健康診断

健康診断の結果、いつ届く? 遅い理由や結果の見方

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上昌広
こちらの記事の監修医師

東京大学医学部卒医学博士。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所 理事長

上昌広(かみ まさひろ)
山本 佳奈
こちらの記事の監修医師

ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

山本 佳奈(やまもと かな)

健康診断は身体の状態を把握する機会です。本記事では、健康診断の結果が届く時期の目安から、数値が基準範囲外であった場合に疑われる病気のリスクと改善アドバイスをまとめています。また、結果が悪いと通知時期が早くなったり遅くなったりするかなど、健康診断の結果にまつわるよくある質問も紹介します。

★こんな人に読んでほしい!
・健康診断の結果の届く時期を知りたい方、結果が遅く不安になっている方
・健康診断で基準値外の項目や、再検査、要精密検査の項目があった方
・診断結果を会社の誰が確認するのか気になる方

★この記事のポイント
・診断結果が届く時期は健康診断の種類によって異なる。実施機関に確認しておこう
・結果の良し悪しによって通知時期が早くなったり遅くなったりすることは基本的にない
・健康診断の結果が届いたら判定と基準値をチェック。異常なし、基準値内でも経年比較で変化があったら、より詳しい検査を検討しよう
・再検査、要精密検査があったら先延ばしせず必ず受診を
・会社の健康診断は会社の義務。診断結果は社員のために扱われる

健康診断の結果はいつ届く?

会社の定期健康診断の結果はいつ届く?

企業に常時雇用されている社員は、企業(会社)が実施する年1回の定期健康診断を受診します。定期健康診断の結果が手元に届く時期の目安は、2〜6週間後です。なお、定期健康診断の場合、結果は会社にまとめて届いたのち各社員に配布されるケースが多いですが、個人宅に郵送される場合もあります。そのため、通知のタイミングは会社や健診実施機関によって異なります。結果が届く時期を把握しておきたい場合は、会社の担当者や受診予定の医療施設に確認しておきましょう。

特定健診(特定健康診査)の結果は自治体によって異なる

国民健康保険に加入している40〜74歳の方は、お住まいの自治体が実施する特定健診(特定健康診査)を受診します。結果の通知時期は自治体によって大きく異なり、1ヶ月後としている自治体もあれば、2〜3ヶ月後としている自治体もあります。また、受け取り方も郵送のほか、受診した医療施設や指定の場所に受け取りに行くなどさまざまです。事前にお住まいの自治体のWebサイトなどで確認しておきましょう。

特定健診については下記記事で詳しく解説しています。

個人で受ける健康診断の結果はいつ届く?

就職や転職、就学などで健康診断の結果が必要な場合は、クリニックなどが行う健康診断(雇入時健康診断など)を個人で受診することになります。結果の通知は医療施設によって異なりますが、1週間程度としているところが多く、受け取り方は郵送もしくは直接受け取りなどさまざまです。結果を即日もしくは翌日に発行する医療施設もありますが、検査項目が限られることがあります。診断結果の提出期限が決まっている方は、事前に医療施設のWebサイト等で結果書類の発行時期と、必要な検査項目が含まれているかを確認しましょう。

なお、個人で受ける健康診断は保険適用外となるため、費用は全額自己負担です。費用目安は1〜1.5万円です。ただし、新卒採用・中途採用等で入社前に内定先から健康診断結果の提出を求められている場合は、内定先の企業が費用を負担するのが適切と考えられます。内定先から費用についての言及がない場合も、念のため領収書を受け取っておくとよいでしょう。

入社前の健康診断の費用負担については、下記記事で詳しく解説しています。

即日・翌日に結果を通知する医療施設もある

検査項目によっては、健康診断を受けた当日もしくは翌日に診断結果を発行する医療施設もあります。健康診断に血液検査が含まれない場合、あるいは医療施設内で血液の成分検査が可能な場合などです。他方、血液検査を検査センターなどに委託している医療施設は即日・翌日発行に対応していません

結果の即日・翌日発行の費用については、健康診断の費用に含まれている場合もあれば、500〜2,000円程度の別料金がかかることもあります。医療施設によって異なるため確認しておきましょう。

なお、即日・翌日発行に対応している医療施設であっても、健康診断は予約制としていることがほとんどです。女性の場合、できれば生理期間を避けて予約しましょう。

生理が影響する健康診断の検査項目については下記記事で詳しく解説しています。

健康診断の結果によって通知の時期は前後する?

