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【連載1】新型コロナウイルスの基本情報とその予防について

公開日:2020年5月12日
更新日:2020年5月12日 変更履歴
著者:山本 佳奈(やまもと かな)

医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

新型コロナウイルスの感染が世界に拡大しています。3月11日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感染症の流行を「パンデミックとみなせる」と発表しました。4月7日には日本でも緊急事態宣言が発令され、5月4日には対象地域を全国としたまま31日まで延長することが正式に決定されたのでした。

通院や買い出し、職場への出勤、屋外での運動や散歩といった生活や健康の維持のために必要なもの以外は、自粛が要請され、密閉・密集・密接が重なる「3密」を避けることや、手洗いや人と人の距離の確保などを徹底するなど、今までの生活様式を改めることが要求され、新型コロナウイルスは私たちの生活をすっかり変えてしまいました。

さて、今回は、世界で流行の続く新型コロナウィルスの基本情報とその予防について、お伝えしたいと思います。

新型コロナウィルスとは

新型コロナウィルスとは、コロナウイルスの一種です。コロナウイルスとは風邪の原因の10%前後を占めるウイルスです。RNAウイルスの一種であり、自分で増えることはできないかわりに、粘膜などの細胞に付着して入り込んで増殖します。ヒトに日常的に風邪として感染するコロナウイルスは4種類存在し、冬に流行のピークがみられます。

一方、動物の間で感染するコロナウイルスもあります。それが、種の壁を超えて動物からヒトに感染し、ヒトからヒトに効率よく感染し、病原性が強いと重症肺炎を引き起こすことがあります。2002 年に中国広東省で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)や、2012 年にサウジアラビアで流行したMERS(中東呼吸器症候群コロナウイルス)、そして今回の新型コロナウィルスです。これらは種の壁を超えて発生し、重症肺炎を引き起こします。

どのように感染するのか、その症状は?

新型コロナウィルスは、飛沫感染や接触感染で感染します。飛沫感染とは、くしゃみや咳、つばなと一緒に放出されたウイルスを口や鼻から吸い込むことによる感染を意味し、接触感染とは、感染している人がくしゃみや咳をする際に押さえたその手で周りの物に触れ、他の方がそれを触りウイルスに触れた手で口や鼻を触ることによる感染を意味します。

感染してから約4日程度を経て、発熱、咳、咽頭の痛みといった風邪様の症状が出現します。嗅覚障害・味覚障害を訴える人が多いことも特徴です。他に、頭痛や倦怠感、関節や筋肉の痛みなど、風邪や季節性のインフルエンザによく似た症状も出ることがありますが、これらの症状が、より長く続くことが、新型コロナウィルスの特徴です。

新型コロナウイルスに感染したとしても、みな重症化する訳ではありません。中国の報告から、8割程度の方は無症状や軽症であること、2割程度の方で悪化し、さらに数%の方が肺炎などで集中治療が必要になること、そして、最悪の場合、死に至るということがわかっています。ご高齢の方や糖尿病や高血圧、心血管疾患といった既往歴のある方、さらに喫煙歴のある方では死亡率が高いこともわかっています。

新型コロナウィルスは大人だけでなく、子どもにも感染します。現時点で、子どもの感染者数は大人と比べると少ないものの、感染しやすさは大人と変わりなさそうです。発熱や咳を認める一方で、鼻汁や鼻閉などの上気道症状は比較的少ないという報告もあります。一部の子どもには、嘔吐や腹痛、下痢といった症状も認めます。大人と同様に、発熱が長期間続き、呼吸状態の悪化や、肺炎に至る症例も報告されていますが、多くが1週間から2週間程度で回復しています。重症化する割合は大人と比較すると低いようですが、乳児など、幼い子どもは特に注意が必要と言えるでしょう。

治療と予防

治療薬も開発されています。レムデシビル(商品名ベルクリー)という薬の有効性が確認され、日本でも承認されています。ファビピラビル(商品名アビガン)という薬も有望で、治験が進行中です。ワクチン開発も、早くから着手されてはいますが、まだまだ時間がかかりそうです。ワクチンやさらなる治療薬の開発が急がれているところではありますが、現時点での新型コロナウィルスに対する治療は、症状を和らげる対症療法が中心です。

新型コロナウイルス対策では、日々の感染予防がとても大切です。石けんを使用した手洗いは、ウイルスの膜を壊します。英国のジョンソン首相が「ハッピーバースデーを2回歌いながら石鹸とお湯で手を洗ってください。科学的に立証された簡単なアドバイス。これは私たちにできる最も重要なことなのだ」と訴えたことは有名です。また、手指消毒用のアルコールも、新型コロナウイルスの脂肪の膜を壊すことによって感染力を失わせることがで切るので有効です。

新型コロナウイルスの研究は日進月歩です。最近の研究により、新型コロナウィルスがヒトの腸細胞にいとも容易に感染して増える可能性もあることがわかってきました。トイレの後の手洗いはもちろん、トイレの蓋を閉めて流すことも、感染予防にはとても大切なのです。

新型コロナウィルスの感染は、ヒトからヒトへの感染だけでなく、ヒトからモノ、そしてヒトへの感染のウェイトも大きいことを忘れないでくださいね。

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