。がん細胞は、発生してから段階を経て増えていきます*2。がん細胞が周囲に影響するほど増えていない段階では、痛みなどを感じることはほぼありません。しかし、ある程度増殖し、周囲の神経や組織に影響を及ぼすようになってようやく、痛みや違和感といった身体の異変が現れるのが一般的です。
ただし、がんの種類によっては、比較的早期からなんらかの症状が現れるものもあります。たとえば、脳腫瘍では頭痛、頭頸部がんや食道がんでは食べものを飲み込むときの痛み、咽頭がんでは声のかすれなどです*3。
無症状のうちにがんを早期発見する2大メリット。「生存率」と「治療負担」
がんを早期のうちに発見するメリットは大きく2つです。
治癒を目指せる確率が高まる
一般にがんは、無症状の「早期」に見つかるほど、治癒を目指せる確率が高まります*2。国立がん研究センターのデータでは、ステージ1の5年生存率(2015年/ネット・サバイバル※)は、とくに日本人に多い胃がん・大腸がん・乳がん・前立腺がんでは90%を超え、治療が難しいとされる肺がんにおいても80%以上の生存率が報告されています。反対に、転移後のステージ4ではいずれのがんも生存率は大きく低下します*4,*5。
※ネット・サバイバル:5年後に生存している割合のうち、「がんのみが死因となる状況」を仮定して算出された数値。
身体的・経済的負担が軽減
がんは一般的に、早期に発見できるほど軽度な治療ですむことが多く、結果的に身体的・経済的負担が少なくすみます*6。
参考として、2012年度の厚生労働省研究事業のデータによると、年間入院日数はステージ1が平均21日、ステージ4は44日、年間自己負担額の平均はステージ1が69万円、ステージ4は114万円であったとの報告があります*7。
がんの早期発見のためには、無症状のうちからがん検診や人間ドックを受けることがとても大切です。詳しくは「早期発見のために定期的ながん検診、人間ドックの受診を」で解説します。
見逃してはいけない7つの症状・前兆
ほとんどのがんは、初期の段階では無症状であることが多いですが、進行にともない身体に以下のような重要なサインが現れることがあります*8。
- しこり・腫れ(乳房、首、わきの下など)
- 出血(血便、血尿、不正出血、血痰など)
- 長引く咳・痰・息切れ(2週間以上続く場合)
- 便通の変化(便秘と下痢の繰り返し、便が細くなる)
- 原因不明の体重減少(ダイエットをしていないのに体重が減る)
- 疲労・倦怠感(休んでも回復しない強い疲れ)
- 長引く発熱(原因不明の微熱や高熱)
これらはあくまで一例であり、またがん以外の病気によることもあります。「いつもと違う」状態が続く場合は放置せず、速やかに医療施設を受診してください*8。各症状の詳細は次項で解説します。
しこり・腫れ(乳房、首、わきの下など)
がんのサインとして、身体に「しこり」や「腫れ」が現れることがあります。代表的なものが、乳房に生じる「乳がん」*9、喉ぼとけの下あたりに生じる「甲状腺がん」*10、舌や口の粘膜に生じる「口腔がん」*11、リンパ節(首のつけ根や脇の下、鼠径部など)が腫れる「悪性リンパ腫」*12などで、腫瘍がかたまりを作ることで皮膚の上からさわれたり盛り上がって見えたりします。
ただし、乳房のしこりは乳腺の良性腫瘍や乳腺症などであることが多いといったように*9、がん以外の病気が原因でしこりや腫れが現れることも多く、自己判断は困難です。気になる症状があれば早めに医療施設を受診しましょう。
出血(血便、血尿、不正出血、血痰など)
がんの周囲の血管はもろくなりやすく、少しの刺激で出血しやすい特徴があります。以下のような出血は、特定のがんを疑う重要なサインとなります。
| 出血の種類 | 疑われるおもながん | その他の原因となる病気 |
|---|---|---|
| 血便・黒い便*13,*14 | 血便:大腸がん 黒い便:胃がん |
血便:痔など 黒い便:胃潰瘍、十二指腸潰瘍など |
| 血尿*15 | 膀胱がん、腎臓がん | 結石、膀胱炎など |
| 不正出血*16 | 子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん | 子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、 子宮頸管ポリープなど |
| 血痰*17 | 肺がん | 肺炎、肺結核など |
上表にあるように、がん以外の病気が原因の出血もあります。自己判断はせず、必ず医療施設を受診し適切な検査・治療を受けましょう。
長引く咳・痰・息切れ(2週間以上続く場合)