健康診断の結果が悪いといった理由から、結果の通知時期が早くなったり、遅くなったりすることは基本的にありません

健康診断の結果の通知が遅い理由として考えられるのは、医療施設や検査機関の混雑による遅延です。一般的に、健康診断は4月から秋口までが混みやすく、12月から2月は比較的すいている傾向にあります。また、会社の定期健康診断の結果はまとめて会社に届くため、社内の担当者からの配布が遅延しているケースも考えられます。事前に告知された通知時期より大幅に遅れている場合は、医療施設や会社の担当者に問い合わせてみましょう。

なお、健康診断の結果、早急な精密検査が必要だと判断された場合は、通常の通知時期より早く医療施設から電話等で連絡を受けることもあります

人間ドックでは、健康診断より詳しい検査が行われ、医療施設によっては受診後のサポートとして医師による検査結果の説明を行うところもあります。詳細は下記記事をご覧ください。

「判定区分」「基準値」とは? 健康診断の結果の見方

健康診断の結果には、自身の身体の状態を把握するうえで大切な情報が詰まっています。ここでは結果の見方の基本となる3つのポイントと、読み取り方を紹介します。

健康診断の必須項目

健康診断には、大きく分けて会社が実施する健康診断自治体が行う特定健診(特定健康診査)*1があります。会社の従業員に対する健康診断(年1回の定期健康診断、入社時の雇入時健康診断など)は労働安全衛生法*2によって、事業者(企業、法人)による実施と従業員の受診義務が定められています。特定健診は厚生労働省によって定められた、メタボリックシンドロームに着目した40〜75歳未満対象の健康診断で、実施主体は自治体などです。

会社の定期健康診断には特定健診の内容も含まれているため、会社員は年1回、会社が実施する定期健康診断を受ければ特定健診を受診する必要はありません。自営業や個人事業主などで国民健康保険に加入している方は、40歳以降、自治体が実施する年1回の特定健診を受診します。なお、特定健診の項目を含む人間ドックを受診して実施主体に結果を提出した場合は、特定健診を受けたとみなされます*3

<各健康診断の項目>

一般健康診断(労働安全衛生法により会社が実施) 特定健診(おもに自治体が実施、
対象は40~75歳未満の方)
定期健康診断 雇入時健康診断

●既往歴・業務歴の調査
●自覚症状・他覚症状の
有無の検査
●身体計測(身長※、体重、
腹囲※)
●視力・聴力検査
●血圧測定
●血液検査※
・貧血:血色素量、赤血球数
・肝機能:GOT(AST)、
GPT(ALT)、γ-GTP
・血中脂質:LDLコレステ
ロール、HDLコレステ
ロール、中性脂肪
・血糖
●尿検査(尿糖、尿蛋白)
●胸部X線(レントゲン)
検査※、喀痰検査※
●心電図※

※医師が必要でないと認めた
ときに省略可能な項目

●既往歴・業務歴の調査
●自覚症状・他覚症状の
有無の検査
●身体計測(身長、体重、
腹囲)
●視力・聴力検査
●血圧測定
●血液検査
・貧血:血色素量、赤血球数
・肝機能:GOT(AST)、
GPT(ALT)、γ-GTP
・血中脂質:LDLコレステ
ロール、HDLコレステ
ロール、中性脂肪
・血糖
●尿検査(尿糖、尿蛋白)
●胸部X線(レントゲン)検査
●心電図

●質問票(服薬歴、喫煙歴等)、
身体診察
●身体計測(身長、体重、BMI、
腹囲)
●血圧測定
●血液検査
・肝機能:GOT(AST)、
GPT(ALT)、γ-GTP
・血中脂質:LDLコレステ
ロール、HDLコレステ
ロール、中性脂肪
・血糖:血糖値またはHbA1c
●尿検査(尿糖、尿蛋白)


<以下は医師が必要と認めた
場合に実施>
●心電図
●眼底検査
●貧血検査(赤血球数、ヘモグロ
ビン値、ヘマトクリット値)
●血清クレアチニン検査

会社に実施が義務づけられている健康診断は上記のほか、業種によって特定の項目が加わった特定業務従事者の健康診断や、有害業務従事者等の特殊健康診断などもあります*4

判定区分とは?

健康診断の結果にあるA、Bといったアルファベットは、次項で解説する「基準値」を踏まえて検査結果を段階的に表したもので、区分は医療施設によって異なります。ここでは例として、日本予防医学協会*5と日本人間ドック・予防医療学会*6の判定区分を紹介します。

<日本予防医学協会の判定区分*5

判定区分 概要
A1 異常なし 今回の健康診断でとくに問題なし
A2 有所見健康 今回の健康診断でわずかに所見が認められたが、とくに問題なし
A3 要生活注意 生活習慣がおもな原因と思われる軽微な所見あり。現段階で生活を改善し
将来の疾病予防につなげよう
B1 要経過観察 経過観察が必要。体調に配慮し、変化を感じたら次年度の健診を待たずに
医師や保健師等に相談を。また、B1-03、06などの数字がある場合は、
3ヶ月、6ヶ月ごとに医療施設にて経過観察を
B2 経過観察中 今回の結果を主治医等に見せ、引き続き経過観察を
G1 要再検査 所見あり。一時的なものの可能性もあるため、再検査を受けよう
G2 要精密検査 所見あり。診断を確かめるために詳しい検査を受けよう
C1 要医療 受診が必要。今回の診断結果を持って医療施設を受診し、日常生活の指導や
治療についての指示を受けよう
C2 加療中 今回の診断結果を主治医へ見せ、主治医から受ける日常生活や治療の
注意などをよく守ろう
R1 判定不能 今回の検査では判定不能

※日本予防医学協会「判定区分」をもとに編集部で作成

<日本人間ドック協会の判定区分*6

判定区分
A 異常なし
B 軽度異常
C 要再検査・生活改善
D 要精密検査・治療
E 治療中
※日本人間ドック・予防医療学会「判定区分 2024年度版」をもとに編集部で作成

検査項目ごとの判定に加え、検査結果を踏まえた総合的な診断を「総合判定」として表します。この区分も医療施設によって異なります。総合判定欄には「3ヶ月後に再検査」「二次検査の受診を推奨」など今後の指導も記されるので、記載があった場合には必ず従いましょう

基準値(基準範囲、参考基準値)とは? 範囲外だと病気の疑いあり?

基準値(基準範囲、参考基準値)とは、現時点では健康と考えられる人の95%が含まれる検査数値の範囲を指します*7。検査結果を基準値と照らし合わせ、基準値から外れている場合に「要経過観察」「要再検査」「要精密検査」といった判定がなされます。

基準範囲外の数値があると、不安を感じやすいものです。しかし、健康診断の結果は受診日の体調や環境、健診前の行動などさまざまな要素によっても左右されるため、基準範囲外の項目がすぐに病気と結びつくとは限りません。再検査をしたら基準範囲内だった、というケースもあるので、神経質になりすぎず、総合判定にある指導に従いましょう。

「異常なし」「所見なし」なら安心? 30歳以上は人間ドックも検討を

検査項目の数値がすべて基準範囲内にあり、判定が「異常なし」「所見なし」であっても、例年と比較して数値に目立つ増減を見つけたら注意が必要です。場合によっては、身体の変化のサインである可能性があります。健康診断の結果に再検査などの指示がなくても、医師に相談したり、人間ドックで詳しく調べたりしてみましょう。

また、健康診断の結果に異常や所見がなく、今のところ体調に不安がない方であっても、30歳以降は健康診断とあわせ年1回の人間ドックの受診を検討するとよいでしょう。結婚や昇進、転職、妊娠、出産などライフステージが変化しやすい30代だからこそ、予防医療の一環として人間ドックを利用し、健康維持や病気の予防に役立てましょう。

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健康診断の基準値一覧。病気リスクと改善アドバイスもチェック