肺や気管支のがんは、咳や痰、胸の痛み、息苦しさなどの症状が現れることがあります。風邪などの症状と似ているため見逃しやすいですが、上記のような症状が2週間以上続く、5日以上の発熱がある場合は、ためらわずに医療施設を受診してください*18。
なお、肺や気管支にがんがあっても、がんが発生した場所や大きさによっては自覚症状が現れないこともあります。
便通の変化(便秘と下痢の繰り返し、便が細くなる)
大腸にがんができると腫瘍によって腸管が狭まるため、便通に明らかな変化が現れます。具体的には、便秘と下痢を交互に繰り返す、便が細くなる、排便後もスッキリしない「残便感」がある、といった症状です。おなかの不調が長引いている場合は、市販薬などで対処せず、速やかに消化器内科を受診してください*13。
原因不明の体重減少(ダイエットをしていないのに体重が減る)
ダイエットなどの特別な理由がないのに体重が意図せず減ることは、多くのがんでみられるサインのひとつです。これはがんにともなう代謝変化や食欲低下などが関係していると考えられており、がん患者の約半数が意図しない体重減少を自覚しています*19。
消化器系のがんでは食欲不振や腹痛をともなうことも多く、さらに体重減少が進みます。糖尿病や甲状腺疾患、消化性潰瘍などでも体重減少はみられますが、膵臓がんと糖尿病の合併など、がんが隠れている可能性も否定できません。生活習慣を変えていないのに体重が減り始めたら、まずは内科を受診しましょう。
疲労・倦怠感(休んでも回復しない強い疲れ)
がんにより、「いつもの生活が送りづらい」「身体が重くてやる気がでない」といった強い倦怠感が現れることもあります*20。明確なメカニズムはわかっていませんが、がん細胞から産生される物質や栄養障害、貧血などが相互に影響しながら発現すると考えられています。
なお、胃や大腸など消化器系のがんでは、病巣からの微量な出血が続くことで貧血になり、それが「疲れやすさ」として現れることがあります*21。休息をとっても回復しない疲れが続く場合は、早めに医療施設へ相談してください。
長引く発熱(原因不明の微熱や高熱)
風邪でもないのに発熱が続く場合は、がんが疑わしい場合があります。とくに血液・リンパのがん、腎臓がん、肝臓がんなどでは、発熱が現れやすいです*22。以下の特徴に当てはまる場合は、注意が必要です。
- 1日1回以上、37.8℃以上の発熱がある
- 発熱がおよそ2週間以上続く
- 感染症の可能性がない
- アレルギーによる発熱ではない
- 1日の中で、体温が1℃以上変化する(熱が上がったり下がったりする)
- 抗菌薬で1週間以上治療しても平熱に戻らない
長引く発熱は身体からの重要なサインと捉え、速やかに内科を受診してください。
「爪・おなら・痛み」はがんのサイン? 気になる身体の異変を解説
【指・爪の変化】ばち指・爪の黒い線
肺がんや皮膚がんのサインが、指や爪の変化として現れることがあります。以下のような変化に気づいたら、呼吸器内科や皮膚科を受診しましょう。
- ばち状指:肺がん患者の12.5%にばち状指(指先が太鼓のばちのように丸く盛り上がること)が認められたとの報告がある*23,*24
- 爪の黒い縦線:爪に黒い縦筋が現れ、その幅が広がったり、根元の皮膚まで黒ずんだりする場合は、皮膚がんの一種「メラノーマ(悪性黒色腫)」の疑いがある
【トイレで気づく】おならのにおい
おならのにおいとがんとの直接的な関連は、現在のところ明らかになっていません。大腸がんによる腸内環境の悪化でおならがくさくなるという説もあれば、腫瘍が腸を塞いでガスが出にくくなるという指摘もあり、医療施設によっても見解は分かれています。
おならの変化は食事やストレスの影響も大きいため過度な心配は不要ですが、明らかな変化が続く場合は、念のため消化器内科を受診しましょう。
大腸がんが気がかりな方は、下記記事をご覧ください。
【痛みの発生】背中・腰の痛み
膵臓がんのサインのひとつに、背中や腰の痛みがあります。膵臓は胃の裏側、背骨に近いところにあり、がんが周囲の神経を刺激すると腰背部痛を引き起こすことがあります。膵臓がん患者の約半数に背中や腰の痛みがあったとのデータもあり*25、とくにお腹のみぞおちあたりから始まった背中の痛みや、「横になると痛み、前かがみになるとやわらぐ」という特徴的な痛みには注意が必要です。
ただし、膵臓がんは自覚症状が現れるころには進行しているケースが多いです*25。また、膵臓がんは早期発見には無症状のうちから自発的に検査を受けることが非常に重要です。
【代表的ながんの種類別】自覚症状チェックリスト
日本人がなりやすいがんの種類は?