健康診断の基準値は、医療施設によって若干異なります。ここでは例として日本人間ドック・予防医療学会の基準値*6,*8(血液検査のうち赤血球のみ、「臨床検査のガイドラインJSLM2021」*9より抜粋)と、基準範囲外であった場合に考えられる病気、生活習慣の改善アドバイスを紹介します。ただし、繰り返しとなりますが診断結果に再検査や要精密検査があった場合は、自己判断をせず総合判定の指示に従ってください。また、基準範囲内であっても、過去の検査結果と比較し数値に目立つ増減を見つけたら、医師に相談したり、人間ドックを受診したりしましょう。

身体計測(BMI)

BMIとは身長と体重から肥満の目安を測る数値です。体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)で求めます。特定健診のほか、特定保健指導(特定健診の結果をもとに選定される生活習慣病の発症リスクが高い方への指導)*1を選定する際にもBMIが用いられます。

BMI(単位:kg/㎡)

要注意基準範囲※要注意
18.4以下(低体重)18.5~24.925.0以上(肥満)
※将来、脳・心血管疾患を発症し得る可能性を考慮した基準範囲

●基準値外である場合に疑われる病気
BMI値が高い場合:脂質異常症、高血圧症、糖尿病のリスクなど

●改善に向けて心がけたいこと
・食事は栄養バランスを考慮し、夕食は早めの時間を意識する
・過食や少食は避け、3食とも適量を意識する
・駅ではできるだけ階段を使うなど、日常的な運動習慣を身につける

この検査は何のための検査?「身長・体重・BMI検査」

血圧

心臓のポンプが正常に働いているかを調べる検査です。高血圧、低血圧などの診断に用います。

血圧(単位:㎜Hg)

基準範囲※要注意異常
収縮期血圧129以下130~159160以上
拡張期血圧84以下85~99100以上
※将来、脳・心血管疾患を発症し得る可能性を考慮した基準範囲

●基準値外である場合に疑われる病気
血圧が高い場合(高血圧):脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)・虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)のリスクなど

●改善に向けて心がけたいこと
<血圧が高い場合>
・栄養バランスを考慮した食事をとる
・減塩を心がけ、脂っこいものをできるだけ控える
・お酒、たばこを控える
・ウォーキングなどの適度な運動を継続的に行う

<血圧が低い場合>
・欠食せず、量は少なめでも3食きちんととる
・栄養バランスを考慮し、とくにタンパク質やミネラルを積極的に摂る
・1日あたり1~2Lを目安に水分を摂取する

●再検査(二次検査)、精密検査で実施される検査例
血液検査、MRI検査、超音波(エコー)検査、X線(レントゲン)検査など

この検査は何のための検査?「血圧測定」

血液検査(貧血・肝機能・脂質・血糖・腎機能)

採取した血液から身体の状態を調べる検査です。大きく、貧血・肝機能・脂質・血糖・腎機能の5つに関わる項目について、異常の有無を調べます。

貧血(定期健康診断と特定健診での実施は医師判断)

血液を構成する赤血球やヘモグロビンなどの成分を検査し、貧血などの可能性を調べます。

【赤血球(RBC)】(単位:106/μL)

基準範囲
男性4.35~5.55
女性3.86~4.92

●基準値外である場合に疑われる病気
貧血、多血症など

この検査は何のための検査?「赤血球」

【血色素(Hb)(ヘモグロビン)】(単位:g/dL)

異常要注意基準範囲要注意異常
男性12.0以下12.1~13.013.1~16.316.4~18.018.1以上
女性11.0以下11.1~12.012.1~14.514.6~16.016.1以上

●基準値外である場合に疑われる病気
貧血、多血症など

●改善に向けて心がけたいこと
・栄養バランスを考慮し、とくにタンパク質や鉄分を積極的に摂る
・過度なダイエットや偏食は避ける

●再検査(二次検査)、精密検査で実施される検査例
血液検査、便潜血検査、内視鏡検査、骨髄検査、遺伝子検査など

この検査は何のための検査?「血色素(ヘモグロビン)」

肝機能(定期健康診断での実施は医師判断)

肝機能の状態を把握するための検査です。

【GOT(AST)・GPT(ALT)】(単位:U/L)

基準範囲要注意異常
GOT(AST)30以下31~5051以上
GPT(ALT)30以下31~5051以上

●基準値外である場合に疑われる病気
急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、脂肪肝、肝がん、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝炎、心筋梗塞、薬剤性肝障害など

この検査は何のための検査?AST(GOT)

この検査は何のための検査?ALT(GPT)

【γ(ガンマ)-GTP】(単位:U/L)

基準範囲要注意異常
50以下51~100101以上

●基準値外である場合に疑われる病気
急性肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝障害、肝硬変、肝がん、薬剤性肝障害、脂肪肝など

●改善に向けて心がけたいこと
・栄養バランスを考慮し、とくにタンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維を積極的に摂る
・脂っこい食事は控え、適正なカロリーを意識する
・過剰な飲酒は避け、休肝日を設ける
・ウォーキングなどの適度な運動を行う

●再検査(二次検査)、精密検査で実施される検査例
血液検査、MRI検査、超音波(エコー)検査など

この検査は何のための検査?「γ-GTP」

血中脂質(定期健康診断での実施は医師判断)

動脈硬化などのリスクファクターとなり得る脂質異常症に関連する項目を調べます。

【HDLコレステロール】(単位:mg/dL)

異常要注意基準範囲※
34以下35~3940以上
※将来、脳・心血管疾患を発症し得る可能性を考慮した基準範囲

●基準値外である場合に疑われる病気
脂質異常症、動脈硬化など

この検査は何のための検査?「HDLコレステロール」

【LDLコレステロール】(単位:mg/dL)

異常基準範囲※要注意異常
59以下60~119120~179180以上
※将来、脳・心血管疾患を発症し得る可能性を考慮した基準範囲

●基準値外である場合に疑われる病気
脂質異常症、動脈硬化など

この検査は何のための検査?「LDLコレステロール」

【中性脂肪(TG)(トリグリセリド)】(単位:mg/dL)

異常基準範囲※要注意異常
29以下30~149150~499500以上
※将来、脳・心血管疾患を発症し得る可能性を考慮した基準範囲

●基準値外である場合に疑われる病気
脂質代謝異常、糖尿病、ネフローゼ症候群、動脈硬化、糖尿病、アジソン病、甲状腺機能低下症、膵炎、甲状腺機能亢進症、副腎機能不全など

●改善に向けて心がけたいこと
・食事は栄養バランスを考慮し、多価不飽和脂肪が豊富な青魚などを積極的に摂取し、肉の脂身や加工食品などに多く含まれる飽和脂肪酸の摂取を意識的に控える
・脂っこい食事は控え、適正なカロリーを意識する
・適度な運動を行う
・禁煙する

●再検査(二次検査)、精密検査で実施される検査例
血液検査、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、CT検査など

この検査は何のための検査?「中性脂肪(TG、トリグリセリド)」

血糖(定期健康診断での実施は医師判断)

糖質代謝に関わる項目を検査し、糖尿病などの可能性を調べます。

【血糖値(FPG)】(単位:mg/dL)

基準範囲※要注意異常
99以下100~125126以上
※将来、脳・心血管疾患を発症し得る可能性を考慮した基準範囲

●基準値外である場合に疑われる病気
糖尿病、急性膵炎、膵臓がん、インスリノーマなど

この検査は何のための検査?「空腹時血糖値」

【HbA1c(NGSP)】(単位:%)

基準範囲※要注意異常
5.5以下5.6~6.46.5以上
※将来、脳・心血管疾患を発症し得る可能性を考慮した基準範囲

●基準値外である場合に疑われる病気
糖尿病、急性膵炎、膵臓がん、インスリノーマなど

●改善に向けて心がけたいこと
・食事は栄養バランスを考慮し、糖質の多い白米やパン、麺類を適度に控える
・食事の際、野菜→汁物→タンパク質(肉・魚)→ご飯の順にするなど、食べる順番を工夫する
・発酵食品を積極的に摂り、腸内環境を整える
・ウォーキングなど適度な運動を行う

●再検査(二次検査)、精密検査で実施される検査例
血液検査、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査など

HbA1c(ヘモグロビンA1c)について

腎機能(特定健診での実施は医師判断)