国立がん研究センターの統計によると、日本人で罹患する人が多いがんは以下のとおりです。一生のうちにがんと診断される確率は約2人に1人とされており、これら主要ながんのサインを知っておくことは非常に重要です*4。
| 順位 | 総数 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 大腸がん | 前立腺がん | 乳がん |
| 2位 | 肺がん | 大腸がん | 大腸がん |
| 3位 | 胃がん | 肺がん | 肺がん |
| 4位 | 乳がん | 胃がん | 胃がん |
| 5位 | 前立腺がん | 肝臓がん | 子宮がん |
次項で、これらのがんの具体的な症状を解説していきます。
【大腸がん】便の変化に注目
大腸がんのサインは、おもに「便の変化」として現れます。大きくなった腫瘍が腸の通り道を狭くしたり、便とこすれたりすることで、便秘や血便などが生じます*13。
【症状チェックリスト】
- 血便
- 便通異常(便秘・下痢)
- 便が細くなる
- 残便感がある
- 腹痛
など
以下の記事では、大腸がんになりやすい人の特徴、早期発見のために受診しておきたい検査について解説しています。
【胃がん】胃炎や胃潰瘍との混同に注意
胃がんの症状は、みぞおち付近の痛みや不快感が特徴ですが、これらの症状は胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎など他の病気の症状でも現れることがあります。 自己判断はせず、気がかりがあれば内科を受診することが大切です*14。
【症状チェックリスト】
- 胃の痛み、不快感
- 胸やけ
- 吐き気
- 食欲不振
- 貧血
- 黒い便
など
胃がんの中でも、胃壁を硬く厚くさせながら進行する「スキルス胃がん」は、胃の表面を観察する胃内視鏡(胃カメラ)検査でも発見が難しいとされています。以下の記事で、胃がんやスキルス胃がんの早期発見、予防するための方法を解説しています。
【肺がん】2週間以上続く呼吸器症状
肺がんは、咳や痰といった呼吸器症状が「長引く」ことが最大の特徴です。風邪と見分けがつきにくいですが、2週間以上の継続や血痰がある場合は必ず呼吸器内科を受診しましょう*18。
【症状チェックリスト】
- 咳、痰
- 血痰(血の混じった痰)
- 胸の痛み
- 動いたときの息苦しさ
など
以下の記事では、肺がんの詳しい症状やリスク要因について解説しています。
【膵臓がん】痛みや血糖値の急変に注意
膵臓がんは初期症状に乏しく、早期発見が難しいがんですが、おなかや背中の痛みや、急な血糖値の上昇をきっかけに見つかることがあります*26。
【症状チェックリスト】
- みぞおちのあたりや背中に重い感じや痛みが続いている
- 糖尿病の発症、悪化
- 食欲がなくなった
- 吐き気、嘔吐がある
- 尿の色、肌の色、白目が黄色っぽくなった
- コーヒーやワイン、タバコなどが嫌いになるなど、嗜好が変化した
など
膵臓がんの早期発見のためのポイントについては、下記記事で解説しています。
【肝臓がん】“沈黙の臓器”が発するサイン
肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれ、かなり進行するまで自覚症状が現れません。がん化する前の慢性肝炎や肝硬変の段階では、全身の倦怠感やむくみなどの兆候がみられることがありますが、いずれも初期は無症状であることが多いため、健康診断での血液検査など定期的な検査を受けることが重要です*27,*28。
【慢性肝炎や肝硬変(肝臓がんの前段階)の症状チェックリスト】
- 疲れやすい、倦怠感
- 足がむくむ
- 腹水でお腹が張り、膨らむ
- 夜から明け方にふくらはぎがつる(こむら返り)
など
以下の記事で、肝臓がんの原因や検査方法について詳しく解説しています。
【前立腺がん】尿のトラブルは放置厳禁
前立腺がんのサインは、尿の出方に関するトラブルとして現れることがあります*29。ただし、症状は「前立腺肥大症」や「前立腺炎」とも共通しているため、診断には医療施設での検査が必要です。
【症状チェックリスト】
- 頻尿
- 尿の出が悪い(残尿感)
- 尿に血が混じる(血尿)
など
以下の記事で、前立腺がんの検査やPSA数値の見方について解説しています。
PSA検査は、前立腺がんの発見に有用な検査です。お勤めの方は、職場の定期健康診断に前立腺がん検診があれば受け、オプションで提供されていればぜひ追加しましょう。多くの自治体でもがん検診として実施されています。下記記事内で、PSA検査の有用性について解説しています。
【乳がん】日頃から乳房を意識することが早期発見のカギ
乳がんは日本人女性で最も罹患数が多いがんです。身体の表面に発生するため、日頃から乳房を見て、ふれる、「ブレスト・アウェアネス」を習慣にすることで、異変に気づける可能性が高まります*30。
【症状チェックリスト】
- 乳房のしこり
- 乳房の皮膚のくぼみや引きつれ
- 乳頭からの分泌物
- 乳頭や乳輪のびらん
など
乳がんのセルフチェック方法や検査について知りたい方は、下記記事をご覧ください。
本サイトでは、乳がんの記事をたくさんご用意しています。興味のある方は下記からご覧ください。
乳がんの記事一覧をみる
【子宮がん】不正出血、おりものの変化をチェック
子宮がんは「子宮頸がん」「子宮体がん」の総称です。がんができる部位によって名称が異なり、子宮頸がんは20代後半から罹患者数が増え始め、子宮体がんは40代以降から増え始める傾向にあります*31,*32。どちらも代表的な症状は不正出血です*33,*34。
【子宮頸がんの症状チェックリスト】
- 月経中ではない時期の出血(不正出血)
- 性交時の出血
- おりものの変化(においをともなう、濃い色、水っぽいなど)
など
【子宮体がんの症状チェックリスト】
- 月経中ではない時期の出血(不正出血)
- 閉経後の出血
- 性交時の出血、性交痛
- 排尿痛、排尿困難
- 下腹部痛
- 腹部膨満感
など
子宮頸がん・子宮体がんについて詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
本サイトでは、子宮がんのうち、おもに子宮頸がんの記事を多数掲載しています。ぜひご覧ください。
子宮頸がんの記事一覧をみる
その他のがん
【卵巣がん】お腹周りの変化に留意
卵巣がんの症状は日常的に経験しやすい不調と似ているため、見逃しがちです*35。異変に気づいたら、ためらわずに婦人科を受診してください。
【卵巣がんの症状チェックリスト】
- お腹が張って苦しい
- ウエストまわりがきつくなる
- 膨満感、食欲不振
- 下腹部が痛い
- 頻尿になる
など
以下の記事で、卵巣がんの詳しい症状について解説しています。
【食道がん】飲み込み時の違和感
食道がんの症状として、飲食時の「つかえ感」や「痛み」が現れることがあります*36。飲酒や喫煙の習慣がある方は、とくにリスクが高いため注意が必要です*37。
【症状チェックリスト】
- 飲食時の胸の違和感
- 飲食物を飲み込んだときに、胸の奥がチクチク痛む
- 飲食物を飲み込んだときに、つかえ感がある
- 熱いものを飲み込んだときに、しみる感じがする
- 体重減少
- 胸や背中の痛み
- 咳
- 嗄声(させい:声のかすれ)
など
食道がんのリスクや検査方法について知りたい方は、下記記事をご覧ください。
【悪性リンパ腫】首などリンパ節のしこりの有無を確認
血液がんの中で最も多いがんである悪性リンパ腫は、リンパ節の「痛くないしこり」がサインとして現れることがあります*38。
【症状チェックリスト】
- 首、脇の下、足のつけ根のしこり(さわっても痛くない)
- 原因不明の発熱、激しい寝汗
- 急激な体重減少
など
以下の記事で、悪性リンパ腫の初期症状について詳しく解説しています。
がんの初期症状についてよくある質問
若い(20代・30代)から、がんではない?