血液中のクレアチニンの数値から、腎臓の機能について調べる検査です。

【血清クレアチニン(Cr)】(単位:mg/dL)

基準範囲要注意異常
男性1.00以下1.01~1,291.30以上
女性0.70以下0.71~0.991.00以上

●基準値外である場合に疑われる病気
急性腎臓病、慢性腎臓病など

●改善に向けて心がけたいこと
・食事は栄養バランスを考慮し、とくに塩分を意識的に控える
・タンパク質の取りすぎに注意する
・水分補給をこまめに行う

●再検査(二次検査)、精密検査で実施される検査例
血液検査、超音波(エコー)検査など

この検査は何のための検査?「クレアチニン(Cr)」

尿検査

採取した尿から腎臓の状態を調べる検査です。

尿糖

基準値異常
陰性(-)(±)以上

●基準値外である場合に疑われる病気
腎性尿糖、糖尿病、副腎疾患、下垂体疾患、膵炎など

この検査は何のための検査?「尿糖検査」

尿蛋白

基準値要注意異常
陰性(-)(+)(±)(+2以上)

●基準値外である場合に疑われる病気
急性腎炎、ネフローゼ症候群、前立腺および膀胱の腫瘍や炎症、尿路結石など

●改善に向けて心がけたいこと
・食事は栄養バランスを考慮し、腎臓の負担を軽減するため塩分や脂質の摂取を控える
・ウォーキングなど適度な運動を行う

●再検査(二次検査)、精密検査で実施される検査例
尿検査、血液検査、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、CT検査など

この検査は何のための検査?「尿蛋白検査」

その他基準値のない検査:身体計測(身長、体重、腹囲)、視力・聴力検査、眼底検査、胸部X線検査、心電図検査

以下は実測値などが記載されることから、基準値が設定されていない(視力・聴力は除く)項目です。それぞれの検査内容と考えられる病気を説明します。

身体計測:身長、体重、腹囲(定期健康診断での身長・腹囲の計測は医師判断)

身長、体重、腹囲を計測します。特定健診では腹囲の基準値を男性85cm未満、女性90cm未満*1としており、基準値を超え、かつ血圧や血中脂質、血糖の検査で異常があった場合にメタボリックシンドロームと診断されます。

この検査は何のための検査?「身長・体重・BMI検査」

視力・聴力検査(特定健診では実施しない)

視力検査では、1.0以上が基準範囲に設定されており、視えにくさやブレなどがある場合、近視や乱視が疑われます。

聴力検査は低音(1000Hz)と高音(4000Hz)それぞれについて、聴こえる程度を調べます。低音、高音いずれも基準範囲は30dB以下(音の大きさ)であり、それより大きい音でないと聴こえない場合に中耳炎や難聴などが疑われます。

この検査は何のための検査?「視力検査」

この検査は何のための検査?「聴力検査」

眼底検査(健康診断では実施しない、特定健診での実施は医師判断)

眼の奥にある眼底部を観察する検査です。白内障や網膜剥離、眼底出血といった眼の疾患のほか、血管の状態から動脈硬化や高血圧、糖尿病などの推定にも役立ちます。

この検査は何のための検査?「眼底検査」

胸部X線(レントゲン)検査(定期健康診断での実施は医師判断)

胸部にX線を照射し、肺や心臓、大動脈などに異常がないか調べる検査です。撮影した画像から陰影などを観察し、肺炎、肺結核、心臓肥大、肺がん、肺気腫、気管支拡張症などの発見につなげます。

●再検査(二次検査)、精密検査で実施される検査例
X線(レントゲン)検査、CT検査、肺機能検査(スパイロメーター)など

この検査は何のための検査?「胸部レントゲン検査」

心電図検査(定期健康診断と特定健診での実施は医師判断)

心拍のリズムを採取し、心臓の状態を把握するための検査です。健康診断で行われる検査では多くの場合、安静時の心電図を測定します。不整脈、狭心症、心筋梗塞、心肥大などの発見につなげます。

●再検査(二次検査)、精密検査で実施される検査例
運動負荷心電図、24時間心電図(ホルター心電図)、超音波(エコー)検査、CT検査など

この検査は何のための検査?「安静時心電図検査」

「再検査」「要精密検査」があったら。どこで受診する? 費用はどうなる?