20代・30代の若年層であっても、がんになる可能性はゼロではありません。がんを発症する確率は高齢者に比べると低いものの、1年間に20歳代が約4,200例、30歳代が約16,300例の発症が推計されています*39。がんの種類では、20代は甲状腺がん・子宮頸がん・血液がん、30代では乳がん・子宮頸がん・甲状腺がん・大腸がんの罹患率が高くなります*39。
若年性がんは、進行が早いタイプが多いことに加え、本人や医療者もがんを疑わず受診が遅れがちな点が課題です。学業や仕事の忙しさから異変を後回しにすることも、発見を遅らせる要因となります*40。
とくに女性は、20代から子宮頸がん検診を、30代からは乳がんなどを含む人間ドック(レディースドック)の受診がすすめられます。
年代別でおすすめの検査項目は、以下の記事で解説しています。
見つかりにくいがんの初期症状は?
死亡者数が多い「肺がん」「大腸がん」、そして生存率(5年相対生存率)が最も低い「膵臓がん」にはとくに注意が必要です*4。これらのがんは初期の自覚症状がほぼなく、サインが現れたときには進行しているケースが少なくありません。無症状のうちに、がん検診や人間ドックを定期的に受診することが大切です。
ただし、「【代表的ながんの種類別】自覚症状チェックリスト」に当てはまる症状がある場合は、できるだけ早めに医療施設を受診しましょう。
がんが進行するとどんな症状が現れる?
がんが進行(ステージ3〜4)すると、多くの場合、痛みなどなんらかの自覚症状が現れるようになります。たとえば大腸がんでは、初期では血便や便秘、下痢などの症状が現れ、さらにがんが大きくなって大腸をふさぐと「腸閉塞」となり、腹痛や嘔吐などの症状が起こります*13。そして、腹膜に転移するとお腹に水がたまる「腹水」や激しい腹痛が生じます。
症状や経過はがんの種類によってさまざまですが、全身に影響が広がる前に、早期発見・治療を行うことが非常に重要です。
不安なときは何科を受診すべき?
気になる症状がある場合は、以下の表を参考にして、その部位に対応した専門外来を受診してください。
| 症状 | 推奨される受診科 |
|---|---|
| 便通の異常、血便、胃の痛み、吐き気 | 消化器内科 |
| 長引く咳、血痰 | 呼吸器内科 |
| 胸の痛み | 循環器内科、呼吸器内科 |
| 背中の痛み | 整形外科、循環器内科、消化器内科、 麻酔科(ペインクリニック) |
| 腰の痛み | 整形外科、泌尿器科、麻酔科(ペインクリニック) |
| しこり(首・脇・足の付け根) | 内科、耳鼻咽喉科 |
| しこり(胸) | 乳腺科 |
| 不正出血、おりものの異常 | 婦人科 |
| 頻尿、血尿 | 泌尿器科 |
| 上記の症状にあてはまらない | かかりつけの内科 |
上記の症状にあてはまらず、「何科に行けばいいかわからない」という場合は、まずはかかりつけの内科で相談し、必要に応じて専門の医療施設への紹介状を書いてもらうのがスムーズです。
早期発見のために定期的ながん検診、人間ドックの受診を
国が推奨する「5大がん検診」と人間ドックの違い
がんを無症状のうちに見つけるには「自治体のがん検診」や「人間ドック」が有用ですが、両者は目的や実施主体、見つけられる病気などに違いがあります。厚生労働省が指針を定め自治体が実施する5大がん検診と、人間ドックとの違いをまとめました。なお、企業に勤めている方などは、職場の健康診断にがん検診が含まれていることが多いほか、5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく、住民票のある自治体で受診が可能です。
5大がん検診と人間ドックの違い*41
| 自治体によるがん検診 (5大がん検診) | 人間ドック | |
|---|---|---|
| 目的 | 対象集団全体の死亡リスクの減少 | 個人の病気を早期発見する |
| 費用 | 安価または無料 | 全額自己負担(数万円〜) ※健康保険組合や自治体に よっては助成・補助制度あり |
| 検査項目 | 国が推奨する5つのがん(胃・ 子宮頸部・肺・乳房・大腸)が中心 ※前立腺がん検診を行う自治体もあり | がんを含む生活習慣病など さまざまな病気 |
| メリット | 安価に受けられる | 自治体の検診より、詳しい 検査を選択できる |
自治体の「5大がん検診」は費用が安い一方で、検査対象が胃・大腸・肺・乳・子宮頸がんに限定されています。また、対象年齢が定められているため、若年層のがんや遺伝性のがんをカバーしきれない場合があります。
一方、人間ドックは自費診療ですが、全身を網羅的に調べられるのが特徴です。年齢に関わらず5大がん以外のリスクも把握したい、より確実に早期発見を目指したいという方には、検査項目の豊富な人間ドックが推奨されます。
以下の記事で、がん検診と人間ドックの具体的な違いや受診のポイントについて解説しています。
唾液・尿を用いた「がんリスク検査」のメリットと限界
近年、唾液や尿で手軽に受けられる「がんリスク検査」が普及しつつあります。低コストかつ短時間でリスクを把握できるため、多忙な方や「まずは可能性を知りたい」という方の入り口として利用されています。
しかし、多くのがんリスク検査は、がんの種類まで特定できない、あるいは非常に限られた種類のがんのみのリスク判定に留まることがほとんどです。また、高リスク判定が出た場合、いずれは精密検査が必要になるという「二度手間」の側面もあります。数値による確率論ではなく、人間ドックの画像検査などで可視化することが、がんの早期発見への最短ルートと言えます。手軽なリスク判定か、確実な画像診断か、目的にあわせて検査方法を選択しましょう。
一度に全身を調べたい方は、人間ドックで「PET検査」、「DWIBS」の受診を
「一度の検査で効率よく全身のがんを調べたい」という方には、PET検査やDWIBS(ドゥイブス)検査が、検査の選択肢のひとつとして検討されることがあります。どちらも全身を一度に撮影できる検査ですが、すべてのがんを見つけられるわけではなく、検査の適応や有効性には限界があります。かかりつけ医などと相談し、必要に応じて受診を検討するとよいでしょう。
【PET(ペット)検査】ブドウ糖の代謝でがんを捉える検査
がん細胞が「ブドウ糖」をエネルギー源として多く取り込む性質を利用し、微量の放射線を放出する薬剤(18F-FDGなど)を使って全身のがん細胞の有無を画像化して調べます。多くの部位のがんを一度にチェックでき、がんの存在や広がりを評価する際に役立つことがあります。わずかな放射線被曝があるほか、糖尿病など血糖値の影響を受けるため、状態によっては検査条件が調整されることがあります。
PET検査でわかるがんの種類や費用は下記記事をご覧ください。
【DWIBS(ドゥイブス)検査】被曝なしで全身を撮影
MRI装置を使い、がん組織など水分子の動きが制限される部分を捉えて画像化します。被曝がなく、注射(薬剤)も原則不要です。また、PET検査に比べて前立腺がんや肝臓がん、腎臓がんなどの発見にも力を発揮します。体内に金属が入っている方は受けられない場合があります。
以下の記事で、DWIBS検査のメリットやPET検査との違いについて解説しています。
全身がん検査が受けられる医療施設は、下記から検索できます。
PET検査の検索はこちら
DWIBS検査の検索はこちら
参考資料
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*2.国立がん研究センター がん情報サービス がんという病気について
*3.国立がん研究センター がん情報サービス 喉頭がんについて
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*10.国立がん研究センター がん情報サービス 甲状腺がんについて
*11.国立がん研究センター がん情報サービス 口腔がん
*12.国立がん研究センター リンパ腫の原因・症状について
*13.国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん(結腸がん・直腸がん)について
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*15.日本泌尿器科学会 こんな症状があったら 尿に血が混じる。血尿を指摘された
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*20.国立がん研究センター がん情報サービス 倦怠感(だるさ)
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*25.日本膵臓学会「膵癌診療ガイドライン2022年版」
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*30.乳がん検診の適切な情報提供に関する研究「乳房を意識する生活習慣 ブレスト・アウェアネス(令和2年度 厚生労働科学研究費補助金)」
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*33.国立がん研究センター 子宮頸がんの原因と症状
*34.国立がん研究センター がん情報サービス 子宮体がん(子宮内膜がん)について
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