再検査や精密検査はどこで検査すればいい?

健康診断の結果に「再検査」や「要精密検査」の項目があったら、必ず医療施設を受診しましょう。検査結果は受診日の体調や直近の食生活など、さまざまな要素によって左右されることがあります。ナーバスになりすぎず、自身の身体をもう一度チェックできる機会ととらえるとよいでしょう。再診時期の目安は多くの場合、総合判定欄に記されています。確認し、受診の予約をしましょう。

健康診断を受けた医療施設が再検査や精密検査に対応していれば、同じ医療施設で再検査などを受けられます。ただし、再検査や精密検査の内容によってはMRI、CTといった設備を要する場合があります。事前に医療施設のWebサイトや電話等で確認のうえ、医療施設を選択するとよいでしょう。前章の各検査で紹介した「再検査(二次検査)、精密検査で実施される検査例」も参考にしてください。

再検査や精密検査の費用はどうなる?

会社が実施する定期健康診断の費用は会社が負担するため無料(オプション検査は除く)、自治体が実施する特定健診は公的負担があるため比較的安価ですが、再検査や精密検査の費用はいずれも基本的に自己負担(保険適用、原則3割負担)であり、費用は検査項目や医療施設によって異なります。なお、再検査などの費用も会社負担としている会社もあるので、勤務先に確認してみましょう。

健康診断を受診した医療施設と異なる医療施設で再検査や精密検査を受ける場合は、診断データや紹介状などの発行が必要となるケースが一般的であり、これらは多くの場合有料です。ただし、健康診断のみ行う医療施設(健診センターなど)の診断結果を持ってかかりつけ医で再検査する、または連携している医療施設で再検査や精密検査をする場合は、紹介状は不要なことがほとんどです。

再検査の結果を知るのが怖い、再検査に行く時間がないなど、さまざまな理由から再診を先延ばしする心情も理解できます。しかし、再検査の結果、異常がなければ安心感につながりますし、病気が疑われても発見が早いほど身体への負担は軽くすみます。検査結果に再検査や精密検査の項目があったら、ためらわずに再診しましょう。

「再検査」「精密検査」があった場合の受診先、費用などについては下記記事をご覧ください。

健康診断の結果に関するよくある質問

会社に提出する健康診断結果は誰が確認するの?

会社によってさまざまです。厚生労働省では、人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者、産業保健業務従事者、管理監督者及び人事部門の事務担当者*10としています。

労働安全衛生法には、会社は健康診断を実施する義務があること、健康診断結果を従業員に通知すること、再検査が必要な人への受診勧奨をすることなどが記されています。会社は社員の健康状態を把握するために健康診断を実施し、社員の健康を守りながらそれぞれに適した働き方や環境を整える必要がある、ということです。

なお同省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(2017年4月14日改正)*11」には、健康診断の結果は個人情報保護を踏まえとくに適正な取り扱いを確保すること、診断結果を理由に解雇や退職勧奨、配置転換などは行ってはならないことも明記されています。

健康診断結果の再発行は可能?

健康診断の結果の再発行は、ほとんどの医療施設が有料で対応しています。料金は医療施設によって異なります。なお、会社が実施する健康診断の結果であれば、会社に再発行を依頼する方法もあります。労働安全衛生法により、会社には社員の健康診断結果を5年間保存する義務があるためです。必要に応じて担当部署などに問い合わせてみましょう。

参考資料
*1.政府広報オンライン 生活習慣病の予防と早期発見のためにがん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!
*2.厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
*3.厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導に関するQ&A集」
*4.東京労働局「健康診断による健康管理を進めよう」
*5.日本予防医学協会 検査結果の見方 判定区分
*6.日本人間ドック・予防医療学会 基本検査項目/判定区分
*7.全国健康保険協会 基準値とは
*8.日本人間ドック・予防医療学会 検査表の見方
*9.日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドラインJSLM2021」
*10.厚生労働省「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き(2019年3月)」
*11.厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(2017年4月14日改正」

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